フレンドシップ 7 :アメリカ初の有人地球周回飛行(1)

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    Friendship 7:The First U.S. Astronaut to Orbit (1)

     

    1962年2月20日、ジョン・グレンによってアメリカ人初の有人地球周回飛行が行われました。

     

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    1961年4月12日、ソ連のユーリー・ガガーリンはボストーク1号で世界初の有人宇宙飛行を行いました。これによって、東西冷戦下での米ソの宇宙開発競争は加速されました。アメリカはガガーリンの飛行に遅れること23日、5月5日にマーキュリー宇宙船でアラン・シェパードを打ち上げました。しかし、打ち上げに使われたレッドストーン・ロケットは力不足で、シェパードは15分間の弾道飛行を行ったのみでした。7月21日のバージル・グリソムの飛行も弾道飛行でした。地球周回飛行を行うにはアトラス・ロケットが必要でしたが、当時、アトラスはまだ人間を乗せられる段階に達しておらず、試験打ち上げは失敗と部分的な成功をくり返していました。

     

    一方、ソ連は8月6日にゲルマン・チトフをボストーク2号で打ち上げ、地球を17周させることに成功しました。アメリカにとってもはや弾道飛行は意味をもたなくなり、3回目の弾道飛行はキャンセルされました。ジョン・グレンはアトラス・ロケットでの地球周回飛行に挑むことになったのです。

     

    グレンは自分が乗るマーキュリー宇宙船を「フレンドシップ 7」と名づけました。

     

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    フレンドシップ 7 の打ち上げは最初1961年12月20日に計画されていましたが、62年1月16日に延期されました。さらに1月23日、1月27日と延期されました。1月27日にグレンはせまい宇宙船の中で6時間も待たされましたが、悪天候のために打ち上げはまたしても延期となりました。2月4日に予定された打ち上げも延期になり、ようやく2月20日にグレンを乗せたマーキュリー・アトラスはケープ・カナヴェラルの発射台を離れたのでした。打ち上げは世界中に中継され、1億3500万人が見守ったといわれています。

     

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    フレンドシップ 7 は地球を周回する軌道に入りました。グレンが「発光する宇宙ホタル」を見たと報告してきたのは有名な話です。これは宇宙船から放出された水分が凍り、太陽光で輝いたものでした。フレンドシップ 7 は自動で姿勢制御されていましたが、地球を1周しかけたところで、ASCS(姿勢制御システム)にトラブルが発生し、宇宙船は左右にドリフトをはじめました。グレンは手動で姿勢を制御しなくてはならなくなりました。

     

    フレンドシップが2周目に入ろうとしていたころ、ケープ・カナヴェラルのMCC(マーキュリー・コントロール・センター)のコンソールに「セグメント51」のライトがともりました。大気圏再突入時には宇宙船の底に取り付けられているヒートシールド(熱遮蔽板)が宇宙船を高熱から守ります。ヒートシールドは着水前に本体から外れ、その下にあるエアバッグが膨らんで着水の衝撃を和らげます。セグメント51 のライトが点灯したことは、そのランディング・バッグがすでに展開し、熱遮蔽板がルーズになっている(ストラップでつながってはいる)状態を示しています。この状態で大気圏再突入を行えば、ヒートシールドが外れ、宇宙船は約2000度Cの高熱によって燃えつきてしまう危険性があります。

     

    フレンドシップ 7 は次の3周目で大気圏再突入を行うことになっていました。時間はあまりありません。ここから、MCCの緊迫した時間がはじまります。セグメント51 のライトが点灯したのはエラーか、それともランディング・バッグは本当に展開しているのか。問題を解決するための緊急会議がもたれましたが、グレンにこの状況は知らされませんでした。

     

    グレンは決められたフライト・プランを消化するのに追われる一方、相変わらず宇宙船の姿勢を手動で制御していました。インド洋上の船との交信で、グレンに指示がでます。「ランディング・バッグのスイッチをオフにしておくように」。オーストラリア、パースの地上局には同僚のゴードン・クーパーがいました。「ランディング・バッグのスイッチはオフになっているか?」「オフになっている」。「爆発音のような音を聞いたかい?」「いや」。グレンはヒートシールドに何か問題が起こっているのではないかと考えはじめます。


    NASAの2019年度予算:月周回軌道ステーション建設へ

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      NASA Budget FY 2019Orbital Platform in Cislunar Space

