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小保方さんは本当にSTAP 細胞を作ったのか?
STAP cells:Her research result is real?

STAP 細胞論文に対する疑義が話題になってから、かれこれ2か月以上になります。さまざまな議論がありますが、問題は大きく3つに分けられると思います。1つ目は「論文に不正行為があったかどうか」、2つ目は「STAP 細胞はあるのか、ないのか」、そして3つ目は「小保方さんは本当にSTAP 細胞を作ったのか」です。

理化学研究所の調査委員会は、論文に「改ざん」と「捏造」があったと認定しました。今回のSTAP 細胞問題で、理化学研究所に対して研究者からもいろいろな批判が出ました。それらに関して理化学研究所は真摯に受け止める必要があるでしょう。しかしながら、調査委員会の不正認定に関して異論を唱える研究者はいません。小保方さんは不服申し立てをしていますが、これらが明らかに不正に当たることは誰もが認めているのです。

多くの人が、STAP 細胞があるのか、ないのかを知りたいと考えていますが、今のところ、どちらかはわかりません。しかし、この問題はいずれ科学の世界で結論が出るでしょう。

最後に残るのは、STAP 細胞が存在するにしても、小保方さんが本当にSTAP 細胞をつくったのかどうか、という問題です。『ネイチャー』論文に多くの不備が見つかり、信頼性が揺らいでいるということは、小保方さんが実際にどのような実験を行い、どのような結果を得ていたのかも、はっきりしていないことを意味しています。私はSTAP 細胞捏造説を展開したいわけではありません。小保方さんが行った実験自体と、論文が成立したプロセスを検証しない限り、今回のような問題が起こった原因を知ることはできず、「再発防止」を語ることもできないのです。

この件に関しては、3月19日に発表された日本学術会議会長である大西隆氏の談話「STAP 細胞をめぐる調査・検証の在り方について」でも、「本論文の核心であるSTAP 細胞を作製したという科学的主張の妥当性について、必要に応じて新たな態勢をとって検証すること」と明記されています。

先日の笹井さんの記者会見で、論文ができ上がるプロセスについて説明がありました。笹井さんが話したことが事実から大きく離れていることはないでしょう。しかし、笹井さんが話さなかったところに、まだ大きな謎が残っています。捏造とされた画像が論文に掲載された経緯に関しても、納得のいく説明はされていません。

理化学研究所は信頼できる第三者を加えて、すべての実験ノートやハードディスク内のデータのチェック、関係者全員からの聞き取り、マウスや試薬等の購入・使用の実績、残されているSTAP 細胞、STAP 幹細胞、キメラマスス、テラトーマ組織片などの分析を行い、報告すべきであると私は考えます。問題がここまで大きくなってしまった以上、国民や科学界の信頼を回復するためにも、それが必要です。

本来、これは調査委員会で行われるべきものでした。アメリカでは、通常こうした調査が行われれば、膨大なページ数の報告書が作成されます。先日発表された理化学研究所の調査報告書は、サマリー程度のページ数しかありませんでした。再調査を行うのであれば、上のような全体的な調査を改めて行い、その中で改ざんと捏造の有無を検討すべきでしょう。それをしないのであれば、調査委員会とは別の検証チームを立ち上げる必要があります。
STAP 細胞論文:小保方さん弁護団の追加資料
STAP cells paper mess:Obokata’s appeal

小保方さんの弁護団は、不服申立書を補足する「不服申立についての補充書」を理化学研究所に提出し、受理されました。この「補充書」の要約版を読む限り、不服申立書をまさに補充するだけのもので、何ら新しい情報は含まれていません。理化学研究所が再調査を行うに足る材料にはならないと思われます。

「補充書」の内容は、主に「捏造」と認定された「画像A2」に関するもので、本来掲載すべき「画像B」が存在する以上、小保方さんが『ネイチャー』論文にこれを意図的に掲載することは「経験則上ありえない」と述べています(私には、1年前の博士論文で使用した画像を間違えることの方が経験則上ありえないと思いますが)。今回の補充書では、2012年6月9日に撮影されたとされるこの画像B が、マウスの脾臓由来のSTAP 細胞で作成したテラトーマの画像であることを示す資料が提出されていると思われます。

