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アノマロカリスはプランクトンを食べていた?
Plankton feeding amomalocarids

アノマロカリスといえば、カンブリア紀の食物連鎖の頂点に立つ捕食者として知られていますが、『ネイチャー』誌3月27日号に発表された論文によると、その仲間には、現在のヒゲクジラ類と同じようにプランクトンなどの漂遊生物を食べていたものもいたようです。

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イギリス、ブリストル大学地球科学および生物科学校のJakob Vinther らは、数年前にグリーンランド北部、約5億2000万年前の地層で発見されたアノマロカリスの仲間、Tamisiocaris borealis の化石に残っていた前部付属肢を詳しく調べました。

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アノマロカリスの前部付属肢はきわめて大きく、三葉虫などの獲物を捕らえるために用いられたと考えられています。しかし、Tamisiocaris の付属肢には内側にひげのようなものが並んでおり、さらにそれぞれのひげには、より細かい繊毛のようなものが並んでいました。したがって、Tamisiocaris は海中を遊泳しながら、その付属肢で植物プランクトンおよび中型動物プランクトンをかき集め、濾して食べていたと考えられます。再現されたCG によると、Tamisiocaris は付属肢を交互に動かして、かき寄せた餌を口に運んでいたようです。

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カンブリア紀の大爆発の時代に、アノマロカリス類は多様な進化を遂げ、その一部は捕食者というよりは、より平和的な懸濁物食性の道を選んだものもいたわけです。また、このようなアノマロカリス類の存在は、カンブリア紀の海がすでに多量のプランクトンが漂泳する豊かな海であったことも示しています。
ソユーズTMA-12M、ISSに到着
Soyuz TMA-12M docked with ISS

第39/40次長期滞在クルーを乗せたソユーズTMA-12M は、日本時間3月28日午前8時53分に、国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングしました。

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気密のチェックなど、ハッチ・オープン前の作業が行われています。ハッチが開けられ、クルーがISS に入室するのは、午前11時55分頃の予定です。
第39/40 次長期滞在クルー:ISS 到着は28日に
Soyuz TMA-12M docking delayed

第39/40次長期滞在クルーのアレクサンダー・スクボルソフさん、スティーブン・スワンソンさん、オレッグ・アルテミエフさんを乗せたソユーズTMA-12M は、日本時間3月26日午前6時17分に、バイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。

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ISS 到着は約6時間後の同日午後12時04分の予定でしたが、途中での軌道修正噴射が正常に行われず、ISS 到着は3月28日まで遅れることになりました。

最近のソユーズでは、国際宇宙ステーション(ISS)へのドッキングは、以下のように地球4周後に行われます。従来の地球を34周、2日間かかったドッキングに比べて、約6時間という非常に短い時間でISS に到着することができるのです。

1周目
太陽電池パネルとアンテナを展開
第1回ランデブー・バーン(軌道修正噴射)
第2回ランデブー・バーン
2周目
第3回ランデブー・バーン
第4回ランデブー・バーン
3周目
自動ランデブー・ドッキング開始
第5回ランデブー・バーン
自動ランデブー・ドッキング用のクールス・システムを起動
第6回ランデブー・バーン
4周目
ISS から5km まで接近
ISS のまわりをフライアラウンド
最終接近開始
ドッキング
5周目
ハッチ開放、歓迎セレモニー

ところが、今回の飛行では、1周目の2回のランデブー・バーンは正常に行われたものの、2周目での3回目のランデブー・バーンが行われませんでした。原因はまだわかっていませんが、ソユーズが所定の方向を向いていなかったためにエンジンが噴射されなかったのではないかとみられています。モスクワの管制センターは、以前の2日間でのランデブー・ドッキングに切り換えることにしました。このために、ソユーズのISS 到着が遅れることになったのです。

ISS 到着は日本時間3月28日午前8時58分の予定です。なお、2日間のISS への飛行は当初からオプションとして用意されており、3人のクルーのための空気、水、食糧などに心配はありません。

以下に、打ち上げ当日のクルーの様子を紹介しましょう。

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Zemlyane(ゼムリャーネ)の「トラヴァ・ウ・ドーマ」が流れる中、コスモノートホテルを出てバスに乗りこみます。

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宇宙への出発を報告します。

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ロケットの前で記念撮影を行います。

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ロケットに乗りこみます。

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発射です。未明の打ち上げでした。
STAP細胞:バカンティ教授が「詳細な」作製方法を発表
Dr. Vacanti posted “refind” STAP cell production protocol

ハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授は、STAP 細胞の「詳しい」(refined)作製方法(プロトコル)をウェブ上で発表しました。

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STAP 細胞をつくるには、「このプロトコルに書かれているステップを正確に行っていくことが非常に重要」で、「どのステップもスキップしてはいけない」と述べられています。また、「方法は非常に単純であるが、細胞や組織のタイプによって少しずつ変わって来る」とも述べられています。

詳しい内容については専門家のコメントを待ちたいと思いますが、『ネイチャー』論文や理化学研究所が3月5日に発表したプロトコルとまず異なるのは、細胞に酸でストレスを与える前に、細いピペットに細胞塊を通して、細胞をばらばらにする操作が必要としていることです。

この操作を具体的に述べると、まず内径0.9mm の普通のパスツール・ピペットを用意し、さらに、その先端をバーナーで熱して伸ばして作った内径の細いピペットも用意しておきます。最初に普通のパスツール・ピペットを使って、5分間、細胞を出したり入れたりします。そして、この次が「きわめて重要」なのですが、内径を100〜150μm にしたピペットで10分間同じ操作を行います。その後さらに、内径50〜70μm という非常に細いピペットで同じ操作を15分間行います。この操作の部分は、ゴシック体で「This is a very important step. Do not skip this step, or take a shortcut.」と再び強調されており、バカンティ教授のSTAP 細胞作製法の肝ともいえる部分のようです。

このプロトコルはバカンティ教授が所属するハーバード大学 Brigham & Women’s Hospital のDepartment of Anesthesiology のウェブサイトで公開されたものです。筆者名は表記されていません。これに関するバカンティ教授のコメントを聞きたいところです。
第39/40次ISS 長期滞在クルー、打ち上げ間近
Expedition 39/40 crew members set to launch Tuesday

