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火星探査機キュリオシティー:火星の過去を語る地層の重なり
Mount Sharp:strata above and below

マストカメラが撮影した高解像度の画像が発表されるようになりました。軌道上からの観測ではわからなかったゲール・クレーターのさまざまな地形が、これから明らかになっていくでしょう。

下の画像は、ゲール・クレーターの中央にそびえるシャープ山の裾野のクローズアップで、まるでグランドキャニオンのような地層の重なりが見られます。このような地層の堆積には、おそらく何億年もの長い時間がかかります。しかも、その間、液体の水が存在しなければなりません。シャープ山の地層の調査は、火星の過去を解き明かす上で貴重な情報を与えてくれる可能性があります。

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下の画像は、やはりシャープ山の裾野を撮影したものです。この画像では、白い点で結ばれる線にそって、地層が不連続になっていることがわかります。このような地層の不連続は「不整合」とよばれます。不整合面の下では、地層はほぼ水平に重なっていますが、不整合面の上の地層は斜め(左上から右下)になっています。こうした不整合ができるには、地質学的に何か大きな出来事が必要です。いったい、この不整合ができたとき、火星では何がおこったのでしょうか。

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これらの画像は、キュリオシティーから送られてきた画像(Raw image)の色調を強調したり、ホワイト・バランシングを行って、地球の自然光で見たときの色調にしています。下が加工前の Raw image の例です。

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下の画像は、これを私がカラー補正したものです。RGB のバランス、コントラスト、ガンマ値などを調整し、スピリットやオポチュニティーのパノラマカメラの画像と同じような色調にしてみました。


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私たちがゲール・クレーターに立ってシャープ山を眺めると、きっとこのように見えるでしょう。
ニール・アームストロング:1930〜2012
Neil Armstrong:1930-2012

アポロ11号の船長として、はじめて月面に立ったニール・アームストロング氏が死去しました。82歳でした。下の写真は、月面活動を終えて、月着陸船内に戻ったときに撮られたものです。ほっとした表情が印象的です。

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アポロ11号が月着陸に成功したときの様子は、現在も私の記憶に鮮明です。そのとき自分がどこで、何をしていたかまで覚えていますが、あれから43年。アポロ計画は今では20世紀の歴史の一部となり、若い人たちにとっては遠い時代の出来事になってしまいました。

しかし、アポロ計画の意義は、今も色あせることはありません。人類が宇宙への挑戦をはじめてまだ間もない時代に、人間を月に送りこむという途方もない計画を立て、それを実現させたのがアポロ計画でした。東西冷戦という背景はあったものの、アポロ計画には、新しい世界を切り開くという人類共通の夢がこめられていました。アポロ11号の月着陸は、その夢が現実となった瞬間であり、多くの人々に、不可能と思われることも科学の力で実現できることを教えてくれた瞬間でもありました。
ジョルジュ・メリエス『月世界旅行』のカラー復元版
Marie Georges Jean Méliès:A Trip to the Moon in colors

渋谷のシアター・イメージフォーラムで、ジョルジュ・メリエスの映画『月世界旅行』のカラー復元版を観てきました。

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メリエスの『月世界旅行』は、史上初のSF 映画といっていいでしょう。この作品の彩色版は長い間、幻の存在だったのですが、スペインで発見され、昨年、最新のコンピューター技術を駆使した復元版が完成したのです。メリエスの生涯と、フィルムの発見から復元までのスリリングな過程は、同時に上映された『メリエスの素晴らしき映画魔術』で紹介されています。

モノクロのフィルムに1枚1枚、手作業で着色してつくられた彩色版は、驚くほどの美しさでした。鮮やかな赤や緑色が登場人物を引き立てる一方、背景の淡い色彩がモノクロ版にはなかった奥行感を生み出していました。人工的な色彩とその濃淡が、カラーフィルムで撮影した作品とはまったくことなる世界を出現させています。『メリエスの素晴らしき映画魔術』の中で、ミシェル・アザナヴィシウスが語っているように、それは動く絵画といえるものです。

1889年、アメリカの発明王トーマス・エジソンは「キネトスコープ」とよばれる箱型の装置をつくりました。コインを入れて小窓から覗きこむと、箱の中に動く映像が再生される仕組みです。フランスでは、リュミエール兄弟が室内のスクリーンに映像を投影するシステム「シネマトグラフ」を開発し、1895年に公開しました。キネトスコープは1人でしか見ることができませんが、シネマトグラフは劇場で、大勢の人が同時に見ることができました。この生まれたてのテクノロジーの可能性にいち早く気づき、驚くべき作品をつくり続けたのが「映画の魔術師」とよばれたメリエスでした。