補充書では、改めて「掲載すべき画像B」が存在する以上、捏造には当たらないと主張し、調査委員会の報告書が「画像B が提出されたことについて何らの記載はなく、また、その提出された画像B が脾臓由来の酸処理することにより得られたSTAP 細胞が用いられたテラトーマの免疫染色データであるか否かについての調査の結果について、何らの記載もない」と批判しています。しかしここで述べたように、この主張は捏造の定義を誤って解釈しているのであり、画像B の有無にかかわらず、画像A2 を掲載したこと自体が捏造にあたるのです。

弁護団は、「真正な画像が存在すれば捏造ではない」という主張を、メディアを通じて世間に広める戦術のように思われます。これまで科学の世界が守ってきたルールがこうした形で捻じ曲げられてしまうことが心配です。

先日の記者会見で、小保方さんはこれからも研究を続けたいと語りました。私はその心情に嘘はないと思います。その小保方さんが、科学のルールを否定する主張にくみしていることに、私はがっかりしています。
STAP 細胞論文:小保方さんの主張 の問題点(3)
STAP cells paper:Questions about Obokata’s appeal (3)

小保方さんの不服申立書で行われている主張の3つ目の問題点は、調査委員会が「捏造」と認定したFigure 2d および2e の免疫染色の画像にかかわるものです。

不服申立書では、理化学研究所の規程において、捏造とは「データや研究成果を作り上げ、これを記録または報告すること」と定義されていること、また文部科学省のガイドラインでは、捏造とは「存在しないデータ、研究結果等を作成すること」となっていると述べています。もちろん、これが捏造の正しい定義です。不服申立書では、本件の画像は取り違えにより論文に掲載されてしまっただけであり、掲載すべきであった画像は別に存在しているので、「事実でない事を事実のようにこしらえ」る行為はなく、「存在しないデータや研究結果を作り上げ」た行為も存在しないことは明らかなので、捏造に当たるものではないと主張しています。

不服申立書は、「存在しないデータ」を拡大解釈し、どこかにしかるべきデータが存在すれば、論文にどんなデータを使用しても捏造には当たらないという理屈を展開しています。

調査委員会が報告しているように、Figure 2d と2e は、実験条件も、使用した細胞も異なるものです。すなわち、STAP 細胞の実験においては存在しないデータを使用して、STAP 細胞は体のどの細胞にも分化することを説明しているのですから、このこと自体が「存在しないデータや研究結果を作り上げ」ていることになり、調査委員会は「掲載すべきであった画像」に触れることなく、これを捏造と認定したのです。画像の中の説明をつくり直していることから、『ネイチャー』論文掲載にあたって、小保方さんの意図が働いていたことは明確です。

『ネイチャー』誌に掲載された画像の由来に関する小保方さんの説明も、むしろ「捏造」の事実を示すものになってしまいます。不服申立書では、『ネイチャー』誌論文に掲載された画像は、内部のラボミーティング用に作成されたパワーポイントに使用されたものであるとしています。このパワーポイントは2011年11月24日に作成された後、何度もバージョンアップがなされており、どのバージョンの画像が論文に掲載されたかは特定できないとしています。そもそも、このパワーポイントは、STAP 細胞実験にかかわる報告を行うもので、この中でSTAP 細胞が体のいかなる細胞にも分化できることの説明に使われたとのことです。とすると、このパワーポイント作成の段階で実験結果の「捏造」が行われていたと考えなくてはなりません。

論文が『ネイチャー』誌に最初に投稿されたのは2012年4月です。『ネイチャー』編集部から不受理で戻ってきたこの論文で、すでにこの画像は使われていました。したがって時系列でいうと、小保方さんはこの画像について、まずラボミーティング用のパワーポイントで「捏造」を行い、それをそのまま『ネイチャー』論文に使用したと考えることができます。パワーポイント画像の説明文を加工しているわけですから、小保方さんはこの画像がSTAP 細胞実験によるものでないことを認識した上で、この画像を論文に使用しました。

小保方さんが「掲載すべきであった」とする画像についても、疑問が残ります。小保方さんは調査委員会に対して、「掲載すべきであった画像」として「画像B」と「画像C」を調査委員会に提出しています。画像B は2012年6月9日に撮影されたもの、画像C は2014年2月19日に「念のため」撮影したとのことです。