国際宇宙ステーション(ISS)には、現在、若田光一さん、リチャード・マストラキオさん、ミハイル・チューリンさんの3人の宇宙飛行士が滞在しています。3月26日午前6時17分(日本時間)には、スティーブン・スワンソン(左)、アレクサンダー・スクボルソフ(真ん中)、オレッグ・アルテミエフさん(右)が搭乗したソユーズTMA-12M がバイコヌール宇宙基地から打ち上げられ、同日午後12時04分にISS にドッキングする予定です。

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バイコヌール宇宙基地では、燃料を充てんし、安全性をチェックしたソユーズ宇宙船にフェアリングをかぶせ、ロケットに結合する作業が行われています。まもなく、射場までの移動がはじまります。

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3月13日にバイコヌール宇宙基地に到着した3人は、すでに搭乗するソユーズのチェックなども終え、準備は万全です。

この3人のバックアップクルーの中には、ロシアで4人目の女性宇宙飛行士となるエレナ・セロヴァさんがいます。

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エレナさんは2009年にエネルギア社の宇宙飛行士候補者に選抜されました。星の町(ガガーリン宇宙飛行士訓練センター)で訓練を続け、2010年に宇宙飛行士の資格を取得しました。2011年12月にISS の第41/42次長期滞在クルーに指名されています。2014年9月にISS に向かう予定です。
STAP 再現実験をより明解にするための1つの提案
A simple proposal to make STAP protocols clearer

Knoepfler のブログに、スタンフォード大学幹細胞生物学再生医療医学研究所のJun Seita 博士が寄稿し、「STAP 再現実験をより明解にするための1つの提案」を発表しています。日本語でも英語でも読むことが出来ます。

STAP 細胞の実験では、細胞が多能性を獲得したことを確認するために、Oct3/4 という遺伝子を使っています。Oct3/4 は多能性を獲得した細胞に特異的な遺伝子の1つで、これが発現すると緑色の蛍光タンパク質(GFP)が発光するように遺伝子操作したマウスのリンパ球を用いています。つまり、培養している細胞が多能性をもつと、細胞はGFP によって緑色に光るわけです。Seita 氏が提案しているのは、この培養された細胞のGFP 発光を検出する実験の部分です。

Seita 氏は、ストレスや障害を受けた細胞が自家蛍光発光することはよく知られており、これをGFP の発光と区別することは難しいと述べています。緑色の発光があったと言っても、これをもって終末分化細胞が酸処理によって初期化され、Oct3/4-GFP を発現する細胞に変化したとは言えないというのです。

そこでSeita 氏は、プロトコルに書かれた実験に、1つのコントロール(対照実験)を追加することを提案しています。すなわち、Oct3/4-GFP 遺伝子改変マウスから採取した細胞だけでなく、野生型マウスからも細胞を採取し、酸処理・培養実験をし、同じ条件で解析するというものです。Seita 氏によると、これが、Oct3/4-GFP シグナルと自家発光を区別する唯一の方法であり、今日、最も信頼のおける方法とのことです。また、この方法はもとのプロトコルを改変するものでないとも述べています。

「この1つの、しかし重要なコントロールの追加はSTAP 細胞の再現実験の結果をより明解にすると考えます」と、Seita 氏は結んでいます。小保方さんの実験では、こうした対照実験も行われていなかったわけですね。
STAP 細胞問題:7年前に予言されていた?
STAP cell papers and research ethics

文部科学省の「研究活動の不正行為への対応のガイドライン」では、研究活動での不正行為の定義から始まり、不正行為の告発があった場合にどのように調査を行うべきか、不正と認められた場合、どのような措置をとるべきかなどがまとめられています。

このガイドラインを作成した科学技術・学術審議会の「研究活動の不正行為に関する特別委員会」の報告書『研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて』では、このガイドラインが定められるに至った背景が述べられています。STAP細胞をめぐる問題が社会の注目を集めている現在、この報告書を読み直してみると、きわめて興味深い点が多々あります。以下、引用が多くなってしまい、申し訳ありませんが、紹介させていただきます。興味のある方は、ここで全文をお読み下さい。

報告書では、不正行為が起こる背景として、次のように述べています。まず、「研究現場を取り巻く現状」では、21世紀に入って、先端的な分野を中心に研究成果を少しでも早く世に出す先陣争いが強まっているほか、研究評価や各研究機関・研究者等の特許など知的財産戦略への取り組み等、研究現場を取り巻く状況が変化していると指摘しています。その中で、「多額の研究費が獲得できる研究が優れた研究とみなされやすく、また、成果が目立つ研究でなければ、研究費が獲得できないのではないかという懸念が増大し、・・・競争の激化と性急な成果主義を煽る側面もあることが指摘されている」としています。

さらに、研究者の任期付任用の増加等により、研究者の流動性が高まり、それにともなって、「ポスト獲得競争が激化し、特に若手研究者にとっては任期付きでないポストを早く得るために、優れた研究成果を早く出す必要性に迫られる状況も一部で醸し出されてきており、それが極端な場合、不正行為につながる可能性があるとの指摘もなされている」としています。

一方、「研究組織や研究者側の問題点」としては、「研究者の間に功名心が広がる反面、真理を探求するという研究そのものに対する使命感が薄れてきている」ことや、研究者論理について「研究者を目指す学生や若手研究者が十分教育を受けていない状況」があり、「そのことについて教えるべき指導者の中には、その責務を十分に自覚していない者が少なからずあるように見受けられる」としています。さらに、「指導者の中には、結果を出すことを最重要視する考えに傾き、研究倫理や研究プロセスの本来のあり方を十分に理解していない者が存在する」。さらに、「競争的環境の急速な進展とともに、実験等で出たデータの処理や論文作成のスピードを上げようとするあまり、研究グループ内で生データを見ながらじっくり議論して説を組み立てていくという、研究を進めていく上で通常行われる過程を踏むことをおろそかにする傾向が一部の研究者に見られる」とも指摘しています。

