NASAのアルテミス計画:2024年の有人月着陸を目指す

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    ArtemisSending American Astronauts to Moon in 2024

     

    2024年の有人月着陸を目指すNASAのアルテミス計画が始動しました。

     

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    NASAはかねてから有人月着陸用の宇宙船「オライオン」と巨大ロケットSLSを開発してきました。さらに国際宇宙ステーション(ISS)計画のパートナー国が建設する月周回ステーション「ゲートウェイ」を月着陸の拠点とすると発表していました。

     

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    NASAはこれまで2028年の有人月着陸を目指していました。以下がそのスケジュールです。

    2020

    EM-1Exploration Mission-1):SLSとオライオン宇宙船による最初の飛行。無人の月周回ミッション。

    2022

    EM-2Exploration Mission-2):SLSとオライオン宇宙船による2回目の飛行。オライオン宇宙船に宇宙飛行士が搭乗し、月を周回する。

    ゲートウェイ組み立て開始。最初のエレメント「電気推進エレメント」を打ち上げ。

    2023

    月面無人探査ローバーによる月探査。特に水の存在を探る。

    2024

    EM-3Exploration Mission-3):SLSとオライオン宇宙船による3回目の飛行。ゲートウェイへ宇宙飛行士を運ぶ最初のミッションとなる。

    有人月着陸技術の試験。

    2026

    ゲートウェイ組み立てフェイズ完了。月面着陸に向けた次のフェイズに移行。

    有人月着陸の無人試験。

    2028

    有人月着陸。アポロ計画以来、人類は再び月に戻る。

     

    ところが今年の326日、ペンス副大統領はNASAのマーシャル・スペース・フライト・センターで行われた国家宇宙会議での演説で、「アメリカは5年以内にアメリカの宇宙飛行士を月に着陸させる」と述べました。すなわち、2024年の有人月着陸がアメリカの国家目標となったのです。

     

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    NASAはこれを受けて、有人月着陸計画を「アルテミス計画」と命名、2024年のターゲットに向け新たなスケジュールを発表しました。大きな変更点は、2024年に予定されていたEM-3(ゲートウェイまでの有人飛行)を有人月着陸ミッションとする。⇒人月着陸にゲートウェイは必須。そのため、ゲートウェイの組み立てを2つのフェイズに分け、2024年にはミニマムの構成を完成させる、というものです。

     

    なお、「アルテミス」はギリシア神話に登場する月の女神ですが、NASAではEM-1EM-2の名称としてすでに使われており、それぞれ”Artemis 1”および”Artemis 2”とよばれていました。

     

    2020

    アルテミス1SLSとオライオン宇宙船による無人月周回ミッション。

    2022

    ゲートウェイ組み立て開始。最初のエレメント「電気推進エレメント」を打ち上げ。

    アルテミス2:オライオン宇宙船に宇宙飛行士が搭乗し、月を周回する。

    2024

    ゲートウェイ組み立てのフェイズ1(ミニマムの構成)完了。

    アルテミス3:有人月着陸。

    2028

    ゲートウェイ組み立てのフェイズ2完了。ゲートウェイ完成。

    宇宙飛行士の軌道上での長期滞在と月面での継続的な活動が実現される。

     

    新たな目標を達成する上で大きな課題となったのが月着陸船です。

     

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    当初の計画では、NASAは時間をかけて月着陸技術を開発する予定でした。しかし、あらたな計画では、月着陸船をわずか5年間で開発・運用しなければならなくなりました。そこでNASA517日に、月着陸システムの詳細検討・プロトタイプ製作を行うアメリカ企業11社を選定しました。

     

    エアロジェット・ロケットダイン

    ブルーオリジン

    ボーイング

    ダイネティクス

    ロッキード・マーチン

    マステン・スペース・システムズ

    ノースロップ・グラマン

    オービットビヨンド

    シエラ・ネバダ

    スペースX

    スペース・システムズ/ロラール

     

    長い間宇宙にかかわってきた巨大企業と、ニュースペースの雄が名前を連ねています。アメリカの宇宙技術の実力が問われています。


    ペンス副大統領、2024年までに有人月着陸を表明

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      Pence Calls for Human Return to the Moon by 2024

       

      アメリカのペンス副大統領は326日にアラバマ州ハンツビルで行われた国家宇宙会議において、「アメリカは5年以内にアメリカ人宇宙飛行士を月に着陸させる」と述べました。

       

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      NASAが提唱していた月を周回する宇宙ステーション、「ゲートウェイ」の建設は今年の連邦予算で認められ、NASA2022年に最初のモジュールを打ち上げるべく動きはじめました。ゲートウェイはアメリカだけでなく、日本、ヨーロッパ、ロシア、カナダの国際パートナーが協力して建設することになっており、2026年に完成予定です。

       

      NASAはこれまで、2026年のゲートウェイ完成後、2028年に宇宙飛行士を月に着陸させることを目標にしていましたが、ペンス副大統領は「NASAはもっと急ぐべきである」と述べました。5年以内ということは、2024年までに有人月着陸を果たすことになります。

       

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      ペンス大統領がここまでNASAの計画を急がせる背景には、月を舞台にした中国との覇権争いがあります。中国は月の有人着陸を目指していることを表明しており、そのための超大型ロケット、長征9号を開発中です。しかし、月着陸を具体的な日程にのせるまでには至っておりません。そのような状況であるにもかかわらず、トランプ政権がここまでアグレッシブな政策をとるのは、「万が一にも中国に後れをとってはいけない」ということと、「中国が絶対に追いつけないだけの技術の差をつけたい」と考えているからです。特に後者は、アメリカの軍事技術開発戦略の根幹となっている考え方です。