不服申立書では、「掲載すべきであった」画像B がずっと存在しており、単なる間違いのために差し替えられていなかっただけなので、「存在しないデータや研究結果を作り上げ」た捏造には当たらないと主張しています。ところが、この主張を受け入れたとしても、少なくとも、『ネイチャー』論文が最初に投稿された2012年4月には画像B は存在していなかったわけですから、この時点で「存在しないデータや研究結果を作り上げ」た「捏造」が行われていたことが、逆に明らかになってしまいます。問題の画像は再投稿された論文でもそのまま掲載されていたわけですから、この「捏造状態」は最近まで続いていたわけです。

また、画像B が撮影された2012年6月9日という日付に関して、調査委員会は実験ノートの記述等が不十分で、画像の作成日を特定することはできなかったとしています。この画像が小保方さんが主張する日に撮影されたのであれば、小保方さんはそれを証明しなければなりません。証明ができなければ、小保方さんの理屈によっても、「捏造状態」は論文の初投稿日から2014年2月19日まで続いていたことになってしまいます。

画像C が撮影された経緯も不自然です。2012年6月9日に撮影された画像があったなら、なぜ、撮り直したのでしょうか。不服申立書は「データの正確性を確保する目的で、念のため撮影した」と述べていますが、説得性に欠けます。

さらに不服申立書では、この画像の間違いは「申立人自らが発見して、自ら申告したもの」と主張しています。調査委員会は、これに関する経緯について、調査委員会が小保方さんから聞き取りを行った2月20日の数日前に、小保方さんから笹井さんに「画像の取り違い」について報告があり、笹井さんに指示されて小保方さんが2月19日に画像を撮影したと書かれています。この2月20日の数日前には、この画像が博士論文から流用された疑いがあるということは外部から指摘されておらず、自分から申告したと小保方さんは主張しているわけですが、実際には、この疑惑がネット上にアップされたのは2月13日であり、小保方さんはそれを知って、笹井さんに「間違い」を報告した可能性も否定できません。

事実関係で不明の点が、まだたくさんあります。実際のデータにもとづいて検証が行われなければなりません。

STAP 細胞論文:小保方さんの主張 の問題点(2)
STAP cells paper:Questions about Obokata’s appeal (2)

小保方さんの不服申立書で行われている主張の2つ目の問題点は、「改ざん」の定義に関するものです。

理化学研究所の規程では、「改ざん」とは「研究資料、試料、機器、過程に操作を加え、データや研究結果の変更や省略により、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること」とされています。不服申立書では、ここで「真正でない」とは「虚偽」と同意であり、「真正でないものに加工する」ことが、「虚偽のものに加工する」ということであると主張します。そして、「その虚偽のものに加工する」対象は、「研究活動のよって得られた結果等」であって、「研究資料、試料、機器、過程」や「データや研究結果」ではない。いいかえると、「研究資料、試料、機器、過程に操作を加え、データや研究結果の変更や省略」が行われても、そのために「研究活動によって得られた結果等」が虚偽のものに加工されたのでない場合には、「改ざん」には当たらないと主張しています。

ゲル1のレーン3には、T細胞受容体の遺伝子再構成を示すデータがありました。結果を「見やすいようにするために」挿入されたゲル2のレーン1の画像も遺伝子再構成を示すデータであり、結果が虚偽のものに加工されたのではないから、改ざんではないというのです。

小保方さんの主張では、「真正でないもの」を「虚偽のもの」とする「すりかえ」が行われています。理化学研究所の規程や文部科学省のガイドラインをきちんと読めば、「真正なもの」とは「本物であるもの」、そして「真正ではないもの」とは「本物ではないもの」を意味することは明らかです。本件の場合、「真正なもの」とは、ゲル1のレーン1から5までの画像のことです。これにゲル2のレーン1の画像を挿入し、あたかも、それがゲル1の画像であるように加工した時点で、ゲル1のデータは本物ではなくなっているのです。すなわち、これが改ざんに当たります。「研究活動によって得られた結果」(この場合はゲル1のレーン1〜5の画像)を「真正でないものに加工」しているからです。

