火星15:北朝鮮の新しいICBM(2)

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Hwasong 15:North Korea’s brand new ICBM

火星15 の弾頭部は大型のフェアリングにおおわれています。弾頭そのものという見方もありますが、画像を拡大してみると、天井部に継ぎ目のようなものがあるように思われます。また、起立時の画像からは下側2か所に白い留め具のようなものが見られ、この部分はかすかにへこんでいます。先端の白いキャップ、および左右2枚のパネルに分離するフェアリングと考えられます。

 

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フェアリングのサイズは非常に大きく、これなら北朝鮮が発表しているように「超大型重量級の核弾頭」も搭載可能と考えられます。8月に模型の写真が公開された「水爆」も十分搭載できるサイズです。将来は多弾頭の搭載も可能でしょう。

今回の発射で、フェアリング内に何が搭載されていたかは、外側からは分かりません。しかし、金正恩委員長と一緒に写っているモニター画面から推測することができます。

下の画像は韓国で放映された映像中にあったものです。発射から時間がそれほどたっておらず、フェアリングはまだ分離されていない段階のものです。4つの画面のうち、左上は第2段ないし弾頭基部から下側を撮影した画面のようで、見えているのはエンジンの炎と思われます。下の2つの画面はフェアリング内部を撮影したもので、左の画面には弾頭と思われるものが写っています。カメラは弾頭基部に設置されています。弾頭は1個。先端がとがった円錐形で、再突入体として最も一般的な形状です。本物の弾頭ではなく、大気圏再突入時の状態を計測する各種センサーを設置した実験用飛翔体です。4つの画面のうち右上の画面もフェアリング内を撮影したものです。

 

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下の画像では、弾頭は放物線の頂点を過ぎ、下降段階に入っています。弾頭は弾頭基部から分離されているため、弾頭基部に設置されたカメラからは宇宙空間と地球のへりが見えています。一方、右上の画面には弾頭とそれを支持する機構、さらに地球の明るいへりが写っています。カメラは弾頭の支持機構に設置されており、この段階でも弾頭と一緒になっているようです。おそらく、支持機構は大気圏に再突入する高度100km あたりで分離されるまで、弾頭をモニターするのでしょう。

 

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これらの画面から、今回、多弾頭の実験は行われていないことがわかります。しかし、多弾頭にすることは、すべての弾頭を核弾頭にしなくても、おとり(デコイ)の弾頭にするだけでも、ミサイル防衛システムをかく乱できる利点があります。多弾頭の搭載は当然考えられていることでしょう。

火星15 がICBM としてどこまでの能力をもっているのかは、不明な点も多々あります。その1つは搭載できる弾頭の重量ですが、今回、どのくらいの重量の実験体で試験をしたかが分かりません。弾頭の重量によって飛距離は変わってきます。弾頭の再突入技術もどこまで進んでいるかは分かりません。しかし、上の画像でも明らかなように、再突入体の実験も着々と行われているようです。

弾頭の精密誘導技術のレベルや命中精度もわかりません。北朝鮮はミサイルが落下するまでをレーダーで追跡する能力をもっていません。到達高度や落下場所の位置は、米日韓からの情報に依拠しているのではないかと思われます。しかし、ミサイルや弾頭に搭載したセンサーからのテレメトリーデータで飛行の状況をそれなりに把握していると考えられます。金正恩委員長がモニター画面の前でガッツポーズしている画像では、画面に示されていた弾頭の航跡が消えています。テレメトリーデータが途絶した瞬間、すなわち飛行完了の瞬間を撮影したものかもしれません。

 

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火星15 のエンジンは最近、何度か燃焼試験が行われた模様です。今回、初の発射実験が成功しましが、ICBM としてはまだ開発段階であり、今後も試験発射は行われるでしょう。

