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エボラウイルス:ヒト間で伝播しながら変異
Ebola virus:Origin and transmission in Sierra Leone

西アフリカでのエボラ出血熱の感染拡大が止まりません。新たにセネガルでも感染者が確認されました。

『サイエンス』誌の8月28日付けの電子版で、エボラウイルスのゲノム解析にもとづいたシエラレオネでのウイルス伝播に関する論文が発表されました。

今回の流行は2014年2月にギアナで始まり、3月にリベリア、5月にシエラレオネ、ナイジェリアに広がりました。論文は、5月下旬から6月半ばまでの間に、シエラレオネのエボラウイルス感染者78名から採取した99個のサンプルを、ハーバード大学のStephen K. Gire らのグループが解析し、報告したものです。

論文ではまず、今回流行しているエボラウイルスの起源を、過去に流行したエボラウイルスのゲノムと比較して検討しています。それによると、今回流行しているウイルスは、2007〜2008年にコンゴ民主共和国で流行したウイルスと共通の祖先をもち、2004年頃に分岐したものであることがわかりました。また、これらのウイルスは、2001年〜2005年にガボンとコンゴ共和国で流行したウイルスと共通の祖先をもち、1999年頃に分岐したことが明らかになりました。

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最近の3回の流行のウイルスは共通の祖先をもっていたわけです。このことは、今回流行しているウイルスが、過去の流行と共通の自然界のウイルス貯蔵庫(宿主)からもたらされたものであることを意味しています。

また、ギアナでの感染者のウイルスとシエラレオネでの感染者のウイルスは、2014年2月に共通の祖先にたどりつくことから、ウイルスはヒト間の感染で広まっており、流行の間に、自然界からの新たな感染があったわけでないこともわかりました。

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シエラレオネでの最初の感染者のうち12名は、皆、ギナアにおいてエボラ出血熱で死亡した患者の葬式に参加した際に、ウイルスに感染したと、論文は報告しています。葬儀の際に死者を火葬せず、遺体に触る習慣があることから、感染が起こった可能性があります。

論文はまた、今回流行しているウイルスゲノムの塩基の置換速度は、これまでに出現したウイルスの約2倍のスピードであることを報告しています、

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ヒトの間で伝播しながら、ウイルスは変異を続けています。

この論文の58名の著者のうち5名は、論文が発表されたときにはエボラ出血熱で命を落としていました。

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論文の解析に用いられたサンプルの多くは、シエラレオネのケネマ国立病院で採取されました。亡くなった5名はいずれも同病院のスタッフでした。同病院では、20名以上の医師、看護師、支援スタッフがエボラ出血熱で亡くなっています。エボラ出血熱とのきびしい闘いの中で生まれた論文です。
STAP細胞、再現できず
Riken failed to reproduce STAP cells

理化学研究所が4月から行ってきたSTAP 現象検証実験の中間報告がありました。丹羽仁史氏の報告によると、C57BL/6 という系統のマウスを使い、『ネイチャー』論文に書かれていた通りの方法で実験を22回行いましたが、STAP 現象は確認できなかったとのことです。

丹羽氏によると、STAP 細胞ができたかどうかを、3つの方法で調べたとのことです。1つは、細胞が多能性をもつと緑色に光る遺伝子を入れたマウスの細胞を用い、緑色の蛍光を発するかどうかを調べました。この緑色の蛍光は、早い時期から、細胞が死んでいくときの発光ではないかと指摘されていたものです。検証チームの実験でも、緑の蛍光が確認しました。下の図版は、今日の中間報告で発表されたもので、この蛍光を調べたものです

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この図版で、左上の画像は、酸処理によってできた細胞塊です。右上の画像は、この細胞塊を緑色のフィルターで観察したもので、緑色の発光が認められます。右下の画像は、同じ細胞塊を赤色のフィルターで観察したものです。緑の蛍光が、細胞が多能性をもったためとすると、その光は特定の波長をもつため、赤色のフィルターでは発光が観察されないはずです。ところが、右下の画像では光が認められます。どうやら、STAP 細胞ができた証拠とされてきた緑色の蛍光は、細胞が死ぬ時の自家蛍光だったようです。

STAP 細胞ができたかどうかは、この緑色の蛍光以外に、細胞内で多能性をもつと働き出す遺伝子の発現量を、定量PCR という装置で計測する方法と、多能性をもつと働き出す遺伝子がつくりだすタンパク質が存在するかどうかを調べるという方法でもチェックされました。

しかしながら、どの方法においても、STAP 現象が起こっていることを認めることはできませんでした。STAP 細胞が存在するのか、しないのか、最終的な結論を出すのはまだ早いかもしれませんが、今日の中間報告を聞く限り、小保方さんがつくったと主張するSTAP細胞が存在する可能性は限りなく小さくなったといわざるを得ないでしょう。