メリエスは1861年、パリで生まれました。父親は市内で有名な靴屋を営んでいましたが、メリエスには、兄たちのように家業を継ぐ意思はありませんでした。美術の道を志し、ギュスターブ・モローに絵画の指導を受けました。モローの作風は、のちにメリエスがつくる映画に大きな影響を与えたといわれています。

ロベール・ウーダン劇場の支配人となった若きメリエスは、この小劇場で自らマジックを行って人気を博しただけでなく、『月の戯れあるいはノストラダムスの災難』などの幻想的な舞台を次々と生み出していきました。やがて、彼はリュミエール兄弟の映画と出会います。当時上映されていた作品は、その多くが人々の日常生活や街の風景を題材にしたものでした。しかしメリエスはスタジオをつくり、物語性をもつ独自の世界を次々と映像化していきました。『シンデレラ』『クリスマスの夢』『赤ずきん』『青ひげ』『月世界旅行』『ロビンソン・クルーソー』『妖精たちの王国』『地獄のファウスト』『ファウスト博士の断罪』など、タイトルだけで、メリエスがどのような世界をスクリーンに描こうとしたかがわかるでしょう。

1902年に制作された『月世界旅行』は、彼のもっとも有名な作品になりました。ジュール・ベルヌの『地球から月へ』『月世界へ行く』、H・G・ウェルズの『月世界旅行』からアイデアがとられており、6人の男が弾丸型のカプセルに乗りこみ、巨大な大砲によって月へと打ち出されます。わずか15分の作品ですが、予算や制作期間からいって、当時の超大作でした。メリエスはこの頃すでに、現在も使われている特撮技術の基本をほとんどすべて考え出していました。

メリエスは、映画の世界にはじめてスタジオ・システムをもちこんだだけではありません。脚本をつくって映画を撮ったのも彼が最初でした。ドキュメンタリー手法の作品もつくったし、コマーシャル・フィルムもつくりました。彼の頭の中にはつきることなく新しいアイデアが生まれ、映画が誕生してからわずか10年あまりの間に、彼はこうしたアイデアを次々と実現していったのでした。

しかし、映画産業が勃興してくると、メリエスの職人気質の仕事は急速に時代遅れになっていきます。ついに彼は破産し、彼がつくりだしたフィルムをすべて焼いてしまいました。『月世界旅行』の彩色版が失われたのも、そのためでした。ですから、今、私たちがその彩色版を観ることができるのは、奇跡に近いことなのです。

ところで、『月世界旅行』のカラー復元版を観るにあたって、私には、「あれはどんな色になっているんだろう」と楽しみにしていたシーンがありました。それは、月世界に到着して喜ぶ主人公たちの向こうに、地球が昇っていくシーンです。1968年、アポロ8号によって人間がはじめて見ることになる月の地平線から昇る地球、「アースライズ」を、メリエスはこの作品ですでに描きだしていました。驚くべきイマジネーションといえます。

地球がどんな色であったのか。それは、この作品をまだ観ていない方のために、ここでは書かないでおきましょう。
火星探査機キュリオシティー:マーズダイアル(2)
Mars Dial (2):We wish a safe journey and the joy of discovery

キュリオシティーのマーズダイアルには、いくつかのメッセージが描かれています。下は、マーズダイアルを上からみた図です。

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円盤の一番外側には「MARS 2012」「TO MARS」「TO EXPLORE」と書かれています。同心円は、完全な円ではなく、中心の位置が少しずれているのがわかります。これは、一番外側の円が火星の軌道をあらわしているからです。その内側の円が地球の軌道をあらわしています。火星が赤の点で、地球が青の点で示されています。この円盤に丸い影を落とす真ん中の球が、太陽です。円盤の周囲には、16の言語で火星を意味する言葉が書かれています。もちろん漢字の「火星」もあります。

マーズダイアルの四角い基盤の各側面には、下のような絵が描かれています。火星探査の歴史を示したものです。

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大昔から、火星は人間の想像力をかきたて、赤い不思議な星、ときには戦争をもたらす星と考えられていました。天体望遠鏡の時代になると、火星には四季が存在するのではないかと考えられるようになりました。探査機が火星に到達すると、火星にはかつて水が存在したことが明らかになりました。最後の絵では、火星探査は新しい段階に入り、キュリオシティーが火星に生命の痕跡を探しに来たことが示され、安全な旅と発見を願っています。
火星探査機キュリオシティー:マーズダイアル(1)
Mars Dial (1):The true color

