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チリ地震津波ふたたび
27日午後3時34分ごろ、チリ中部沿岸でマグニチュード8.8(USGSによる)の大地震が発生しました。震源近くでは大きな被害が出ている模様です。地震が発生した場所は、ナスカ・プレートが年間8センチメートルのスピードで南アメリカ・プレートの下にもぐりこんでいるところで、地震多発地帯の1つです。

chile2010

地球の裏側で発生した地震ですが、津波に対する警戒が必要です。1960年5月23日に発生したチリ地震は、マグニチュード9.5という観測史上最大規模の巨大地震で、震源は今回より少し南でした。翌24日に1〜6メートルの津波が日本にまで到達しました。下の図は、このときの津波の伝搬時間を示すNOAA(アメリカ海洋大気局)のデータで、色の帯1つが1時間をあらわしています。地震発生から約22時間で、津波が日本にやってくることがわかります。

traveltime

1960年のチリ地震による津波では、三陸海岸を中心に被害が発生、多くの死者が出ています。「災害は忘れたころにやって来る」と言いますが、当時の被害を知っている人がだんだん少なくなったころに、また同じような津波がやってくることになります。津波は本日午後1時過ぎに、日本にやってきます。

ISS の新しい窓
スペースシャトル、エンデバーは約14日間のミッションを終えて、本日12時20分(日本時間)に、フロリダのケネディ宇宙センターに帰還しました。今回のSTS-130ミッションでは、国際宇宙ステーション(ISS)のノード3(第3結合部)であるトランクウィリティーと、観測用モジュール、キューポラが運ばれました。

トランクウィリティーはユニティの左舷側に取りつけられ、キューポラはトランクウィリティーの下側(地球側)に取りつけられました。また、ユニティの左舷側に取りつけられていたPMA-3(与圧結合アダプタ3)はトランクウィリティーの先端に移設されました。

下の写真は、エンデバーが地球に帰還する際に撮影したもので、ISS のアメリカ区画側を下から(地球側から)見上げています。ISSは次第に最終形に近づいてきました。

iss

キューポラは地球を真下にのぞむ中央の丸い窓と、それを囲む6個の窓からなり、宇宙空間に少しとび出した形になっています。ここからは素晴らしい光景を見ることができるでしょう。下の写真でキューポラの中にいるのは、STS-130 のコマンダー、ジョージ・ザムカ宇宙飛行士です。

cupola

宇宙から地球を眺めていると、1日見ていても飽きないといいます。キューポラはそれほど大きなスペースではありませんが、休みの日には、ここが宇宙飛行士たちのたまり場になるのではないでしょうか。
冬の貴婦人
池袋のサンシャイン60で、「クリスマスローズの世界展」を見てきました。花の少ない冬季に美しい姿を見せてくれるところから「冬の貴婦人」ともよばれるクリスマスローズには、日本にも多くの愛好家がいます。花弁に見えるのは実はがく片なのだそうで、本来の花弁は退化し、中央部分に小さな蜜腺となって集まっています。

クリスマスローズの色や模様、形は多彩ですが、現在も新しい品種が開発されています。会場には、クリスマスローズの育種で有名なイギリスのアシュウッド・ナーセリーのコーナーがありました。ここに展示されていたレッドネオンという品種は、さすがに素晴らしいものでした。

christmasrose_a

クリスマスローズはキンポウゲ科の花で、その原種は20種。バルカン半島を中心に広くヨーロッパに自生しているそうです。会場にはその原種がいくつか展示されていました。左から、アトロルーベンス、オドルス、ニゲル、プルプラスケンスです。

christmasrose_b

形や色は素朴ですが、こうした原種を交配していくと、華やかな品種が生まれてくるのですから、あらためて遺伝子の不思議さを感じないわけにはいきません。
スピリット、4度目の冬へ
火星ローバー、スピリットは4度目の冬を越すための態勢に入りつつあります。太陽電池板をできるだけ太陽の方向に向けるため、機体の傾きを変える操作が行われました。それでも、太陽電池板は南に9度ほど傾いた状態にあるため、北方向にある太陽のエネルギーを受けづらくなっています。越冬中には電力が不足するため、スピリットは間もなくハイバネーション(省電力)モードに入り、冬眠して厳しい火星に冬を乗り切る予定です。

