H-?Aはこれまで40回連続で打ち上げに成功している信頼の高いロケットであり、今回も確実にXRISMとSLIMを宇宙に運んでくれると思います。
一方、JAXAではこのところ、イプシロンロケット6号機の打ち上げ失敗、H3ロケット試験機1号機の打ち上げ失敗、イプシロンSロケット第2段モーター地上燃焼試験の爆発事故などが起こっています。これらの原因はそれぞれ独立しており、直接的な連関はないものの、日本の基幹ロケットを開発する任務をもつ国立研究開発法人としてのJAXAの体制について、もう一度考える必要性があることを示唆しているように思えます。
また、今回打ち上げられるSLIMに関しても、JAXAの役割について考えざるを得ません。
中国は2013年に嫦娥3号を月面に着陸させ、搭載していたローバー玉兎が着陸地点周辺を調査しました。中国はその後、嫦娥4号を月の裏側に着陸させ、嫦娥5号では月物質のサンプルリターンを成功させました。中国は今後打ち上げる嫦娥6号で再びサンプルリターンを行い、嫦娥7号を南極域に着陸させる予定です。
インドは2019年にチャンドラヤーン2号で月面着陸に挑戦しましたが、この時は失敗しました。しかし、今年の8月23日には、チャンドラヤーン3号を南極域に着陸させることに成功しました。今後、搭載していたローバーで周辺の調査を行う予定です。
チャンドラヤーン3号の着陸成功の3日前には、ロシアの月探査機ルナ25号がやはり南極域に着陸を試みましたが、成功しませんでした。
21世紀初の有人月着陸を目指すNASAのアルテミス計画は、月の南極への着陸を目指しており、各国の月探査計画も南極を目指す時代に入っています。
一方で、NASAは民間による月面輸送サービスCLPSを進めています。今のところ、2023年に3機、2024年に3機、2025年に1機、2026年に1機の民間の月着陸機が、月面にペイロードを運ぶことになっています。
こうした世界の潮流の中では、月の赤道域を目指し、小型着陸機の技術実証を行うSLIMは、もはやJAXAが行うミッションではなくなってしまいました。
JAXAは2007〜2009年に月周回衛星かぐや(SELENE)ミッションを成功させ、月科学の進歩に大きく寄与しました。JAXAの研究者はその頃にはすでに、かぐや後継機SELENE-2の検討に入っていました。着陸機とローバーによるSELENE-2ミッションが実現していれば、日本は世界の月探査の第一線に躍り出ていたはずです。しかし、SELENE-2は予算が得られず、中国、インドの後塵を拝すことになってしまいました。
月探査は国と国の競争ではありませんが、自国の最高の技術を使っていち早く未知の領域に挑戦し、成果を出すことが人類の進歩に貢献するのです。そして、ここにこそ、国立研究開発法人としてのJAXAの役割があるといえます。
なぜ、ロケットの失敗が続くのか? なぜSELENE-2ではなく、SLIMになってしまったのか? JAXAを応援するために、このあたりから、日本の宇宙開発の今後を考えてみたいと思います。
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画像:NASA
北海道大学の藤田修教授を代表研究者とするFLAREが、「きぼう」利用テーマ重点課題区分として採択されたのは2012年でした。これまでの地上研究で、微小重力環境での材料の燃焼を評価する新手法がつくり上げられました。これを宇宙で検証するために、今年の5月から、「きぼう」に設置された固体燃焼実験装置SCEMでの実験がはじまっています。
画像:JAXA
現在、国際宇宙ステーション(ISS)や宇宙船で使われる材料には、船内火災に対する安全性確保のため、1998年に制定されたNASAの材料燃焼試験基準が使われていますが、この基準にはいくつかの課題が指摘されています。
まず、NASAの基準は重力の影響が考慮されていません。これまでの研究で、材料の燃焼は重力の影響を強く受け、微小重力環境の方が燃えやすくなる場合もあることが分かっています。
また、NASAの基準では船内環境(例えば酸素濃度)を変えると、その度に試験をし直す必要があります。現在、ISS内の空気は地上と同じ1気圧、酸素濃度21%ですが、アルテミス計画では月面居住施設等で0.56気圧、酸素濃度34%という低圧・高濃度酸素の条件が検討されています。材料の燃焼性は酸素濃度に強く依存します。ISSでこれまで使われてきたNASAの実験装置では、1気圧かつ 21%以下の酸素濃度での燃焼実験しか実施できません。
FLAREでは、ろ紙、プラスチック、難燃性素材などさまざまな材料の燃焼特性を取得して新手法の妥当性を検証し、次世代の国際的基準となることを目標にしています。また、SCEMは低圧条件や45%までの高濃度酸素条件における燃焼実験を行うこともできるため、アルテミス計画に対応した燃焼特性データの取得も可能です。
実験の最初のシリーズでは、試料にろ紙が用いられ、その燃焼の様子が撮影されました。その動画を見せていただきました。細長いろ紙の半分ほどまで燃焼が進んだところで酸素濃度が限界となり炎は消えましたが、その後は炎のない燃焼(冷炎)によって、ろ紙は最後まで燃えてしまいました。
FLAREは今後、FLARE-2、FLARE-3と進んでいくとのことで、月や火星を想定した1/6Gや1/3GというパーシャルG(低重力)での実験も行われる予定です。