マストカメラでのカラー撮影に重要な役割をはたすのが、マーズダイアルです。マーズダイアルは基本的には日時計(サンダイアル)で、キュリオシティーのデッキに取り付けられています。

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マストカメラのクリア・モードで撮影を行うと、人間の目で見て自然なトゥルーカラー画像が得られます。しかし、その色が厳密に「本当の色」なのかどうかを考えてみると、難しい問題があることに気がつきます。火星の風景を実際に自分の目で見た人間はまだいないからです。

地球の空はレイリー散乱によって青く見えますが、火星では大気中を舞っている細かいダストが赤い光をより散乱するため、空はピンク色に見えます。そのため、火星の風景も赤みをおびて見えます。また、太陽の明るさは地球の半分以下です。地球上では自然な色に撮れるカメラであっても、こうした条件下で同じように自然な色を再現できるという保証はありません。

この問題を解決する方法は、あらかじめわかっている色を火星にもっていくことです。こうした考えから、1976年に火星に着陸したバイキング探査機にはカラーチャートが取り付けられていました。地球に送られてきた写真を、このカラーチャート通りに再現させれば、実際の火星の色が得られます。

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1997年に火星に着陸したソジャーナー、2004年に着陸したスピリットとオポチュニティー、そしてキュリオシティーで色の補正に用いられているのが、マーズダイアルです。下は、スピリットのマーズダイアルで、今回もほとんど同じものがキュリオシティーに搭載されました。

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マーズダイアルの基盤の四隅は、赤、青、緑、黄色に塗られており、これをカラーバランスの調整に用います。また日時計部分は、同心円状のグレーの円盤に、丸い影が落ちるようになっています。これは日影の色を見るためのもので、火星の空の色の影響を除く際に有効です。

こうしたカラー調整は、当然のことながら、マストカメラの他のフィルターを用いた特定の波長での撮影にも必要です。先日も紹介したマストカメラのフィルターのチェック画像で、どの画像にもマーズダイアルが写っていたのはそのためです。

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マストカメラでの実際の撮影では、まずマーズダイアルを撮影した後、対象物の撮影を行い、撮影終了後、もう一度マーズダイアルを撮影します。

なお、今回発表されているマストカメラの画像では、「ホワイト・バランシング」を行った画像も一緒に公開されています。ホワイト・バランシングは市販のデジカメでも使われている、色のかぶりを取り除く処理です。ホワイト・バランシング後のキュリオシティーの画像は、火星の地形を地球にもってきて、自然光の中で見たときの色を示しています。
キュリオシティー着陸地点の名はブラッドベリに
Bradbury Landing:Science team named the location where Curiosity touched down

NASAはキュリオシティーの着陸地点がブラッドベリと名づけられたと発表しました。キュリオシティー科学チームの案を了承したものです。

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NASAの惑星探査計画の熱心な支持者であった作家のレイ・ブラッドベリは、今年6月に亡くなりました。NASAのキュリオシティー計画プログラム・サイエンティストのマイケル・メイヤーは、「これは科学チームにとって難しい選択ではなかった」と述べています。

NASAのサイトには、1971年11月12日にJPL で行われたパネル・ディスカッションでの彼の映像が再びアップされています。
火星探査機キュリオシティー:マストカメラ
Curiosity’s Mastcam:New views on Mars

マストカメラは左右2台のカメラで構成されています。右側に置かれたマストカメラ-100(下の写真右)は、焦点距離100mm、f/10で、解像力は距離2m で0.15mm、1km で7.4cm です。左側に置かれたマストカメラ-34(下の写真左)は、焦点距離34mm、f/8で、解像力は距離2m で0.45mm、1km で22cm です。両者とも1200×1200ピクセルの画像を取得できます。

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スピリットとオポチュニティーに搭載されたパノラマカメラでは、3原色のフィルターで別々に撮影を行い、カラー画像を生成していました。マストカメラではベイヤー配列のカラーフィルターが用いられ、1回の撮影でカラー画像が得られます。マストカメラは私たちが日常使っているデジカメと基本的に同じカメラということができます。