下の画像は、現在のスピリットの状況で、後部障害物回避カメラから足元を撮影したものです。

spirit
危機に瀕する霊長類
『Primates in Peril:The World’s 25 Most Endangered Primates(危機に瀕する霊長類:世界の最も危機に瀕する霊長類トップ25)』の2008−2010年版が発表されたというプレスリリースが、コンサベーション・インターナショナル・ジャパンから送られてきました。

primates_in_peril

この報告書の中では、マダガスカルの5 種、アフリカの6 種、アジアの11 種、中南米の3 種が、世界で最も危機に瀕している霊長類として上げられています。特に危機の度合いが高いのは、ベトナム北東部のトンキン湾に浮かぶ島にのみ生息するゴールデン・ヘデッド・ラングールで、個体数はわずか60から70頭しか残っていないとのことです。また、マダガスカルのスポーティブ・レムールは100 頭以下、ベトナム北東部に生息するイースタン・ブラック・クレステッド・ギボンは、110 頭しか残っていません。

世界には634 種の霊長類がいるそうですが、そのうち半分近い種がIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストに絶滅危惧種としてリストアップされています。危機の原因となっているのは、熱帯林の燃焼や伐採による生息地の破壊、ブッシュミート(野生生物を食料とする狩猟)、違法な野生生物取引です。

この報告書は、IUCN 種の保存委員会(SSC)、国際霊長類学会(IPS)、コンサベーション・インターナショナル(CI)の協力により作成されました。
今こそ、日本の有人宇宙計画の議論を
2月14日に、お台場の国際交流館で、JAXA 主催による「国際宇宙ステーション「きぼう」が拓く有人宇宙活動」というシンポジウムが開かれました。2009年は、日本の有人宇宙活動にとって重要な意味をもつ年となりました。若田光一宇宙飛行士が日本人初の国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在を行いました。日本の実験棟「きぼう」も完成しました。さらにISS に物資を補給するHTV(宇宙ステーション補給機)も初飛行に成功しました。これを打ち上げたのは、日本の新しいロケットH-B です。シンポジウムはこうした成果を背景に、日本の有人宇宙活動の今後を考えようというものでした。会場は満席で、多くの方々がこのテーマに関心を寄せているのが実感されました。

シンポジウムではまず、JAXA の白木邦明理事が「きぼう」で獲得した有人宇宙技術について講演を行いました。次に、若田宇宙飛行士をはじめISS 第20次長期滞在クルー6名全員が顔をそろえ、ISS での活動を報告しました。その後、「有人宇宙活動の今後」と題されたパネルディスカッションが行われました。パネリストは若田宇宙飛行士、立花隆氏、JAXA 執行役の長谷川義幸氏、三菱重工業宇宙機器部長の浅田正一郎氏、司会はJAXA 技術参与の的川泰宣氏で、今後、日本が独自の有人宇宙計画を持つべきかどうかの議論も行われました。

ディスカッションの中で、立花氏は、今、日本の有人計画について議論することに否定的立場をとっていました。その理由は、〕人計画には莫大な予算が必要だが、現在はそのような状況ではない、⇒人宇宙開発を行ってきた国では、必ず裏に軍事力の存在がある。しかし、日本の宇宙開発には軍のサポートがない、というものでした。

しかし、この考え方は間違っていると言わざるをえません。立花氏の指摘をまつまでもなく、日本の宇宙開発は「予算が少ない」「平和利用に限る」という2つを前提に進められてきたわけです。それでいながら、日本の宇宙開発がここまできたことを、私たちはむしろ誇りに思うべきです。日本の有人計画も、当然のことながら、この2つを前提に、今後、何が可能なのかを議論すべきです。民間の企業が宇宙旅行をビジネスにしようという時代です。有人計画には莫大な予算と軍事のサポートが必要というだけで物事を片づけてしまうのは、もはや時代遅れの20世紀的発想といえるでしょう。

