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ISS:2回目の船外活動が終了
Second EVA to install new pump module completed

国際宇宙ステーション(ISS)で2回目の船外活動が行われました。クリスマス・イヴに行われた7時間30分間の船外活動によって、新しいポンプ・モジュールが取り付けられました。下は、デスティニー・モジュールでロボットアームを操作する若田光一さんです。

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ヒューストンの管制センターのCAPCOM 席では、今回も星出彰彦さんがサポートに当たり、若田さんとの交信も行いました。下は、若田さんが操作するロボットアームの先端に固定されたマイケル・ホプキンスさんが、ポンプ・モジュールを保持して移動しているところです。取り付け位置では、リチャード・マストラッキオさんが待っています。

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新しいポンプ・モジュールにはアンモニア・ラインと電力ケーブルが結合され、ポンプを作動させるコマンドが地上から送られました。今後、最終的な確認が必要ですが、ISS の外部冷却系ループA の不具合はこれで解決したとみられます。交換された古いポンプ・モジュールは仮置きのままです。しかし、このままの状態でもしばらくは問題ないため、3回目の船外活動は行われないことになりました。
地球の出:アポロ8号から45年
Earthrise:View from the moon

今から45年前の1968年12月21日、フランク・ボーマン、ジェームズ・ラヴェル、ウィリアム・アンダースの3名を乗せたアポロ8号が打ち上げられ、3日後の24日に月に到達しました。人間が初めて月を周回する軌道に入った飛行でした。

月を回りながら眼下に広がる月面の写真を撮影していたアポロ8号のクルーは、4周目で、月の地平線から地球が上っていく光景、「アースライズ」を初めて眺め、非常な感動を受けました。その時撮影された写真は、20世紀の宇宙探査の歴史の中で最も有名な写真の1枚となっています。暗黒の宇宙空間に浮かぶ青い地球の姿は、あらためて、地球の大切さを教えてくれます。

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月の地平線とその上に浮かぶ地球の姿を一緒のフレームに収めた写真は、それ以前に無人の月探査機によっても撮影されていました。下は、1966年にアメリカの月周回探査機ルナー・オービターが撮影したものです。

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ルナー・オービターはアポロ宇宙船の月着陸場所を調査するために打ち上げられた探査機で、月の表面の詳細な写真を多数撮影しました。NASA は2008年に、当時のデータをもとに高精細のデジタル画像を作成しました。それが上の画像です。

当時のソ連の宇宙船も、同じような写真を撮影していました。下は、1968年11月に、ゾンド6号が撮影したものです。ゾンド宇宙船は有人月周回飛行を目指した宇宙船でした。

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下は1969年8月にゾンド7号が撮影した写真です。

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今から40年以上前、人類は宇宙という未知の空間への探検を始めたばかりでした。地球の軌道を離れ、月を目指した計画が、地球が宇宙の一員であることを私たちに教えてくれたのです。

なお、当時のアメリカとソ連の月着陸競争やゾンド宇宙船については、『フィナル・フロンティア』に詳しく書いてあります。
ISS:1回目の船外活動が終了
Station crew removed failed pump module

国際宇宙ステーション(ISS)のポンプ・モジュールを交換するための1回目の船外活動が、12月21日に終了しました。船外活動はチャード・マストラッキオさんとマイケル・ホプキンンスさんによって行われ、若田光一さんがロボットアームの操作を行いました。

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ヒューストンの管制センターのCAPCOM 席には星出彰彦さんの姿がありました。

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船外に出たマストラッキオさんとホプキンンスさんは、まず不具合を起こしたポンプ・モジュールのアンモニアのラインと電力ケーブルを外す作業を行いました。作業は予定よりも早く進んだため、マストラッキオさんは、2日目の船外活動で行うことになっているポンプ・モジュールの取り外しと仮置きまでの作業を行うことを地上に提案し、了承されました。船外活動はそこまで行われ、5時間28分間で終了しました。