金正恩体制になってからミサイル開発はスピードアップしているだけでなく、新しい系列のミサイルがいくつも登場しています。おそらく設計局システムがとられ、複数の設計局がそれぞれの系列のミサイル開発を競っていると考えられます。その中でも、固体燃料のICBM とされる火星13 や、同じく固体燃料のSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の北極星3 も、遠くない将来、発射実験が行われると推測されます。北朝鮮のミサイル開発が、世界の平和と安全にとって重大な脅威となっていることは間違いありません。


火星15:北朝鮮の新しいICBM(1)

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Hwasong 15North Korea’s brand new ICBM

 

 北朝鮮が発表した写真と映像から、火星15 について分かることをまとめてみました。

 

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北朝鮮が1129日に発射した火星15は新型のICBM(大陸間弾道ミサイル)と考えられています。上は発射準備中の画像で、火星15 の背後には東の空から上ってきたオリオン座が輝き、その左にはシリウスがひときわ明るい光を放っています。

 

火星15 はロフテッド軌道で高度4400km 以上に達し、発射場所の平城付近から約1000km離れた青森県西方約250km の排他的経済水域(EEZ)内に落下しました。これをミニマムエナジーの角度で発射した場合、飛距離は13000km に達するとみられています。アメリカ本土全域に到達可能となります。

 

火星15 2段式の液体燃料ミサイルで、直径は約2.5m、全長は約21m とみられます。火星14 より全長は約2m 長く、第1段の直径も太くなっています。また、火星15 の第2段の直径は第1段と同じです。アメリカ本土のいかなる場所も核攻撃できる飛距離を得るため、後述するように第1段のエンジンが強化され、推進剤タンクも大きくなっています。第2段もかなり増強されていると考えられます。

 

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火星15が新型のミサイルであることは、胴体に描かれたシリアル番号からもわかります。2017514日に打ち上げられた火星12 のシルアル番号は「11831551」、829日に打ち上げられて北海道上空を通過した火星12 のシリアル番号は「11831851」、74日に打ち上げられた火星14 のシリアル番号は「36311771」でした。北朝鮮のシリアル番号のルールはわかりませんが、おそらく「1183」が火星12、「3631」が火星14 を示すと考えられます。火星15 は「11111701」でしたので、「1111」が火星15 を示し、「1701」はその最初の機体と考えられます。北朝鮮にとってまさに”brand new” のミサイルといえます。

 

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発射準備および上昇中の画像からは、火星15 の第1段には2基のエンジンがあることがわかります。

 

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火星14 の第1段は旧ソ連時代に開発されたRD250 エンジンを1基搭載しています。R250 エンジンはソ連のICBM であるR36R36 シリーズの初期タイプ)に使われていたエンジンで、2基が対になってRD251 というエンジンになり、R36 はこのRD251 3基(すなわちRD250 6基)使われていました。R36 の発射時総重量は約1800t とされていますので、RD250 1基用いて発射可能な重量は3040t と考えられます。これはすでに火星14 の重量くらいですから、火星14 には今後の伸びしろ(飛行距離の増大、弾頭重量の増加)はあまりないと考えられます。火星14 は飛距離1km程度(弾頭の重量によってはそれ以下)のICBM という位置づけになるのではないでしょうか。すなわち火星14でアメリカ東海岸を攻撃するのは無理ということになります。

 

そこで火星15 は第1段にメインエンジン2基を搭載しました。RD250 2基採用したのか、RD251 を改良したのか、あるいは別のエンジンなのか、今のところ明らかではありません。しかしながら、同じエンジンを用いて、2つのタイプの弾道ミサイルを同時開発することは合理的とは考えられず、何らかの方法でRD250 とは別系統のエンジンの技術を入手したのではないかと思われます。

 

火星14 の第1段には、RD250 の他に、姿勢制御のために4基の小型エンジンが用いられていました。しかし火星15 ではこうした小型エンジンは見られず、姿勢制御にはメインエンジンの噴射方向を変えるジンバル機構が採用されているとみられます。この機構はRD250 にはなく、北朝鮮が新たなエンジン技術を手に入れている証拠です。