       

      2019会計年度のNASA予算要求(予算教書)が発表されました。NASAは月周回軌道ステーション建設に乗り出します。

       

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      NASAは数年前から、将来の月・火星有人探査にむけた拠点、あるいは深宇宙への「入り口」としてとして、月近傍(シスルーナー)に「ディープ・スペース・ゲートウェイ」という有人宇宙ステーションを建設する構想を明らかにしていました。上の画像の左上がディープ・スペース・ゲートウェイで、推進モジュール、居住モジュール、エアロックなどからなっています。右手前は、このステーションにクルーを運んでくるオライオン宇宙船です。今回発表された予算では、ディープ・スペース・ゲートウェイは「月周回軌道ステーション―ゲートウェイ」という表現になっていますが、その位置づけは変わっていません。

       

      これにともない、NASAは国際宇宙ステーション(ISS)の予算を2024年度でストップし、2025年度以降はISSの運用を民間に移管するという方針も発表しました。ただし、これはNASAISSを放棄することではなく、以降も宇宙技術の開発や検証に使用します。NASAはすでにISSへの物資輸送を民間の宇宙船で行っています。民間の宇宙船によるクルー輸送ももうすぐ開始されます。NASAISSの運用も民間に任せ、自らは月や火星探査に乗り出していきます。

       

      NASA2019年度予算要求の総額は1989220万ドルです。その内訳の主なものは以下の通りです。

      深宇宙探査:455880万ドル

      このうちオライオン宇宙船の開発が116350万ドル、宇宙輸送システム(SLS)の開発が207810万ドル、月周回軌道ステーション―ゲートウェイが5420万ドルとなっています。

      地球低軌道および宇宙飛行:462460万ドル

      このうちISSの運用が146220万ドル、宇宙輸送が21870万ドルとなっています。またISS運用の民間移管のため15000万ドルが計上されています。

      科学:589500万ドル

      このうち惑星探査(エウロパ・クリッパー、インサイト、マーズ2020など)は178420万ドル、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(ハッブル宇宙望遠鏡の後継機)の打ち上げを2019年に控える宇宙物理は118540万ドルです。地球観測は178420万ドルで、前年度予算でいくつかのミッションがキャンセルされたものの、4基の衛星打ち上げとランドサット9など7つのミッションの開発が行われます。

      航空:633900万ドル

      このうち先進航空機プログラムが23060万ドル、統合航空システム・プログラムが18920万ドル。後者には低ソニックブーム飛行実証Xプレーンが含まれています。


      ニュー・ホライズンズが撮影したカイパーベルト天体

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        New Horizons Observed Kuiper Belt objects (KBOs)

         

        ニュー・ホライズンズ探査機の望遠カメラLORRIが撮影したカイパーベルト天体「2012 HZ84」と「2012 HE85」の画像です。

         

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        この画像は2017125日に撮影され、この時ニュー・ホライズンズは地球から612000km離れていました。地球から最も離れた場所で撮影された画像です。これまで、地球から最も離れた場所から撮影された画像は、1990214日にボイジャー1号が太陽の方向を振り返って撮影した太陽系の「ファミリー・ポートレート」でした。このときボイジャー1号は地球から606000km離れていました。ニュー・ホライズンズは27年ぶりのこの記録をぬりかえたわけです。

         

        20157月に冥王星に最接近したニュー・ホライズンズは、その後ミッションが延長され、201911日にカイパーベルト天体「2014 MU69」に接近する予定です。

         

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        ハッブル宇宙望遠鏡による観測では、この天体の表面は赤みを帯びた色をしているようです。

         

        海王星の軌道の外側には多数の小天体が存在し、エッジワース・カイパーベルト天体(EKBO)、カイパーベルト天体(KBO)、あるいは太陽系外縁天体(TNO)とよばれています。ジェラルド・カイパーとケネス・エッジワースは、海王星の外側に彗星の巣となる小天体が密集したベルトが存在することを提唱した天文学者です。1992年に「1992 QB1」が発見されて以来、次々とカイパーベルト天体が発見されており、その数は現在では1000個を超えています。

         


        北朝鮮:軍事パレードに火星15が登場

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          North Korea Holds Military Parade

           

          北朝鮮が軍事パレードを行い、昨年11月に発射実験を行ったICBM(大陸間弾道ミサイル)、火星15が登場しました。

           