2回目の船外活動は23日に予定されていましたが、24日に変更されました。船外活動後のチェックの際、マストラッキオさんの船外活動服に少量の水が侵入してしまい、次回の船外活動では、マストラッキオさんは別の船外活動服を着用することになりました。そのため、新しい船外活動服のサイズ合わせやチェックなどの時間が必要になったのです。

実は、今回の船外活動では、船外活動服に別の問題があり、対策が取られていました。今年7月にNASA のクリス・キャシディさんとESA のルカ・パルミターノさんが船外活動を行った際、パルミターノさんの船外活動服の冷却ループで水漏れが起こり、ヘルメット内に水が浸入しはじめました。パルミターノさんはエアロックに緊急帰還しました。水漏れの原因はフィルターに何かが混入して水の流れがブロックされ、逆流したためと考えられました。しかし、この問題は完全には解決されていませんでした。このとき不具合を起こした船外活動服No. 3011 は、今回ホプキンスさんが着用しました。NASA は船外活動を行うに当たって、2人のヘルメット内に吸水材を装着するとものに、ヘルメット内に水漏れが発生した場合、エアロックまで戻る間呼吸が可能なように、シュノーケルの役割をはたすチューブもヘルメット内に用意していました。しかし、実際には、この問題は発生しませんでした。
ISS:ポンプ・モジュール交換のため、船外活動実施へ
ISS:EVAs to replace Pump Module

国際宇宙ステーション(ISS)で不具合を起こしたポンプ・モジュールを交換するための船外活動が行われることになりました。船外活動を行うのはチャード・マストラッキオさんとマイケル・ホプキンンスさんです。船外活動は3回にわたって行われ、最初の2回はマストラッキオさんがEVA1 を、ホプキンンスさんがEVA2 を、3回目はホプキンンスさんがEVA1 を、マストラッキオさんがEVA2 をつとめます。ロボットアームの担当は若田光一さんです。

不具合を起こしたポンプ・モジュールとスペアのポンプ・モジュールの位置は下の通りです。スペアはESP-3 とよばれる保管場所に置かれています。

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第1日目には、まず、不具合を起こしたポンプ・モジュールを取り外す準備を行います。ポンプ・モジュールと4本のアンモニアのループは、クイック・ディスコネクトとよばれる自動防漏式のカップリングで結合されています。下のCG の青色の線がアンモニアの流れる管を示しており、右端の部分がクイック・ディスコネクトです。マストラッキオさんがこのクイック・ディスコネクトを外します。

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アンモニアの2本の管にはポンプ・モジュール・ジャンパーが取り付けられます。これはポンプ・モジュールを取り外した後、昼夜の寒暖差でアンモニアに過大な圧力がかかるのを防ぐためのものです。5本の電力コネクターも外されます。この日には、スペアのポンプ・モジュールを覆っている多層断熱材を外す作業も行われます。

第2日目には、まず故障したポンプ・モジュールを取り外す作業が行われます。ポンプ・モジュールは近くに仮置きされます。

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次に、スペアのポンプ・モジュールをESP-3 から取り外し、ロボットアームで移動します。

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その後、電力ケーブルが結合されます。

第3日目には、クイック・ディスコネクトを接続し、新しいポンプ・モジュールの取り付けを終えます。

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一方、古いポンプ・モジュールはESP-3 に保管されます。

ヒューストンからは、すでに船外活動の手順書やクイック・ディスコネクトの外し方などの資料映像がISS に送られています。
中国の月探査機、嫦娥3号の着陸地点
Landing site of Chang'e-3

中国の月探査機、嫦娥3号は12月14日午後9時11分(北京時間)、月面への軟着陸に成功しました。着陸地点は北緯44.12度、西経19.51度(東経340.49度)。「雨の海」の北端で、これまでの報道で着陸目標とされてきた「虹の入江」の東の地域でした。

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極軌道をとっていた嫦娥3号は、南から目標地点にアプローチし、着陸を果たしました。下は、嫦娥3号の着陸までの経路です。

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下は、NASAの月周回衛星LROが以前に取得していた画像の上に、嫦娥3号が地球に送ってきた着陸直前の画像のフレームを示したものです。小さな四角に囲まれたあたりが、着陸地点とみられています。

