フレンドシップ 7:アメリカ初の有人地球周回飛行(2)

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    Friendship 7:The First U.S. Astronaut to Orbit (2)

     

    ケープ・カナヴェラルのMCC(マーキュリー・コントロール・センター)はランディング・バッグが展開しているかどうか、確認することができないでいました。

     

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    グレンは3周目に入りました。ハワイの上空まできたとき、地上局が伝えてきました。「ランディング・バッグが展開しているというセグメント51 の表示が出ている。エラーだとは思うが、ケープはチェックしたいとのことだ。ランディング・バッグのスイッチをオート・ポジションにしてライトがつくかをみてほしい」。このとき、グレンは数秒間考えたと、後に書いています。スイッチを入れてグリーンのライトが点灯すれば、ランディング・バッグは展開していることがわかります。悪い状況ではあるものの、何が起きているかを把握することができるわけですが、このときグレンが考えたのは、別のことでした。もしも表示がエラーだった場合、スイッチを入れて、それが誤作動したら、バッグを本当に展開させてしまうかもしれない。

     

    しかし、グレンはそうしたこともすべて地上では考えた末のことだと理解し、スイッチを入れます。ライトは点灯しませんでした。グレンは大気圏再突入の準備に入ります。

     

    カリフォルニア上空でグレンは軌道離脱の逆噴射を行いました。地上局にいた同僚のウォーリー・シラーは「テキサスまでレトロパックをつけておくように」と指示します。レトロパックとは、3基の逆噴射エンジンを収めたパッケージのことで、ヒートシールドの外側にストラップで取り付けられていました。逆噴射終了後、レトロパックは切り離されます。

     

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    MCCでは、最後まで議論が続いていましたが、レトロパックを最後まで付けたまま再突入を行うという決断を下しました。ライトの点灯はエラーの可能性が高いが、確認ができない以上、安全策をとる必要があります。レトロパックをつけたままなら、ランディング・バッグが展開していたとしても、レトロパックのストラップがヒートシールドを船体に押し付けておく役目をします。

     

    テキサス上空まで来ると、地上局はグレンに「再突入の間、レトロパックを分離しないように」という指示を送りました。グレンはレトロパックを付けたままの再突入に懸念をもちます。「なぜだい?」「ケープが決めたことだ。ケープが理由を説明する」。ケープ・カナヴェラルとの交信範囲に入ると、MCCのアラン・シェパードが理由を告げます。「ランディング・バッグが展開しているかどうか、確認できない。レトロパックをつけたままでも再突入は可能だ。再突入に問題はない」。「了解した」と、グレンは答えました。

     

    数分後、降下するフレンドシップ7 は高温プラズマに包まれ、交信不能になるブラックアウトに入りました。グレンが窓の外を眺めると、レトロパックの破片が炎に包まれて飛んでいくのが見えました。3分後、交信が回復しました。「こちらフレンドシップ7。コンディションは良好だが、外は本物の火の玉だ。レトロパックの破片がずっと見えていたよ」。

     

    フレンドシップ7は4時間55分23秒の飛行の後、プエルト・リコ、サンフアン島の北西の海上に無事着水しました。ランディング・バッグのライトが点灯しており、バッグにもヒートシールドにも異常がなかったことを示していました。

     

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    下の画像は、帰還した直後のジョン・グレンです。フレンドシップ7 の大気圏再突入はマーキュリー計画の中で、もっとも緊張に満ちたものでした。地上のミッション・コントロールと軌道上の宇宙飛行士の関係がどうあるべきかについても、NASAは多くのことを学びました。グレンは地上がトラブル発生をすぐに知らせなかったことについて、次のように書いています。

     

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    「管制官たちは私に心配させたくなかったのだ。しかし、私の考えは違う。パイロットを暗闇の中にほうっておくべきではない。特に彼が本当のトラブルに見舞われていると思っているのなら。パイロットの仕事はいつも緊急の事態にそなえていることだ。そして、すべてを知らされていないなら、彼は十分にそなえることができない」。


    フレンドシップ 7 :アメリカ初の有人地球周回飛行(1)

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      Friendship 7:The First U.S. Astronaut to Orbit (1)

       

      1962年2月20日、ジョン・グレンによってアメリカ人初の有人地球周回飛行が行われました。

       

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      1961年4月12日、ソ連のユーリー・ガガーリンはボストーク1号で世界初の有人宇宙飛行を行いました。これによって、東西冷戦下での米ソの宇宙開発競争は加速されました。アメリカはガガーリンの飛行に遅れること23日、5月5日にマーキュリー宇宙船でアラン・シェパードを打ち上げました。しかし、打ち上げに使われたレッドストーン・ロケットは力不足で、シェパードは15分間の弾道飛行を行ったのみでした。7月21日のバージル・グリソムの飛行も弾道飛行でした。地球周回飛行を行うにはアトラス・ロケットが必要でしたが、当時、アトラスはまだ人間を乗せられる段階に達しておらず、試験打ち上げは失敗と部分的な成功をくり返していました。

       

      一方、ソ連は8月6日にゲルマン・チトフをボストーク2号で打ち上げ、地球を17周させることに成功しました。アメリカにとってもはや弾道飛行は意味をもたなくなり、3回目の弾道飛行はキャンセルされました。ジョン・グレンはアトラス・ロケットでの地球周回飛行に挑むことになったのです。

       

      グレンは自分が乗るマーキュリー宇宙船を「フレンドシップ 7」と名づけました。

       