研究組織における問題として、「自浄作用が働きにくい」という指摘もしています。その原因として、「競争的環境の急速な進展の結果、秘密主義的傾向が蔓延し、組織の中で研究活動に関して議論が活発に行われにくくなっていること」、そして「そうした活性を失った組織にありがちな悪しき仲間意識・組織防衛心理が事なかれ主義に拍車をかけることも考えられる」。さらに、「他の研究室はもとより、同じ研究室においても、他の研究者がどういう研究をどのように行っているのかわからないという状況さえ現出し」、「重症に陥るまで放置される傾向がある」。加えて、「自浄作用が働きにくい研究組織の中では、些細なことではあっても見逃してはならない、研究活動の本質や研究活動・研究成果の発表の作法ともいうべき決まりごとに抵触するような行為が見逃されがちであり、それが重なって、重大な不正行為につながることがあるのではないかと思われる」と指摘しています。

さらに、「若くして主任研究者」になったような研究者の場合、「常に目覚ましい研究成果を出すことに追われ、焦りが生じたり、研究室のスタッフ等への圧力が強くなることがあり、その結果として不正行為が起きる場合がある」という点も指摘しています。

一方、研究開発プロジェクトに多額の国費が充てられる場合、研究組織側も「どの程度研究成果が上がっているかなど、個々の研究評価の積み重ねが組織全体の評価につながり、研究成果について数値目標を設定することもある。このような研究評価の進展に伴い、雑誌の影響度を測る指標であるインパクトファクターが論文それ自体の評価指標と混同される場合があって、評価者や研究者が著名な科学雑誌に論文が掲載されることを過度に重要視する傾向が見られ、それが不正行為を助長する背景になっているとも指摘されている」としています。

このように読んでくると、この報告書は、今回の出来事の背景をほとんど説明しているように思えます。まるでSTAP 細胞論文が『ネイチャー』誌に掲載されることを、7年前に予言していたかのようです。私にとっても、STAP 細胞論文は研究倫理の問題をもう一度考えてみるきっかけになりました。
STAP 細胞論文:「不正行為」とは何か?
STAP cell papers:RIKEN's investigation

文部科学省は2006年8月8日に、「研究活動の不正行為への対応のガイドライン」を発表しています。このガイドラインでは研究活動の不正行為を、以下のように定義しています。

捏造:存在しないデータ、研究結果等を作成すること
改ざん:研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること
盗用:他の研究者のアイデア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を、当該研究者の了解もしくは適切な表示なく流用すること

ただし、「故意によるものではないことが根拠をもって明らかにされたものは不正行為には当たらない」としています。また、以上の他に、論文の二重投稿や不適切なオーサーシップ(論文の著者に関係のない人が含まれていたり、逆に共同著者になるべき人が抜けていたりすることなど)も不正行為に含まれます。

理化学研究所の「科学研究上の不正行為の防止等に関する規程」もこのガイドラインに沿ったものです。不正行為として「捏造」「改ざん」「盗用」が同じ内容で定義されており、「ただし、悪意のない間違い及び意見の相違は含まないものとする」とされています。

一般論として言えば、「捏造」「改ざん」「盗用」の要素が複合し、これらを明確に区別することができないケースもあります。

3月14日の記者会見で、理化学研究所の調査委員会は、ARTICLE の論文(報告書では「論文1」)の5個所、LETTER の論文(報告書では「論文2」)の1個所、合計6つの項目を調査してきたことを明らかにしました。これらを1つ1つみていきましょう。

まず、論文1 の第1点、Figure 1f のd2 およびd3 の色付きの細胞の画像が不自然に見える件ですが、これは『ネイチャー』誌編集部での作業中に生じたものと推定され、「不正行為はなかった」とされました。

論文2 の、同じ胎盤の画像が2度使われている件に関しては、2枚の画像は同じキメラマウスを異なる角度から撮影したものであることが確認されました。Figure 2g の画像は本来削除されるべきものが誤って残ってしまったものであり、理化学研究所の規程に定める「改ざん」の範疇にあるが、「その行為について「悪意」があったと認定することはできず、研究不正であるとは認められない」というのが調査委員会の結論でした。報告書のこの個所は、今後の不正認定に大きな意味をもってくるかもしれません。つまり、「改ざん」という不正の範疇に入っても、「悪意」がなければ、調査委員会は不正とは認めないのかという点です。

論文1 の第2点、Figure 1i の電気泳動の画像に関しては、レーン3 に別のデータを切り貼りしたことが明らかになりました。この事実を小保方さんも認め、「やってはいけないことだとは知らなかった。すみませんでした」と述べたそうです。この件は明らかな「改ざん」ですが、上の論文2 のケースを考えると、「本人が悪いことだと知らなかったから、不正にはならない」という理屈が成り立ちます。この点、文部科学省のガイドラインは「故意によるもの」であれば不正になるという考えです。調査委員会としては何をもって「悪意がある」というのか、「故意によるもの」と「悪意によるもの」は同一なのか、それとも異なるのかを、記者会見の場で説明してほしかったと思います。

論文1 の第3点は、実験手法を述べた「メソッド」の一部に、他の研究者が書いた論文と同一とみられる個所があることです。調査委員会はこの論文が他からコピーされたものであることを確認しています。したがって、この部分は「盗用」にあたるでしょう。

論文1 の第4点は、上記と同じ個所について、実際に行われた実験と異なる方法が書かれているという問題です。この個所では、前半は小保方さんが行った実験、後半は若山研究室で行った実験の手法が書かれています。しかし、後半部分は、実際に若山研究室で行った実験方法とは異なることが明らかになりました。この点について、若山先生は、小保方さんが実験全体をよく把握していなかったためと言っているようです。事実と異なることが書いてあるとすれば、後半部分は「盗用」だけでなく、「捏造」の可能性もあります。

論文1 の第5点は、Figure 2d と2e の画像に関するものです。すでにメディアでも大きく取り上げられているように、2d の1枚と2e の3枚の画像は、小保方さんの博士論文の画像と酷似しており、これが同一の画像であることを調査委員会も確認しました。小保方さんと笹井さんはプレヒアリング(調査を始める前の事前聴取)の時点で、「この画像については間違っていた。『ネイチャー』誌の論文では脾臓の血液細胞を使うつもりだったが、間違って骨髄の血液細胞の画像を使ってしまった。正しい画像に交換したい」と説明したようです。しかし、この時点で、2人は「骨髄の血液細胞の画像も、STAP 細胞の実験で得たもの」と述べていたようです。

