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STS-131ミッション報告会
山崎宇宙飛行士及びSTS-131クルーのミッション報告会に行ってきました。STS-131のクルー全員が顔をそろえ、宇宙での15日間の体験を語ってくれました。

sts-131

会場には多くの子供たちが来ていました。子供たちにとって、宇宙飛行士から直接に話を聞ける機会はとても大事です。宇宙での刺激的な体験は、子供たちに未知の世界への扉を開いてくれるでしょう。

この種のイベントでいつも思うことがあります。それはせっかくクルー全員がそろっているのに、クルーから話を聞く時間が少ないこと、そしてナビゲーターの質問が月並みだということです。月並みの質問をされれば、宇宙飛行士も、それまで何十回も答えたものと同じ決まり切った答をしなくてはなりません。そこからさらに踏みこんでこそ、子供たちに本当に伝えたい、宇宙飛行の生き生きとした世界が広がっていくのです。

たとえば、コマンダーのアレン・ポインデクスター宇宙飛行士とパイロットのジェームズ・ダットン宇宙飛行士には、Kuバンドアンテナが壊れた退役間近のディスカバリーをいかに操ってミッションを成功に導いたのかを聞いてみるとよかったかもしれません。2006年のSTS-121 、2007年のSTS-120、2010年のSTS-131と、異例ともいえる短い間隔で3回の飛行を行ったステファニー・ウィルソン宇宙飛行士には、ロボットアームのスペシャリストとして常に新しいミッションに取り組むことが、自分にとってどれだけのチャレンジであったかを聞くべきだったでしょう。

クルーの言葉の中で私が一番印象に残ったのは、ダットン宇宙飛行士が語った宇宙空間の暗闇の深さについてでした。こんないいい話をしてくれたのですから、ナビゲーターには、「それでは、その暗さは地上で見る夜空とどれだけ違うのか?」と、すかさず聞いてほしいところでした。そうすれば、ダットン宇宙飛行士は少し考えてから、宇宙で見る星の輝きが、サマーキャンプで見る満天の星とどんなに違うかを、子供たちに一生懸命話してくれたに違いありません。
「はやぶさ」その次にくるもの
「はやぶさ」の帰還は劇的でした。私にとって一番印象的だったのは、「はやぶさ」本体がディスインテグレートして光のかけらになっていく先を、小さく鋭い光を放って飛んでいくカプセルの姿でした。その毅然とした光跡に、「はやぶさ」ミッションのすべてが凝縮していたとように思えます。

NASA

私が「はやぶさ」ミッションについて書くべきことは、以前に書きました。これから「はやぶさ」の成果をどう生かしていくかが、大きな課題となっていくでしょう。

「はやぶさ2」は、いつでもスタートできる段階にきています。「はやぶさ2」では、より始原的な小惑星の観測とサンプル回収をめざすほか、小惑星に衝突体を発射してクレーターをつくり、小惑星内部の物質の観測とサンプル回収をめざすことも検討されています。小惑星の表面物質は宇宙風化によって変性したり、他天体からの物質で汚染されている可能性があります。「はやぶさ2」によって、クレーター内部の「新鮮な」物質の分析が可能になれば、太陽系の起源の研究に貴重なデータをもたらしてくれるでしょう。

「はやぶさ」の成果とは、太陽系天体のサンプルリターン技術が実証されたということにとどまりません。日本の太陽系探査が世界の研究の最前線に大きな足跡を残したのです。「はやぶさ2」をスタートさせて「はやぶさ」の技術を継承していくことは大切ですが、この機会に、日本の太陽系探査計画全体をどのように進めていくかの広い議論が必要ではないでしょうか。

チャレンジングな惑星探査ミッションは「はやぶさ」だけではありません。土星を周回するカッシーニ探査機は、6月21日、衛星タイタンへの71回目の接近「T70フライバイ」で、高度880kmまで降下し、タイタンの大気上層に突入しました。これまでで最もタイタンに近づいた接近でした。火星では、火星ローバー、スピリットとオポチュニティーの火星滞在日数が2200火星日を超えています。スピリットはきびしい冬の寒さと闘っています。冬至は過ぎたものの、極寒のため、その機能は停止したままです。一方、オポチュニティーは長い間とどまっていたビクトリア・クレーターから、直径21kmのエンデバー・クレーターへ少しずつ移動を重ねています。オポチュニティーの累積移動距離は21kmを超えました。

「はやぶさ」のカプセルの光跡にように、迷いのない、しっかりとした持続的な探査計画が求められています。
口蹄疫の感染経路をウイルスのゲノム解析で明らかに
口蹄疫ウイルスはどうやって宮崎県にもちこまれ、感染がいかに拡大していったのか、疫学調査チームによる調査が行われていますが、その結果はまだ明らかになっていません。感染経路の解明は、今後の防疫対策を考える上できわめて重要であり、ある程度確度の高い結果が得られれば、公開していくべきであると思います。