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嫦娥3号は12月6日に月を周回する極軌道に入りました。高度は約100km、月を1周するのにかかる時間は約2時間です。その後、着陸を試みるまで8日間かかっていますが、これにはいくつかの理由がありました。1つは、12月6日の月齢は3日、いわゆる三日月で、雨の海にはまだ太陽の光が差していませんでした。目標地域が朝になるのを待つ必要があったのです。ちなみに、月では昼と夜は2週間ずつ続きます。また、12月6日頃には、嫦娥3号の軌道面は、まだ目標地域の上を通っていませんでした。着陸のタイミングを待つ間、軌道の微調整や機器の点検などが行われていたと思われます。

嫦娥3号は12月10日に、月の裏側で軌道変更のためのエンジン噴射を行い、近月点高度15km、遠月点高度100kmの楕円軌道に入りました。嫦娥3号の着陸目標としては、下の画像のように、実際に着陸した場所を含み、さらに西側の虹の入江までの長方形の地域が設定されていたようです。

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月はゆっくり自転しているので、嫦娥3号の軌道面は、経度にすると、1日に約12度しか西にずれていきません。したがって、嫦娥3号には着陸目標内に降下する機会が十分にあり、何か不具合が発生しても、対応をとる余裕があったでしょう。ただし、着陸機とローバーを午前中に分離したいという事情があったため、できるだけ早い着陸機会に降下を行ったとみられます。真昼になると、月面の温度が急激に上昇してしまうからです。

着陸後、翌15日に、ローバー「玉兎」が月面に降りて活動を開始しました。

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雨の海は、約38億年前の衝突によって生じた巨大なくぼみを、内部から噴出してきた溶岩が埋めてつくられました。嫦娥3号が雨の海を着陸地点に選んだ一番の理由は、ここにはきわめてなめらかな溶岩原が広がっており、高地のような起伏の激しい地形はなく、着陸の障害になるクレーターや大きな岩石も少ないため、着陸に安全な場所だったことにあると思われます。

科学的な見地からいうと、雨の海を埋めた溶岩は、月での火山活動が活発であった30〜38億年前に噴出したもので、これを調べることによって、月の進化についての新しい知見が得られるものと期待されます。
ISS のポンプ・モジュール:船外活動で交換へ
ISS:Spacewalks to repair faulty cooling system

国際宇宙ステーション(ISS)の外部冷却ループの不具合はまだ解決していません。NASAは問題となっているフロー・コントロープ・バルブのあるポンプ・モジュールをスペアと交換するための船外活動を行うことにしました。このため、準備が進められていたシグナス宇宙船の打ち上げは、来年1月中旬以降に延期されました。

船外活動はリチャード・マストラッキオさんとマイケル・ホプキンンスさんによって、12月21日、23日、25日に行われます。ISS の長期滞在クルーは船外活動に実施に向けて、すでに準備を進めていました。
ISS:シグナス宇宙船の打ち上げ延期
ISS:Flow Control Valve troubleshooting

国際宇宙ステーション(ISS)の外部冷却ループA のフロー・コントロール・バルブの不具合に対するトラブルシューティングが続いていますが、まだ復旧の見通しはついていません。そのため、12月18日に予定されていたシグナス宇宙船の打ち上げは19日以降に延期されました。シグナス宇宙船はこの9月にISS への試験飛行に成功しており、今回が大1回目の輸送ミッションとなります。

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一方、ISS 長期滞在クルーのチャード・マストラッキオさんとマイケル・ホプキンンスさんは、今週後半に実施されるかもしれない船外活動に備えて、クエスト・エアロックで船外活動用宇宙服の点検を行いました。
国際宇宙ステーションの外部冷却ループが自動停止
ISS:Cooling system malfunction