ゲル2のデータをゲル1に挿入しても、結果は変わらないので虚偽ではなく、したがって改ざんではないというのは、きわめて乱暴な理屈で、社会通念上も通らないでしょう。科学論文の世界でこんなことが許されたら、論文の信頼性は保証されなくなってしまい、科学の公正性は失われます。「見やすい結果が得られなかったのなら、見やすい結果が出るまで、何度でも実験するべき」という、まじめに実験を行っている研究者の方々からの声が聞こえてきそうです。
STAP 細胞論文:小保方さんの主張の問題点(1)
STAP cells paper:Questions about Obokata’s appeal (1)

小保方さんが4月8日に提出した不服申立書には、きわめて重要な問題点が3つあります。1つずつ検討して見ましょう。

第1点は、「申立人への聴取が不十分であった」と主張している点です。不服申立書は「中間報告書の作成(3月13日)から本報告書の作成(3月31日)まで、約2週間という短期間の調査であることに加え、申立人に対し1回の聞き取りがあっただけである」と述べています。しかしながら、調査委員会は2月17日の調査開始から中間報告までに3回の聞き取りを行っており、この際に小保方さんには十分説明を行う機会があったはずです。

「改ざん」とされた電気泳動の画像について、不服申立書は「申立人によるレーン挿入の手順を正確に聞き取ることなく、調査委員会が独自に検証して(結果的には異なる手順を検討している。)判断をしてしまっている」と述べています。この画像に関しては、小保方さんはゲル2の画像の一部をゲル1の画像に挿入したことを調査委員会に説明しましたが、ゲル2の画像を右に2度回転させたことは説明しませんでした。不服申立書は「調査委員会が、申立人に対して、具体的な挿入手順について積極的なヒアリングを行い、弁明の機会を与えたならば、申立人は「2°の傾きの補正」を説明できたにもかかわらず、その機会を与えられ」なかったと、調査委員会を批判しています。しかしながら、小保方さんはゲル2の画像をゲル1に挿入したことを調査委員会に説明しているのですから、その際に自らすべてを説明すべきでした。それをしないで、調査委員会を批判するのは、言いがかりとしか考えられません。

「捏造」とされた免疫染色の画像について、不服申立書は、『ネイチャー』論文の画像はラボミーティング用のパワーポイントの画像を使用したと述べています。一方、調査委員会は小保方さんの博士論文の画像と酷似した画像が『ネイチャー』論文に使用されたと判断しました。これに対して不服申立書では、「調査委員会が、このような解析をなし、「異なる画像を誤って掲載した」という申立人の説明に疑問を持つに至ったのであれば、改めて、論文の画像は、どのように加工したのか、あるいは、どのような状態で保管していた画像を使用したのかについて、申立人に確認を求めるべきであった」としています。そして「申立人としても、調査委員会から、そのような質問を受けていたならば、パワーポイントの資料に掲載された画像を使用したことを説明できたのである」と述べています。

しかしながら小保方さんは、調査委員会がこの画像について質問した際、この画像が博士論文で使用した画像に酷似していることも、パワーポイントの画像から使用したことも説明しませんでした。それどころか、元画像のファイル名がまぎらわしかったため間違えたという虚偽の説明をしています。

このように、小保方さんは調査委員会の聞き取りに対して十分な説明をしておらず、調査を妨害した可能性があります。それにもかかわらず、調査委員会の聴取を不十分と主張するのは当たっていません。
STAP 細胞論文:これからどうなる?
STAP cells paper:What’s next?

理化学研究所の調査委員会による不正認定に対して、小保方さんは4月8日に不服申し立てを行い、9日には小保方さん自らが代理人とともに記者会見に臨みました。

不服申し立ての書面で、小保方さんは、調査委員会の調査は不十分であり、再調査を行って、不正ではないという認定を下すことを求めています。これが認められず、小保方さんに何らかの処分が下された場合、小保方さん側は理化学研究所に対して裁判を起こすことになるでしょう。小保方さんの4月1日のコメントも、不服申し立ての書面内容も、9日の記者会見で小保方さんが最初に読み上げたコメントも、すべてそうした事態を想定した上で、代理人が準備したものです。

今後、再調査が行われたとしても、今回の「改ざん」と「捏造」の認定が覆ることはないと思われます。ノーベル賞受賞者が理事長をつとめる日本有数の研究所である理化学研究所が研究不正行為を見逃すことになれば、理化学研究所のみならず、日本の科学の国際的信用は失墜します。優秀な人材が日本で研究をしたいとは思わなくなり、日本の科学の発展にきわめて深刻なダメージがもたらされる可能性があります。