疫学調査は現地での聞き取りにもとづく地道な作業です。最近では、これに加え、ウイルスのゲノム解析を感染経路の推定に利用する手法も可能になってきました。ゲノムのデータを使えば、農場単位での感染経路の推定が可能です。

イギリスでは2001年に大規模な口蹄疫の流行がありました。グラスゴー大学環境・進化生物学部および動物衛生研究所パーブライト支所に所属していたエレノア・コタムは、この流行中に21の農場から採取された病原学的検査用の水疱上皮から23のウイルスを分離し、そのゲノム配列(口蹄疫ウイルスの全塩基配列約8500のうち、一部を除いた約8200塩基分)を決定しました。これらの配列を比較したところ、ゲノムの191のサイト(個所)で197の塩基の置換(6個所では2回の置換)が起こっていました。

塩基の置換とは、DNA あるいはRNA の複製時にエラーがおこり、ある塩基が別の塩基に置き換わることをいいます。コタムによると、口蹄疫ウイルスの塩基置換率は1サイト1日あたり2.26×10の−5乗で、農場あたりにすると1.5という高いものでした。この置換率の高さについては、村上洋介(当時家畜衛生試験場ウイルス病研究部病原ウイルス研究室長、現在は帝京科学大学教授)の『口蹄疫ウイルスと口蹄疫の病性について』(1997)でも、「1回のウイルス感染でおおよそ1個の塩基の置換が生じることになる」と書かれています。

この高い置換率のために、コタムは23のウイルスの系統樹(下)を作成することができました。先日の記事で私が紹介した口蹄疫ウイルスの系統樹は、VP1というキャプシドタンパクの塩基配列(633塩基)にもとづくものでしたが、ゲノム全体の塩基配列を決定することで、個々のウイルスの変化を見ることができたのです。

Eleanor M Cottam, 2007

この系統樹と疫学調査によるデータ(発生の時期等)を組み合わせて再現された感染経路が下です。数字あるいはアルファベットが個々の農場を示しています。どの農場からどの農場にウイルスが伝染していったかが明らかになっています。

Eleanor M Cottam, 2007

日本でもこうした手法を導入して、感染経路の詳細な特定を行っていくことが必要だと思います。ただし、ウイルスのゲノム解析を行うには、各農場の感染家畜から新鮮な組織を採取しなければならず、あらかじめ調査計画と現地で使用するマニュアルを作成しておく必要があります。研究者の方々はコタムの論文を知っていると思いますが、今回、こうした調査手法が可能な状況かどうか、私にはわかりません。
軌道上のイコン
野口聡一宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在中の写真の中に、私が「おやっ」と思った写真がありました。野口宇宙飛行士がコマンダーのオレッグ・コトフ宇宙飛行士と、ロシアのモジュール、ズヴェズダで食事をしている写真(左)ですが、私が気になったのは、野口宇宙飛行士の後ろにある、ズヴェズダの壁です。ここには、右側には宇宙開発の父といえるコンスタンティン・ツィオルコフスキーの写真が、左には世界初の有人宇宙飛行を行ったユーリー・ガガーリンの写真が貼ってあります(右)。どちらもロシアの宇宙開発を語る上で欠かすことのできない人物です。

NASA

ここは、野口宇宙飛行士がISSにやってきたときには、下のようでした。ツィオルコフスキーとガガーリンの写真の間にはイコンが飾ってありました。また、コトフ宇宙飛行士の後ろには、写真がもう1枚貼ってありました。

NASA

この一番左の写真を私はこれまで見たことがなく、これが誰なのか、以前から気になっていたのですが、先日、若田さんがこれもツィオルコフスキーだと教えてくれました。若田さんら第20次長期滞在クルーが今年2月に来日した際、2人のロシア人宇宙飛行士、コマンダーのゲナディ・パダルカ宇宙飛行士、そしてロマン・ロマネンコ宇宙飛行士と話をする機会がありました。そのときも、この写真が話題になりましたが、ロシアでは皆が知っている写真のようです。

NASA

若田さんがISSに滞在していたときの上の写真には、ロシアが開発中といわれるミニ・シャトル型の有人宇宙船クリッパーの模型が置かれていました。また、天井近くに十字架とイコンが飾ってありました。それより2年ほど前の第15次長期滞在クルーのころには、下の写真のように、ロシアのチーフデザイナー、セルゲイ・コロリョフの写真が飾られていました。