赤外域をカットするフィルターを用いた「クリア」の状態で撮影すると、人間の目で見て自然な色に近い「トゥルーカラー」の画像が得られます。マストカメラではさらに8種類のフィルターを使った撮影も可能です。マストカメラ-100 のフィルターの波長は440nm、525nm、550nm、800nm、905nm、935nm、1035nm、ND(太陽撮影用)です。マストカメラ-34 のフィルターの波長は440nm、525nm、550nm、675nm、750nm、865nm、1035nm、ND(太陽撮影用)です。440nm は青、525nm と550nm は緑、675nm は赤に該当します。750nm以上は近赤外の領域です。各フィルターは、受光部の前に置かれたフィルター・ホイールという円盤状の装置に装着されています。

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マストカメラでは、トゥルーカラー以外に全部で10の特定の波長で地形を撮影することが可能ということになります。左右のカメラで共通しているのは440nm、525nm、550nm、1035nmです。これらの波長は観測にとって特に重要と位置づけられており、どちらかのカメラが故障した場合を想定して、両方のカメラに採用されました。

下はsol 3(火星着陸3日目)に送られてきたマストカメラの画像です。各フィルターのチェックを行っているのがわかります。

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マストカメラは3D 撮影、および1280×720ピクセル、1秒あたり10フレームのハイビジョン撮影もできます。

マストカメラによって、ゲール・クレーターの地形の詳細や地層の細部構造、岩石層の特徴など興味深い観測結果が得られるでしょう。今まで見たことのない素晴らしい火星の風景が送られてくるのも楽しみです。
火星探査機キュリオシティー:科学観測装置
Curiosity’s ten science instruments

火星に着陸したキュリオシティーには、10種類の科学観測装置が搭載されています。それらについて、説明しましょう。マストカメラについては、別に詳述します。

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Mastcam(マストカメラ)
火星の地形や地層をカラーで観測するためのカメラです。

ChemCam(化学分析カメラ)
レーザー光を使って化学分析を行う装置です。

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ChemCam は大きく2つの部分から構成されています。1つは、レーザー光を発射し、分光観測を行う装置LIBS です。測定を行う対象物に5ナノ秒間隔でレーザーパルスを当て、照射された個所の原子やイオンをプラズマ化させます。そのプラズマの発する光を望遠レンズでとらえ、光ファイバーで分光計に導き、どのような原子であるかを調べます。結果がすぐにでる点が特長で、水や含水物の発見にも威力を発揮すると考えられます。
 もう1つの装置は、撮像装置BMI です。このカメラの役割は、測定対象物を撮影し、レーザー光を照射した個所を撮影することにあります。

APXS(アルファ粒子X線スペクトロメーター)
火星の岩石や土壌の成分分析に用いるAPXS はスピリットやオポチュニティーでも活躍しました。キュリオシティーにはその改良型が搭載されています。

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センサー部分は、キュリオシティーのロボットアーム先端にあり、これを測定対象物に接近させて測定を行います。アルファ粒子源にはキュリウム244 が用いられています。アルファ粒子が衝突して発生したX 線を検出します。分析装置自体はローバー本体内にあります。

MAHLI(高解像度接写撮像装置)
ロボットアームの先端に取り付けられた高解像度のカラー撮像装置で、地質学者が用いるルーペのかわりになって、岩石や土壌の拡大画像を撮影します。

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解像度は2.5cm 離れた場合で15マイクロメートルです。ハイビジョン映像の撮影も可能です。白色のLED を用いて夜間に撮影することや、紫外光LED を用いて蛍光物質の測定を行うことも可能です。

CheMin(化学・鉱物測定装置)
採取した火星の岩石や土壌のサンプルを分析し、どのような鉱物から構成されているかを測定する装置です。

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ロボットアームの先端にはSA/SPaH(サンプル採取・処理・ハンドリングシステム)が搭載されています。これによって採取されたサンプルはCheMin の小さなセル内に装荷されます。これをX 線回折装置で分析します。セルはサンプルホイールとよばれる円盤の外周部分に32個並んでいます。このうち27個のセルは再利用が可能で、ミッション期間中に74回のサンプル分析が行われることになっています。

SAM(サンプル分析装置)
火星の岩石や土壌のサンプルを採取し、生命に関係する物質を検出するために用いる装置です。キュリオシティーによる探査目標の1つは、火星に存在したかもしれない生命の痕跡を調べることであり、今回のミッションで非常に重要な観測装置の1つです。SAM には質量分析計、ガス・クロマトグラフィー、レーザー・スペクトロメーターが搭載されています。