12月11日、国際宇宙ステーション(ISS)の外部冷却ループA を駆動しているポンプ・モジュールが自動停止しました。ISS の外部冷却ループは2系統あります。NASA はISS のいくつかの機器の冷却をループB に切り換えるとともに、ISS の運用や実験等に影響を与えない範囲で、ハーモニー、コロンバス、そして「きぼう」モジュールのいくつかの機器を停止させました。ISS には現在、若田光一さんを含む第38次長期滞在クルーが滞在していますが、クルーに危険はありません。NASA は原因を調査中ですが、冷却媒体であるアンモニアの流量をコントロールしているバルブの不具合とみられています。

ループA のポンプ・モジュールは、ISS の右舷側にあります。

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ISS には、機器の作動やクルーの活動によって発生する熱を取り除く熱制御システム(ATCS:能動的熱制御システム)が備わっています。クルーが仕事をしたり生活する与圧部では、内部熱制御システム(IATCS)が水による冷却ループで除熱します。アメリカおよび国際パートナー(日本、ヨーロッパ)の各モジュールからの熱はハーモニー・モジュールにある熱交換器に導かれます。この熱交換器を介して、熱は外部熱制御システム(EATCS)のアンモニアによる冷却ループに伝えられ、ラジエーターによって宇宙空間に放出されます。外部冷却ループでアンモニアを使用しているのは、アンモニアが冷却媒体として優れた性質をもっているからです。ただし、アンモニアは有毒なので、与圧部の冷却ループでは水を用いているのです。

現在、ループB は正常に動いていますが、万が一、こちらにも異常が発生すると深刻な事態になりかねません。そのため、NASA は早急にループA を復旧させたいとしています。

故障したとみられるフロー・コントロール・バルブは、アンモニアの温度を調節するためのものです。ハーモニーの熱交換器に流れ込むアンモニアの温度が下がり過ぎて与圧部側の冷却水が凍ってしまわないよう、ラジエーターからのアンモニアと熱交換器からのアンモニアの流量を調節して、温度をある範囲に保っているのです。今回、アンモニアの温度が規定値以下になりそうになったため、ループが自動的に停止しました。

フロー・コントロール・バルブは、ポンプ・モジュール内のPCVP(ポンプ&コントロール・バルブ・パッケージ)という装置の中にあります。ポンプ・モジュールを開けてバルブを修理することはできないので、遠隔操作やソフトウェアの変更などで復旧できない場合は、ポンプ・モジュールごとスペアと交換することになるかもしれません。船外活動が行われる場合は、おそらくリチャード・マストラッキオさんとマイケル・ホプキンンスさんが船外に出て、若田さんがロボットアームを操作して支援することになるでしょう。ポンプ・モジュールのスペアが設置されている場所は以下の通りです。

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右舷側のポンプ・モジュールは2010年に回路がショートして動かなくなりました。この時、3回の船外活動を行って交換したものが、今回問題を起こしたポンプ・モジュールです。

12月18日にはシグナス宇宙船が補給物資を積んで打ち上げの予定になっていますが、外部冷却ループの復旧が優先されるため、打ち上げは延期になる可能性があります。
ターナー展:月と木星とペガスス
Joseph Mallord William Turner:Moonlight, a Study at Millbank

先日、遅ればせながらターナー展を見てきました。初期の代表的な作品の1つ、『月光、ミルバンクより眺めた習作』も来ていました。この作品は夜景を描いているため、印刷物やウェブ上の画像では、その微妙な色調を見分けることができません。テムズ川に映る月の光がやはり印象的でした。

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この作品では、月の右上に明るく輝く星が描かれています。満月に対抗してこれだけ明るく見えるのは、木星か土星しかありません。

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そこで、月と木星あるいは土星がこうした位置関係になる日がいつだったのかを、天文ソフトで調べてみました。この作品は1797年に発表されていますが、1796〜1797年で、このような光景が見られたのは、1796年7月23日の午後10時30分頃か、同年8月19日の午後9時頃しかないことがわかりました。ただし、7月23日の月は月齢18日で、右側が欠け始めていますから、8月19日と考えた方がいいでしょう。この日は満月の翌日で、月はほとんど満月と同じ形をしています。右上に輝いていたのは木星でした。