ところが、その後、これが小保方さんの博士論文に掲載された画像だと分かりました。つまり、小保方さんはプレヒアリングの時点で、調査委員会に「これは自分の博士論文の画像でした」は言わなかったわけです。この画像に関しては、博士論文に掲載された文字入りの画像そのものを、さらに加工して文字を入れ直した上で『ネイチャー』論文の画像にしたと考えられる痕跡があるとの指摘もあります。そうだとすれば、この画像の使用に関しては「確信犯」の可能性も出てきます。調査委員会もこうしたディテールをさらに検証していくことになるでしょう。

小保方さんが博士論文のためにしていた実験は、細胞を細いピペットを通す実験で、細胞を酸のストレスにさらすSTAP 細胞の実験とはことなるものです。STAP 細胞の実験に関して、この骨髄からの血液細胞の画像は存在しないわけですから、これは「存在しないデータ」を作成した「捏造」に該当する可能性が濃厚です。

STAP 細胞論文をめぐる今回の出来事は、研究活動における「不正」の問題にスポットライトを当てることになりました。調査委員会がどのような結果を出すのか、注目していきたいと思います。
STAP 細胞論文:理化学研究所の調査中間報告会
STAP cells mess:RIKEN held a press conference

3月14日の午後、STAP 細胞論文に関する理化学研究所の調査の中間報告会が4時間にわたって行われました。当日、私は所用で中継を見ることが出来ず、その様子を、ネット上の動画でようやく見終えたところです。

冒頭、理化学研究所が行っている調査は、同研究所の監査・コンプライアンス室に寄せられた『ネイチャー』論文の疑義に関する通報に対応して行われているものであることが説明されました。論文のテキストおよび画像に「不正」があったかどうかを調査するのがミッションであり、「STAP 細胞が本当に存在するのか?」を科学的に検証することは含まれていません。

石井俊輔調査委員会委員長からの報告により、現在の調査対象項目は『ネイチャー』誌のARTICLE の論文の5か所、LETTER の論文の1か所であることが明らかにされました。調査項目は今後、さらに追加される可能性もあります。これら6つのうち、ARTICLE に掲載された、培養細胞が多能性を獲得していく様子を示す画像の不自然さに関しては、実験で得られたライブイメージング画像を『ネイチャー』編集部で作業した際に生じた歪みであり、「不正行為はなかった」と結論されました。また、LETTER に掲載された2枚のマウスの胎盤の画像が同じものである点に関しては、著者が片方を削除するのを忘れてしまったために起こったものであり、「不正であるとは認められない」としました。

残りの4つはまだ調査中です。その中の1つに、今回の一連の出来事で最初に指摘されたFigure 1i があります。この電気泳動の画像には、レーン3の場所に画像合成疑惑が生じています。

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これまでの調査によると、この電気泳動の元画像は、サンプルを電気泳動にかけたゲル1のレーン1からレーン14のうち、1〜5レーンの画像でした。しかし、レーン3のコントラストが低くてよく見えないので、小保方さんは同時に行った電気泳動のゲル2のレーン15からレーン29のうち、レーン15の部分を切り取り、天地のスケールを合わせるために、ゲル1の画像を縦方向に1.6倍拡大し、コントラストを調整したレーン15の画像を挿入したとのことです。

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しかしながら、調査委員会が同じ操作をしてみたところ、論文の画像とまったく同一とはならず、小保方さんの説明が事実かどうかはまだ確認されていません。調査委員会はさらに調査を進めるとしています。このFigure 1i は、T 細胞まで分化した細胞が初期化されてSTAP 細胞になったことを示す根拠となっています。

多能性をもつSTAP 細胞が誕生したことを示す重要な根拠となっているのが、Figure 2d と2e です。2d は試験管内での実験、2e はSTAP細胞をマウスに注射した実験の結果で、STAP 細胞が三胚葉由来のどの細胞にもなれることを示すものです。これらのうち、2d の1枚、2e の3枚が、小保方さんの博士論文で使われた画像であることが確認されました(赤枠で囲まれた画像)。

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小保方さんらは、これらの画像は間違って論文に掲載されてしまったもので、正しい画像に差し替えたいと述べているそうです。ただし、小保方さんが調査委員会にこの経緯を説明した際、この画像が博士論文に掲載されていたことを説明していませんでした。

この他、ARTICLE の「メソッド」について、ドイツの研究者の論文が流用されている個所、および実際の実験手順と異なる記載があった個所について調査が進んでいます。前者に関して、小保方さんは他の著者の論文をコピーしたことを認めたものの、どの論文からコピーしたかの記憶は曖昧であると述べているようです。

私は仕事柄、アメリカのNIH(国立衛生研究所)やその他の生物学・医学分野の研究所をずいぶん訪問し、そこで起こった出来事を色々聞きました。そうした経験からすると、こうした事態が起こった場合、研究者は研究室への入室を禁止され、実験ノートやPC 内のデータ等がすべて保全された上で調査が行われるのが普通と思われます。説明会で配布された理化学研究所の「科学研究上の不正行為の防止等に関する規定」でも、第13条第2項に、そのような措置をとることができることが明記されています。

しかしながら、今回の調査ではそうした措置はとられず、必要に応じて小保方さん側から説明や資料の提供を求めています。理化学研究所の調査は公正に行われていると思いますが、日本だけでなく、世界中の話題になってしまった論文の調査が内輪での馴れ合いで行われていないことを外部に示すためにも、そうした措置がとられるべきであったと思います。この措置は、調査の厳正性を担保し、調査対象となっている研究者を守る意味でも大切です。

さて、STAP 細胞は本当に存在するのでしょうか? この問いの答を多くの人が知りたいと考えています。しかしながら、これに関しては「第三者が再現して確認するしか方法がない」とされました。確かにその通りですが、論文自体の正当性が揺らいでいる現在、STAP 細胞はES 細胞ではないかといった指摘さえ出ています。STAP 細胞の再現実験とは別に、小保方さんが行った実験がどのようなものであったかの検証も必要です。そのためには、理化学研究所はしかるべき段階で、実験にかかわるすべての資料や、作製された「STAP 細胞」、「STAP 幹細胞」、STAP 細胞で作成したマウス等を外部の検証にかけるべきです。

3月14日の説明会を、『ネイチャー』誌のブログが伝えています。その中で、著者から論文撤回の意思表示があれば同誌は対応すること、著者全員が撤回に同意していなくても、論文の正当性に根拠がないと編集部が判断すれば、『ネイチャー』誌側が論文撤回の決定を行うと述べています。
STAP 細胞論文:いったい何が起こったのか?
STAP cell papers:Why this happened?