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粉状にした岩石のサンプルや土壌は、SAM 内の小さなサンプル容器に装荷されます。サンプル容器は全部で74個あり、再利用が可能。容積は0.78立方cm です。容器内のサンプルは約1000度C まで加熱されます。これによって発生したガスはガス・クロマトグラフィーにかけられ、有機物の検出が行われます。検出された有機物は質量分析計でくわしく調べられます。質量分析計は、サンプルからのガスに含まれている炭素以外の生命の関係した元素、たとえば窒素、リン、硫黄、酸素、水素なども測定します。レーザー・スペクトロメーターで同位体比の測定も行います。
 SAM には火星大気の取り入れ口もあり、ここから採取した大気サンプルをレーザー・スペクトロメーターで分析することも行われます。大気中の二酸化炭素の酸素同位体比(酸素18と酸素16)や炭素同位体比(炭素13と炭素12)の測定、微量に含まれるメタン濃度の測定などを行います。こうしたデータは火星環境の変遷を知るために有用です。

REMS(環境モニタリング・ステーション)
火星環境を毎日モニタリングする気象観測ステーションといえるものです。

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風向、風速、気圧、相対湿度、気温、地表面温度、紫外線量を測定します。紫外線測定装置以外のセンサーは、マストの途中に取り付けられています。紫外線のセンサーは、ローバーのデッキにあります。

RAD(放射線測定装置)
火星表面での放射線被ばくを調べるための装置です。

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太陽や宇宙から飛んでくる高エネルギー粒子の量を測定し、将来の火星有人探査に必要なデータを取得することを目的としています。また、火星にかつて存在したかもしれない生命と放射線との関係を解明するデータとしても期待されています。

DAN(中性子反射率測定装置)
表面下に含まれる水分(氷、含水物)を調べる装置です。

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水素に中性子が当たると減速することを利用して、水の検出を行います。DAN は宇宙線中性子の反射を検出するほか、自らも中性子源をもっているので、アクティブおよびパッシブの両方のモードで測定を行えます。

MARDI(火星降下撮像装置)
火星の着陸する直前に、真下の地形をとらえるための撮像装置です。

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着陸時の映像取得に成功しました。

MARDI 以外は今後活躍する装置で、現在は初期チェックが行われています。
『死者の書』:冥界と宇宙
The Book of Dead:Journey through the afterlife

森アーツセンターギャラリーの「大英博物館古代エジプト展」で、世界最長の『死者の書』である「グリーンフィールド・パピルス」を見てきました。

『死者の書』とは、死んだ人間がいくつもの困難を克服し、冥界を抜けて、「イアルの野」とよばれる来世の楽園にたどりつくまでに必要な呪文を集めた書です。古王国時代には、このような呪文はファラオなど一部の特権階級のもので、棺に記されていましたが、その後、王族以外の人間も使えるようになり、パピルスに書かれた『死者の書』となりました。「グリーンフィールド・パピルス」は全長が37mにおよぶ、現存しているものの中では最も長い『死者の書』であり、今回の展覧会では、その全部を見ることができました。

「グリーンフィールド・パピルス」に描かれた挿絵はどれも美しく興味深いものばかりでした。その中で、とくに印象的だったのは「冥界の丘」でした。冥界の丘は超自然的な力をもつ場所で、全部で15(他の『死者の書』では14の場合もあるようです)あります。死んだ者は必ずここを通らなければなりません。おそらくこれらの丘は、きわめて複雑な概念をもつ場所なのでしょう。他の『死者の書』にはこれらの丘を描写したものもありますが、「グリーンフィールド・パピルス」に描かれている冥界の丘の「地形」は、きわめて単純化され、ある意味でシンボル化された図像になっています。迷宮の丘とは、文字や図で説明することが不可能な場所なのかもしれません。

私にとって最大の感動は、天と地のはじまりを描いた図に出会えたことでした。古代エジプト人の宇宙観として簡単な線画で紹介されることが多いものですが、パピルスに描かれた本物の図を見たのは、これがはじめてでした。

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つま先と指先を地につけているのが天の女神ヌウトで、ヌウトをもち上げているのが、大気の神シュウです。地の神ゲブは横たわっています。ヌウトとゲブはもともと重なっていたのですが、シュウがヌウトをもち上げたために、世界ができあがったことを示しています。大地と天が切り離され、その間に大気が存在して、人間が息をすることのできる世界ができあがったわけです。『死者の書』にこのような図が示される例は他にほとんどないとのことです。

「グリーンフィールド・パピルス」以外にも、『アムドゥアト書』や『洞窟の書』の図像も素晴らしいものでした。
火星探査機キュリオシティー:初期チェック進む
New view from Mars

