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ワンウェブ社の小型衛星コンステレーション計画:日本の宇宙政策は世界に取り残される?
宇宙基本計画工程表(平成28年度改訂)」の策定に向けた意見募集が行われています。この意見募集は平成27年度改訂の工程表の構成にそって行われるものです。工程表を見ていると、日本の宇宙政策には長期的なビジョンが欠落しており、このままでは世界の宇宙開発の大きなうねりから取り残されてしまうのではないかと心配になります。世界の宇宙開発は驚くほどのスピードで動いており、2020年の東京オリンピックの頃には、その様相がまったくことなっているかもしれません。

世界の宇宙開発がダイナミックに動いていることを示す例の1つが、ワンウェブ社による低軌道小型衛星コンステレーション計画です。ワンウェブ社の計画では、高度1200km の20の軌道面に648機の小型衛星を打ち上げ、全地球をおおうインターネット網を構築します。

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ワンウェブ社の計画でまず注目すべきは、そのスピード感です。この構想が外部に向けて明らかになったのは2015年1月のことでした。2017年には早くも打ち上げがはじまり、2019〜20年にはサービス開始の予定です。また、ベンチャー企業の構想に巨大企業が投資し、宇宙ビジネスのメインストリームの企業がパートナーとして参加していることにも注目すべきです。

ワンウェブ社の創設者グレッグ・ワイラーは、2007年にO3bネットワークス社を設立し、12個の衛星で低緯度地域にインターネット通信サービスを提供する事業を立ち上げました。その後、O3b はグーグル傘下に入りましたが、ワイラーは2014年にグーグルを離れ、ワンウェブ社の前身であるワールドビュー・サテライツ社で現在の事業をスタートさせました。構想自体は彼がグーグル時代に考えていたものです。

ワンウェブ社に投資している主な企業には、ヴァージン・ギャラクティックの事業を進めるヴァージン・グループ、チップメーカーのクアルコム、コカコーラ、メキシコの通信サービス会社トータルプレイ、インド最大の通信事業を展開するバーティ・エンタープライズなどがあります。また、ヨーロッパを代表する宇宙企業エアバス・ディフェンス&スペース社、静止軌道での衛星通信サービスを行っているインテルサット社、地上インフラを提供するヒューズ・ネットワークシステム、衛星打ち上げサービスを行っているアリアンスペースなどがパートナーとなっています。

現在、ワンウェブ社の経営陣には、ワイラーと共同創設者のオハド・フィンケルスタインの他、ヴァージン・グループ創設者のリチャード・ブランソン、クアルコム前CEO で現会長のポール・ジェイコブズ、バーティ・エンタープライズの創設者スニル・バーティ・ミタル、エアバス・グループCEO のトーマス・エンダースが名をつらねています。

ワンウェブ社はスペア分もふくめ、合計900機の小型衛星を製造することにしています。衛星の重量は約150kg です。この衛星の開発・製造を請け負っているのが、エアバス・ディフェンス&スペース社です。最初の衛星10機は同社のツールーズの工場で製造されますが、ワンウェブ社はエアバス社と共同で2017年にはケネディ宇宙センター近くに工場を完成させ、1週間に15機以上のペースで衛星を製造することにしています。工場の誘致には、フロリダでの宇宙産業の振興を推進しているスペース・フロリダが動きました。ワンウェブ社の工場近くにはブルーオリジン社のロケット工場、ロッキード・マーチン社のオライオン宇宙船組立工場、ボーイング社の宇宙船スターライナー(CST-100)の組立工場、シエラネバダ社の宇宙船ドリームチェイサーの組立工場などがあります。

衛星の打ち上げを担当するのはアリアンスペース社です。打ち上げにはソユーズロケットが使われます。発射場はギアナ、バイコヌール、プレセツク、そして最近スタートしたボストーチヌイが使われます。1回の打ち上げで32〜36機を軌道投入する予定です。また、アリアンスペースが現在開発中のアリアン6型、そしてヴァージン・アトランティックの空中発射システム「ローンチャーワン」も使われます。

衛星の運用を行うのはインテルサット社です。同社は静止軌道に大型の通信衛星を打ち上げでサービスを行う事業を展開していますが、今回、ワンウェブ社の事業にも参加することになりました。同社が保有している地上の施設も使われます。同社の狙いの1つは、北極域での通信サービスにあると思われます。地球温暖化の影響で北極海の氷は減少しており、夏季には大西洋と太平洋を結ぶいわゆる「北西航路」が開けます。北極海での資源開発も盛んになると予想され、この地域での通信需要は急増するとみられますが、静止軌道上の衛星はこれが苦手でした。それ以外の地域でも、低軌道小型衛星によるサービスとの連携は、同社の事業に広がりをもたせることになります。

小型衛星のコンステレーションによる通信サービスは、かつてマイクロソフト社のビル・ゲイツも考えていました。またFacebook のマーク・ザッカーバーグも考えていたといわれます。しばらく前には、こうした構想を実現する技術基盤は不十分だったのですが、現在は技術の急激な発展でそれが可能になっています。

