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GPM 主衛星、打ち上げに成功
GPM Core Observatory launched from Tanegashima Space Center

二周波降水レーダーDPRを搭載したGPM 主衛星が、2月28日午前3時37分、種子島宇宙センターから打ち上げられました。

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GPM(全球降水観測)とは、地球をまわるいくつもの衛星で世界の降水を常時観測する国際協力ミッションのことです。GPM 主衛星はその中心的な存在になります。

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DPR はJAXA とNICT(情報通信研究機構)が共同で開発しました。「二周波」とは2種類の電波(Ku帯13.6GHz、Ka帯35.5GHz)を使うという意味です。熱帯に降る強い雨も、温帯の霧雨も観測できます。また、雪が降っている様子も観測できます。DPR の走査幅は、13.6GHzレーダーが約245km、35.5GHzレーダーが約125kmです。GPM 主衛星には、アメリカが開発したGPM マイクロ波放射計(GMI)も搭載されています。

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これまで宇宙に打ち上げられた降水レーダーは、NASA のTRMM(熱帯降雨観測衛星)に搭載されているレーダーのみです。このレーダーも日本が開発したものです。1997年に打ち上げられたTRMM は今も現役で、16年以上にわたって雨の観測を行っています。DPR はTRMM のレーダーを高性能化したレーダーといえます。

GPM 主衛星の軌道傾斜角は65度で、中高緯度域までカバーしており、地球全体の降水の95%を観測することが可能です。気候変動の研究や天気予報の精度向上、洪水災害防止などに降水量の観測は非常に重要で、DPR には大きな期待がかけられています。

GPM 主衛星自体はNASA の衛星で、それを日本のH-IIA ロケットで打ち上げました。GPM/DRP は日本とアメリカの共同ミッションであり、キャロライン・ケネディ駐日大使が打ち上げを見るために種子島を訪れたのはとてもよかったと思います。日本とアメリカの宇宙での緊密な協力関係は非常に大事です。
メタリック・パステルの大脳皮質
Science visualization:Cortex in Metallic Pastels

私が毎年、この時期に楽しみにしている『サイエンス』誌の特集があります。同誌が行っているサイエンス・ビジュアライゼーションのコンテストの結果が発表されるのです。ジャンルは「イラストレーション」「ポスターとグラフィックス」「写真」「ゲームとアプリ」「映像」に分かれています。今年の受賞作品で、特に印象的だったのは、イラストレーション部門で第1席となった下の作品でした。

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不思議な林に迷い込んだような感じになる作品です。私たち日本人にとってどこか懐かしい風景に見えるのは、日本画のような印象があるからでしょうか。実は、このイラストレーションは、脳の神経細胞を描いたものです。

『メタリック・パステルの大脳皮質』というタイトルのこの作品。作者のグレッグ・ダン氏はペンシルベニア大学で脳科学の博士号を取得したのち、絵画の分野で創作活動を行っている人物です。東洋美術、特に江戸時代の日本画の愛好家で、彼の作品にはその影響が強く現れています。上の作品がまるで日本画のように見えるのはそのためなのです。

大脳皮質は神経細胞が密集しており、これをそのままイラストで描くと、非常に複雑で分かりづらいものになってしまいます。そこで、ダン氏は大脳皮質を極めて薄くスライスしたシチュエーションで神経細胞を描きました。微妙に変化する繊細な色彩を背景に、神経細胞が並んでいます。樹木の根のように見えるのは、細胞本体のまわりに何本も広がる樹状突起です。木の幹のように長く伸びているのは、他の神経細胞につながる軸索です。神経細胞同士が複雑に絡まる様子も描かれています。イラストの上の方では、これらの神経細胞のネットワークが表現されています。神経細胞を目立たせるために、金箔やパラジウムも使われています。科学の知識とアートのセンスが融合した作品です。

こうした素晴らしい作品を見ていると、海外のサイエンス・アートのレベルの高さを痛感します。
中国の有人宇宙飛行計画と軍事ミッション
China’s manned spaceflight program and military missions

