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宇宙の暗黒時代にせまる:132億光年彼方の若い銀河
Dark age of the universe:Ultra deep and young galaxy observed

ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツアー赤外線望遠鏡が、132億光年彼方にある銀河を観測しました。これまで観測された中で最も遠くにある銀河です。

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この銀河は、しし座のMACS1149+2223という銀河団の方向にあり、下の画像の黄色い○印の中にあります。

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この銀河の赤方偏移は9.6です。赤方偏移と宇宙の年齢の関係は、ざっと以下のようになります。

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つまり今回発見された銀河は、宇宙誕生5億年後くらいの時代の銀河ということになります。銀河自体の年齢は約2億年と見積もられています。非常にコンパクトな銀河で、質量は私たちの銀河系の質量の1%以下とのことです。宇宙の初期にできた銀河はみなこのようにコンパクトで、これらが合体して次第に大きな銀河がつくれていきました。

ビッグバンから約40万年後、宇宙が冷えるにしたがって中性の水素原子がつくられました。それから数百万年後には、最初の星や銀河が誕生したと考えられています。しかし、この時代には、光(紫外線)は中性水素原子に吸収されてしまい、自由に進むことができませんでした。そのため、この時代は望遠鏡で観測することが困難で、「宇宙の暗黒時代」とよばれています。宇宙の暗黒時代についてはよくわかっていませんが、ビッグバン後10億年ごろまでには宇宙が「再電離」し、暗黒時代が終わったとされています。

初期にできた星や銀河は、暗黒時代が終わるのに大きな役割をはたしたと考えられています。星や銀河の強烈な紫外線が中性水素原子の電子をはぎとり、電離させていったからです。この宇宙の再電離(再イオン化)によって光は遠くまで進むことができるようになりました。今回観測された銀河は、この時代に何があったかを知る手がかりになるかもしれません。

ハッブルやスピッツアーのような高性能の宇宙望遠鏡を使っても、暗黒時代を観測することはできません。今回報告されている銀河は、近くにあった銀河団による重力レンズ現象によって非常に明るくなっていたので観測することができました。ハッブルとスピッツアーの後継となるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は2018年に打ち上げられる予定になっています。この望遠鏡であれば、暗黒時代の観測か可能で、初期の天体の誕生や進化、再電離の過程なども明らかになっていくのではないかと期待されています。
カロリー制限で寿命は延びない
Caloric restriction does not link to longevity

最近、アンチエイジングの方法としてカロリー摂取の制限が話題になっています。中には、1日に1食という極端な食生活を勧める医師もいるようです。しかしながら、『ネイチャー』誌の9月13日号に発表された論文によると、アメリカの国立老化研究所(NIA)で23年間にわたって行われてきたアカゲザルを使った実験で、カロリー制限による寿命の延長はみられなかったとのことです。

NIA では、アカゲザルを若齢グループ(1〜14歳で30%のカロリー制限開始)と老齢グループ(16〜23歳で30%のカロリー制限開始)に分けて実験を行いました。その結果、両方のグループとも、カロリー制限をしていないアカゲザルと比べて寿命の延長はみられませんでした。

この結果は、アカゲザルを使って同じような実験を行っているウィスコンシン国立霊長類研究センター(WNPRC)の結果とことなっています。WNPRC では成体(7〜14歳)のアカゲザルの30%で寿命が延びたという結果が得られています。しかし、この結果の解釈には疑義も出されており、寿命の延長は他の要因によるものである可能性があるとのことです。

NIA の実験では、アカゲザルの健康状態をみるため、血液採取も行われました。その結果、両グループのオスのサルでコレステロールの低下がみられましたが、メスのサルでは変化はみられませんでした。また老齢グループのサルでは中性脂肪も減り、グルコースも若干少なくなっていました。一方、若齢グループではグルコースの濃度に差はなく、中性脂肪はオスのサルでのみ若干低くなっていました。

この結果からすると、年齢が上がってからカロリー摂取の制限を行うと、寿命は延びないものの、代謝が改善され、発がんの可能性を低下させ、おそらく糖尿病の予防にも効果があるとみられます。

食餌制限が寿命を延ばすという実験結果は、これまでマウスやラットを含む多くの動物で得られてきましたが、霊長類においては、低カロリーと寿命の関係は単純ではないようです。