マストカメラのサムネイル画像から作成したカラーパノラマ画像が発表されました。本番の解像度の画像は、これよりはるかに鮮明になるはずですが、それでも、このカラー画像を見ると、「やはりここは火星だ」と感じます。スピリットが着陸したグゼフ・クレーターやオポチュニティーが着陸したメリディアニ平原とはまた別の風景が広がっていました。

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キュリオシティーに搭載されている科学観測機器の初期チェックも順調に進んでいます。

火星を周回するNASA のMRO は、パラシュートを展開して降下するキュリオシティーの姿を軌道上からとらえました。この画像はすでにご覧になった方も多いでしょう。

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これを撮影したカメラHiRISE のサイトでは、これをより鮮明に処理した画像が発表されています。

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8月6日のキュリオシティー火星着陸の詳しいタイムラインも発表されました。いずれも日本時間にしてあります。

火星での時刻
大気圏突入 午後2時10分45.7秒
パラシュート展開 午後2時15分04.9秒
ヒートシールド分離 午後2時15分24.6秒 
スカイクレーン開始 午後2時17分38.6秒
タッチダウン 午後2時17分57.3秒

地球で受信した時刻
大気圏突入 午後2時24分33.8秒
パラシュート展開 午後2時28分53.0秒
ヒートシールド分離 午後2時29分12.7秒
スカイクレーン開始 午後2時31分26.7秒
タッチダウン 午後2時31分45.4秒
火星探査機キュリオシティー:火星からの初期画像
Early images from Curiosity

キュリオシティーは目的地であるゲール・クレーター内に着陸しました。着陸地点は、設定された着陸楕円の中心からわずか2km しかはなれていない場所(下の画像の緑色の点)で、まさにピンポイントの着陸に成功したことになります。下の画像で、右下の矢印は、ゲール・クレーターの中央丘であるシャープ山(Mt. Sharp)の方向を示しています。

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下の画像は、後部左側の障害物回避カメラが撮影したものです。最初に送られてきた画像に比べて鮮明になっているのは、ダストが付着していた保護カバーを外したためです。この画像を見ると、キュリオシティーが着陸した場所はかなり平坦です。車輪の状態からすると、表面は固いようで、多くの小石が見られます。キュリオシティーは現在、初期チェックの段階で、画像の多くは本来より低い解像度で送られてきます。この画像も、本来の解像度の2分の1で送られてきました。

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下の画像は、前部左側の障害物回避カメラが撮影したものです。魚眼レンズで撮影した画像を、地平線が水平になるように処理してあります。こちらは本来の解像度で撮影されました。そのため、着陸地点の表面の様子は鮮明で、キュリオシティーが今後その斜面を登攀することになる高さ5400m のシャープ山もくっきり見えています。

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着陸地点とシャープ山の位置関係は下の画像の通りです。

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下の画像は、キュリーシティーのロボットアームの先端についているMAHLI が撮影したものです。MAHLI は本来、サンプルの近接撮影に用いるものですが、焦点距離は無限大まであるので、火星の風景を撮影することも可能です。着陸地点の北の方向、ゲール・クレーターの縁が写っていますが、ダストカバーを付けたままなので、画像は鮮明ではありません。

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下の画像は、キュリオシティーが着陸する直前に、MARDI が撮影したものです。画像の右半分に見える楕円形の模様は、キュリオシティーの降下段のエンジン噴射によって、火星の細かい砂が吹き払われてできたものです。このとき、キュリオシティーの高度は約20mでした。これはサムネイル画像で、実際はもっと鮮明な画像が得られているはずです。

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MARDI のサムネイル画像297枚をつないだ、着陸の瞬間までの2分半の動画も発表されていますが、残念ながら画面が鮮明ではありません。いずれ、鮮明な動画が発表されると思います。
火星探査機キュリオシティー:17個のカメラ
Seventeen Cameras on Curiosity

今後火星から送られてくる画像がどのカメラで撮影されたものであるかを理解するために、キュリオシティーが搭載しているカメラとその位置について説明しましょう。キュリオシティーには全部で17個のカメラが搭載されています。

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キュリオシティーには本体からマストが立っており、その先端には3種類のカメラがついています。マスト先端は火星表面から約2mの高さになります。