 

火星15 の第2段に関しては、火星14 と同様、ほとんどわかっていません。火星14 のエンジンは2基、火星15 ではそれが4基になったという見方もあります。

 

ICBM では弾頭基部に、弾頭を分離する前に再突入の軌道を調節するPBS(ポストブーストステージ)が必要です。北朝鮮がこの技術をマスターしているかどうかは分かりませんが、何らかの開発はしているとみられます。ただし、火星15 の弾頭基部にはアクセスパネルとみられる個所が左右に2か所見られますが、推進剤注入口らしきものは見られません。

 

火星15 TEL(輸送起立発射機)は北朝鮮が自国の技術で製造したものとされ、918輪という世界でも例のない大型のものです。火星14 の発射では816輪のTEL が用いられていました。この車両は2012年の軍事パレードに登場した際、中国の大型トラックを「民生用」と偽って輸入し、TEL に改造したものであることが明らかになっています。火星15 の全長が長くなり、重量が増したことから、16輪のTEL では運搬できず、新たなTEL が必要になったわけです。

 

また、火星15 を垂直に立てる際にも、これまでの16輪のTEL では重量のバランスをとることができないことは、起立させている様子から明らかです。18輪のTEL でも車両前部は浮いています。火星15 はかなりの重量があるため、ミサイルを起立させるための油圧システムもパワー不足だったかもしれません。

 

火星14 と同様に、火星15 を起立させるためには、TEL をコンクリート舗装面の端に止め、発射機を一段低くなった場所に設置します。下の画像を見ると、発射機の下に何本もの材木を挿入して水平をとっています。これは実戦では考えられないことで、この超大型TEL による火星15 の発射システムはまだ開発途上のようです。

 

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火星15 が垂直に固定されると、車両は発射機から離れ、発射が行われました。

 

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映像から計測したところ、第1段の燃焼時間は28秒ほどでした。


マーズ2020:NASAの次期火星ローバー・ミッション

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Mars 2020:NASA’s Next Mars Rover Mission

NASA は2020年夏に火星ローバー「マーズ2020」を打ち上げます。

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マーズ2020は2021年2月に火星に到着します。このミッションの大きな目的は、生命の痕跡を調査することにあります。また火星の気候や地質の調査、将来の有人火星探査にそなえた実験も行います。

マーズ2020のアームの先端には火星の土壌や岩石を採取する装置があり、30〜40か所でサンプル採取を実施します。このサンプルは将来のサンプルリターン・ミッションで地球に持ち帰るため、火星上に保管されます。


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マーズ2020のサイズは全長3m、幅2.7m、高さ2.2m。重量は約1t あるため、火星着陸にはキュリオシティと同じくスカイクレーンが使われます。

 

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着陸目標地点により正確に着陸するため、火星表面への降下の際には、火星表面の地形を認識し、自分のもっている火星地形図と参照して位置を把握するシステムが採用されます。

 

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着陸場所は3か所に絞られています。
コロンビアヒル:ここにはスピリットが発見した温泉があります。
ジェゼロ・クレーター:このクレーターには35億年以上前に大量の水が流れこみ、湖になりました。その後、水は失われましたが、もう1度、水におおわれたと考えられています。
シルチス北東部:過去の火山活動によって表面の氷が融け、地中の氷が熱水になって噴きだした時代があったと考えられています。熱水と岩石の相互作用があった場所で、生命が発生した可能性があります。

マーズ2020には以下のような科学観測機器が搭載されます。
マストカムZ:高解像度の静止画と動画を撮影できるメインカメラで、パノラマ、ズーム、ステレオ撮影も可能です。
SUPERCAM:レーザーで土壌や岩石に含まれる化学物質の組成を調べ、有機物を探します。PIXL:岩石に残されている微細な生命の痕跡をX線で観測します。
SHERLOC:有機物や生命の存在に関係する化学物質をレーザーで探します。
RIMFAX:地下10mまでを調べることのできる地中レーダーで、地下の水や氷の存在を調べます。
MOXIE:二酸化炭素から酸素を製造する実験を行います。酸素は将来の有人ミッションの際に、呼吸および推進剤用に必要になります。