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画像:NASA
若田宇宙飛行士がISSで行う実験のうち、Micro Monitorは、軌道上あるいは月や火星で用いられる飲料水中の微生物をリアルタイムでモニタリングする手法の確立を目的としています。
具体的には、細胞数の計測に用いられるフローサイトメトリーを宇宙仕様にした装置によって、リボフラビン(ビタミンB2)活性をもつ生物粒子の数を計測します。
現在、ISSの飲料水(再生水と地上からの水を混ぜて用いています)のモニタリングは、飲料水のサンプルを地上に持ち帰り、細胞培養で行っています(ちなみにNASAの基準値は50コロニー/mlとのことです)。しかし、月や火星ではそうはいかず、その場での計測が必要になります。飲料水製造装置のラインに宇宙で使える生物粒子計を組み込んでおけば、飲料水が安全であることを常に確認でき、万が一微生物の異常増殖(アウトブレイク)が発生しても、それをすぐに検知でき、迅速な対策をとることができます。
こうした方法の実現に向け、今回は若田宇宙飛行士がISSの飲料水をサンプルとして採取し、それを地上で生物粒子計を用いて微生物数を計測します。また、次世代シーケンサーで微生物叢を解析し、ISS内の環境微生物叢のデータと比較することも行います。これによって、ISSの飲料水に含まれる微生物の特徴や地上の飲料水との関係、ISS内環境微生物の影響などが明らかになります。
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画像:NASA
LBPGE(CBEFを用いた低重力環境下における液体挙動に関するデータ取得)は、低重力環境下(月は1/6G、火星は1/3G)での液体挙動を調べる実験で、JAXAがトヨタ自動車と共同研究している有人与圧ローバー「ルナ・クルーザー」のギアボックスに用いる潤滑油の検討という目的もあります。
月の極域では昼間の最高温度は110℃になる一方、夜間は−170℃にもなります。こうした温度環境に加え、1/6Gの条件で、粘度をもつ液体がどのような挙動を示すかは分かっていません。ルナ・クルーザーは2週間の夜間を含む最長42日間の長距離移動を想定しており、駆動系のかなめとなるギアボックスにどのような特性をもつ潤滑油を用いるかは、きわめて重要な問題です。
本実験では高い粘度をもつ液体、粘度の低い液体、および水の3種類について、1/6Gや1/3Gの人工重力下でその挙動を観測します。人工重力の発生に、これまで細胞実験で使われてきた細胞培養実験装置(CBEF)を用いるのが、この実験の興味深い点です。ライフサイエンス系の実験では、0Gとの対照用に、1Gの環境をつくるため人工重力発生機(ターンテーブル)を使うことが多いのですが、ターンテーブルの回転数を変えれば、発生するGは可変です。今回はまったく分野の異なる実験に、この装置を用いることになりました。
画像:JAXA
液体の挙動はカメラで撮影され、地上で解析されます。若田宇宙飛行士は液体を封入した容器やカメラが設置された実験装置をターンテーブルにセットし、実験終了後に回収すればよく、実験自体のオペレーションはつくば宇宙センターからリモートで行われます。
月や火星では、推薬プラント、離着陸機、環境制御・生命維持システムなど液体を使用するシステムが多くあり、今回の実験の成果はそれらの設計などにも利用されると思われます。
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射点で水素漏れが検出されたためです。
NASAはSLSを射点に置いたまま、9月5日午後5時12分EDT (日本時間6日午前6時12分)あるいは9月6日午後6時57分EDT (日本時間7日午前7時57分)の打ち上げを目指します。
もしもこの2つの機会で打ち上げができない場合、SLSはVABに戻ることになります。その場合、おそらく次のウインドウ(9月19日〜10月4日)には間に合わず、打ち上げは10月17日以降になります。
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コア・ステージの4基のRS-25エンジンの1つ(エンジン3)にトラブルが発生したため。Tマイナス40分でのホールドを行い、トラブルシューティングを行ったが、問題を解決できなかった。次の打ち上げ機会は9月2日午後12時48分EDT(日本時間3日午前1時48分)だが、この機会に打ち上げができるかどうかは、それまでにトラブルを解決できるかどうかにかかっている。
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この原稿を書いている7月28日21時JSTでのThe Aerospace Corporationの予測では。落下は7月31日9時24分JST±16時間。中国の宇宙ステーションの軌道傾斜角が41.5度なので、赤道をはさんで北緯41.5度、南緯41.5度までのどこかに落下します。日本列島でいえば、北海道を除く全域に落下の可能性があります。
第1段は全長約30m、直径5m、落下時の重量約23t。第1段の20〜30%が大気園内で燃えつきず、地上に落下するとみられます。長征5号Bの第1段は2020年の打ち上げでは大西洋に落下、2021年の2度目の打ち上げではインド洋に落下しました。
