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ジェームス・ワトソン:がんとの闘いの次のターゲット
Watson takes aim at curing late-stage cancers

コールド・スプリング・ハーバー研究所のネットレターに、ジェームス・ワトソンが、がんに関する新しい論文を発表したという記事があったので、その論文を読んでみました。イギリス王立学会のオンライン・ジャーナル『Open Biology』誌に掲載された「Oxidants, antioxidants and the current incurability of metastatic cancers」という論文です。

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この論文で、ワトソンはまず、がん治療に関する現在の医学・生物学の状況を総括し、数々のがん細胞を攻撃する薬剤が開発され、使われるようになったが、がんの転移を防ぐ薬剤が開発されていないため、いまだに多くのがん患者が死亡していると述べています。実際のところ、現在の抗がん剤ではがん細胞の増殖を抑えることはできても、最終的にがん細胞は他の組織に浸潤・転移していき、患者の生命を奪っています。

それでは、がんの転移を抑制するのにどうしたらよいか。ワトソンはここである仮説を提示しています。それは、活性酸素(reactive oxygen species:ROS)の役割です。活性酸素はがんを引き起こす原因となっていることがわかっており、いわば「悪役」と考えられています。しかし、活性酸素は細胞をアポトーシス(プログラムされた細胞死)に導く働きをもっているため、がんの転移を防止する際に重要な存在になるのではないかというのです。

いまだに有効な抗転移薬が開発されていない現状で、ワトソンの提言は重要な意味をもっています。アメリカでは1971年に当時のニクソン大統領が国家戦略として「がんとの闘い」を宣言し、これががんの研究と治療法の開発を大きく前進させました。この「がんとの闘い」を提案したのが、ワトソンでした。ワトソンはいつも医学や生物学の研究の大きな流れを見ており、次の時代に何が重要であるかを見極める能力をもっています。その当時、がんの研究を推進することが国民の健康維持に大きな貢献をもたし、さらに生物学の進歩にもきわめて重要だと、ワトソンは考えたのです。

その後、やはりワトソンが提唱したヒトゲノム解析計画によって、がんの研究はさらに前進し、遺伝子やタンパク質が、がんとの闘いの主戦場となりました。この闘いは今も続いており、論文中でワトソンは、RNAi を用いて、抗転移薬のターゲットとなるタンパク質を網羅的に探索する計画を提案しています。

ワトソンは今、がんの転移抑制を「がんとの闘い」の次のターゲットと考えているわけです。

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