作品をよく見ると、空の上の方には、2等星や3等星くらいの明るさの星がいくつも描かれています。この夜、そのあたりにはペガスス座が姿を見せていました。月と木星の上方の3つの星の位置はペガスス座の2等星エニフ、マルカブ、シェアトの位置に対応している印象があります。これらの星はランダムに描かれている可能性もありますが、風景画家として、ターナーは自分の見た光景を夜空も含めて正確に描いていたのだと、私は思っています。

1796年11月17日には、土星が同じような位置に来るのですが、この時期の東の空はにぎやかで、おうし座のアルデバランやぎょしゃ座のカペラといった1等星、ふたご座のカストルとボルックスなどの目立つ星が輝いています。この夜に、ターナーがこの作品を描いていたとしたら、星空の印象は違っていたのではないでしょうか。

なお、ターナー展の図録に掲載されているこの作品の写真では、不思議なことに木星が消えています。東京都美術館の方に質問したところ、テート美術館から送られてきた画像データに問題があったとのことでした。
ダン・ブラウン『インフェルノ』:後味が悪い理由
Dan Brown’s Inferno:Is it a utopia?

ダン・ブラウンの『インフェルノ』(越前敏弥訳、角川書店)を読み終えたところです。

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今度はダンテの『神曲』にまつわるストーリーということで、期待して読み始めたのですが、その期待は裏切られるばかりでした。
・少し読み進むと、本書のネタがすぐにばれてしまう。
・肝心の『神曲』にからむ謎解きが少しも面白くない。
・歴史や美術に詳しくない私にも、次の展開が予想できる場面がいくつもある。
・物語の展開にいらいらさせられる。
などのためです。

しかし、何と言っても、この本を非常に後味の悪いものにしているのは、「トランスヒューマニズム」を扱っている上に、作者自身が、この思想を必ずしも否定していない点にあると思います。

私はトランスヒューマニズムに詳しいわけではありませんが、その発想の原点は優生学にあり、生物学テクノロジーの進歩を人間の進化と結びつけると言いながら、実は人種差別や弱者の切り捨て、人権侵害などにつながる危険性のある考え方であると理解しています。アメリカにはすでにトランスヒューマニズムの団体があって活動しているようですが、そのような活動に関係していなくても、最近は「超人類」や「不老不死」などをキーワードにした記事や著作や作品にいくつも出会います。

生物学者が進めている研究の成果や、そのために開発したテクノロジーは、すべての人が同じように恩恵を受けるような仕方で使われなければなりません。そのために世界の研究者は、間違った使い方にならないように、研究の進め方や応用について倫理問題も含めて慎重な議論を重ねています。生物学の最先端で、実際の研究がどのようなプロセスで進められているのか、ダン・ブラウンにはもう少し取材をしてほしかったと思います。
アイソン彗星はどうなったか?
The fate of Comet ISON

アイソン彗星がどうなったか、まだ詳しくは分かってはいませんが、SOHO 衛星などの画像の解析から、彗星は太陽に最接近する直前に分裂してしまったとみられています。彗星の核は、残っているとしても、非常に小さいものでしかないようです。下のSOHO の画像は、近日点通過直後のアイソン彗星です。アイソン彗星の形はくさび型をしており、これは粉々になったアイソン彗星の残骸(ダスト)を示しているとみられます。

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下は、近日点通過前後のアイソン彗星の軌跡です。くさび型のダストは太陽から遠ざかるにつれて、急速に暗くなっています。

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アイソン彗星が見事な尾を引いて私たちの前に再び姿を現すことはなくなってしまいました。今後、地上の望遠鏡からの観測が行われると思いますが、12月下旬にはハッブル宇宙望遠鏡がアイソン彗星(あるいはその残骸)を観測する可能性があるようです。
中国の月探査機、嫦娥3号、打ち上げ
Chang'e 3 launch to the Moon

中国の月探査機、嫦娥3号が12月2日午前1時30分(北京時間)に、四川省の西昌衛星発射センターから長征3B ロケットによって打ち上げられました。12月6日には月を周回する軌道に入る予定です。