下の写真は、2013年6月11日、中国の酒泉衛星発射センターの管制室で神舟10号の打ち上げ成功を報告し、敬礼する有人宇宙計画総指揮の張又侠上将です。同上将は人民解放軍で武器の開発や調達、近代化などを担当する総装備部の部長で、人民解放軍のトップ4の1人です。中央軍事委員会委員(委員長は習近平)もつとめています。中国の有人宇宙計画は人民解放軍総装備部の管轄になっており、張上将の直接指揮下で行われているのです。

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神舟10号には聶海勝(下の写真中央)、張暁光(右)、王亜平(左)が搭乗し、軌道上の宇宙ステーション、天宮1号にドッキングしました。

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急速に発展する中国の宇宙開発に対して、近年、アメリカは自国の安全保障にとって大きな脅威になるのではないかという警戒心を高めています。2007年に中国が行った衛星破壊実験後は、こうした議論が特に活発になりました。人民解放軍が開発している宇宙技術の中には、衛星破壊のような「宇宙対抗」手段だけでなく、レーザー兵器や粒子ビーム兵器、マイクロ波パルス兵器のような、より攻撃的な兵器もあるのではないかという推測もあります。

中国の有人宇宙計画において軍事ミッションが行われていることも、アメリカが警戒する理由の1つです。これは、2003年に神舟5号で楊利偉が中国初の有人飛行を行った頃から指摘されていました。共産圏の宇宙開発に詳しいマーク・ウェイドは、2003年10月2日に、神舟についての記事を『スペースデイリー』のサイトに投稿しました。この時期は、神舟5号の打ち上げの直前に当たっています。ウェイドはここで、それまでに4回打ち上げられた無人の神舟が、ELINT(電子諜報)を行っていたという専門家の分析を紹介しています。それによると、神舟1号から4号までには、軌道モジュールに2種類のアンテナが設置されていました。1つは3本のブームの先に取り付けられたUHF アンテナで、地上の電波をとらえます。もう1つは弧状に並べられた7個のホーンアンテナで、地上の電波源の位置を特定します。中国はそれまでELINT 衛星を持っていなかったので、「これは中国の宇宙からの偵察活動にとって大きな飛躍であった」とウェイドは書いています。神舟4号は2003年のイラク戦争時も飛行しており、中国はアメリカの軍事行動について貴重な情報を取得したとみられます。

神舟3号と4号には、偵察用のカメラも搭載されていました。カメラは軌道モジュールの先端と軌道モジュール本体の2個所に設置されていました。開口部の大きさから、カメラの口径は50〜60cm とみられています。2台のカメラを用いることにより、広域からクローズアップまでいくつものモードで撮影が可能です。中国の専門家によると、カメラの最大分解能は1.6m とのことです。これらのことは、中国が公開したニュース映像や雑誌に掲載されていた組立中の神舟の写真の分析から明らかになりました。

以上のことから、「中国初の有人宇宙飛行の主なミッションは軍事偵察活動であろう」と、ウェイドは書いています。実際、神舟5号にも、さらには2005年に打ち上げられた神舟6号にも、同じ偵察用カメラが設置されていたことが確認されています。

中国の有人宇宙飛行で行われる軍事ミッションを警戒する声は、2011年に打ち上げられた宇宙ステーション、天宮1号によって、さらに高まりました。天宮1号はソ連時代のアルマズ宇宙ステーションに重ねて語られることがあります。アルマズは23mm 機関砲を装備し、宇宙空間の戦闘での生存性を高めた軍用の宇宙ステーションでした。アルマズはサリュート2号、3号、5号として実際に打ち上げられ、宇宙から偵察活動を行いました。

天宮1号は主に非軍事目的に利用されるものの、宇宙飛行士が長期滞在して偵察を行う軍事プラットフォームとしての有効性を検証することも、その目的の1つであるという指摘があります。中国が目指す宇宙での覇権確立に、有人宇宙計画も重要な役割を果たすのです。ジョージ・ワシントン大学宇宙政策研究所所長のスコット・ペースはアメリカ議会の委員会で次のように証言しています。「中国の有人宇宙計画は人民解放軍によってマネージメントされ、軍事目的で開発された技術を使っている。したがって、正確に言えば、中国は科学や探査など非軍事の活動を行ってはいるが、非軍事の宇宙計画というものは中国に存在しない」。
宇宙と炎:ソチ冬季オリンピック開会式
Space and Fire:Sochi Winter Olympics opening ceremony