ワイラーはグーグルにいた頃、この計画をスペースX社のイーロン・マスクと話をしていました。しかし、その後2人はたもとを分かちました。マスクは現在、4000機の衛星によるコンステレーション計画を発表しています。

ワンウェブ社やマスクのコンステレーション構想が外部に向けて明らかになる直前の2014年11月には、スペースX社を含む「半ダース」ほどの企業がコンステレーションのための周波数をITU(国際電気通信連合)に申請するという出来事があり、「衛星インターネットのゴールドラッシュ」といわれました。なお、ワンウェブ社はすでに周波数を取得しており、他社にくらべて優位に立っています。

小型衛星のコンステレーションによるインターネット・アクセスサービスは世界の衛星通信市場に革命をもたらす可能性があります。それほど遠くない将来、低軌道にはワンウェブ社やスペースX社など複数の企業による低軌道小型衛星のコンステレーションが、何層も地球を包み、宇宙通信の新しいインフラとしてその地位を確立するかもしれません。低軌道の小型衛星は、静止軌道上の通信衛星にくらべて、極地域も含め世界中のどの地域にもサービス可能でデジタル・デバイドを解消できる、安価にサービスを提供できる、信号の遅延時間が数十ミリ秒しかない(静止衛星では0.3秒程度)、衛星全損のリスクがない、などの特長があります。

グーグルやザッカーバーグは小型衛星ではなく、無人機やドローン、成層圏気球などによって同様のインターネット・アクセスを実現する研究開発を続けています。

平成27年度改訂の工程表に載っている「技術試験衛星」は、日本の衛星メーカーにとって次世代の通信衛星技術を獲得する上で非常に重要な存在です。工程表には「10年先の通信・放送衛星の市場や技術の動向を予測しつつ、世界最先端のミッション技術や衛星バス技術等を獲得することにより、関連する宇宙産業や科学技術基盤の維持・強化を図る」と書かれています。しかし、ここに書かれている「10年先の通信・放送衛星の市場や技術の動向」の検討に、小型衛星のコンステレーションは含まれているのでしょうか?

2015年5月18日の宇宙政策委員会宇宙民生利用部会では、以下のような質疑応答が議事要旨に掲載されています。

「米国では多数の小型通信衛星を打ち上げた衛星インターネットが話題になっているが、この背景は何か」
「米国内ではブロードバンド環境が十分ではないところもあることから、そのような地域向けのサービスを念頭に置くとともに、米国内だけでなく、途上国のマーケット獲得を狙っていると考えられる」

もう少し詳しい議論はあったかもしれませんが、「要旨」がこれであるということは、この程度の認識であったということでしょう。工程表には技術試験衛星の開発により、「2020年代後半から、我が国衛星メーカーが国際市場(年間20機程度)で1割を獲得すると期待されます。(現状の4倍)」と書かれていますが、大型の通信衛星はすでに成熟した産業で、欧米には多くの強豪メーカーがあります。その中での市場参入はかなり大変なことである上に、「10年先」には世界の衛星通信市場自体が様変わりをしてしまう可能性さえあります。

日本の宇宙政策には、長期におよぶ視点と、めまぐるしく動く世界の動向に対応したスピード感の両方が望まれます。
小惑星ベヌーが地球に衝突?
Asteroid Bennu could hit the Earth?

小惑星ベヌーが地球に衝突するというニュースがネット上で流れているようです。ベヌーはNASA が9月8日に打ち上げる小惑星探査機「オシリス・レックス」の目的地です。

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ベヌーは地球に接近する軌道をもつアポロ群の小惑星で、NASA のリストでは2175年から2199年の間に地球に衝突する可能性がある小惑星とされています。もちろんその可能性は非常に低く、確率は3万7000分の1です。

ベヌーは2135年に地球と月の軌道の間を通ると予想されています。ネットに流れている話によると、この際、ベヌーの軌道が変更されて、将来地球に衝突する軌道に入るとされています。この説の根拠として、オシリス・レックスのPI(主任研究者)であるアリゾナ大学月惑星研究所のダンテ・ローレッタさんのコメントが言及されていますが、「2135年の接近の際にベヌーの軌道がどう変わるかわからない」という主旨の発言が曲解されて広まっているようです。

小惑星が地球に衝突するという話は、ネット上でくり返し登場しますが、少なくとも現時点で、地球に深刻な事態を生じさせることが間違いないとされる天体はありません。それよりは「はやぶさ2」やオシリス・レックスの小惑星探査の成果に期待しましょう。
NASA長官、「きぼう」について語る
Kibo:Our Shared Destiny Will Be Written by Us, Not for Us

NASA のチャールズ・ボールデン長官が、自身のブログで先日の日本訪問について書いています。

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このブログでボールデン長官は、日本政府の高官と宇宙探査に関して話し合い、JAXA を訪問したと述べ、「NASA とJAXA の関係は、世界で最も緊密で広範囲にわたり、かつ最も長く続いている2国間協力の1つ」であるとしています。そのシンボルといえるのが、国際宇宙ステーション(ISS)計画における両国のパートナーシップです。

