天宮1号の地球落下は3月か

0

    China's Tiangong-1 falls to Earth in March

     

    制御不能になっている中国の軌道上実験モジュール、天宮1号は、現在1日に約160mずつ高度を下げています。2017年末の段階では天宮1号の大気圏再突入は20181月か2月と予測されていました。しかし、アメリカの非営利団体エアロスペース・コーポレーションの最近の発表によると、大気圏再突入は3月で、最も確率が高いのは3月中頃とのことです。201813日現在の天宮1号の高度は遠地点が293km、近地点が270kmとなっています。

     

    20180110_01.jpg

     

    天宮1号は全長10.4m、重量8.5tで、大気圏に再突入した際、大部分は分解し、燃えつきてしまいますが、破片の一部は燃えつきずに海上または地上に落下する可能性があります。1997年には、電源に原子炉を使用していたソ連の衛星の一部がカナダに落下したことがあります。また、1998年にはアメリカの宇宙実験室、スカイラブの破片がオーストラリアに落下しました。

     

    天宮1号の軌道傾斜角は約43度です。したがって、赤道をはさんで北緯43度から南緯43度の間のどこかに破片が落下する可能性があります。ただし、大気圏再突入の直前にならないと、どこに落ちてくるかはわかりません。北緯43度というと、北海道の一番南にあたりますので、本州、四国、九州、沖縄が落下領域に含まれます。ただし、日本に落下する確率は1000分の1以下です。

     

    天宮1号は主に神舟宇宙船のドッキング・ターゲットとして用いられた軌道モジュールです。搭載した実験装置や観測装置の数も限られており、燃えつきずに落下してくる破片が多いとは考えられません。また破片は1か所に落ちてくるわけではなく、落下する経路にそってばらばらと落ちてきます。したがって、破片による人命被害や物的被害を過度に心配する必要はありません。

     

    天宮1号の姿勢制御や軌道変更を行うロケットエンジンは、燃料にヒドラジンを使用しています。ヒドラジンは強アルカリ性の有害物質で、これに触れると、皮膚や粘膜はただれたり火傷のような状態になったりします。また、吸いこんだ場合には肺の組織が損傷したり、呼吸困難におちいったりします。1996年には中国の長征3Bロケットの打ち上げが失敗し、ロケットは発射直後に近隣の村に落下しました。燃料のヒドラジンによって多数の死亡者が発生しました。

     

    天宮1号の燃料タンクにはまだヒドラジンが残っている可能性があります。大気圏再突入の際、燃料タンクは破壊され、ヒドラジンはすべて燃えてしまうと考えられますが、タンクが破壊されずに地上に落下した場合は、接触しないように注意が必要です。

     

    天宮1号のような大きな宇宙構造物は、運用終了後、太平洋に制御落下させるのが常識です。2001年、ロシアはソ連時代から運用していた重量120t以上のミール宇宙ステーションを、南太平洋に制御落下させました。燃えつきなかった破片は海上に落下しましたが、何の被害もありませんでした。中国も当初、天宮1号の制御落下を考えていましたが、20163月に制御不能となりました。姿勢制御システムに不具合が生じ、太陽電池パネルが太陽の方向に向けることができなくなったようです。このため、バッテリーに充電できず、電源が落ちてしまいました。中国は今後、独自の宇宙ステーションの建設を計画しています。運用終了後の軌道モジュールを安全かつ確実に制御落下させる能力をもつことは、中国の宇宙開発にとって大きな課題です。

     

    天宮1号が周回しているあたりの宇宙空間にも、ごくわずかですが大気の成分が残っています。その抵抗を受けて、天宮1号は次第に高度を下げているのです。地球をまわる人工衛星や宇宙船などが大気の影響をまったく受けなくなるのは高度600km以上といわれています。天宮1号が現在周回しているあたりの高度では、大気の主成分は酸素原子です。酸素原子の濃度はその時の太陽活動などによって変動するため、天宮1号が受ける大気の抵抗も変動します。したがって再突入時期を正確に予測することは困難です。3月という予測はあるものの、天宮1号がいつ再突入するか、用心して見守る必要があります。


    宇宙飛行士ジョン・ヤング

    0

      Astronaut John Young

       

      NASAの元宇宙飛行士ジョン・ヤングさんが1月5日に亡くなりました。ヤングさんはNASAの伝説的な宇宙飛行士の1人です。

       

      20180107_01.jpg

       

      ヤングさんは海軍の出身で、1962年にNASAの第2期の宇宙飛行士に選抜されました。1965年にジェミニ3号に搭乗、1966年にはジェミニ10号に搭乗しました。1969年にはアポロ10号の司令船パイロットとして月を周回、1972年にはアポロ16号のコマンダーとして月面に降り立ちました。

       

      20180107_02.jpg

       