1I/2017 U1:人類がはじめて遭遇した太陽系外小惑星

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1I/2017 U1:First Interstellar Asteroid

太陽系外からやってきた小惑星オウムアムア(1I/2017 U1)は、長さ約400m の非常に細長い形をしていました。ESO(ヨーロッパ南天天文台)が発表した想像イラストは、まるで異世界からやってきた巨大な葉巻型宇宙船のようです。

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人類が遭遇したはじめての太陽系外小惑星オウムアムアは、10月19日にハワイ大学のPan-STARRS1望遠鏡で発見されました。Pan-STARRS1 は地球近傍小天体を監視するために設置された望遠鏡です。ハワイ大学のチームは数日間軌道を追跡し、その軌道からこの天体が太陽系外起源でありことを確認し、10月25日に発見を発表しました。オウムアムアはハワイの言葉で「遠くからやってきた初めての使者」を意味しています。

オウムアムアは最初、彗星と考えられていました。これには理由があります。太陽系外縁部には、氷とちりを成分とする無数の小天体が存在していると考えられ、「オールトの雲」とよばれています。オールトの雲にある天体が重力で乱され、太陽に接近する軌道をとるようになったものが彗星です。一方、小惑星のような岩石型小天体は、太陽系の内側の領域で形成されます。したがって、太陽系外からやってくる小天体があるとすれば、それは彗星であろうと、科学者は考えていたのです。しかしながら、オウムアムアは太陽に接近してもコマが広がったり、尾が伸びたりしなかったことから、岩石型の天体と考えられました。

下の画像は、南米チリにあるESO の大型望遠鏡VLTの観測結果に、ジェミニ南望遠鏡などその他の望遠鏡の観測結果を重ね合わせたもので、丸印内がオウムアムアです。かすかな光の点ではありますが、ダストなどが取り巻いている形跡はありません。


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オウムアムアは7.3時間で1回回転しており、成分は岩石で、金属も含まれているかもしれません。水や氷は存在しません。表面は暗く、赤みを帯びています。これは長い間、宇宙放射線にさらされたためとみられています。

オウムアムアは何百万年あるいは何千万年もの間、宇宙を旅してきました。はるか昔、はるか彼方の惑星系で、この天体はいかにして形成されたのでしょうか。私たちの太陽系には、これほど細長い形をした小惑星は存在しません。いったい、どのような衝突過程によって、このような形の小惑星が形成されるのでしょう。さらに、この小惑星が母星の重力を振り切って宇宙空間に放り出された時、いったいどのような異変が起こったのでしょうか。

オウムアムアはこと座のベガの方向からやってきました。太陽系の惑星が公転する黄道面に対して、北の方向からかなりの角度で太陽に接近してきたことになります。その速度は秒速26.3km でした。9月9日に太陽に最接近した際には秒速87.4km に達したことがわかりました。このとき、オウムアムアは水星の軌道の内側に入っていましたから、広大な宇宙空間の中で驚くべき超接近遭遇といえます。オウムアムアは太陽の重力で軌道を曲げられ、10月14日に地球の軌道の下を通過、11月1日には火星の軌道の上を通過しました。

 

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オウムアムアは2018年5月に木星の軌道の上を通過し、2019年1月に土星の軌道の上を通過します。そして2022年には海王星の軌道の上を通過し、ペガスス座の方向に去っていきます。

太陽系外起源の天体は平均して1年に1個はやってきていると、科学者は考えています。地球に接近する小天体の監視体制が整っていなかったため、これまでは観測されませんでしたが、今後は次々と発見される可能性があります。



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