なぜ、こんなことが起こってしまったのか? STAP 細胞論文が発表されたときの、あの興奮は消え失せ、今では毎日のように明らかになる事実に、ひどくさびしい気分になっています。”RIKEN” といえば、世界中に知らない研究者はいない、その理化学研究所から、なぜ、このような論文が発表されてしまったのか?

現在、理化学研究所では論文に対する調査が進んでいますが、この問題を1人の研究者によって行われた特異なケースとしてとらえるべきではありません。事実関係の調査は、何人もの人にとって苦痛を伴うものになるでしょうが、なぜこの論文が生まれたのかを検証し、私たちはそこから学ばなくてはなりません。

小保方さんはまだ研究キャリアの浅い、若い研究者です。彼女は研究論文を書く作法さえ、きちんと教えてもらっていなかったことが明らかになりました。誰も文句をつけることのできない厳密な細胞培養実験を行うためのテクニックも、完全には指導されていなかったかもしれません。『ネイチャー』誌の論文の共著者の中には、小保方さんの博士論文を指導し、審査にかかわった人が2人います。また、彼女の上司にあたる人も、経験豊富な同僚も含まれています。そういった人たちが論文作成にかかわりながら、なぜこのような問題が出てきてしまったのでしょうか。

日経バイオテクの宮田満氏は書いています。「トカゲのシッポ切りだけでは問題は解決しそうにありません。理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の研究体制にもメスを入れなくてはなりません」。こうしたシビアな意見も出てくる中、理化学研究所は明日、調査の途中経過を発表します。
STAP 細胞論文:若山教授が取り下げ求める
STAP cells:Co-author asks for retraction

NHK は、問題になっているSTAP 細胞論文の著者の1人である山梨大学の若山照彦先生が、論文の取り下げを他の著者に求めていると報じました。若山先生はNHK のインタビューの中で、「全体としていろいろ分からなくなってきているとことが多すぎる。少し確証が持てなくなってきている」と述べ、論文の正当性を調べるためにも、一度論文を取り下げて調べるべきという考えを述べています。

若山先生は、STAP 細胞が多能性を持つことを証明するために、小保方さんらが作製したSTAP 細胞をマウスの胚盤胞に注入し、STAP 細胞由来の細胞をもつキメラマウスをつくる部分を担当しました。若山先生が論文取り下げの考えに至ったきっかけは、理化学研究所が3月5日に公表したプロトコルに、STAP 幹細胞ではTCR 再構成がなかったと書かれていたことだったようです。

また、山梨大学で行われた会見では、STAP細胞が様々な細胞になることを説明している『ネイチャー』誌掲載の写真が、小保方さんの博士論文掲載の写真の使い回しであったことが、確証を持てなくなる上で決定的であったと語っています。

若山先生は、実験ノートや得られたデータをすべてオープンにして、外部に検証してもらうという考えです。「もし間違いだったら、なんでこんなことが起こったのかというのを明らかにしなければいけないと思っています」という若山先生の言葉を、理化学研究所も重く受け止める必要があります。

若山先生は『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の取材にも応じ、論文取り下げを求めていると電子メールで述べました。同紙の記事によると、理化学研究所は若山先生が論文取り下げを求めている事実は認めましたが、それ以上はコメントできないとしているとのことです。
STAP 細胞論文、取り下げ?
STAP papers retraction?

Knoepfler さんは昨日のブログで、複数からの情報として、理化学研究所や国内に、『ネイチャー』誌に掲載されたSTAP 細胞論文の取り下げに向けた動きがあるようだと書いています。

正直なところ、この問題はすでにいろいろな面で深刻な事態に陥ってしまいました。論文の取り下げが、そうした問題をすべて解決してくれることはないでしょう。そうかといって、現在のままでは、事態はより深刻になりかねません。

理化学研究所は今こそ、野依良治理事長以下のガバナンスを発揮し、危機管理に取り組むべきです。日本だけでなく、世界から問われているのは、もはや2本の論文ではありません。Knoepfler さんも書いているように、「日本の科学、『ネイチャー』という科学誌、そして幹細胞研究そのもの」が、正しい道を歩んでいるかが問われているのです。
STAP細胞論文:理化学研究所の対応のまずさ
STAP cells controversial

理化学研究所はいうまでもなく日本有数の研究機関であり、多くの研究者がここで素晴らしい成果を上げています。広報活動や情報公開も積極的に行ってきました。それだけに、STAP 細胞論文に関する理化学研究所の対応のまずさが目立ちます。

STAP 細胞論文に対していくつもの指摘がなされてから、かれこれ1か月たっています。理化学研究所は2月13日に調査を開始しましたが、まだ何の発表もありません。3月5日にプロトコルを公表した際に、添え物のように「なお、研究所では、Nature 誌に掲載された論文に関し、様々な指摘があることを真摯に受け止め、所内外の有識者による調査を行っています。調査の結果が出た時点で速やかに公表します。」と述べるにとどまっています。

プロトコルの発表は内外の研究者からの問い合わせに対応したもので、いわば研究コミュニティーの中での対応にすぎません。理化学研究所の研究は税金でまかなわれているわけですから、国民に対する説明も必要です。京都大学iPS 細胞研究所所長の山中伸弥先生は、実験用マウスが逃げ出してしまった問題で、すぐに記者会見を行いました。このような誠実かつ率直に国民と語り合う対応が、理化学研究所に求められます。

STAP 細胞に関しては、論文発表にともなう理化学研究所のプレスリリースからして、問題がありました。

1月29日から30日にかけて、STAP 細胞成功のニュースをメディアは一斉に報じ、STAP 細胞とiPS 細胞を比較して、「iPS 細胞より簡単につくれる」「iPS 細胞より成功率が高い」といったSTAP 細胞の特長が強調されました。こうした報道に関して、池上彰氏は『STAP 細胞発見とiPS 細胞 「新しさ」の強調、冷静に』(朝日新聞、2月28日)で、「果たしてバランスのとれた報道だったのか」「念には念を入れた取材が求められている」と指摘していますが、これは「後出しじゃんけん」的な意見でしかありません。速報性を求められる報道の現場では、十分な取材を行うには時間的制約があり、そのためにプレスリリースが用意されるのです。上記のような、あまり適切ではない比較は、理化学研究所が発表したプレスリリースに書かれていました。したがって、この件はメディア側の落ち度ばかりとはいえないでしょう。