なぜカロリーの摂取を制限すると寿命を延びるのかについては、低カロリーによって「サーチュイン遺伝子」が活性化され、その結果つくられたサーチュイン・タンパク質が寿命を延ばすと考えられてきました。サーチュイン遺伝子は、「長寿遺伝子」とよばれることもあります。

サーチュイン遺伝子の寿命延長効果は、これまで酵母や線虫、ショウジョウバエなどで研究されてきましたが、昨年9月22日の『ネイチャー』誌には、これらの研究の多くには欠陥があり、サーチュイン遺伝子による寿命延長効果は酵母でしか確認されないという論文が発表されています。また、食餌制限でのショウジョウバエの寿命延長はサーチュイン遺伝子なしで可能であることが示されています。

どうやら、カロリー制限(空腹)→サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)の活性化→寿命延長という簡単なことではないようです。カロリーと老化の関係には、まだ科学的にはっきりしていないことが多くあります。過度のカロリー制限は絶対しないようにしましょう。健康に悪影響がでる可能性があります。

一方、ある年齢になったら、「腹八分目」という言葉の通り、若いときよりもカロリー摂取を控えめにし、バランスのとれた食事を規則正しくとることは、免疫力の向上や生活習慣病の予防などに効果があることはまちがいありません。
北極の海氷面積が観測史上最小に
Arctic sea ice:Breaks lowest extent on record

JAXA の第一期水循環変動観測衛星「しずく」は今年7月3日の観測開始以来、北極の海氷面積が劇的に少なくなっていく様子を観測していました。海氷面積は、すでに8月24日の段階で、これまでで観測史上最小だった2007年を下まわりましたが、本日の北極圏海氷モニターで発表されているデータによると、9月9日現在の海氷面積は369万5313平方 km で、海氷がもっとも縮小している段階に入っているようです。

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上の図で、赤線が今年の海氷面積です。2007年(橙色)を大幅に下まわっていることがわかります。最小になった日付とそのときの面積については、JAXA から近いうちに正式な発表があるでしょう。

今年は春の段階から、北極海の広い海域が薄い一年氷でおおわれており、とけにくい多年氷が少なかったことが、海氷面積がこれほどまでに小さくなった原因の1つと考えられます。

海氷面積がここまで小さくなってくると、これからは、いわゆる「北西航路」が話題になることが多くなると思われます。北西航路とは、大西洋側から北アメリカ大陸とグリーンランドの間を通り、北極海からベーリング海峡を抜けて太平洋側に出る航路のことをいいます。下の図の赤線がそのルートにあたります。

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北西航路が通じると、ヨーロッパは北極海を介してアジアと結ばれることになり、きわめて大きな経済効果がもたらされることになりますが、これまでの北極海は夏も氷で閉ざされていたため、砕氷能力を持たない船が航行することはできませんでした。しかしながら、夏の海氷が今後も減少をつづけていけば、北西航路が開けることになります。

下の画像は、アメリカの地球観測衛星「アクア」に搭載されている光学センサーMODIS によって、今年8月3日に取得された北西航路の一部(Parry Channel)です。

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7月17日に取得された同じ場所の画像(下)と比べると、氷がなくなっていることがわかります。ただし、MODIS の感度には限界があるので、海面に実際に氷がなく、船が航行できるかどうかは、これだけではわかりません。

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今から1000年ほど前のヨーロッパは「中世の温暖期」とよばれる暖かい時代で、バイキングは北極海を航海し、グリーンランドにも入植しました。現在氷におおわれているグリーンランドは、当時、実際に緑におおわれていたのです。しかしその後、小氷期とよばれる時代が訪れて以降、北極海は1年中氷でおおわれたままでした。それが今、ふたたび開けようとしているわけです。毎年の海氷の状態は、その年の天候や海水温などに影響されますが、長期的にみれば、これが地球温暖化と関係していることは間違いないでしょう。
ティラノサウルスの成体にも羽毛が?
Was T. rex feathered?