日本が独自の有人計画をもつべきかどうかの議論は、ようやくはじまったところです。2002年6月に、「有人宇宙活動について、我が国は、今後10年程度を見通して、独自の計画を持たない」という驚くべき方針が総合科学技術会議によって出されたため、日本では、長い間、有人計画についてオープンに議論できない状況が続いてきました。まして、JAXA の担当者がこの問題について公開の場で話をするなどというのは、しばらく前には考えられないことだったのです。

上の総合科学技術会議の方針では、さらに「今世紀中には、人々が本格的に宇宙に活動領域を広げることも期待されることから、国際宇宙ステーション計画を通じて、その活動に関わる技術の蓄積を着実に推進する」と述べられています。日本の宇宙開発はこの約束を果たし、国際宇宙ステーション計画を通じて、有人技術を着実に蓄積してきました。その成果が、日本人宇宙飛行士による長期滞在の実現であり、「きぼう」の完成、さらにはHTV の成功であるわけです。

かつて私たちは、スペースシャトルは永遠に宇宙を飛んでいると思っていました。人間を宇宙に送ることは、アメリカにお金を払って頼めばいいと考えていたわけです。しかし時代は変わり、スペースシャトルは今年限りで飛行を終え、アメリカはその後継の有人宇宙船の開発計画をキャンセルしました。こうした局面に、私たちは立っているわけです。

日本が独自の有人宇宙船とそれを打ち上げるロケットを開発するには、どのような道筋があるのか、どのくらいの期間とお金がかかるのか。今こそ、それを具体的に検討すべきです。おそらく、いろいろなアイデアが出てくるはずです。海外の技術を導入することも考えられます。例えば、打ち上げロケットの緊急脱出システムは、最も実績のあるロシアから買うのがいいかもしれません。そのように考えていけば、日本にとって、宇宙は今まで考えていたより、もっと近くにあるかもしれません。

鳥と恐竜の間
2003年に中国の白亜紀前期の地層から発見された「羽毛恐竜」ミクロラプトルは、後肢も翼になっており、前肢には風切羽がありました。以来、鳥と恐竜の関係についてホットな議論が続いています。

議論の1つは、鳥の飛行がどのようにして生じたかで、ミクロラプトルのような前肢と後肢に羽毛をもつ恐竜が樹上から滑空することから、鳥の飛行能力が獲得されたのではないかと考えられるようになってきました。

下左のイラストは、偉大なナチュラリストであったウィリアム・ビーブが1915年に描いたものです。ビーブは世界で初めて潜水球に乗りこみ、深海の生物を調べた人物として有名ですが、もともとは鳥類学者でした。その彼が、初期の鳥が滑空することによって飛行能力を獲得していったという仮説を説明するために描いたものです。このイラストとミクロラプトル(下右)の想像図は、驚くほどよく似ています。

william_beebe

このビーブのイラストはオレゴン州立大学の最近のプレスリリースに載っていたのですが、そのプレスリリースの中で、同大学の動物学の教授であるジョン・ルーベンは、現在、恐竜と考えられているものの中には、鳥から進化したものがあると語っています。

実は、鳥と恐竜の関係そのものについても、いろいろ議論があるのです。鳥の祖先はティラノサウルスなどを含む獣脚類の仲間から分岐したと考えられており、系統図の上では、ミクロラプトルは鳥との分岐点からきわめて近いところにいます。ミクロラプトルを含むデイノニコサウルス類の恐竜は鳥に非常によく似ています。実際のところ、このあたりの恐竜については、どこまでが恐竜で、どこからが鳥なのかを決めるのが難しくなっています。