1月29日付の理化学研究所のプレスリリース『体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化する原理を発見』では、「iPS 細胞の樹立とは違い、STAP による初期化は迅速に起こります。iPS 細胞では多能性細胞のコロニーの形成に2〜3週間を要しますが、STAP の場合、2日以内にOct4 が発現し、3日目には複数の多能性マーカーが発現していることが確認されています。また、効率も非常に高く・・・」と書かれています。しかし、STAP 細胞はまだ、マウスでの作製が報告され、今後、世界の研究者による追試を待っている段階です。一方、ES 細胞やiPS 細胞はヒトの細胞で樹立されています。STAP 幹細胞がヒトの細胞で樹立されてはじめて、ES 細胞やiPS 細胞と同じ土俵に立て、比較が可能になるのです。

京都大学iPS 細胞研究所の山中先生は2月12日に『iPS 細胞とSTAP 細胞に関する考察』を発表しました。この中では、iPS 細胞の最近の誘導効率や作製期間が大幅に改善されていることにふれた後、「比較すべきはSTAP 細胞ではなく、STAP 幹細胞です」と述べています。池上氏は先ほどの記事で「山中教授から、iPS 細胞の研究に関する最新情報を取材していたら、こんな比較記事にはならなかったのではないでしょうか」と書いていますが、この言葉は記者よりも、理化学研究所のプレスリリースを書いた人に当てはまるでしょう。このようなプレスリリースを事前にチェックできなかったのは問題です。

山中先生はまた、「医療応用面から考えるとこのような単純な数字の比較はあまり意味がなく、再現性や互換性の検討が重要です」と書いています。
若田宇宙飛行士、ISS コマンダーに就任
Koich Wakata:Japan's first ISS Commander

国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在中の若田光一飛行士がISS コマンダーに就任するセレモニーが、日本時間の午後6時から、「きぼう」日本実験棟内で行われました。

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ISS からの映像を流すNASA TV には、別の番組の映像がたびたび途中に入ってしまうというハプニングがありましたが、ISS 上で第38次長期滞在クルーのコマンダーであるオレグ・コトフ宇宙飛行士から若田さんにコマンダーの権限が移譲される様子を見ることができました。

ヒューストンの管制室も初の日本人コマンダー誕生を祝福しました。また、筑波の管制室との交信も行われました。この交信の中で、若田さんは日本語でのメッセージも送ってきました。その中で、若田さんはISS コマンダーの任務を遂行するために、「和の心」を大切にしたいと語りました。いかにも、若田さんらしい言葉です。今後の活躍を期待したいと思います。
STAP 細胞とハーバード・コネクション
STAP cells and Harvard connection

前にも書きましたが、『ネイチャー』誌に小保方さんらの2本の論文が載ったとき、カリフォルニア大学デービス校で幹細胞を研究しているPaul Knoepfler は、すぐに自分のブログにSTAP 細胞に関するやや懐疑的なコメントをアップしました。STAP 幹細胞がES 細胞やiPS 細胞と並び立つ万能細胞となるのか疑問に思ったのが理由でしょう。

それとは別に、もう1つ理由があったのではないかと、私は推測しています。Knoepfler は2本の論文に何か「違和感」を覚えたのではないでしょうか。論文の著者にハーバード大学のチャールズ・バカンティが名を連ねていたからです。

バカンディらは2001年に、”spore-like stem cell” を発見したという論文を発表しました。バカンディらによると、この「芽胞様幹細胞」は体内のどの組織にも存在する、大きさ5マイクロメートル以下のきわめて小さな細胞です。この細胞は酸素や栄養分が欠乏した状態や、マイナス86度C までの凍結した状態でも生存が可能で、85度C の高温下でも30分以上生き延びることができます。この細胞は、組織が傷ついた時などには、それを修復する役割を果たしているというのです。

このspore-like stem cell は他の研究者による再現実験も成功せず、その存在は認められずに終わっていました。そのバカンディの研究室に小保方さんがやってきて実験をはじめたのは2008年でした。その目的は、spore-like stem cell を探索することでした。2010年の小保方さんの博士論文「三胚葉由来組織に共通した万能性体性幹細胞の探索」もこの実験に関連したものです。

哺乳類の体は発生の過程でまず外胚葉、中胚葉、内胚葉に分かれ、外肺葉からは表皮や神経細胞などが、中胚葉からは骨格や筋肉などが、内胚葉からは肺や消化管などがつくられていきます。体の組織には、造血幹細胞や神経幹細胞のように、それぞれの組織をつくる幹細胞が存在していますが、それらの幹細胞は由来する胚葉を超える(例えば外肺葉由来の幹細胞が内肺葉由来の組織をつくる)ことはないとされています。小保方さんの博士論文の目的は、胚葉を超える幹細胞の探索です。

小保方さんの博士論文の概要には、「Vacanti らは2000年に、全身の生体の組織内には三胚葉由来によらず非常に強いストレスに耐性を有するspore-like stem cell が存在し体性幹細胞の補充に寄与している可能性を提唱してきた」とし、「本研究では、spore-like stem cell の仮説を証明する第一歩として、全身の組織に共通の性質を持つ幹細胞が存在することを証明することを目標とし」と書かれています。そのための方法として、細いガラスピペットの中を通すことなどにより小さな細胞のみを選別し、培養しました。その結果、細胞のコロニーである”sphere” が形成され、このsphere にはOct4 などの多能性マーカーの発現が見られたと報告しています。Sphere の細胞は三胚葉のどの組織にも分化することが確かめられました。さらに「幹細胞の万能性を証明するための最も重要な証明方法である」キメラマウスの作成を行ったと書かれてあります。

小保方さんが2011年に、『ティシュー・エンジニアリング・パートA』誌にバカンティらと一緒に発表した論文も、同様の内容です。

説明が長くなってしまいましたが、Knoepfler は『ネイチャー』誌の論文を読んで、2001年のバカンティの論文と、2011年の小保方さんとバカンティらの論文を思い浮かべたのでしょう。