先日、幕張メッセで行われている『恐竜王国2012』に行ってきました。展示のメインは、中国遼寧省で発見された大型の羽毛恐竜ユティランヌスの平面全身骨格標本とその復元模型です。

ユティランヌスはティラノサウルス類の大型恐竜です。今回展示されているのは、3体発見されたうちの、同じ場所で重なるようにして発見された2体で、1体は全長が9m もあります。もう1体は6m で、成体になる前のものとみられています。化石には明らかに羽毛とみられる個所が残っており、復元模型は全身が羽毛におおわれていました。これだけ大型の羽毛恐竜はこれまで発見されていませんでした。

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Brian Choo

このユティランヌスの全身骨格の発見は、徐星らによって『ネイチャー』誌の2012年4月5日号で報告されています。ユティランヌスが生息していた時代は、『恐竜王国2012』の図録では一部で「後期白亜紀」となっていますが、『ネイチャー』誌の論文によれば、この化石は前期白亜紀の地層から発見されており、約1億2500万年前のものとされています。下の図を見ればわかるように、後期白亜紀に栄えたティラノサウルスにいたる、より古い時代のティラノサウルスの仲間です。

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ユティランヌスがすでに羽毛をもっていたことは、これまで考えられていた以上に、大型のティラノサウルス類でも羽毛がポピュラーな存在だったかもしれません。これまで、幼体には羽毛がある可能性が指摘されていたティラノサウルスの成体にどこまで羽毛があったかも、いろいろな説がでてきそうです。最近では、竜脚類の恐竜にまで羽毛が発見されており、恐竜と羽毛の関係については、これからも大きな学問的展開があるにちがいありません。

『恐竜王国2012』の図録はとてもよくできており、恐竜に関する最前線の知識を得るのに役立ちます。私はこの図録で紹介されていた趙闖(チョウ・チン)という若いアーティストに関心をもちました。最近の海外の出版物では、古生物の素晴らしいイラストレーションが掲載されることが多くなってきており、新しい世代のアーティストが登場していることを感じさせます。私が中でもとくに注目していたのは、中国で発見される羽毛恐竜類を描いた作品でした。中国では趙さんのように、古生物の研究をしながら、それらの姿を生き生きと描ける若い世代が育っているようです。
火星の青い日没
Sunset on Mars:A Moment Frozen in Time

火星の景色が実際にどんな色に見えるのか、多くの方が関心をもたれる点だと思います。科学者がこの問題をどう解決しているかは、先日書きましたが、今日はあるテレビ局から、「昼間の火星の空はピンク色なのに、夕焼けが青くなるのはなぜか」という質問の電話をいただきました。

下の画像は、オポチュニティーが2004年に撮影した火星の日没の画像です。確かに、火星に夕焼けは青色でした。

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スピリットとオポチュニティーのパノラマカメラは、対象物を3色のフィルターで撮影し、人間の目で見たものに近い色調を再現しています。この場合、可視光の赤・緑・青ではなく、750nm(近赤外)、530nm(緑)、430nm(紫)のフィルターを使って撮影します。したがって、上の画像は、正確にはフォールス・カラーなのですが、できる限り人間の目に近い色になるような処理をしています。

なぜ、このような青色になるのでしょう。

地球では、太陽からの光は大気分子によって散乱されます。このとき、散乱される度合いは青い光の方が赤い光より大きいため、私たちには空が青く見えます。一方、太陽からの直射光には、散乱によって青い色の成分がなくなっています。夕焼けになると、太陽光は大気層を長く通ってくることになります。その間に、青い光はなくなってしまうため、夕焼けは赤くなります。

火星の大気は地球にくらべて150分の1程度と非常に薄いので、大気分子により散乱はほとんどありません。一方、大気中に浮かんでいるダストが太陽光を散乱させているのですが、ダストは赤い色をより散乱させます。そのため、火星に空はピンク色ないしオレンジ色に見えるのです。太陽が傾くと、太陽光は火星の大気層をより長く通ってきます。その間に赤い光はなくなってしまいます。そのため、太陽を真正面から見ると、太陽の方向からくる青い光が散乱され、夕焼けが青く見えるのです。

下の画像は、スピリットが2005年5月19日に撮影した火星の日没です。やはり夕焼けが青く写っています。太陽から離れた空に少し赤みが入っていますが、これは、近赤外・緑・紫のフィルターの組み合わせのためです。

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“A Moment Frozen in Time” と題されたこの画像は、スピリットが撮影した画像の人気投票で1位になりました。私もこの画像が大好きで、長い間、PCの壁紙に使っていたものです。

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