一部の研究者がしばらく前から唱えはじめた説によると、鳥の祖先は恐竜と共通の祖先から分岐し、現在の鳥へと進化したのですが、あるグループは飛行能力を捨てて地上で生活するようになりました。ヴェロキラプトルの仲間などに分類されている恐竜の中には、こうした「鳥」が含まれているというのです。この説が正しいかどうかは別として、こうした説まで出てくるほど、鳥の祖先が恐竜から分岐するあたりには興味深い話題が多いということなのでしょう。
オリンポスの神々
古代バビロニアの人々は、肉眼で見える5つの惑星をすでに観測しており、それに彼らの神々の名前をつけていました。バビロニアの天文知識は、その後ギリシャに伝えられ、5つの惑星の名は、ギリシャ神話に登場する神々の名となりました。これらの名はさらにローマに伝えられました。西欧世界で用いられる水星、金星、火星、木星、土星の名はこうして定着しました。その後、発見された天王星、海王星、冥王星も、これに準じて命名されたわけです。

このうち、ヘルメス(水星)、アフロディテ(金星)、アレス(火星)、ゼウス(木星)、ポセイドン(海王星)は、オリンポス山に住む「オリンポス十二神」に属します。ハーデース(冥王星)は十二神と同格とされますが、住んでいるのは冥界あるいは地底です。クロノス(土星)はゼウスの父、ウラノス(天王星)はクロノスの父で、ギリシャ神話の神々の系譜はそもそもウラノスとその妻ガイアから始まったのです。

「オリンポスの煌き」と名付けられたこのチョコレートには、これらの惑星が並んでいます。

olympus

ただし、土星と、準惑星となった冥王星は含まれていません。土星はリングまで入れると他の惑星とバランスがとれないためかもしれません。また、上に述べたように、クロノスはオリンポスの神ではありません。その代わり、オリンポス十二神の1人である月の女神アルテミスが入っています。また、アフロディテの息子ともいわれるキューピッドも入っています。これに対応する天体は小惑星のエロス、あるいはアモールです。バレンタインデーの必須アイテムとして入っているのかもしれません。いずれにしても、天空の神である天王星を除けば、ここには輝かしいオリンポス山の神々が並んでいます。
3D 映像の未来
『アバター』を観てきました。

映像の技術が進歩すればするほど、それを使いこなすだけのイマジネーションが必要になる。それがなければ、映画は技術のしもべとなってしまう。衛星パンドラの森の中のシーンが登場し、この作品が『もののけ姫』の3D 版だということが分かってからというもの、私は最後までそれを考えながら観続けました。

SF としての設定の陳腐さ、かわり映えしないメカ、木星の大赤斑を青に変えただけの惑星ポリフェマスのチープさ、どこかで見たような風景。結局、新しいものは何もなく、3D 映像の可能性について認識させられたのみに終わりました。

『ジュラシックパーク』が登場したとき、CG は、古生物学者の頭の中にしかなかった恐竜の動く姿を再現しようというスピルバーグの意思を実現するための、強力なツールとなりました。CG を道具にするだけのタフなイマジネーションが制作側にあったわけです。その映画制作におけるCG の利用は、『ロード・オブ・ザ・リング』3部作によって、なすべきことはすべてなされてしまったような気がします。

3D は、次の映像表現技術として注目されています。確かに、『アバター』の3D 表現は、これまでの3D 技術から大きな飛躍がなされている感じがします。技術の改良はこれからも進み、制作コストもどんどん下がるでしょう。私自身も、3D 技術の今後には大きな期待をもっています。それだけに、観るものを感動させるソフトの開発が大きな課題です。
ロシアの第5世代戦闘機T-50
ロシアの第5世代戦闘機の試験飛行の映像がYouTube にアップされています。「第5世代戦闘機」とは、ステルス性に優れ、高い機動性や超音速巡航飛行能力などをもつ戦闘機をいい、現在のところ存在するのはアメリカ空軍の最新鋭戦闘機F-22 ラプター(ロッキード・マーチン社製)のみです。

ロシアでも第5世代戦闘機の開発計画PAK FA が進められ、2002年にスホーイ社がF-22をしのぐ性能を目指す戦闘機を開発することが決定されました。この戦闘機は現在のところ、T-50とよばれています。ロシアの経済事情などにより、開発は遅れ、ようやくその試験機がベールを脱いだことになります。

