ソユーズ・ロケット第1段の分離システム

0

    Booster Separation of the Soyuz Rocket

     

    ソユーズMS-10の打ち上げ失敗は、第1段切り離しの際に、第1段の4本のブースターのうちの1本がうまく分離せず、第2段に衝突したことが原因とみられています。第1段のブースターは下の画像のようにコア・ロケット(第2段)にとりつけられています。

     

    20181017_05.jpg

     

    以下はソユーズ第1段分離の際の地上からの映像です。

     

    20181017_06.jpg

     

    左は以前の打ち上げで、分離の様子がわかるように夜間打ち上げの映像から選びました。5つの光の点のうち、中心が第2段エンジンの光、その周囲が分離直後の第1段エンジンの光です。分離したロケットが点対称にきれいに広がっています。右は今回の分離の際の映像で、第2段分離の様子が明らかにおかしいことが分かります。

     

    1段のブースターは2か所で第2段と結合しています。ブースターの下部では2本のストラット(支柱)で第2段と結合しており、分離の際には火薬で切り離すようになっています。

     

    ブースターの先端部は下の画像のようにボールジョイントになっています。

     

    20181017_09.jpg

     

    この先端部は下の画像のように、第2段の出っぱりに挿入されています。ブースターが燃焼中、その推力はこの箇所から第2段に伝えられます。先端部の少し下の内側には、先端部を分離させるために圧搾酸素を噴射するベントバルブがあります。

     

    20181017_10.jpg

     

    ブースターが分離される際には、まずブースター下部のストラットが分離されます。

     

    20181017_07.jpg

     

    その後、先端部のベントバルブが作動して、ブースターは切り離されます。

     

    20181017_08.jpg

     

    20181017_08b.jpg

     

    今回は4本のブースターのうちの1本のベントバルブが作動しなかった可能性があります。そのため、不具合の起こったブースターが第2段を破損させてしまったのではないでしょうか。


    ソユーズ宇宙船打ち上げ時の緊急脱出システム

    0

      Launch Escape System of the Soyuz Spacecraft

       

      ソユーズMS-10の打ち上げ失敗は、打ち上げ26秒後に行われる第1段切り離しの際に、第1段の4本のブースターのうちの1本がうまく分離せず、第2段に衝突したことが原因とみられています。そのため第2段の推力が低下して軌道投入が不可能となったため、アボート(打ち上げ中断・緊急帰還)となりました。

       

      20181011_01.jpg

       

      ソユーズ宇宙船を収めたフェアリングの先端には緊急脱出用のエスケープタワーが設置されていますが、エスケープタワーは第1段分離の2秒前に切り離されます。したがって今回の緊急脱出にエスケープタワーを使うことはできませんでした。その代わりに、フェアリングの4基の緊急脱出用のロケットが作動しました。フェアリングが分離されるのは第1段切り離しの40秒後です。ソユーズ・ロケットはエスケープタワー分離後の40秒間はフェアリングのロケットで脱出できるように設計されているのです。

       

      下の画像はソユーズ・ロケット組み立て時のもので、ソユーズ宇宙船を収納したフェアリングの先端にエスケープタワーがあります。フェアリングにはこれとは別に緊急脱出用ロケットがついているのが分かります。

       

      20181017_02.jpg

       

      アボートのコマンドが作動し、ソユーズMS-10の軌道モジュールとクルーが乗った帰還モジュールは、フェアリングに収納されたまま第3段ロケットから切り離されました。機器・推進モジュールは第3段についたままです。第3段から十分に離れたところで、帰還モジュールだけがフェアリングから切り離され、弾道軌道で地球に帰還したのです。

       

      ソユーズ・ロケットのエスケープタワーが緊急脱出に使われたことは1度だけあります。19839月のことです。ウラジーミル・チトフとゲンナジー・ストレカロフの乗ったソユーズT10の発射1分前、燃料が漏れだして発射台の基部で火災が発生し、ロケットは炎に包まれました。

       

      20181017_03.jpg

       

      エスケープタワーの緊急脱出システムが作動し、2人の乗ったソユーズ宇宙船の帰還モジュールと軌道モジュールは機器・推進モジュールから切り離され、フェアリングごと急上昇しました。このとき、クルーには20G以上の加速度がかかったといわれています。

       

      20181017_04.jpg

       

      その直後、発射台で大爆発が起こりました。高度約1km4枚の空力安定フィンが開いて速度が落ち、続いてフェアリングが外れ、帰還モジュールが軌道モジュールから分離され、パラシュートが開きました。チトフとストレカロフは発射地点から4kmほど離れた地点に無事着地しました。ソユーズT1019842月に改めて打ち上げられ、チトフとストレカロフの飛行は現在ではソユーズT10-1とよばれています。

       