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          今回の軍事パレードでは、現在、北朝鮮が開発に力を入れていると考えられる固体燃料のミサイルは登場しませんでした。また、ムスダンのような旧世代のミサイルも登場しませんでした。登場したのは火星12、火星14、そして火星15で、ここ数年のミサイル開発の実績を誇示する目的があったと思われます。

           

          下は火星12です。

           

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          下は火星14です。

           

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          火星15は最後に登場しました。

           

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          パレードに参加した火星154基で、シリアル番号は11111702から11111705でした。昨年11月に発射された火星15のシリアル番号は11111701でしたから、北朝鮮は発射可能な火星15を少なくとも4基は保有していることを、アメリカに見せたかったのでしょう。

           

          一方、北朝鮮は潜水艦発射式の固体燃料ミサイルや、我々が知らない新型のミサイルも開発していると考えられます。その意味では、今回は手の内をまったく見せない軍事パレードであったといえます。


          ファルコン・へヴィー、初打ち上げに成功

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            SpaceX's Falcon Heavy Blasted Off

             

            スペースX社の超大型ロケット、ファルコン・へヴィーの試験打ち上げが成功しました。ファルコン・へヴィーは26日午後345分(アメリカ東部時間)、ケネディ宇宙センターの39A発射台から打ち上げられました。

             

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            1973年のサターン5型ロケット以来のパワフルなロケット打ち上げでした。ファルコン・へヴィーの第1段は3本のコアロケットからなります。合計27個のエンジンが2250t以上の推力を生み出します。

             

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            1段の2本のサイドコアの着陸シーンは見事でした。まるでCGのようです。なお、センターコアの洋上着陸はうまくいかなかったようです。

             

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            燃焼が終了した第2段エンジンです。

             

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            ロケットの試験打ち上げでは、通常、ペイロードとしてダミーウェイトが搭載されますが、スペースX社は特別のペイロードを搭載しました。赤のテスラ・ロードスターで、運転席にはクルー・ドラゴンの搭乗員用の与圧服を着た「スターマン」が乗っています。ペイロードは火星に到達する太陽周回軌道に投入されます。

             

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            このようなシーンは宇宙開発の歴史で1度も撮られたことはありません。これが本当に宇宙空間で撮影されたわけですから、とてもエキサイティングです。スペースX社は宇宙開発に新しいハードウェアだけでなく、新しいカルチャーももたらしているといえます。

             


            大寒波襲来の原因は地球温暖化

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              Global Warming Triggers Extreme Cold Air Outbreak

               

              北極の強い寒気が日本列島に流れ込み、日本海側では記録的な積雪になっています。北極上空の冬の寒気は非常に冷たい低気圧で、極渦とよばれます。極渦が強い場合は、寒気が北極上空に閉じ込められ、その周囲をまわる偏西風も安定しています。一方、極渦が弱くなると、偏西風が蛇行し、寒気が中緯度帯に流れ込んでくるのです。

               

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              上の画像で右は2013111416日の北極上空で、紫色の領域が寒気です。極渦が安定している時期のパターンです。左の画像は201415日の北極上空で、寒気が分裂し、北アメリカや北大西洋、ユーラシア大陸に流れ込んでいます。2014年は日本や北アメリカに非常に強い寒波が襲来しました。現在はこれと同じパターンになっています。

               

              なぜ、このように極渦が乱れる現象が起こるのでしょうか。これを説明するために提唱されているのが、北極振動とよばれるものです。これは北極圏とそれを取り巻く中緯度帯の間の気圧に負の相関が働く現象です。北極振動の指標となるAOインデックスがプラスの場合は極渦は安定し、日本や北アメリカ、ヨーロッパは暖冬になります。AOインデックスがマイナスになると、寒い冬になります。ただし、この北極振動がなぜ起こるのかは、まだはっきりとは分かっていません。

               

              ここ数年は、地球温暖化との関係が指摘されるようになってきました。特に関係していると考えられるのが、北極海の夏の海氷です。北極海における夏の海氷面積の減少は21世紀になって顕著になり、2012年には観測史上最小を記録しました。夏の間に大量の氷が融けて、海水が太陽熱を吸収すると、冬にその熱が放出され、北極上空の大気温度が上昇します。その結果、極渦が弱くなると考えられています。地球温暖化が冬の厳しい寒さをもたらしていることになります。

               



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