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民間の宇宙船によるISS への人員輸送へ、NASA の選定作業進む
Commercial Crew Program:NASA takes a next step

NASA はスペースシャトルが退役する前年の2010年に、民間の宇宙船による国際宇宙ステーション(ISS)への人員輸送の計画であるCCP(Commercial Crew Program)をスタートさせ、複数の企業と契約を結んで検討を続けてきました。2012年9月に、ボーイング社のCST-100、シエラネバダ社のドリーム・チェイサー、スペースX社のドラゴンの3つの宇宙船が選定されました。

ボーイング社のCST-100(下)は再使用可能なカプセル型の宇宙船で、最大7名のクルーを搭乗させることができます。アトラス5型ロケットで打ち上げます。

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シエラネバダ社のドリーム・チェイサー(下)はNASA がISS からの緊急帰還用のライフボートに開発していたHL-20 をベースにしたミニシャトル型の宇宙船です。スペースシャトルと同じように、地上に滑空して着陸します。打ち上げにはアトラス5型ロケットを使います。

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スペースX社のドラゴン(下)も再使用可能なカプセル型の宇宙船で、最大7名のクルーを搭乗させることができます。ファルコン9ロケットで打ち上げます。

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CCP は2017年の有人飛行を目指しています。NASA は1月22日、これら3社の宇宙船について、安全性などの検定を行う作業をスタートさせました。この作業は2014年5月30日まで行われ、その後、最終選定が行われる予定です。NASA はこうしてISS までの人員輸送は民間宇宙船にまかせることとし、自らはISS 以遠への有人飛行を可能にする新型宇宙船と打ち上げロケットの開発を進めています。
SELENE シンポジウム 2013
SELENE Symposium 2013

23日からJAXA の相模原キャンパスで開かれているSELENE シンポジウム2013 に来ています。「かぐや」(SELENE)は月の総合的観測を行い、大量の観測データを取得することができました。現在、多くの研究者がこのデータを用いて論文を発表しています。

23日は「グローバル・データ」、24日は「海の形成」、今日は「内部構造」のセッションを聞き、これを書いています。これから「極域」と「今後のミッション」のセッションンがあり、6時30分からは隣の相模原市立博物館で「月・惑星探査講座」が開かれます。

各セッションでの発表を聞いていて私が感じたのは、「日本でもやっと月のサイエンスができるようになった」ということでした。武田弘先生のように、月の石の研究を早くから手がけた研究者もいますが、長い間、日本の月のサイエンスはそれほど活発とはいえない時期がつづきました。その一番大きな理由は、自分たちのデータをもてなかったことです。アポロ計画の石をもち、クレメンタインをはじめいくつもの月探査機のデータをもっているアメリカの研究者と同じ土俵で研究をするのは大変でしたし、若い研究者が育つのも難しい状況でした。

しかし、今や日本の研究者は「かぐや」で得られた世界に誇れるデータをもっています。日本の若い研究者がこれを使って次々と研究成果をあげているのは心強い限りです。また、シンポジウムには海外の研究者も参加し、日本と海外との緊密な交流もみられました。
オライオン宇宙船のサービス・モジュールをESAが提供
ESA provides Orion’s service module

NASA とESA は共同で記者会見を行い、NASA が2017年に打ち上げるオライオン宇宙船のサービス・モジュールをESA が提供することで合意したと発表しました。これは日本の宇宙開発にとって、いろいろ考えなくてはならない問題です。

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オライオン宇宙船は、2014年にデルタ4型ロケットで試験飛行を行う予定になっています。その後2017年に、これもNASA が開発中の新型重量級ロケットSLS に乗せてExploration Mission-1 が行われる予定です。Exploration Mission-1 は、月をまわって帰ってくる無人ミッションですが、NASA が開発中のオライオン宇宙船はアポロ宇宙船でいえば、クルーが乗りこむ司令船の部分です。実際の宇宙飛行には、機械船が必要です。この機械船にあたるサービス・モジュールをESA が担当することになったわけです。2014年の試験飛行のためのサービス・モジュールはロッキード・マーチン社が現在製作中です。