NASA

ズヴェズダのこの場所は、ロシアの宇宙飛行士たちが地上からもってきた写真や思い思いの品を飾るところになっています。ロシアの宇宙開発史にとって最も重要な3人の人物の写真が、宇宙飛行士たちとともに飛行しているのは当然といえますが、それらと一緒に飾られているイコンは、ロシアの伝統的な文化や生活習慣が宇宙に持ちこまれていることのあらわれといえるでしょう。今では、バイコヌール宇宙基地から宇宙へ旅立つ宇宙飛行士たちは、ロシア正教の聖職者に聖水で祝福されてから、宿舎であるコスモノート・ホテルを出発するのです。

由緒ある歴史的なイコンが、宇宙を飛んだことも何度かあったようです。最近では2009年9月30日に打ち上げられたソユーズTMA-16によって、『しるしの聖母』として有名なイコンがISSに運ばれ、地球を176周した後、ソユーズTMA-14で10月11日に地球に戻りました。
バズ・オルドリンの長い旅路:どんなスーパーマンにもロイスは必要だ
アマゾンで予約していたバズ・オルドリンの “Magnificent Desolation: The Long Journey Home from the Moon” が届きました。

MAdnificent_Desolation

オルドリンはアポロ11号でニール・アームストロングとともに初めて月面を歩きました。現在でも宇宙計画の将来について積極的に発言し、行動していますが、月から帰還後、一時は精神のバランスを崩し、鬱(うつ)やアルコール依存におちいり、離婚も経験しました。

アマゾンから来た案内で目次を見たとたん、これがどんな本かが分かりました。第1章は “A Journey for All Mankind” で、彼が月に旅立つところからはじまります。地球に戻った後の第4章は “After the Moon, What Next?” です。さらに第6章 “Flying High, Flying Low”、第8章 “Human Side of Hero”、そして第9章 “A Controlled Alcoholic” と続いていきます。

第15章は “Every Superman Needs His Lois” でした。「どんなスーパーマンにもロイスは必要だ」。この場合のロイスは、スーパーマンの恋人のロイス・レインであると同時に、彼の現在の妻の名前でもあります。この章のタイトルを見て、私はすぐにこの本を注文しました。

朝から少しずつ時間をみつけながら、ざっと読んでみました。本書のタイトルである “Magnificent Desolation” (壮大なる荒涼)とは、彼が月面で見た光景と、月から帰った後に彼が体験した精神の風景を意味しています。本のサブタイトルにもあるように、この本は、月から戻ったオルドリンが自らの家にたどりつくまでの長い旅について書かれたものです。彼の帰還の物語は、『オデュッセイア』のような数々の冒険に彩られた英雄譚ではなく、仕事の失敗や抗うつ剤、アルコール、離婚、孤独、父の死といった人間的要素に満ちています。彼がこうした状態から立ち直るきっかけとなったのが、ロイスとの出会いでした。

共同執筆者がニューヨーク・タイムスの売れっ子ライター、ケン・エイブラムであるため、ところどころ文章が出来過ぎの感はありますが、アメリカン・ヒーローの “rebirth” と “reunion” の物語として、これまで書かれた宇宙飛行士の本とは一線を画すものになっています。

本書は2009年にハードカバーで出版されたもののペーパーバック版です。本書のあとがきで、オルドリンは今年2月に発表されたオバマ大統領の新宇宙政策について新たに書いています。オバマ大統領の新政策の根拠となった昨年のオーガスティン委員会で、オルドリンは自らの意見を述べる機会があったようです。そこで、彼は以下の3つの点を主張しました。
.▲瓮螢の新しい有人宇宙船が完成するまで、スペースシャトルの飛行は継続すべ
 きである。
月への有人飛行は、かつてのアポロ計画のようにアメリカ単独で行うのではなく、
 国際共同プログラムとして行うべきである。
NASAは2030年代の火星有人着陸を目指すべきである。
彼はオバマ政権下で増額された予算を有効に使って、NASAが火星有人探査に積極的に取り組むことを期待しています。
野口宇宙飛行士、帰還
本日、12時25分、ISS 第23次長期滞在クルーであるオレッグ・コトフ宇宙飛行士、野口聡一宇宙飛行士、ティモシー・クリーマー宇宙飛行士を乗せたソユーズTMA-17は、予定通り、カザフスタンに着陸しました。

NASA

野口宇宙飛行士の飛行については、また別の機会に書くとして、今日の着陸の様子を見て私が感じたことは、日本の宇宙開発が新しいステージへと移行しているということでした。これからは、日本の宇宙飛行士が地球に帰還して最初に見る風景は、地平線まで広がるカザフスタンの草原なのです。

NASA

今後、ロシアの技術だけでなく、ロシアの文化やロシアの人々の考え方をより理解することが大切です。

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