実際、Knoepfler は2月6日のブログで、「STAP 細胞に懐疑的になる5つの理由」を述べ、この中で、「STAP チームは以前、spore-like stem cell を発見したと発表していたが、私が知る限り、これが第三者によって再現されたことはない」「バカンティ氏は最近私に、STAP 細胞とspore-like stem cell は同じものだと信じていると語った」と書いています。さらに、「バカンティ氏と小保方氏は2011年にびっくりする論文を発表し、成体組織内に存在する万能細胞を発見したと発表したが、私はそのような細胞を信じていない」とも書いています。

理化学研究所に移った後の小保方さんの実験は、体の中に残されている未分化の細胞の探索から、ストレスによる細胞の初期化へと方向を転換させました。しかし、実験の全体設計や使用した技術は、バカンティの研究室時代と本質的に違っていないようです。spore-like stem cell がSTAP 細胞に変わっただけではないかというのが、Knoepfler の第一印象だったのだと思われます。

ここで述べたように、小保方さんたちが細胞の初期化に成功したことへの疑問が生じています。細胞にストレスを与えることで細胞を初期化したのではなく、試料に最初から混じっていた未分化の細胞を選別したのではないかという考えもでてきています。それとも、小保方さんらはバカンティの研究室では見つけることのできなかったspore-like stem cell を発見してしまったのでしょうか?
STAP 細胞論文をめぐる問題(2)
STAP cells are real?

STAP 細胞論文をめぐる問題は、2つのポイントに分けて考えるべきと私は思っています。その1つは論文の執筆に関する問題、そしてもう1つが、論文に書かれている結果の「再現性」の問題です。現在、STAP 細胞に懐疑的な考えも存在します。発表された論文の内容が正しいか、STAP 細胞が本当に存在するかどうかは、他の研究者が同じ実験を行って、同じ結果が得られるかどうかで検証されます。

すでに多くの研究室で再現実験が行われていますが、STAP 細胞を作製できたという報告はありません。一般論としていえば、実験の再現には時間がかることもあるので、まだ誰もSTAP 細胞をつくれないとしても、おかしなことではありません。ただし、今回の場合は、発表された論文に付随している「マテメソ」(Materials and Methods)のみでは情報が不足しており、小保方さんと同じ実験を行うことが難しいという事情もあるようです。

理化学研究所は3月5日、研究者からの問い合わせに対応する形で、STAP 細胞作製に関する実験手技解説(プロトコル)を発表しました。このプロトコルは『ネイチャー・プロトコル・エクスチェンジ』誌に掲載の予定ですが、公開までには時間がかかるため、理化学研究所はまずウェブ上で発表しました。理化学研究所によると、さらに詳細なプロトコルを準備中とのことです。

STAP 細胞では、マウスのリンパ球に酸でストレスを与えて細胞の初期化を行いますが、こうしてつくられたSTAP 細胞は多能性をもつものの、試験管の中ではほとんど増殖しません。このSTAP 細胞を特別な培養液で培養することによって、自己増殖能力と多能性をもった「STAP 幹細胞」がつくられます。つまり、STAP 細胞はSTAP 幹細胞にまでならなければ、ES 細胞やiPS 細胞のような「万能細胞」になりません。今回発表されたプロトコルでは、STAP 細胞を作るための手順が8つのステップに分けて説明されています。さらにSTAP 幹細胞を樹立するためのステップが3段階で説明されています。

このプロトコルを読んでまず気が付くのは、「リンパ球を弱い酸に浸けておくだけで簡単に作れる」というふれこみだったはずのSTAP 細胞は、実は職人芸的な手技がなければ作製できないということです。「一見単純のように見えるが、この手順には細胞の扱いと培養の条件に細心の注意が必要である」と、プロトコルには書かれています。死んでしまう一歩手前のストレスを細胞に与え続けるためには微妙なコントロールが必要のようです(それでも80%の細胞は死んでしまいます)。また、STAP 細胞作製に用いる細胞も慎重に選ばなくてはなりません。リンパ球を取り出すマウスは生後1週間でなければならず、それ以上経ってしまったマウスでは、細胞初期化の効率が著しく低下すると書かれています。また、メスよりもオスの細胞の方が初期化の効率は高いとのことです。

プロトコルの各ステップには「IMPORTANT」という注意書きがあり、例えば「この段階では細胞の密度がきわめて重要で、培地上の細胞数を1平方cm 当たり10万〜100万個に維持しなくてはならない」という具合にこと細かく指示されています。IMPORTANT の数は全部で24にも及びます。これらを全部クリアしていかないと、STAP 幹細胞はつくれないようです。

このプロトコルを読んで、私が気になった点がありました。それは、STAP 幹細胞をつくるための2番目のステップのIMPORTANT に、「STAP 細胞から複数のSTAP 幹細胞株を樹立した。・・・そのうちの8種類のクローンについて調べたが、TCR の再構成は認められなかった」と書かれていたことでした。

TCR とはT 細胞レセプター(受容体)のことです。T 細胞にまで分化すると、TCR 遺伝子には再構成(組み換え)が起こり、元の細胞のTCR 遺伝子とは異なるものになってしまいます。『ネイチャー』誌に発表された論文では、細胞が初期化された証拠として、このTCR 遺伝子を調べています。つまり、STAP 細胞のTCR 遺伝子は再構成を起こしており、これは一度T 細胞に分化した細胞が初期化された証拠だとしたのです。

ところが、今回のプロトコルでは、STAP 細胞からつくったはずのSTAP 幹細胞にはTCR 遺伝子再構成はなかったと書かれています。TCR 遺伝子の再構成は一度起きてしまうと、元に戻ることはできません。とすると、これまで論文が主張してきた、初期化された細胞からSTAP 幹細胞ができたという論理展開は矛盾をきたしてしまいます。STAP 幹細胞はT 細胞以外の細胞が初期化されてできたのでしょうか? そうだとすると、そのT 細胞以外の細胞が初期化されたという事実はいかにして確かめられたのでしょうか?