しかしながら、小保方さんの代理人は、科学の世界での研究倫理の問題を、法廷の場に引きずり出すことができれば、十分に勝ち目があると判断しています。一方、理化学研究所はこうした事態を想定することなく調査を行ってしまいました。この混乱はまだしばらく続くでしょう。

理化学研究所は当初、論文の不備がこれほど大きな問題になるとは認識しておらず、論文の訂正で済むと考えていたと思われます。その後、事態が深刻であることがわかってからは、論文の調査→不正の認定→論文撤回→将来の論文再投稿という道筋で早期解決を図ろうとしていたふしがあります。他の論文からの流用が行われているメソッドのBisulphite sequencing の部分などを調査対象から外したこと、調査項目1-3の核型解析に関する部分に対して最終的に「盗用」という不正判定を行わなかったことなどをみると、調査委員会は不正の数をできるだけ少なく抑えたかったのではないか、そのために、小保方さんに対して手心を加えていたのではないかとさえ感じてしまいます。

理化学研究所は小保方さんが不正を認め、論文撤回に同意するものと勝手に判断していました。ところが、小保方さんは自分が行ったことを不正と認める気はまったくなく、論文撤回も考えていなかったことが、不服申し立て書面や記者会見で明らかになりました。

小保方さんの代理人が完璧に演出された記者会見を行ったため、理化学研究所が不服申し立てを認めず、再調査の必要なしと判断を下すと、世間からは、小保方さん1人をいじめているという印象をもたれています。そうかといって、再調査を行うには、そのための理由が必要です。再調査を行っても、結果が変わることはないでしょうから、その先には法廷での時間のかかる争いが待っています。

STAP 細胞論文に関する理化学研究所の危機管理能力のなさが、大きなつけになってまわってきています。世界のRIKEN にはもう少ししっかりして欲しいと思います。
STAP 細胞論文:悪意のない間違い?
STAP cell paper:Honest error?

STAP 論文に関する理化学研究所の調査委員会が、2項目について「改ざん」「捏造」の不正判定をしたことに対し、小保方さんは不服申し立てをするようです。小保方さんは理化学研究所の規程で不正行為に当たらない「悪意のない間違い」だと主張しています。

しかしながら、「悪意のない間違い」とは、本人が気付かずに冒してしまった間違い、いわば「うっかりミス」や「単純ミス」のことです。文部科学省の研究不正防止のガイドラインでいえば「故意ではない間違い」、アメリカのガイドラインでいえば ”honest error” のことで、これが世界共通の考え方です。本人に悪意があるかないかにかかわらず、そこに何らかの作為があれば、それは改ざん、捏造、盗用といった不正行為に当たります。

調査委員会が「改ざん」「捏造」と判定した2項目が、小保方さんのいう「悪意のない間違い」なのかどうか、もう一度、みてみましょう。

まず、Figure 1i の電気泳動の画像です。この画像は、STAP 細胞がT 細胞由来であることを示すためのものです。

20140406_01

この画像では、ゲル1のレーン1〜5の画像のレーン3に、ゲル2のレーン1の画像を貼りつけたことを小保方さんも認めています。レーン3の縞模様がはっきり見えず、レーン4と5の縞模様と同じであることを示しづらかったため、ゲル2のデータを貼りつけたとのことです。調査委員会によると、ここでは次のような加工が行われていました。

まず、ゲル1の画像は縦方向に1.6倍引き伸ばされていました。これは、ゲル1と2では電気泳動を行った時間が異なり、上下のスケールが一致しないためです。また、ゲル2の画像をはめ込む際、それぞれのゲルについている基準位置情報を合わせる形で貼りつけたのではなく、レーン4の縞模様と合うように貼り付けていました。このFigure 1i では、レーン3の縞模様がレーン4、5の縞模様と一致することに意味があるのですが、最初から位置が一致するようにゲル2のデータを配置してしまったのでは、意味はなくなります。きわめて意図的な加工が行われたことになります。