      アポロ計画は1972年に終了し、ジェミニ、アポロ時代の宇宙飛行士がNASAを離れる中、ヤングさんはNASAにとどまり、1981年4月のスペースシャトルの初飛行STS-1のコマンダーをつとめました。スペースシャトルの最初の4回の飛行は試験飛行と位置付けられており、クルーはコマンダーとパイロットの2名。着陸時に異常事態が発生した場合に緊急脱出できるよう、座席は射出席となっていました。スペースシャトルはそれまでのカプセル型宇宙船とはことなる有翼の再使用型宇宙船であり、その最初の宇宙飛行には未知の要素も多く、今では想像できないほど危険と隣り合わせの飛行でした。実際、打ち上げの際にスペースシャトル下面の断熱タイルがいくつかはがれるというアクシデントが起こりました。しかし、この飛行が成功することにより、宇宙開発は新しい時代を迎えたのです。

       

      20180107_03.jpg

       

      私は1981年7月、ヒューストンのジョンソン宇宙センターにヤングさんを訪ね、スペースシャトルの飛行についていろいろ話をうかがいました。ベテランの宇宙飛行士らしく、ヤングさんの説明は具体的かつ非常に分かりやすいものだったことを記憶しています。特に印象的だったのは大気圏再突入時の様子でした。スペースシャトルは高温のプラズマに包まれ、コックピット前方の窓いっぱいに明るい輝きが広がりましたが、それは素晴らしい光景であったと、ヤングさんは語っていました。また、その輝きの色はアポロ宇宙船の大気圏再突入時の白い輝きに比べて赤みを帯びており、スペースシャトルの大気圏再突入が、アポロ宇宙船ほど高温ではないことを実感したとも語っていました。

       

      ヤングさんはアポロ時代の経験をスペースシャトル時代の宇宙飛行士に伝える重要な役割を果たすとともに、1983年にはSTS-9の船長として再びスペースシャトルに搭乗しました。このときのミッションは、スペースラブによる宇宙実験でした。

       

      ヤングさんは1987年まで現役の宇宙飛行士にとどまり、2004年にNASAをリタイアしました。

       

      下の写真は2011年7月にスペースシャトル最後の飛行STS-135が行われた後に撮影された写真で、スペースシャトル最初の飛行STS-1と最後の飛行STS-135のクルー全員が写っています。

       

      20180107_04.jpg

       

      中央がジョン・ヤングさんです。その左はSTS-1のパイロットのロバート・クリッペン、その左がSTS-135のダグ・ハーリー。ヤングさんの右がSTS-135のコマンダーのクリス・ファーガソン、その右はSTS-135のサンディー・マグナス、そしてレックス・ウォルハイムです。


      NASAの商業クルー輸送計画

      0

        NASA’s Commercial Crew Program

         

        2018年はNASAの商業クルー輸送計画(CCPCommercial Crew Program)にとって、大きな飛躍の年になりそうです。CCPとは国際宇宙ステーション(ISS)へのクルー輸送にアメリカの民間の有人宇宙船を使う計画です。

         

        20180106_01.jpg

         

        2011年にスペースシャトルは退役しましたが、NASAはそれ以前から将来のISSへのクルー輸送に民間の宇宙船を使う計画を進めていました。この計画にもとづき、ボーイング社はCST-100 (スターライナー)を、スペースX社はドラゴン宇宙船の有人型(クルー・ドラゴン)の開発を進めてきました。また、ロバート・ベンケン、サニータ・ウィリアムズ、エリック・ボー、ダグ・ハーリーの4名の宇宙飛行士がCCPミッションにアサインされ、現在訓練を続けています。

         

        20180106_02.jpg

         

        CCPのロゴはNASAの宇宙飛行のシンボルとしてアポロ計画の頃から使われてきたデザインをベースにしています。3本の光線が通り抜けるリングは地球周回軌道を意味しています。

         

        20180106_03.jpg

         

        ボーイング社のCT-100 スターライナーはULAのアトラスV型ロケットを使ってケネディ宇宙センターの41発射台から打ち上げられます。

         

        20180106_04.jpg

         

        スペースX社のドラゴン有人型(クルー・ドラゴン)はケネディ宇宙センターの39A発射台からファルコン9ロケットで打ち上げられます。

         

        20180106_05.jpg

         

        両社ともまずISSへの無人試験飛行を行った後、ISSへの有人試験飛行を行う予定です。両社の宇宙船とも定員は6名ですが、有人試験飛行は2名で行われる予定です。これらの成功後、NASA2019年から2014年まで間、各6回のクルー輸送ミッションを発注する予定です。それぞれ1年に1回の飛行という計算になります。

         

        2018年は初の有人試験飛行に向けた重要な年になります。スペースX社では2018年の第2四半期にISSへの無人試験飛行を、第3四半期の有人試験飛行を行うことを目指しています。ボーイング社のスターライナーはそれよりも少しスケジュールが遅れそうです。



        calendar

        S M T W T F S
        1234567
        891011121314
        15161718192021
        22232425262728
        2930     
        << April 2018 >>

        selected entries

        categories

        archives

        links

        profile

        書いた記事数:44 最後に更新した日:2018/04/16

        search this site.

        others

        mobile

        qrcode

        powered

        無料ブログ作成サービス JUGEM