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      フレンドシップ 7 の打ち上げは最初1961年12月20日に計画されていましたが、62年1月16日に延期されました。さらに1月23日、1月27日と延期されました。1月27日にグレンはせまい宇宙船の中で6時間も待たされましたが、悪天候のために打ち上げはまたしても延期となりました。2月4日に予定された打ち上げも延期になり、ようやく2月20日にグレンを乗せたマーキュリー・アトラスはケープ・カナヴェラルの発射台を離れたのでした。打ち上げは世界中に中継され、1億3500万人が見守ったといわれています。

       

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      フレンドシップ 7 は地球を周回する軌道に入りました。グレンが「発光する宇宙ホタル」を見たと報告してきたのは有名な話です。これは宇宙船から放出された水分が凍り、太陽光で輝いたものでした。フレンドシップ 7 は自動で姿勢制御されていましたが、地球を1周しかけたところで、ASCS(姿勢制御システム)にトラブルが発生し、宇宙船は左右にドリフトをはじめました。グレンは手動で姿勢を制御しなくてはならなくなりました。

       

      フレンドシップが2周目に入ろうとしていたころ、ケープ・カナヴェラルのMCC(マーキュリー・コントロール・センター)のコンソールに「セグメント51」のライトがともりました。大気圏再突入時には宇宙船の底に取り付けられているヒートシールド(熱遮蔽板)が宇宙船を高熱から守ります。ヒートシールドは着水前に本体から外れ、その下にあるエアバッグが膨らんで着水の衝撃を和らげます。セグメント51 のライトが点灯したことは、そのランディング・バッグがすでに展開し、熱遮蔽板がルーズになっている(ストラップでつながってはいる)状態を示しています。この状態で大気圏再突入を行えば、ヒートシールドが外れ、宇宙船は約2000度Cの高熱によって燃えつきてしまう危険性があります。

       

      フレンドシップ 7 は次の3周目で大気圏再突入を行うことになっていました。時間はあまりありません。ここから、MCCの緊迫した時間がはじまります。セグメント51 のライトが点灯したのはエラーか、それともランディング・バッグは本当に展開しているのか。問題を解決するための緊急会議がもたれましたが、グレンにこの状況は知らされませんでした。

       

      グレンは決められたフライト・プランを消化するのに追われる一方、相変わらず宇宙船の姿勢を手動で制御していました。インド洋上の船との交信で、グレンに指示がでます。「ランディング・バッグのスイッチをオフにしておくように」。オーストラリア、パースの地上局には同僚のゴードン・クーパーがいました。「ランディング・バッグのスイッチはオフになっているか?」「オフになっている」。「爆発音のような音を聞いたかい?」「いや」。グレンはヒートシールドに何か問題が起こっているのではないかと考えはじめます。


      NASAの2019年度予算:月周回軌道ステーション建設へ

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        NASA Budget FY 2019Orbital Platform in Cislunar Space

         

        2019会計年度のNASA予算要求(予算教書)が発表されました。NASAは月周回軌道ステーション建設に乗り出します。

         

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        NASAは数年前から、将来の月・火星有人探査にむけた拠点、あるいは深宇宙への「入り口」としてとして、月近傍(シスルーナー)に「ディープ・スペース・ゲートウェイ」という有人宇宙ステーションを建設する構想を明らかにしていました。上の画像の左上がディープ・スペース・ゲートウェイで、推進モジュール、居住モジュール、エアロックなどからなっています。右手前は、このステーションにクルーを運んでくるオライオン宇宙船です。今回発表された予算では、ディープ・スペース・ゲートウェイは「月周回軌道ステーション―ゲートウェイ」という表現になっていますが、その位置づけは変わっていません。

         

        これにともない、NASAは国際宇宙ステーション(ISS)の予算を2024年度でストップし、2025年度以降はISSの運用を民間に移管するという方針も発表しました。ただし、これはNASAISSを放棄することではなく、以降も宇宙技術の開発や検証に使用します。NASAはすでにISSへの物資輸送を民間の宇宙船で行っています。民間の宇宙船によるクルー輸送ももうすぐ開始されます。NASAISSの運用も民間に任せ、自らは月や火星探査に乗り出していきます。

         

        NASA2019年度予算要求の総額は1989220万ドルです。その内訳の主なものは以下の通りです。

        深宇宙探査:455880万ドル

        このうちオライオン宇宙船の開発が116350万ドル、宇宙輸送システム(SLS)の開発が207810万ドル、月周回軌道ステーション―ゲートウェイが5420万ドルとなっています。

        地球低軌道および宇宙飛行:462460万ドル

        このうちISSの運用が146220万ドル、宇宙輸送が21870万ドルとなっています。またISS運用の民間移管のため15000万ドルが計上されています。

        科学:589500万ドル

        このうち惑星探査(エウロパ・クリッパー、インサイト、マーズ2020など)は178420万ドル、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(ハッブル宇宙望遠鏡の後継機)の打ち上げを2019年に控える宇宙物理は118540万ドルです。地球観測は178420万ドルで、前年度予算でいくつかのミッションがキャンセルされたものの、4基の衛星打ち上げとランドサット9など7つのミッションの開発が行われます。

        航空:633900万ドル

        このうち先進航空機プログラムが23060万ドル、統合航空システム・プログラムが18920万ドル。後者には低ソニックブーム飛行実証Xプレーンが含まれています。



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