20140406_02

調査委員会はこのような加工は「その手法が科学的な考察と手順を踏まないものであることは明白」とし、「改ざん」に当たると判断したのです。

一方、小保方さんは、この操作は「元データをそのまま掲載した場合に得られる結果と何も変わ」らないものであり、「見やすい写真を示したい」と考えただけ主張しています。確かに、ゲル1のレーン3の元の縞模様はゲル2から切り貼りされたデータと同じなのですが、こうした操作を行うと、仮にレーン3に別の結果を示すデータが示されており、それを隠すために別のレーンのデータを切り貼りしたとしても分からなくなってしまいます。そのため、こうした加工は論文の信頼性を著しく損なうものであり、不正な「改ざん」行為とみなされます。それが善意から発したことなのか、あるいは最初から悪意をもっていたのかということは、研究者個人の心情に属することであって、不正判定に影響を与えるものではありません。

「改ざんをするメリットは何もなく」、改ざんの意図を持ってこの図を作成する必要はまったくなかったと小保方さんは主張していますが、この図を作成した行為自体が改ざんに当たるのです。画像の切り貼りをしたという作為が存在しますから、「悪意のない間違い」には該当しません。

Figure 2d および2e の免疫染色の画像に関しては、赤枠で囲った以下の4点の画像が、小保方さんの博士論文の画像と酷似していると指摘されていました。これらの画像は、STAP細胞が三胚葉由来のどの細胞にもなることを示す実験で、2d は試験管内での実験、2e はマウスにテラトーマ(奇形腫)をつくる実験での画像です。

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調査委員会では、『ネイチャー』論文の画像が博士論文で使用された画像と完全に同一とは確認できず、「学位論文の画像に酷似するもの」を使用したと判断しました。『ネイチャー』論文では、この「博士論文の画像に酷似する」画像に挿入されていた文字の上に黒枠を置き、その中に改めて文字を入れるという加工を行っていることが明らかになりました。したがって、小保方さんは博士論文作成の際に得られていた画像であることを明確に認識した上で、その画像を加工し、『ネイチャー』論文に使用していたことになります。

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小保方さんが博士論文で行っていた実験は、マウスの細胞塊を細いピペットに通すという方法で幹細胞を探索するというものでした。STAP 細胞の実験とは異なる方法の実験です。また、STAP 細胞の実験では、マウスの脾臓から採取したリンパ球を使用していますが、博士論文の画像はマウスの骨髄細胞を用いていました。

このように、STAP 細胞実験とは実験方法も細胞も異なることを小保方さんが認識していた上で、博士論文の画像を使用したため、調査委員会はこれを「捏造」と判定したのです。

一方、小保方さんは、この画像に関して最初から単純なミスによる「取り違え」と説明してきました。調査委員会の石井委員長は、3月14日の中間報告の席上で、小保方さんと笹井さんは2月20日のヒアリングの際に、この画像は取り違えてしまったものであるので、正しいものに差し替えたいと申し出たと述べました。「正しい画像」とされるものも提出されました。下の画像がそれです。

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どちらの実験画像も同じ「ヘマト」というファイル名がついていたため、間違えてしまったというのです。しかし、小保方さんは、この際、『ネイチャー』論文の画像が博士論文の画像に使用されたものであるとは説明しませんでした。調査委員会がそれを知ったのは、その後とされています。

小保方さんは今回のコメントでも、これを「単純なミス」とし、「不正の目的も悪意も」なかったとしています。そして、「真正なデータが存在していることは中間報告書でも認められています」としています。中間報告の際、石井委員長は「真正な」画像のタイムスタンプ(画像作成日)について、『ネイチャー』誌に論文が投稿された2013年3月の数か月前であったと説明しました。しかし、その後、この4点の画像のうちの1枚(上の画像の一番左)は、理化学研究所が2012年4月に特許を出願した際の書類の中に使われている画像と酷似していることが明らかになりました。小保方さんは調査委員会に対して、画像作成日に関して虚偽の説明をした可能性があります。

また、小保方さんは今回のコメントで、「そもそも、この画像取り違えについては、外部から一切指摘のない時点で、私が自ら点検する中でミスを発見」したとしていますが、2月20日頃にはすでにネット上でこの件が指摘されていましたから、小保方さんの主張に説得性はありません。