試験飛行は1月29日に極東のコムソモルスク・ナ・アムーレで行われました。映像を見ると、機体の形状(特に主翼や空気取り入れ口など)はF-22によく似ています。水平安定板の形状はF-22の試作機YF-22に似ています。また、機首部分はF-22より長いようで、複座バージョンも製造されることと関係しているかもしれません。しかし、この映像だけでは、T-50の飛行性能や、ステルス性を高めるために、機体の細部や塗装にどのような工夫がこらされているかはわかりません。

t_50

T-50の実戦配備が始まるのは2015〜2017年とみられています。開発にはインドが参加しており、搭載コンピューターやソフトウエア、コックピットのディスプレイなど電子まわりの開発を担当しています。インドはT-50を200機配備すると伝えられています。そうなると、中国、パキスタンなど近隣諸国との軍事力バランスに大きな影響を与えることになるかもしれません。
スペースシャトル、エンデバー、打ち上げ
スペースシャトル退役へのカウントダウンが始まる中、エンデバーが国際宇宙ステーション(ISS)に向かいました。打ち上げは米国東部標準時間2月8日午前4時14分(日本時間2月8日午後6時14分)でした。今回が最後の夜間打ち上げとなる模様です。このSTS-130ミッションでは、ISSの第3結合部「トランクウィリティー」と、これに取りつける「キューポラ」が運ばれます。キューポラには6枚の窓と天窓があり、地球観測などに用いられます。

sts130

オーガスティン委員会の報告書では、アメリカ人宇宙飛行士をアメリカの有人宇宙船が宇宙へ運べない期間を短縮するため、シャトルの飛行を延長する案も検討されていましたが、オバマ大統領の予算教書でこの案は採用されず、シャトルの飛行は、今回を入れてあと5回となりました。

次回の打ち上げは山崎直子宇宙飛行士が搭乗するSTS-131で、3月18日に予定されています。その後、各オービターは最終の飛行を行います。現在の予定は以下の通りです。
STS-132 アトランティス 5月14日
STS-134 エンデバー 7月29日
STS-133 ディスカバリー 9月16日
チェザーレ・パヴェーゼ:月と篝火
一昨年から刊行されていた岩波書店の『パヴェーゼ文学集成』が完結しました。『美しい夏』『丘の上の悪魔』『孤独な女たちと』が収録された第2巻を最後にもってくるとは、心憎い配本です。1969年に刊行が始まった晶文社のパヴェーゼ全集(最後までは刊行されなかった)で今、私の書棚にあるのは第5巻の『青春の絆』だけ、1976年に刊行された集英社の『世界の文学』のパヴェーゼの巻は行方不明という状態で、長い間、彼の世界に触れる機会はありませんでした。今回の『文学集成』は若い時からパヴェーゼの作品を翻訳してきた河島英昭氏の仕事の集大成であり、刊行が始まったとき、そろそろ、もう一度パヴェーゼを読んでみようかという気になっていたのです。

パヴェーゼ(1908〜1950)はイタリア文学の中で高い評価を得ているものの、あまり日本では知られていません。岩波文庫で刊行された『故郷』(2003年)と『美しい夏』(2006年)で初めて知った方も多いのではないでしょうか。彼の作品は第二次世界大戦前後のイタリアの激動の時代下で書かれましたが、現代においても私たちに生きるとは何かを問いかけてきます。