マストカメラ(Mastcam)は、火星表面を高解像度でカラー撮影するカメラで、右側のカメラ(M-100)は焦点距離100ミリ、左側のカメラ(M-34)は焦点距離34ミリです。両者ともハイビジョン動画の撮影が可能なほか、両者を同時に用いて3D 画像を取得することも可能です。地形や地層の科学観測に威力を発揮するでしょう。

マストカメラの隣には、それぞれ2個のカメラをもつナビゲーションカメラ(Navcams)があります。このカメラはキュリオシティーが移動する際の地形情報取得に用いられます。

マストの一番高いところにあるのがChemCam です。岩石にレーザー光を照射し、プラズマ化させたガスから、対象物の成分を調べるための装置です。

キュリオシティーの本体下部には、前後に障害物回避カメラ(Hazcams)が搭載されています。それぞれ左右2個ずつのカメラが配置されています。上の図では後部カメラは見えていません。キュリオシティーの走行の邪魔になる障害物を検知したり、車輪と砂の噛み具合を見たりします。火星から最初の画像を送ってきたのは、このカメラでした。

キュリオシティーは科学観測機器を搭載したロボットアームをもち(上の画像では、アームはたたまれた状態)、その先端にMAHLI があります。これは岩石や砂のクローズアップ画像を撮るための高解像度接写カメラです。

MARDI は、キュリオシティーが火星着陸した際に最後の4分間作動し、着陸地点周辺を高解像度で撮影したカメラです。このデータによって、着陸場所およびキュリオシティーが移動する場所の地形を詳しく知ることが可能です。着陸までの連続動画は、きっとエキサイティングなものでしょう。
火星探査機キュリオシティー:着陸に成功
Curiosity has landed!

NASA のマーズ・サイエンス・ラボラトリー「キュリオシティー」が、火星着陸に成功しました。日本時間の午後2時32分に着陸が確認されました。NASA の惑星探査技術のレベルの高さを見せつけられた、見事な着陸でした。

前にも書いたように、火星からの信号が地球に届くには約14分かかります。火星大気への突入から着陸までを、NASA の関係者は「恐怖の7分間」とよびます。キュリオシティーが火星大気に突入した信号を地球が受信したときには、キュリオシティーがこのクリティカルな7分間をうまく切り抜けて着陸に成功したか否かの結果は出ているという中で、JPLの管制室で多くの関係者が手に汗をにぎって信号を見守ったわけです。

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下はキュリオシティーが着陸直後に送ってきた最初の画像です。左は、キュリオシティーの後部左側の障害物回避カメラが撮影したものです。魚眼レンズのため、火星の地平線が丸く写っています。また、右にキュリオシティーの車輪が見えています。右は前部左側の障害物回避カメラが撮影したものです。火星表面にキュリオシティーの影が落ちているのがわかります。両者の画像とも、火星のダストからレンズを保護するカバーがまだ外されていないため、ダストも一緒に写っています。

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火星着陸の様子は、NASA からライブ配信され、キュリオシティーの様子が刻々と画面に表示されました。下は、キュリオシティーが火星大気に突入したエントリー・インターフェイス直後(14.6秒後)の画面です。CG 画像にキュリオシティーのデータが表示されています。着陸予定地点までの距離は367.93マイル(約590km)、高度は70.38マイル(約110km)、速度は時速1万3099マイル(秒速5800m)、タッチダウンまでの時間は6分56秒と表示されています。

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下は、カプセルが誘導降下を行っているところです。秒速900m、10G をこえる加速度がかかっています。

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下は、パラシュートを展開して降下をはじめたところです。秒速194m まで速度は落ちており、高度は約11km となりました。

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下は、スカイクレーンによる降下段階です。降下速度は秒速0.82m と、計画とほぼ同じ速度になっています。高度は17m です。

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キュリオシティーが着陸した場所に関する情報が確認されるには、もう少し時間がかかるようです。
火星探査機キュリオシティー:8月6日に火星に着陸
Curiosity’s seven minutes:Entry, Descent, & Landing

2011年11月26日に打ち上げられたNASA のマーズ・サイエンス・ラボラトリー「キュリオシティー」が、日本時間で8月6日午後2時31分に火星に着陸します。

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着陸予定地点は直径約150km のゲール・クレーターで、設定されている着陸楕円は長さ20km、幅7km です。

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キュリオシティーの火星大気突入・降下・着陸(EDL:Entry, Descent and Landing)は以下のように行われます。