小保方さんが訂正したいという画像に関しては、4月1日の最終報告で新しい説明がありました。それによると、笹井さんは2月20日のヒアリングの数日前に、小保方さんから画像の「取り違え」の報告を受け、すぐにデータの取り直しを指示したのだというのです。「訂正のために提出されたテラトーマに関する画像の作成日の表示は2014年2月19日であった」と、最終報告書には書かれています。とすると、中間報告で説明された「2013年3月の数か月前」という画像作成日はいったい何だったのでしょうか? また、「テラトーマに関しては2012年7月に得られたデータがある」と、小保方さんは説明しているようですが、それなら、なぜ、データを取り直したのでしょう。わずか1日か2日で、テラトーマの免疫染色画像をつくり直したというのも、少し不自然です。テラトーマはちゃんと保存されていたのでしょうか?

4月1日に発表された調査委員会最終報告書のこの画像に関するページ(下の画像の上)は、4月4日に修正され(下の画像の下)、「真正なデータ」とされてきた画像が削除されてしまいました。2月19日に作成された画像というのは、以前に示されていた画像と異なるのでしょうか?

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理化学研究所広報室はその後、「未公表のデータなので、公開するのは適切ではないと調査委員会が判断した」と説明しています。

いずれにしても、「真正なデータ」のあるなしにかかわらず、小保方さんが博士論文の画像と認識しながら『ネイチャー』論文に使用したという事実のみで、これは「捏造」に当たります。

現在、ネット上では、多能性の指標となる遺伝子の発現量を示すグラフに関する不審な点が指摘されはじめています。調査委員会が対象とした6項目だけでなく、論文全体の検証がぜひとも必要です。
STAP 細胞論文:小保方さんの反論
STAP cell paper investigation:Lead author disputed the conclusion

STAP 細胞論文に不正行為があったとする調査委員会の報告に対して、小保方さんは「驚きと憤りでいっぱい」であり、不服申し立てをするというコメントを発表しました。研究不正と認定された2点については、理化学研究所の規程で「研究不正」の対象外となる「悪意のない間違い」であるというのが、その理由のようです。

私は調査委員会の中間報告についてここに書いた際、同じ胎盤の画像が2度使われていた点に関して、調査委員会が「悪意があったと認定することはできず、研究不正であるとは認められない」としたのは、今後の不正認定に大きな意味を持ってくるかもしれないと書きました。「改ざんや捏造と考えられるケースでも、悪意がなければ不正ではない」という理屈が成り立つからです。小保方さんのコメントで、この予想が当たってしまいました。

文部科学省の研究不正防止のためのガイドラインでは、捏造、改ざん、盗用であっても、それが「故意によるものではない」場合は不正行為には当たらないとしています。この「故意によるものではない」という部分が、理化学研究所の規程では「悪意のない間違い」となっています。「故意によるものではない」=「悪意がない間違い」と解釈すべきなのですが、理化学研究所の規程だけを読めば、捏造、改ざん、盗用にあたる意図的な行為があっても、「悪意がなければ不正行為ではない」という解釈が成立してしまうのです。調査委員会の中間報告で、調査委員会側がこの理屈を使ってしまったために、今回、小保方さんからこの点を突かれてしまいました。

小保方さんは不服申し立てで自分の主張が通らなかった場合、理化学研究所を訴える裁判を起こす可能性があります。そうした事態になった場合、理化学研究所側は苦戦することになるかもしれません。

一般論で言うと、研究に不正が発覚したケースでも、本人は最後まで不正を認めないことがあります。調査委員会のメンバーには弁護士の先生も含まれていたようですが、最後には法廷闘争になることまで想定して調査を行い、調査結果の文言を検討したかどうか疑問です。理化学研究所の立場から言えば、危機管理能力が不足していたと言わざるを得ないでしょう。一方、「悪意のない間違い」だったという小保方さんの主張も納得できるものではありません。
STAP 細胞論文:調査委員会が「不正」と認定
STAP cell paper:Falsification and fabrication

STAP 細胞論文の疑義に関する調査を行っていた理化学研究所の調査委員会は最終報告をまとめ、本日発表しました。それによると、3月14日の中間報告ではまだ結論が出ていなかった調査対象の4つの項目に関し、2つについて「研究不正行為があった」という結論を下しました。