ソチ冬季オリンピックが開幕し、聖火台に火が灯されました。その炎は、ロシア民話に登場する火の鳥のようでしたが、私は下の絵を思い出しました。この絵は、ロシアの伝統的な絵画の町パレフの画家が描いたものです。松明を掲げて宇宙を飛ぶのはガガーリンです。パレフの画家たちは、ガガーリンにはじまった宇宙飛行にインスピレーションを受けた作品をたくさん発表しており、これはその1枚です。

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今回の冬季オリンピックの聖火リレーには、国際宇宙ステーション(ISS)の9名のクルーも参加しました。昨年11月7日にバイコヌール宇宙基地から打ち上げられた若田光一さんら第38次/第39次長期滞在クルーは、聖火リレーに使われるトーチをISS に運びました。

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このトーチは11月9日、オレグ・コトフ、セルゲイ・リャザンスキー両宇宙飛行士の船外活動によって宇宙空間に出され、2人は高度400km の軌道上でトーチを高々と掲げました。その後、船内に戻ったトーチを持って、コトフ宇宙飛行士はトレッドミルで走りました。さらにトーチはISS クルーの間を渡った後、11月11日、第36次/第37次長期滞在クルーによって地球に持ち帰られました。

安全性の問題から、ISS 上では炎は点けられなかったものの、こうしてロシア中を巡った聖火リレーに、宇宙も加わりました。それだけでなく、宇宙から地上に戻ったそのトーチが、ウラジスラフ・トレチャクさんとイリーナ・ロドニナさんによって、聖火台の点火に使われたのです。宇宙と炎が結びついたその場面を見て、私はパレフの画家が描いた絵を思い出したわけです。
STAP 細胞:多能性獲得の新しい方法
STAP:Stem cell breakthrough

理化学研究所の小保方晴子さんのグループが発見したSTAP 細胞の話題が日本中を駆け巡っています。細胞を弱い酸に30分ほどさらすだけで、多能性が獲得されたという、これまでの常識では考えられなかった発見です。

小保方さんらの論文は『ネイチャー』誌の1月30日号に掲載されました。「外界からの刺激で体細胞が多能性を獲得した」という驚くべき結果を報告する論文がARTICLE に、さらに、「このSTAP 細胞は胎盤組織にもなる」という、もう1つの驚きの結果を報告する論文がLETTER に掲載されています。同じ著者の論文が2本同時に掲載されるのはあまりないことですが、さらに、これらの論文は同じ号のNEWS 欄とNEWS & VIEWS 欄の両方で紹介されています。これも異例のことで、この研究がどれだけ注目されているかを如実に示すものと言えるでしょう。

オンライン上の論文ページのSupplementary information からは、動画をダウンロードすることができます。弱い酸にさらしたマウスのリンパ球がSTAP 細胞に変身していく様子を見ることができます。

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STAP 細胞を注入して作製されたキメラマウスの胎児の心臓が鼓動を打っている様子も印象的です。

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私が2本の論文を読んで感じたのは、使用されている写真や図表の多さです。これまでの生物学の常識を覆す発見であるだけに、この実験が科学的に厳密に行われ、その結果も厳密に検証されていることを示すために、これだけ多数のカラー写真や綿密に制作された図表が必要だったのでしょう。

『ネイチャー』誌に最初に投稿した時には、レフリーの1人に「生物学の歴史を愚弄している」とまで言われてリジェクトされたそうですから、小保方さんは科学界を納得させる論文をつくるために工夫を重ねたのでしょう。その苦労がよくわかる論文です。

ヒトの細胞への応用を目指す競争がこれからはじまります。外的ストレスを加えただけで、なぜ細胞が多能性を獲得したのかを解明することも、今後の大きな課題です。万能細胞を作製する新しい方法の研究もヒートアップしていくでしょう。

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