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嫦娥1号と2号は月を周回するオービターでしたが、嫦娥3号は「雨の海」の北西の端にある「虹の入り江」への着陸を目指しています。着陸は12月14日の予定です。ロケットエンジンを噴射しながらで降下する嫦娥3号の着陸機は月面から100m の高度でホバリングし、センサーで着陸に適した平地を探します。クレーターや斜面を避けて着陸地点まで水平移動した後、最終的な降下を開始、高度3m でエンジン噴射を停止して着陸します。

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着陸機は重量3.8t で、4本の脚には着陸時の衝撃をやわらげるダンパーが入っています。電源は太陽電池ですが、約2週間続く月の夜の間、機器類を暖めておくヒーターのために、プルトニウム238 を用いた原子力電池も備えています。可視・紫外線望遠鏡で天体観測を行う他、別の紫外線望遠鏡で地球の高層大気を観測する予定です。

着陸機の上部には、月面ローバー「玉兎」が搭載されており、着陸後、月面に下ろされます。

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玉兎は重量140kg です。玉兎も発電用の太陽電池パネルと越夜用の原子力電池のヒーターを備えています。駆動には6輪のロッカー・ボギー(Rocker-Bogie)方式を採用しており、NASA の火星ローバー、スピリットやオポチュニティーをかなり研究しているように見受けられます。マスト上には地球へのデータ送信用のアンテナとナビゲーションカメラ2基、パノラマカメラ2基が設置されています。ボディ前面にはアルファ粒子X線分光計と赤外分光装置が設置されています。また、スピリットやオポチュニティーと同じようなアームをもっており、先端に研磨機を取り付けられています。地下構造を調べるためのレーダーも備えています。玉兎の運用期間は3か月(月面では3昼夜)とされています。

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嫦娥とは中国の伝説にでてくる月の女神です。玉兎は、その嫦娥が連れている兎の名前で、今回、ローバーの名前を公募したところ、玉兎が一番多かったとのことです。
スーパー台風と海洋の温暖化
Supertyphoon and unusually warm subsurface Pacific waters

スーパー台風ハイエンの発生が海洋の温暖化と関係している可能性についてここに書きました。『サイエンス』誌11月29日号には、ハイエンが猛威を振るった原因の少なくとも一部は、フィリピンの東の海で、海面下の水温が異常に高かったことにあるという記事が載っています。

国立台湾大学のI-I Lin らのグループは、過去20年間の北西太平洋の海面下の水温を調べました。下の図がその結果です。

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赤い線は水温が26度C となる水深です。過去10年間で約20m 深くなっています。つまり、海水がより下の層まで暖まりつつあることを示しています。青い線はTCHP(Tropical Cyclone Heat Potential ) とよばれるもので、台風にエネルギーを与える熱源の指標となるものです。海水面から水温が26度C になるまでの層の熱量をベースにしており、1平方cm 当たりのキロジュールであらわされます。当然ですが、この値が大きいほど、台風は海水から多くのエネルギーを得ることができます。過去20年間に約10%増加していることがわかります。

こうした海洋の温暖化が、スーパー台風出現の原因の1つになっていると考えられます。「ハイエンが移動した経路の海面水温は平年よりわずかに暖かいだけだったが、水深100m での水温は平年より3度C も暖かかった。そのためハイエンは、海水をかき混ぜながら、より強い風を生み出す熱を引き出した」とLin は語っています。

下の図は、2005年8月のハリケーン・カトリーナの移動経路とTCHPの分布です。カトリーナがTCHPの高いところを通過し、強力なハリケーンに発達したことがわかります。

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ハイエンの移動速度は通常の台風より2倍も速いものでした。海水によって冷却されず、次々と熱を吸収し続けたことも、ハイエンが非常に強力な台風に発達した原因になっています。さらに西太平洋では過去20年間で海面水位が約20cm 上昇しています。これもまた、フィリピンでの災害を大きくした原因になっているようです。

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