      ソユーズの打ち上げ途中でアボートとなったことも、これまで1度あります。19754月のワシリー・ラザレフとオレグ・マカロフが搭乗したソユーズ18(現在ではソユーズ18-1とよばれている)です。このときは第2段と第3段の切り離しが完全ではありませんでした。そのため、第3段エンジンの点火4秒後にソユーズ宇宙船は第3段から緊急分離されました。このときはすでにフェアリングは外されていました。通常の地球帰還時と同じように、ソユーズの帰還モジュールは軌道モジュールと機器・推進モジュールから切り離され、弾道軌道で降下。シベリア山中に着地しました。

       

      以上のようにソユーズ宇宙船が打ち上げの際に緊急帰還したことは、これまで3度あります。それぞれのケースで、ソユーズの異なる緊急脱出モードが作動し、クルーは無事帰還しています。


      ソユーズMS-10緊急帰還:国際宇宙ステーションが無人になる可能性も

      0

        Soyuz MS-10 Launch FailureThe ISS will become Unmanned

         

        1011日のソユーズMS-10 の打ち上げ緊急中断により、最悪の場合、国際宇宙ステーション(ISS)は無人になる可能性もあります。

         

         20181012_01.jpg

         

        ソユーズMS-10は打ち上げ約2分後にロケットに問題が生じ、搭乗していたロシアのアレクセイ・オブチニン宇宙飛行士とNASAのニック・ヘイグ宇宙飛行士は緊急帰還しました。ソユーズロケットとソユーズ宇宙船には、打ち上げ時に異常が発生した際の飛行中止・緊急帰還の対応策がいくつも設定されています。今回もそうした安全システムが的確に作動し、1975年以来となる打ち上げ直後の緊急帰還に成功しました。打ち上げから34分後にカプセルが緊急着陸した場所にはすぐに回収チームが到着し、クルーはすぐに救援されました。

         

        ロケットの打ち上げは100%の成功が保証されているわけではありません。緊急事態発生に対応するロシアのシステムの手際の良さは、ロシアの有人ロケット打ち上げの信頼性の高さを示すものでもありますが、一方、いくつかの心配も生起されています。

         

        1つは、ISSが無人になる可能性です。

         

        現在ISSには、第56/57次長期滞在クルーの3名の宇宙飛行士が滞在しています。ESAのアレクサンダー・ゲルスト宇宙飛行士、ロシアのセルゲイ・プロコピエフ宇宙飛行士、NASAのセリーナ・オナン・チャンセラー宇宙飛行士です。第55/56長期滞在クルーは地球に帰還したところであり、代わりに第57/58次長期滞在クルーの2名がISSに到着するはずでした。ソユーズ宇宙船の性能保証日数は約200日であり、今年の611日にISSに到着した第56/57次長期滞在クルーは12月に帰還しなければなりません。帰還を多少先に延ばすことは可能ですが、ソユーズ宇宙船の耐用日数のほか、帰還地であるカザフスタンの真冬の気候は非常に厳しいため、気象条件の面でも帰還のリスクが高くなります。

         

        ISSへクルーを輸送する手段は、現在ソユーズ宇宙船しかありません。NASAが進めている民間の宇宙船によるISSクルーの輸送計画は最終段階に入っていますが、ボーイング社、スペースX社とも、ISSへの人員輸送サービスを開始するのは2019年第2四半期になる模様です。したがって、もしも今回の打ち上げ失敗の原因調査の結果、ソユーズロケットの打ち上げ再開に時間がかかることになれば、ISSは無人となってしまいます。

         

        2つ目は、ロシアの宇宙開発体制に対する不安です。

         

        ロシアの有人宇宙開発は長い歴史をもち、非常に信頼性の高い技術を持っています。しかしながら、長期にわたる予算不足などにより、新しい計画への取り組みの遅れや現場での士気の低下が進んでいます。829日にISSで空気漏れが発生しましたが、原因はドッキングしているソユーズ宇宙船に小さな穴が空いていたためでした。ロシア側は、この穴はソユーズ宇宙船製造時に宇宙船内部からドリルによって空けられており、工場での「サボタージュ」によるものとしています。空気漏れの原因となった穴は緊急処置でふさがれていますが、宇宙船の外側がどうなっているかは分からず、近く船外活動によって確認する予定でした。今回の打ち上げ失敗は、この船外活動にも影響を与えることになると思われます。

         

        ISSの安全な運用や今後の月周回宇宙ステーションの建設に、ロシアは大きな役割を果たすことが期待されています。しかし、ロシアの宇宙開発は構造的問題を抱えているのが実情です。



        calendar

        S M T W T F S
              1
        2345678
        9101112131415
        16171819202122
        23242526272829
        3031     
        << December 2018 >>

        selected entries

        categories

        archives

        links

        profile

        書いた記事数:82 最後に更新した日:2018/12/09

        search this site.

        others

        mobile

        qrcode

        powered

        無料ブログ作成サービス JUGEM