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ESA のサービス・モジュールは宇宙ステーション補給機ATV のシステムを応用したものです。軌道変更や姿勢制御のための推進機構をもち、太陽電池で発電します。クルーに必要な酸素や水も提供します。

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ESA は昨年11月21日にナポリで行われた閣僚級理事会で、オライオン宇宙船のためのサービス・モジュール開発を承認しました。この決定は、NASA が現在進めているISS の軌道よりも遠い目標、具体的にいえば月や火星への有人飛行計画に、ヨーロッパ各国も積極的に参加していくことを表明したものです。

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「宇宙は国際協力で探査を行うフロンティアである」とNASA探査システム開発局次長のダン・ダンバッカーは語っています。「国際宇宙ステーション(ISS)計画のパートナーであるESAとNASAとは素晴らしい関係にある。この関係が、これまで行ったことのない遠い宇宙へ人間を送ろうというわれわれの計画を助けてくれる」。

ひるがえって、日本の状況はどうでしょうか。長引く経済の低迷や震災からの復興が十分でないこともあるのでしょうが、ISS 以後の有人宇宙計画については、いまだに、立花隆さんに代表される「宇宙飛行士が死亡する事故が起こったとき、日本の社会はそれを受容できないから、日本独自の有人計画は不可能」というレベルの低い議論しかできていません。しかしながら、その間にも世界の有人宇宙開発は着実に進んでいます。このままでは、ISS 計画への参加で日本が築いてきた実績はいつの間にか時代遅れになり、世界に取り残されてしまうでしょう。
エディアカラのエニグマ:陸棲説は本当か?
Ediacaran Enigma:Were they lichens?

昨年12月12日の『ネイチャー』誌電子版にオレゴン大学の地質学者グレゴリー・リタラックの論文が掲載されて以来、「エディアカラの生物は海に棲んでいたのではなく、実は陸地に棲んでいた地衣類や菌類のコロニーだった」という話題がひとしきりインターネット上をかけめぐりました。しかしながらこうした場合、きわめて断片的な、しかもほとんど同じ内容の情報が一時的に流れるだけということがよくあります。別な立場からの評価や、追加の情報がでてきません。今回もそうした状況でした。これは、科学コミュニケーションの仕事に携わっている者として、私がいつもなんとかしなければと考えている問題です。

エディアカラの生物たちは今から約6億3500万〜5億4200万年前に生きていました。いわゆるカンブリア紀の大爆発がはじまる1000万年ほど前の時代です。エディアカラの生物の多くは扁平な体をもち、海で暮らしていたと考えられています。

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一方、『ネイチャー』誌のリタラックの論文では、最も有名なディッキンソニアをはじめ、エディアカラの多くの生物は当時の土壌の表面に生きていた地衣類で、生物の移動の跡と考えられているものは変形菌がつくったものだというのです。この時代に、すでに陸上に地衣類や菌類がいたとすると、生物の陸上への進出は1億年近くさかのぼることになります。また、エディアカラ紀の海に生物がいなくなってしまうと、カンブリア紀への生物進化の道筋を考える上でも大きな変更が必要です。

エディアカラ生物が地衣類だというリタラックの主張は、今にはじまったわけではありません。私が知っている限りでは1994年の論文が最初ではないでしょうか。『パレオバイオロジー』誌に発表された「エディアカラ化石は地衣類か?」という挑戦的なタイトルの論文は、それなりの関心を集め、リタラックの主張は「エディアカラのエニグマ」としてさまざまにとりあげられました。私も当時、興味をそそられたものです。

下に示す2つの図は、リタラックの2007年の論文に掲載されていたものです。上の図が従来のエディアカラの生物を示すもの、下の図は、それらが地衣類であるとする図です。

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当然のことながら、研究者のほとんどは、リタラックの説に同意していません。地質学や地球化学などによるこれまでの研究は、エディアカラの生物たちが海洋起源であることを例外なく示しています。『ネイチャー』誌の編集部も、バージニア工科大学のShuhai Xiao とアリゾナ州立大学のL. Paul Knauth に同じ号のNews & Views 欄への寄稿を依頼し、リタラックの論文に批判的な立場の意見を紹介しています。2人によれば、リタラックが地衣類説の証拠としているものは、すべて海洋起源で説明がつきます。また、海底堆積物であることがはっきりしている場所から化石が見つかっていることは、リタラックの説に対する何よりの反論であるとしています。