3月14日の中間報告では、調査委員会が調査の対象とした6項目のうち、「論文1」のFigure 1f の2d とd3 の画像が不自然に見える点、および「論文2」に同じ胎盤の蛍光画像が掲載されている点の2つに関しては、「研究不正には当たらない」としていました。今回は残っている4項目に関して、以下のような調査結果が発表されました。

論文1:Figure 1i の電気泳動の画像においてレーン3が挿入されているように見える点。
 この画像は、T細胞が初期化されてSTAP 細胞になったことを示す大事な画像ですが、中間報告の時点で、レーン3に別のゲルの画像を挿入したことを、小保方さん自身が認めていることが明らかにされました。今回の調査結果で、調査委員会は、「データの誤った解釈へ誘導する危険性について認識しながらなされた行為」であるとし、「改ざんに当たる研究不正」と判断しました。

論文1:メソッドの核型解析に関する記述が他の論文からの盗用である可能性。
 この部分の記述はドイツの研究者が発表した論文と酷似していることが指摘されていました。中間報告では、小保方さんは他の研究者の論文をコピーしたことを認めたものの、どの論文だったかははっきり覚えていないと説明していることが明らかにされました。今回の調査結果で、調査委員会はこの部分の記述がGuo et al. の論文をコピーして、その出典を記載しなかったことを確認しましたが、何らかの意図をもって行ったと直ちに認定することはできず、「研究不正であったと判断することはできない」としました。

論文1:メソッドの核型解析の記述(上記△汎韻孤分)の一部に、実際の実験手順とは異なる記述があった点。
 この部分には若山先生の研究室で行われた実験の手法が記述されていますが、実際に若山研究室で行われたものとは異なる記述が一部にありました。この点に関し、調査委員会では実験は行われたことを確認し、小保方さんが実験手順を確認せずに論文を発表してしまったとしました。小保方さんの過失によって引き起こされたであり、「研究不正とは認められない」というのが結論です。

論文1:Figure 2d、2e の画像の取り違えがあった点。および調査の過程で、これらの画像が小保方さんの博士論文に掲載された画像と酷似することが判明した点。
 これらの画像はSTAP 細胞がどんな細胞にも分化できることを示す重要な証拠です。これらの画像について、小保方さんと笹井さんはプレヒアリングの段階で、「『ネイチャー』論文ではマウスの脾臓の血液細胞の画像を使うつもりだったが、間違って骨髄の血液細胞の画像を使ってしまった。正しい画像に取り換えたい」という説明があったとのことでした。血液細胞は英語で「ヘマトポエティック」といい、どちらの画像もファイル名が「ヘマト」と書いてあってまぎらわしく、間違えてしまったというのが、小保方さん側の説明でした。しかし、その後、これが小保方さんの博士論文に掲載されていた画像と酷似していることを調査委員会も把握しました。
 しかし、この画像に関する小保方さん側の説明には、事実を意図的に隠そうとしていたと考えざるを得ない点がいくつもあります。まず、小保方さんと笹井さんは、プレヒアリングの際に、この画像が博士論文で使われたものであることを明らかにしませんでした。また、小保方さんが博士論文で行った実験は、STAP 細胞をつくる実験とは異なる実験であったにもかかわらず、これをSTAP 細胞実験で行った骨髄細胞の画像のように説明している点も問題です。さらに、Figure 2a の画像は、博士論文に掲載された文字入りの画像そのものを、さらに加工して文字を入れ直したと考えられる痕跡があることが指摘されています。すなわち、この画像の使用に関しては、単なる間違いではなく、「確信犯」であることが濃厚な状況でした。
 今回の調査結果では、調査委員会は『ネイチャー』論文に掲載された画像が博士論文に掲載されたものと完全に同じものとは断定できず、「酷似するもの」を『ネイチャー』論文に使用したと判断しました。その上で、この2つの論文では実験条件が異なり、「この明らかな実験条件の違いを認識せずに切り貼り操作を経て論文1の図を作成したとの小保方氏の説明に納得することは困難である」としました。そして、これは「データの信頼性を根本から壊すものであり、その危険性を認識しながらなされたもの」で、「捏造に当たる研究不正」と結論付けました。

,硫ざんとい隣埖い糧縦蠅砲弔い討賄然です。△明らかに盗用であるにもかかわらず、「研究不正であったと判断することはできない」としたのは、甘い判断だったのではないかというのが私の感想です。

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