7年ほど前、ミラノでのことです。何を買うという目的もなく書店に入った私は、突然、パヴェーゼを思い出しました。
「パヴェーゼの本はどこにありますか?」
「それって、どこの国の作家でしたっけ」
「君の国の作家じゃないか」
「ああ、そうでした」
イタリアでも、パヴェーゼは若い人にはあまり読まれていないのかもしれません。とにかく、そんな会話の末にエイナウディ社刊『月と篝火』を買って帰りました。

pavese

『月と篝火』は、彼の最後の長編小説です。冒頭の「ここに帰ってきたのには、わけがある。ぼくはここで生まれたのではない、それはほとんど確かだ」から、結末の「去年までは、まだそこに残っていた」というヌートの言葉まで、この作品には、彼のそれまでの作品の核心が結晶のようにちりばめられている気がします。この神話的世界を味わうためには、やはり最初に読んで、最後にもう一度読まなくてはいけないでしょう。
NASA はどこへ?(その2)
アメリカ初の有人地球周回飛行を目指す「フレンドシップ7」の打ち上げは何度も延期されました。1962年2月20日、ジョン・グレンはようやく発射台に向かいます。「美しい光景だった」と、ジョン・グレンは“WE SEVEN”の中で書いています。「夜はまだ明けていなかったが、強力なライトがアトラス・ロケットを明るく照らしていた。それはまるで別世界のようだった」。エレベーターに乗りこむとき、作業員たちがグレンに手を振ります。「私は感謝の気持をこめてうなずき返した。皆が一緒にいてくれることが、とても嬉しかった。こんな朝には、誰もがチームメイトなのだ」。

宇宙船に乗りこんだグレンのレシーバーに、フライト・ディレクターが打ち上げの準備状況を確認する交信が聞こえてきます。「通信」「ゴー」、「自動操縦システム」「ゴー」、「航空医学」「ゴー」、「追跡」「ゴー」。「宇宙飛行士はこうしたリストでは最後の方である。私の順番がきたとき、私は答えた。『準備はできている』」

午前9時47分39秒、アトラス・ロケットは発射台を離れます。「ロケットの発射はそれ自体、宇宙に行くために越えなければならない4つのハードルの最初のものだった」。発射45秒後あたりで2番目のハードルがやってきます。上昇するロケットにかかる大気圧が最大になるマックスQ です。「このあたりに、アトラスと宇宙船にとって大きな壁がある。無人の宇宙船を載せた過去のアトラスの打ち上げでは、ロケットはここで破壊してしまった」。グレンははげしい振動を感じますが、アトラス・ロケットはこの壁を越えていきます。

ブースター分離、ロケット分離という第3、第4のハードルもクリアーし、グレンは地球を周回する軌道に達します。「われわれは秒速2万5730フィートで飛んでいる。6G あった重力はゼロになった」。

NASA はこのようにして、ハードルを次々に越え、宇宙への道を切り開いてきました。そのための技術を開発する体制は、NASA を頂点に、その下にアメリカの各分野の企業が巨大なピラミッド構造をつくるというものでした。しかし、50年の間に、低軌道への人員・物資輸送については、状況が変わってきました。もう少しで民間の企業がこの分野に進出できるところまで来たのです。

オバマ大統領の予算教書で示された、低軌道への輸送に関するNASA の役割は、こうした状況を背景に、NASA がピラミッドの頂点ではなく、企業のパートナーになるというものでした。民間でもできることをNASA が行う必要はないというのは、間違った考え方ではありません。しかし、それなら、宇宙開発の最先端の分野を切り開いていく上でのNASA の新しい任務は何なのでしょうか? 残念ながら、オバマ大統領はこの点を明らかにすることはありませんでした。

2020年の月着陸を目指していたコンステレーション計画が中止された後、NASA はどこに向かうのでしょうか? 予算発表後に行われた記者会見で、NASA のチャールズ・ボールデン長官は、「NASA は独自の有人飛行を放棄するわけではない」と語っています。国際宇宙ステーションの先の、その新しい目的地について、すでに委員会ができて検討がはじまっており、結論が出るまでに「数週間とはいかないが、何年もかかるわけではない」と、ボールデン長官は語りました。
NASAはどこへ?
NASA のホームページは「技術革新と発見の新時代」として、オバマ政権によって示された2011会計年度予算と、それにもとづいてNASA が目指す新しい方向を紹介しています。しかし、このデザインはどうでしょう。NASA の見慣れた紺色のロゴは、なぜかげりを見せているのでしょうか?