リタラックの主張はまだ仮説の域を出るものではありません。しかしながら、ほとんどの研究者が反対しているからといって、その説を無視してしまうことはあってはならないことです。『ネイチャー』誌は論文審査のプロセスをへて、リタラックの論文を掲載し、それと反対の立場のコメントも掲載しました。バランスのとれた編集だと思いますが、ネット上で流れた情報は残念ながらリタラックの主張のみでした。
くじら座タウ星の「第二の地球発見」は本当か?
Planets orbiting Tau Ceti:Independent detection is necessary

くじら座のタウ星に5個の惑星が発見されたというニュースが昨年末にネット上を飛び交いました。その中の1つが液体の水が存在可能なゾーンにあることから、日本では「第二の地球発見か」という見出しで紹介した記事もあります。

しかし、イギリス、ハートフォードシャー大学宇宙物理学研究センターのMikko Tuomi らの原論文を読んでみると、今回の「発見」を、もう少し冷静に見る必要がありそうです。

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くじら座タウ星は地球から約12光年の距離にある太陽と同じG型のスペクトルの恒星です。質量は太陽の0.8倍、光度は太陽の0.6倍です。1960年のオズマ計画で、フランク・ドレイクがグリーンバンクの電波望遠鏡を向けた恒星の1つでもあります。SF ファンの方なら、アイザック・アシモフやロバート・ハインラインをはじめ多くの作家がくじら座タウ星の登場する作品を書いていることをご存じでしょう。

現在、800個以上の系外惑星が見つかっています。惑星をもつ恒星は、惑星から重力の影響を受けるため、その位置がわずかにふらつきます。系外惑星をみつける方法の1つは、このふらつきをドップラー効果を利用して検出し、惑星の存在を明らかにするものです。この方法で系外惑星を探索している計画には、ESO(ヨーロッパ南天天文台)がチリのラ・シヤ天文台で行っているHARPS、アングロ・オーストラリアン天文台で行われているAAPS があります。またハワイのケック天文台の高精度分光計HIRES のデータも系外惑星の探索に使われています。

Tuomi らのグループは、系外惑星を検出するための新しいデータ解析法を開発しました。この方法は、観測データに人為的な信号(ノイズ)を加えた上で解析を行うというもので、従来の方法では不可能だった微弱な信号を取り出せるとのことです。くじら座タウ星のまわりには以前からちりの円盤が発見されていましたが、惑星は見つかっていませんでした。そこでTuomi らは、これまでのクジラ座タウ星の観測データを自分たちの方法で再解析してみたのです。データ数は6000以上におよびました。

その結果、HARPS のデータから3個の惑星の存在を示す信号が得られました。また、HARPS とAAPS、HIRES のデータを合わせて解析した結果からさらに2個の惑星の存在を示す信号が得られたのです。これらの惑星の質量は少なくとも地球の2.0倍、3.1倍、3.6倍、4.3倍、6.6倍、タウ星をまわる周期は13.9日、35.4日、94日、168日、640日でした。5個の惑星はHD10700b、HD10700c、HD10700d、HD10700e、HD10700f と名付けられました。HD10700 は、ヘンリー・ドレイパー・カタログでのくじら座タウ星の番号です。このうちHD10700e のタウ星からの距離は0.552AU で、液体の水が存在できるゾーン内にあるというわけです。

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しかしながら論文の著者らは、この解析方法で得られた信号について「質量の小さな惑星の存在を示唆する」ものであり、「独立した観測による検証が必要」と述べています。すなわち、今回の解析結果は惑星の存在そのものを確認したものではなく、その存在を示すと解釈できる結果が得られた段階にとどまっています。得られた信号は、もしかしたら他の要因によって生じたものかもしれません。くじら座タウ星に実際に惑星系が存在するかどうか、今後の観測が期待されます。

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