検証チームは今後、別の系統のマウスを用いる実験や、細胞に酸処理以外の刺激を与える実験も行うとのことです。

多能性細胞実験のプロ中のプロである丹羽氏は、小保方さんが論文に書いていた方法でSTAP 細胞を作製することはできませんでした。一方、小保方さんは200回も作製に成功したと言っています。そうすると、もしも本当のSTAP 細胞が存在するとすれば、そこには小保方さんのみがもつ「こつ」や「レシピ」が存在すると考えなくてはいけません。小保方さんはこれから自ら再現実験を行うわけですが、にも指摘したように、小保方さんは自分で実験する前に、その「こつ」や「レシピ」を明らかにする必要があります。そうでなければ、小保方さんの再現実験は見世物の域を出ず、科学的に行われた実験ということはできません。
超・絶景宇宙写真――NASA ベストフォトセレクション
Marvelous View of Space:NASA Best Photo Selection

『超・絶景宇宙写真――NASAベストフォトセレクション』が、パイインターナショナルから発売になりました。

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幕張メッセで「宇宙博2014」が開かれていることもあり、最近、多くの方が宇宙に関心をお持ちのようです。本書は、50年以上におよぶNASA の宇宙活動をテーマに、有人宇宙飛行、太陽系探査、天体観測、宇宙からの地球観測の4つのジャンルについて、NASA の多数のアーカイブの中から、私のお気に入りの写真ばかりを集め、それらに解説を加えたものです。

世界で一番美しいNASA 写真集になっていると自負しています。
エボラ出血熱:開発中のワクチンと治療薬
Ebola outbreak:vaccines and drugs in development

エボラ出血熱の感染が拡大しています。承認を受けたエボラ出血熱の治療薬やワクチンはまだ存在しません。WHO は未承認の薬を患者に使用することを認める決定を行いました。

リベリアでエボラ・ウイルスに感染し、アメリカに緊急輸送された2人のアメリカ人にはZMapp という治療薬が投与されました。ZMapp はカリフォルニア州サンディエゴのバイオ企業Mapp Biopharmaceutical 社が開発した治療薬で、3種類のヒト化モノクローナル抗体を混合したものです。タバコの仲間の植物ニコチニアの細胞が産生系に使われています。エボラ・ウイルス表面の抗原にモノクローナル抗体が結合し、細胞への侵入を阻止します。ZMapp はまだ研究段階で、ヒトでの安全性や効果は試験されていません。その薬が使われたのはきわめて異例のことです。

ZMapp のほかにも、以下のような治療薬やワクチンが開発中です。

モノクローナル抗体を用いた治療薬は、多くの研究機関や企業でも研究されています。カナダのTekmira 社が開発したTKM-Ebola はRNA 干渉を利用した治療薬で、フェイズI の臨床試験が開始された唯一の薬です。

カナダ公衆衛生局とニューヨーク州のProfectus Biosciences では水疱性口内炎ウイルス(VSV)をベースにしたワクチンを開発中です。このワクチンは動物実験で、ザイール株のエボラ・ウイルスに対して効果を発揮しています。アデノウイルスをベースにしたワクチンは、少なくとも3つの研究機関や企業で開発中です。

アメリカ陸軍感染症医学研究所ではヌクレオシド類似体の治療薬の研究を進めています。Sarepta Therapeutics では、AVI-7537 というアンチセンス治療薬を研究しています。また、富山化学工業のインフルエンザ治療薬のファビピラビルも、エボラ治療薬の候補に上がっています。

Mapp 社はZMapp を現地に提供する準備をしています。また、TKM-Ebola を試験中のTekmira 社にアプローチしている国もあるようです。
エボラ出血熱、これまでで最大の流行
Ebola Hemorrhagic Fever Outbreak in West Africa


西アフリカでこれまでで最大規模のエボラ出血熱の流行が続いています。WHO の報告によると、7月30日段階で、エボラウイルスの感染者・感染の疑いのある患者の総数は1440名、うち死亡が826名です。うちわけは、ギニアで感染者472名、うち死亡346名、シエラレオネで感染者・感染の疑いのある患者574名、うち死亡252名、リベリアで感染者391名、うち死亡227名、ナイジェリアで感染の疑いのある患者3名、うち死亡が1名です。

エボラウイルスはひも状の形をしており、きわめて病原性の高いウイルスです。

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エボラウイルスには、ザイール株、スーダン株、タイフォレスト株、バンディブジョ株、レストン株が確認されています。このうち、レストン株はサルには感染しますが、ヒトには感染しません。ウイルスの遺伝子解析の結果、今回流行しているのはザイール株であることがわかっています。

エボラウイルスの自然宿主は野生のコウモリと考えられています。ウイルスはコウモリの仲間の間で保存されていますが、森の中でサルやその他の野生生物に感染を繰り返しています。こうした動物の臓器や血液にヒトが接触すると、ウイルス感染がおこります。

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エボラウイルスの今回の流行は、都市部に近い場所で起こっているため、感染者が増えているとのことです。また、医療関係者にも感染者がでています。リベリアで感染したアメリカのケント・ブラントリー医師はジェット機で8月2日にアメリカに搬送され、アトランタのエモリー大学病院に入院しました。一緒に感染した助手のアメリカ人女性も近々搬送される予定です。

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