       

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      かつて冷戦下のアメリカとソ連が月着陸競争を展開し、アポロ計画によってアメリカがこの競争に勝利してから、今年でちょうど50年です。まさにその年に、「宇宙強国」を標榜して宇宙の覇権を狙う中国に対し、アメリカは宇宙を舞台にした新たな競争を展開することを決意したわけです。月をめぐる米中競争の時代がはじまったことになります。

       


      月にともる火:ノーマン・メイラー、アポロ宇宙飛行士に会う

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        Of a Fire on the MoonNorman Mailer Meets Apollo Astronauts

         

        アポロ11号のクルー、ニール・アームストロング、バズ・オルドリン、マイケル・コリンズは打ち上げ11日前の196975日、ヒューストンで記者会見に臨みました。すでにアームストロングが月面に下りる最初の人間になることは公表されており、会場には多くの記者が集まりました。

         

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        ジェームズ・R・ハンセンのアームストロングの伝記”FIRST MAN”にも、この時の様子が描かれています。しかし、ハンセンはこの箇所で、アームストロングらが記者会見で語ったことそのものよりは、ノーマン・メイラーが『ライフ』誌に書き、その後『月にともる火』(Of a Fire on the Moon、山西英一訳、早川書房)に収録された文章について多くを割いています。実は、その記者会見の場に、『裸者と死者』、『なぜぼくらはヴェトナムへ行くのか?』、『夜の軍隊』などで知られた作家であるノーマン・メイラーがいたのです。

         

        『月にともる火』によると、メイラーは3本の映画制作のために莫大な借金ができてしまい、それを返すために、アポロ11号について書いてほしいという『ライフ』誌のオファーを受けたのでした。メイラーにとって、最初は金を稼ぐための仕事であったかもしれませんが、やがて、彼はこれが「恐ろしい、手ごわい仕事」であり、「半端仕事から解放してくれるような大きさの仕事になるだろう」と思うようになります。実際、『月にともる火』はアポロ11号について書かれた最良の本の1つとなりました。それは単なる事実の記録ではなく、戦争や環境破壊の黙示録的世紀において、人類が月にいくことがどのような意味を持つのかを突き詰めて考えた書物ということができます。

         

        75日の記者会見は、取材を始めたメイラーが初めて宇宙飛行士が語る言葉を聞いた日であり、『月にともる火』では第1部第2章「宇宙飛行士たちの心理」がそれにあてられています。さすがにハンセンはこの章が『月にともる火』で重要な位置を占めていることを知っており、メイラーがこの記者会見で宇宙飛行士の言葉をどのように受け止めたのかを紹介しているのです。

         

        記者会見ではまずアームストロングが、言葉を選びながら、慎重に話を進めました。ところがこれが、メイラーにはアームストロングが緊張して固くなっていると感じられたようです。この点について、ハンセンはアームストロングが公式の場ではそのような話し方をすることをメイラーは知らなかったのだろうと書いています。ただし、メイラーはアームストロングに最初から何か特別なものを感じていました。「アームストロングは全くほかの人間とは違っていた」と、メイラーは書いています。「かれは明らかに、他のものが弾じてみようと考えてもみない、宇宙の中のある弦と霊的共感していた」。

         

        一方、理路整然とよどみなく話すオルドリンについては、メイラーは「トラクターみたいに頼りになる」逞しい肉体の男で、「激しく動くドリルのように話した」と書いています。またコリンズについては、「気楽」で「冷静」で、「パーティで会えば、ほとんどだれでもみんな喜ぶような男だった」としています。

         

        この日の記者会見は取材者側をグループ分けして何度も行われ、記者たちの質問がえんえんと続きます。メイラーは記者たちが「個人的告白をさせ、感情を打ち明けさせ、どうしようもない不安をみとめさせようと、どこまでも追いつづけた」と書いています。しかし3人の答はどれもNASA流の優等生的なもので、オルドリンとコリンズがいくらかの個人的なエピソードをまじえるだけでした。

         

        こうしたやりとりを聞きながら、メイラーはやがて、月に行くなどというこれまで誰もしたことのない任務を担う宇宙飛行士とはどのような人間なのかを考えはじめ、「宇宙飛行士たちの心理」を理解するためには、何か新しいものが必要だと気付くのです。「かれらこそは古い人間の最後であるか、それとも新しい人間の最初であって、新しい心理学の輪郭がひかれるまでは、かれらを測る尺度は何一つないからである」とメイラーは書いています。

         

        「かれらこそは古い人間の最後であるか、それとも新しい人間の最初であって」という箇所は、ひどく私の印象に残りました。ハンセンも同様だったらしく、やはりこの箇所を紹介しています。

         

        映画『ファースト・マン』にも7月5日の記者会見のシーンはでてきますが、残念ながらメイラーやハンセンのような宇宙飛行士についての深い考察はありませんでした。

         

        宇宙飛行士は古い人間の最後なのか? それとも新しい人間の最初なのか? 私は世界の宇宙開発の進展を見ながら、いつもそれを考え続けてきました。私の考えでは、かつて海に生きていた生物が陸上への進出を果たすために数知れない挑戦をしたように、今の宇宙開発はまだ挑戦の時代であり、宇宙飛行士は今後もしばらくの間は古い人間の代表として宇宙へ向うでしょう。しかし同時に、宇宙飛行士たちの考え方や行動規範は、来るべき新しい時代の人間の原型になる要素をもっているのではないかと考えています。その意味では、宇宙飛行士は新しい人間の最初なのでしょう。



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