若田光一宇宙飛行士搭乗ミッションの打ち上げは9月2日の予定

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    若田光一宇宙飛行士が搭乗するクルー5ミッションの打ち上げは9月2日(日本時間、EDTでは9月1日)の予定です。

     

     

    若田宇宙飛行士らはケネディ宇宙センターからスペースX社のクルードラゴンで打ち上げられ、国際宇宙ステーション(ISS)に向かいます。しかしながら、打ち上げまで2か月を切った現在も、NASAからは打ち上げ日時とクルーメンバーが正式に発表されていません。その理由は、クルー5にロシア人宇宙飛行士のアンナ・キキナさんが搭乗することになっているからです。

     

    NASAとロスコスモスは、自国の宇宙飛行士を相手国の宇宙船に搭乗させることで合意しています。これは両国の宇宙船のどちらかが何らかの理由で飛行停止になった際、相手国の宇宙船に搭乗して国際宇宙ステーションに向かう必要があるためです。キキナ宇宙飛行士はこの合意にもとづき、昨年からクルー5に搭乗する訓練を進めていました。ところが、今年2月24日にウクライナでロシアによる「特別軍事作戦」が始まってしまったのです。

     

    NASAは今年5月に、キキナ宇宙飛行士の搭乗に関してはロシア側の了解を待っていると述べました。一方、ロスコスモスは6月11日に、宇宙船の相互搭乗に合意する声明を出しました。しかしながら、7月2日付けのSpace Newsの記事によると、相互搭乗に関して、まだ両宇宙機関間で最終的な契約にまで至っていないとのことです。とはいえ、ここに書いたように、クルーの訓練は引き続き行われています。

     

    現在、アメリカとロシアはウクライナをめぐって厳しい対立関係にあります。しかし、ISS計画はアメリカ、ロシア、日本、ヨーロッパ、カナダの15か国による国際宇宙基地協力協定にもとづくものであり、NASAは現在もモスクワと常時連絡をとりながらISSを運用しています。2014年のロシアによるクリミア併合の際には、アメリカ政府の職員は電子メール、電話、会議などによるロシア側との接触をすべて禁止されましたが、ISSだけは特別とされ、NASAの職員はモスクワと連絡をとり、通常通りのISS運用を行いました。

     

    今回、NASAは2月24日に短い声明を発表し、「アメリカのロシアへの輸出制限はロシアのISSの運用に影響を与えない。アメリカとロシアの民生分野の宇宙協力は引き続き可能」と述べました。ISSの運用は通常通り行われ、3月30日にはNASAのマーク・ヴァンデハイ飛行士がロシアのソユーズ宇宙船で地球に帰還しています。ロシアとの相互搭乗の合意にもとづき、NASAからはフランシスコ・ルビオ宇宙飛行士が今年秋に打ち上げ予定のソユーズMS-22に搭乗することになっています。

     

    クルー5のメンバーはコマンダーがニコール・マン宇宙飛行士(NASA)、パイロットがジョシュ・カサダ宇宙飛行士(NASA)、ミッションスペシャリスト1が若田光一宇宙飛行士(JAXA)、ミッションスペシャリスト2がアンナ・キキナ宇宙飛行士(ロスコスモス)です。

     

    ニコールさん(上の画像1番左)、ジョシュさん(上の画像左から2番目)、アンナさん(上の画像1番右)の簡単なプロフィールは以下の通りです。

     

    ニコール・マン

    米国海兵隊大佐。海兵隊に入隊し、イラクおよびアフガニスタンでの作戦にパイロットとして参加。その後、海軍テスト・パイロット・スクールに入学。F/A-18ホーネットおよびスーパーホーネットのテスト・パイロットをつとめた。2013年NASAの宇宙飛行士候補。今回が最初の宇宙飛行。1977年生まれ。

     

    ジョシュ・カサダ

    米国海軍大佐。ロチェスター大学で高エネルギー物理学の研究で博士号を取得後、海軍に入隊し、テスト・パイロットとなった。海軍テスト・パイロット・スクールの教官もつとめた。2013年NASAの宇宙飛行士候補。今回が最初の宇宙飛行。1973年生まれ。

     

    アンナ・キキナ

    ノボシビルスク州水運アカデミーで緊急事態防護を学んだ。2012年ロスコスモスの宇宙飛行士候補。2017年に月ミッションを模擬した国際隔離実験「シリウス」に参加。2021年から国際宇宙ステーション長期滞在ミッションの訓練を受けていた。今回が最初の宇宙飛行。1984年生まれ。

     

    若田さんは、今回が5回目の宇宙になります。1996年、STS-72に日本人初のスペースシャトル・ミッションスペシャリストとして搭乗。2000年、STS-92に搭乗し、日本人として初めてISS建設に参加。2009年、ISS第18次/第19次/第20次長期滞在クルーとして日本人初のISS長期滞在を実施。2013年11月から2014年5月にかけて、ISS第38次/第39次長期滞在クルーとしてISSに188日間滞在し、後半の第39次長期滞在では日本人初のISS船長としてクルーの指揮をとりました。

     

    クルー5のメンバーは約6か月、ISSに滞在します。ニコールさんとジョッシュさんはアルテミス計画の要員であり、月面探査ミッションに向けた最初の宇宙滞在となります。若田さんは先生役として、彼らをより優秀な宇宙飛行士に育ててくれるでしょう。アンナさんの宇宙滞在は、日本とロシアの宇宙分野での絆をさらに深めてくれるはずです。


    若田光一宇宙飛行士とその仲間

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      若田光一宇宙飛行士が搭乗するクルー5、およびソユーズMS-22のクルーです。

       

       

      NASAジョンソン宇宙センター、ビルディング9、2022年5月13日。

       

      クルー5とソユーズMS-22の2つのミッションは、ISS長期滞在のためのフライトであると同時に、アメリカとロシアが自国の宇宙飛行士を相手国の宇宙船に搭乗させるミッションでもあります。

       

      上の画像の左から、フランシスコ・ルビオ(NASA、MS-22フライト・エンジニア)、ショシュ・カサダ(NASA、クルー5パイロット)、若田光一(JAXA、クルー5ミッション・スペシャリスト1)、ニコール・マン(NASA、クルー5コマンダー)、アンナ・キキナ(ロスコスモス、クルー5ミッション・スペシャリスト2)、ドミトリー・ペテリン(ロスコスモス、MS-22フライト・エンジニア)、セルゲイ・プロコピエフ(ロスコスモス、MS-22コマンダー)。


      クルードラゴン宇宙船

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        クルードラゴン宇宙船を徹底解説。

         

         

        クルードラゴンとはどんな宇宙船なのか。皆様と一緒に映像を見ながら、楽しく解説したいと思います。5月18日(水)18時30分から「宇宙の店」にて。



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