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背景の画像は、右側が昨年8月のスペースシャトル、ディスカバリー(STS-128)の打ち上げ、左側はハッブル宇宙望遠鏡が撮影した星の形成領域「わし星雲」で、「ピラーズ・オブ・クリエーション」として有名な画像です。スペースシャトルとハッブル宇宙望遠鏡は、これまでのNASA の活動の象徴ともいえる存在です。NASA は今、新しいクリエーションの中にあるということなのでしょうか。しかし、このかげりはまるで、新しい時代の始まりというよりは、輝かしい時代の終わりを告げているかのようです。

NASA の公式声明は「オバマ政府は、新しい技術革新と発見をもたらす大胆で野心的な新宇宙政策を打ち出した」と述べていますが、実際のところ、それはNASA の1つの時代を終わらせるものでした。NASA はもはや宇宙への挑戦を自ら担う機関ではなく、チャールズ・ボールデンNASA 長官が述べたように、これからは「技術革新のエンジン、そして野心的な新しい宇宙計画のための触媒」になることが、その役割なのです。

オバマ政権による新しい宇宙政策は以下の通りです。
コンステレーション計画の中止
計画は予算をオーバーしており、スケジュールも遅れ、新しい技術も導入されていない。実現したとしても50年前のアポロ計画を再現するだけである。しかも、この計画はNASA の他の計画の予算を圧迫している。計画を中止し、将来の宇宙計画により役立つ技術を開発する。
スペースシャトルの安全な退役
今後5回予定されているシャトルを安全に飛行させる。
国際宇宙ステーション運用期間の延長
国際宇宙ステーションの運用を2020年まで延長する。
フラグシップ技術
将来の宇宙探査のための革新的技術、フラグシップ技術の開発・実証を行う。
民間による有人宇宙輸送
国際宇宙ステーションへ宇宙飛行士を運ぶ民間宇宙輸送システムを実現するための支援を行う。
重量級ロケット
重量級ロケットや推進技術の研究開発を行う。
気候変動研究
気候変動の研究や衛星による監視を推進する。
科学探査
太陽系天体の無人探査および軌道上からの天体観測を推進する。
教育
科学・技術・工学・数学の教育に力を入れる。

「この新しい道は、大きな変化である」と、ボールデン長官は語っています。確かに、これは非常に大きな変化です。しかしながら、これだけ大きな変化をもたらす決定であるにもかかわらず、その根拠となるオバマ政権の明確なビジョンは示されず、NASA はあてどない航海へと出発しようとしています。アメリカは今後、宇宙で何を目指すのでしょうか?

新政策の是非をめぐって、今後、議会で活発な議論がかわされるでしょう。アメリカの宇宙政策の変更は、各国の有人宇宙計画や無人探査計画にも影響を与えます。今後の成り行きを注意深く見守っていく必要があります。
NASAの有人月探査計画が中止に
アメリカのメディアは一斉に、オバマ大統領が示した2011会計年度の予算によって、NASA が進めていたコンステレーション計画がキャンセルされたことを報じています。

constellation

コンステレーション計画はスペースシャトルに代わる新しい有人宇宙船オライオンと、それを打ち上げるアレス・ロケットを開発するための計画です。これにともない、2020年を目指していた有人月探査計画も中止されます。NASA は今後、民間企業による低軌道への有人輸送システムの開発を支援していくことになります。

一方、2015年までとされていた国際宇宙ステーション(ISS)の運用は5年間延長されました。コンステレーション計画とISS の両方を運用していく予算はないということなのでしょう。もちろん、NASA は今後も有人の宇宙の探査を続けていくと述べられており、その道筋としては、オーガスティン委員会の報告書でオプションの1つとされていた「フレキシブル・パス」がとられるようです。

もう少し情報を集めてから、くわしく書きたいと思いますが、今の私の印象を言えば、世界の宇宙開発をリードし、世界中の人々を勇気づけてきたNASA の役割はこれで終わり、アメリカは宇宙に対する明確な目標を失ったのではないかということです。21世紀に最初に月面を踏むのは、中国人宇宙飛行士になるでしょう。

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