調べてみると、この問題は私が指摘するまでもなく、ネット上にすでにいくつものコメントが発表されていました。慶応大学の吉村昭彦先生はブログ上に「T 細胞はSTAP 幹細胞にはなれない」という記事をアップし、「少なくとも終末分化した細胞のリプログラミングに成功したとは結論できないのではないか」と書いています。

TCR 遺伝子再構成に関しては、さらにDNA 解析データからの指摘もあります。また、『ネイチャー』誌の論文でTCR 遺伝子の再構成が起きていることを説明するために使われたのが、実は最初に「不自然さ」が指摘されたFigure 1i の電気泳動の写真でした。

こうして、STAP 細胞論文をめぐる問題は、今やその内容に関しても深刻な疑問が提出されるに至りました。私はSTAP 細胞論文を擁護する立場でも、否定する立場でもありません。ただし、本当のことを知りたいと思います。小保方さんら論文執筆者および理化学研究所が研究の詳細や事実関係を明らかにし、それが世界中の研究者によって検証されるのを待ちたいと思います。
STAP 細胞論文をめぐる問題(1)
STAP cells under investigation

理化学研究所の小保方晴子さんらのグループは、STAP 細胞に関する2本の論文(ArticleとLetter)を『ネイチャー』誌の1月30日号に発表しました。ここ2週間ほど、この2本の論文をめぐって、インターネット上でさまざまな情報が行き交っているのは、皆様ご存じの通りです。調査を開始したという理化学研究所からはまだ何の報告もなく、3月3日には、日本分子生物学会が異例の理事長声明を発表するに至りました。

私自身はこの件について、特別な情報を何ももっていないので、ネット上の議論のディテールには触れませんが、私なりにこの問題を整理してみました。

時系列的に何が起こったかを調べてみると、まず、論文が発表されると、カリフォルニア大学デービス校で幹細胞を研究しているPaul Knoepfler が、自分のブログにSTAP 細胞に関するやや懐疑的なコメントをアップしました(日付は1月29日)。その内容はすぐに、学術ジャーナルに発表された論文に関して議論を行うPubPeer というサイトに投稿されました。これも日付は1月29日です。以後、このPubPeer で議論が始まりました。最初は実験結果に関する議論でしたが、2月4日にはArticle の論文のFigure 1i の電気泳動の画像の3番目のレーンが不自然という指摘がなされ、以後、論文に掲載された画像に関して多くの指摘がアップされるに至りました。2月12日頃から、日本でもこの問題がネット上で議論されるようになり、理化学研究所は調査開始と発表しました。2月17日には『ネイチャー』誌も調査を開始したと発表しました。この時点で、今回の出来事は新たな段階に入ったといえるでしょう。

STAP 細胞論文に関する日本および海外での議論を見ると、この問題は大きく2つに分けて考えなくてはいけないと思われます。1つは、論文の執筆に関する問題です。画像の意図的な加工や他の論文からの流用などが行われていないかなど初歩的な問題から、塩基配列の解析データがしかるべきデータベースに登録されているかといった点まで、論文を執筆するにあたって当然守らなければいけないルールが守られているかどうかという問題です。

もう1つは、STAP 細胞自体に関するもので、極論すると、STAP 細胞は本当に存在するのかという問題です。これに関しては「再現性」が重要で、他の研究者が同じ実験を行ってSTAP 細胞を作製できれば、STAP 細胞の正しさが証明されることになります。

後者に関しては、別に書くとして、ここでは前者について、もう少し触れたいと思います。ネット上では、論文の一部画像の「不自然さ」のほか、他の研究者の論文の流用(本来は引用にすべき)なども指摘されています。一部には「それほど大きな問題ではない」という意見もあるようですが、これは研究者の倫理の問題だけでなく、科学研究の公正性を保つ意味でも非常に重要な問題です。『ネイチャー』誌に限らず、各学術ジャーナルは論文掲載にあたってきわめて厳密な条件を設けています。それは、「科学」を守るという使命を遂行するために絶対必要だからです。おそらく『ネイチャー』誌は徹底的な検証を行い、事実関係を明らかにしてくれるでしょう。

私が気になっているのは、理化学研究所の対応です。原則論からすると、今回の一件は、論文を執筆した研究者本人がまず対応すべき問題です。しかし、山梨大学の若山照彦先生とハーバード大学のヴァカンティ氏を除くと、小保方さんをはじめ、STAP 細胞の作製に中心的な役割を果たした研究者はこれまでまったく現れず、すべてを理化学研究所が取り仕切っているように見えます。その理化学研究所は調査を開始するにあたって「研究成果そのものについては揺るがない」というコメントを発表しているようです。もし、そうだとすると、理化学研究所は当時、今回の問題をあまり深刻に受け止めていなかったのかもしれません。理化学研究所は、調査が誰によって行われ、その結果をいつ公表するかも、発表していません。こうした対応は、理化学研究所の国際的な信用を傷付けることにもなりかねません。

一方、若山先生はこの間、メディアからの質問に対応してきました。Knoepfler のブログ上でもインタビューに応じ、Knoepfler の質問に誠実に答えるとともに、「私は逃げない」と言明しています。とても立派だと思います。
アームストロング・フライト・リサーチ・センター
Armstrong Flight Research Center:DFRC renamed

月面を歩いた最初の人間であるニール・アームストロングを記念して、NASA のドライデン・フライト・リサーチ・センターの名称が、3月1日に、アームストロング・フライト・リサーチ・センターに変わりました。

ドライデン・フライト・リサーチ・センターは南カリフォルニアのエドワーズ空軍基地内にあり、NACA(アメリカ航空諮問委員会、NASA の前身)の時代から、ここで多くの実験機の試験飛行が行われてきました。

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アームストロングは1955年から1962年まで、このセンターのリサーチ・テスト・パイロットでした。NASA によると、この間、アームストロングはのべ2400時間以上飛行し、48種類の航空機の試験飛行を行ったとのことです。その中には極超音速実験機X-15 での7回の飛行も含まれています。

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アームストロングは1962年にNASA の宇宙飛行士となり、1966年にジェミニ8号の飛行を行った後、1969年にアポロ11号で人類初の月着陸を成功させました。

ドライデン・フライト・リサーチ・センターでは、アポロ月着陸船のシミュレーターとして開発されたLLRV(Lunar Landing Research Vehicle)の飛行試験も行われました。

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もちろん、アームストロングもチームの一員として飛行試験に参加しています。

アメリカの高速飛行航空機の開発に大きな足跡を残し、最後はNASA の副長官もつとめたヒュー・ドライデンの名は、同センターの西部航空試験場をドライデン航空試験場と名称変更して残されることになりました。

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