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火星大気突入10分前に航行段が分離され、キュリオシティー内のEDL 装置が作動します。火星大気突入9分前、スラスターを噴射してキュリオシティーのスピンをとめ、大気突入姿勢に入ります。さらに、キュリオシティーの中心軸上に重心を設定するために用いていた2個のウェイトを分離します。これによって、キュリオシティーのカプセルは火星大気内で揚力を生むことが可能となります。

火星大気突入から着陸までの時間は7分間です。キュリオシティーの高度が火星中心から3522km になったところで、EDL モードが開始されます。このときのキュリオシティーの速度は秒速5900m。火星の大気は地球の100分の1程度の薄さですが、猛スピードで突入してくるキュリオシティーが大気を圧縮し、高温のプラズマが発生します。その温度は突入後75秒で2100度C に達します。その10秒後には最大加速度(10〜11G)となります。キュリオシティーはスラスターの噴射で姿勢を微調整しながら降下します。また速度を落とすためにS 字ターンも行います。もちろん、これらはキュリオシティーのコンピューターによって自動で行われます。

誘導降下マヌーバーが終わると、さらに別のウェイトが分離され、キュリオシティーの重心はふたたび中心軸に戻ります。その直度、直径16m のパラシュートが開きます。このとき、キュリオシティーは高度約11km、速度は秒速約400m です。その24秒後、キュリオシティーを高熱から保護していた前面ヒートシールドが分離されます。このとき、高度約8km、秒速125m です。前面ヒートシールド分離と同時にMDI(火星降下イメージャー)が着陸地点の高解像度映像を撮影しはじめます。撮影は着陸まで続けて行われます。また、レーダーが作動し、高度の計測を開始します。

前面ヒートシールド分離の85秒後、キュリオシティーと降下段はパラシュートと背面ヒートシールドを分離して、さらに降下を続行します。このとき、高度1.6km、秒速80m。降下段の8基の逆噴射ロケットが点火され、動力降下がはじまります。秒速が0.75m になったところで、降下段はこの速度を維持します。4基のロケットが停止され、キュリオシティーはナイロンのケーブルで降下段から降ろされていきます。これが「スカイ・クレーン」です。着陸まであと12秒です。

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着陸の直前、キュリオシティーのサスペンションと車輪が作動し、所定の位置につきます。センサーが着陸を検知すると、ケーブルが分離され、降下段は着陸地点から飛び去ります。

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キュリオシティーは重量約900kg で、スピリットやオポチュニティーの約5倍の重さです。この探査機をピンポイント着陸させるためには、高度な技術が必要です。

着陸の様子はNASA からウェブ配信される予定です。火星からの信号が地球に届くために、約14分かかることに留意してください。
NASA の次世代ロケットSLS が基本設計段階へ
NASA はスペースシャトルの退役にともない、次世代重量物打ち上げ用ロケットSLS(Space Launch System)の検討を進めてきました。SLS は地球低軌道以遠、具体的には月、ラグランジュ点、小惑星、火星の探査のためのロケットで、有人宇宙船を打ち上げる70トン級と、大型ペイロード打ち上げ用の130トン級の2つがあります。

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SLS は先日、SRR(システム要求審査)とSDR(システム定義審査)を通過し、基本設計段階(Preliminary Design Phase)に進むこととなりました。PDR(基本設計審査)は来年末に予定されています。

SLS の第1段目にあたるコア・ステージには、スペースシャトルのメインエンジンであるプラット&ホイットニー・ロケットダイン社のRS-25 が4基用いられます。有人宇宙船の打ち上げの場合、これに5セグメントからなるATK 社の固体ロケットブースターが2本取り付けられます。

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大型ペイロードの打ち上げの場合、ブースターには固体あるいは液体の新型ブースターが採用される予定です。また上段ロケットには、J2X エンジン2基が用いられます。J2X は、アポロ計画のサターンV型ロケットで用いられた宇宙での再点火が可能なJ2 エンジンを改良したもので、NASA が進めてきた月探査用のアレス計画で開発が進んでいました。

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このように、SLS の開発は、これまでのNASA の資産をそのまま受け継ぐことによって、開発予算の縮減や開発期間の短縮、信頼性の確保などが可能と考えられています。有人打ち上げに用いる多目的有人宇宙船(MPCV)も、NASA が月探査用に開発してきたオライオン有人宇宙船がベースとなります。

SLS の開発は2016年末までに終了することを目標としていますが、このスケジュールが厳密に守れるかどうかは、今後のNASA の予算によっても影響されます。今のところ、SLSの最初の打ち上げは2017年に、無人のMPCV を乗せて行われることになっています。

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