ボールデン長官はISS の日本実験棟の名前である「きぼう」(Hope)という言葉は、現在ISS で行われている研究や協力関係を非常によく説明していると書いています。そして、オバマ大統領の以下の言葉を引用しています。

「希望とは、誰かがつくってくれるものではなく、私たちによってつくられるものである。世界が今のままでいいと甘んじることのない、世界をあるべき姿につくり変える勇気をもった人たちによって」。

これは、ボールデン長官が筑波宇宙センターの「きぼう」運用管制室の前で私たちに語った言葉でもあります。その際には、この言葉の前段にあたる部分も含まれていました。

「希望とはただ楽観的になることではない。やらなければいけないたくさんの仕事や行く手に立ちふさがるものを無視することでもない。希望とは私たちの内にあり、それを追求し、それのためにはたらく勇気をもてば、より良いことが待っていると語りかけている」。

ISS とはまさに、人類が希望をもって未来に挑戦している場所であるといえます。
NASA長官が筑波宇宙センターを訪問
NASA Administrator Charles Bolden visits Tsukuba Space Center

8月5日、NASA のチャールズ・ボールデン長官がJAXA の筑波宇宙センターを訪問しました。

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ボールデン長官はちょうど改修が終わったばかりの「きぼう」日本実験棟の運用管制室(MCR:ミッション・コントロール・ルーム)を視察しました。「きぼう」日本実験棟の運用は、この部屋で行われます。大型のスクリーンには、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在中の大西卓哉宇宙飛行士からのメッセージも流されました。

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ボールデン長官は、「きぼう」での実験について、宇宙ばかりでなく地上の生活にも役立つ成果をあげつつあることを強調しました。また、ISSでの活動は、日本にとって将来の宇宙探査活動の礎になるとも語りました。

同長官は日本とアメリカの50年間以上におよぶ長い同盟関係にもふれ、宇宙に分野において、今後も日本がアジアのリーダーであることを希望すると語りました。
『シン・ゴジラ』:エヴァのいない東京
Shin Godzilla:Hideaki Anno’s new movie

『シン・ゴジラ』を観てきました。ゴジラ・シリーズの第一作『ゴジラ』(1954年)以降、最も見ごたえのあるゴジラ映画といえるでしょう。TV版『新世紀エヴァンゲリオン』第25話と最終話の、あの痛々しい最終2話から劇場版『Air/まごころを、君に』にたどりつき、さらに21世紀になって新劇場版もようやく『Q』までを完成させた庵野秀明監督がどんなゴジラ映画をつくってくれるのか、楽しみにしていましたが、期待は裏切られませんでした。ネタバレになるので、あまり書きませんが、「ヤシマ作戦」の311バージョンでゴジラの活動を停止させるところも納得です。

今回の作品はゴジラ第一作に原点回帰し、ゴジラがはじめて襲来する東京を描いています。同時にそれは、セカンドインパクトがなかった、使徒もエヴァもいない東京でもあります。過去を引きずらないこのスタンスが、『シン・ゴジラ』の魅力であり、1954年の『ゴジラ』をほうふつとさせる場面がでてきても、素直に楽しむことができました。私は『ゴジラ』が公開された時、親に連れられて劇場で観ましたが、火の海を背景にゴジラの姿がシルエットで浮かびあがるシーンが忘れられませんでした。うれしいことに『シン・ゴジラ』でも同じシーンが登場します。

ただし、今回のゴジラのデザインにはあまり納得できていません。CG で制作するにもかかわらず着ぐるみに似せたデザインにしたのは賛成ですが、尻尾の、特に付け根のサイズは異常です。これではゴジラの重心の位置は脚の真上ではなく、尻尾にきてしまいます。つまり、ゴジラは全体重を両脚で支えることはできず、二足歩行も、尻尾を自由に動かすこともできないのではないかと思われます。

『シン・ゴジラ』には、2011年3月11日の東日本大震災と福島原子力発電所事故が色濃く影を落としています。ある人はこの作品のゴジラを、原発事故のメタファーとしてとらえるかもしれません。しかし、ゴジラが破壊した街のシーンには、911同時多発テロで崩壊したニューヨークの世界貿易センタービルの瓦礫をモチーフにしたシーンが挿入されていました。現代の社会を破壊するのが地震や原発事故だけでないことがさりげなく示されています。

ゴジラ映画にとって、社会背景は味付けでしかありません。ゴジラは人知を超えた荒ぶる神であり、ゴジラに何らかのメッセージを求めるのは間違っています。難しいことは考えず、スクリーンで暴れまわるゴジラを楽しむのが、ゴジラ映画の正しい鑑賞法だと私は思っています。

とはいえ、この『シン・ゴジラ』で、官邸や各省庁から集められたゴジラ対策チームが未曾有の危機に立ち向かう姿を観ていると、「東日本大震災が起こった時に民主党が政権を取っておらず、その代わりに彼らがいてくれたら…」と考えてしまうのは、私だけではないでしょう。

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