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若田宇宙飛行士ら4名は第68次ISS長期滞在クルーとして、スペースX社のクルードラゴン5号機(クルー5)に搭乗し、9月1日(日本時間9月2日)に打ち上げられることになっていました。打ち上げが延期になった直接の原因は、クルー5を打ち上げるファルコン9ロケットが損傷したことにあります。検査のための輸送中、第1段と第2段の結合部に損傷が発生し、いくつかの装置の交換が必要になったのです。このため、修理に時間が必要になりました。
これに加え、アルテミス1の打ち上げが8月末から9月初めに行われることになりました。打ち上げ候補日は8月29日、9月2日、9月5日となっており、クルー5の9月初めの打ち上げとバッティングすることになってしまいました。
ケネディ宇宙センターの39A射点と39B射点で、同時期に重要なミッションの打ち上げ準備および打ち上げを行うのは、NASAにとって現実的ではありません。
一方、ロシア側の第68次長期滞在クルーはソユーズMS-22で打ち上げられます。今回の米露間での「シート交換」合意にもとづき、ロスコスモスのアンナ・キキナ宇宙飛行士がクルー5に搭乗する一方、NASAのフランシスコ・ルビオ宇宙飛行士がソユーズMS-22に搭乗します。ソユーズMS-22の打ち上げは9月21日に予定されています。
ソユーズMS-22 のISS到着後、現在ISSに滞在中のMS-21のクルーは引継ぎを終えて地球に帰還します。もともとクルー5はMS-22より先の打ち上げでしたが、順番がかわり、MS-22のISS到着およびMS-21のISS離脱後になりました。
以上のようないくつかの要因をふまえたスケジュール調整で、クルー5の打ち上げが9月29日以降になったわけです。
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ここに書いたように、2月24日以降も、ISSの運用は通常と同じように続けられていますが、ロシアをめぐる宇宙活動にさまざまな影響がでています。
ノースロップ・グラマン社のシグナス補給船NG-17は2月21日にISSに結合し、6月28日にISSを離脱しました。シグナスNG-17はISSを離れる直前の6月25日に、ISSの軌道高度を上げるリブーストを行いました。ISSは高度約400kmの軌道をまわっていますが、このあたりにも空気はわずかに存在します。空気抵抗によってISSの高度が少しずつ下がっていくため、1か月に1回程度、軌道高度を上げるマヌーバーが必要になります。これがリブーストです。
シグナスNG-17は6月20日にリブーストの最初の試みを行いましたが、この時はエンジン噴射5秒後にデータ異常のためマヌーバーは停止されました。しかしその後、データに異常がなかったことが明らかとなり、6月25日に301秒間エンジンを噴射させてリブーストを成功させたのです。
ISSのリブーストはこれまでロシアのザーリャ・モジュールのスラスターかプログレス補給船を用いて行われており、アメリカの宇宙機が行うのはこれが最初でした。NASAはアメリカの宇宙機でISSのリブーストを行うことを以前から考えていました。ISSの運用のうち、ロシアにのみ依存する要素を少なくするためです。
シグナス補給船を打ち上げるアンタレス・ロケットは、第1段にロシア製のエンジンRD-181を使用しています。2月24日のロシアの特別軍事作戦開始にともないアメリカがハイテク製品の禁輸を発表すると、ロスコスモスのドミトリー・ロゴジン総裁は「今後、RD-181をアメリカに売却しない。また、すでに納品済のRD-180のサービスも行わない」と述べました。ノースロップ・グラマン社によると、2基のRD-181に必要な部品はそろっており、今後2回のシグナス打ち上げには問題ないとのことです。
RD-180とRD-181は、旧ソ連時代に開発されたエネルギア・ロケットの第1段に用いられたRD-170を原型とするエンジンです。非常に性能の良いエンジンで、RD-180は20年以上にわたってULAのアトラス?およびアトラスVロケットの第1段に使われてきました。2021年に最後の122基が納品されました。ULAが現在開発中の大型ロケット「ヴァルカン」では、第1段にブルーオリジン社が開発中のBE-4エンジンを採用します。
RD-181は初期のアンタレス・ロケットに使われていたエンジンに代わって採用されました。長期的にRD-181が供給されないとなると、シグナスによるISS補給ミッションに影響がでてくるかもしれません。
648機の衛星によるコンステレーションを目指すワンウェブ社は、2月29日にバイコヌール宇宙基地からソユーズ・ロケットで同社の衛星36機を打ち上げる予定でしたが、打ち上げは直前に中止されました。また、アリアンスペース社のギアナ宇宙センターからはロシア側のスタッフが引き上げ、同センターからのソユーズ・ロケットによる打ち上げもできなくなりました。アリアンスペースがすでに予約を取っている打ち上げについて、同社は別のロケットによる打ち上げを手当てする必要があります。
ESAはロスコスモスと共同で進めていた火星探査計画エクソマーズについて、ヨーロッパの火星ローバー「ロザリンド・フランクリン」の組み立てを一時中断しました。ロザリンド・フランクリンは2020年の打ち上げだったものが延期され、今年、ロシアのプロトンMで打ち上げられる予定になっていました。このままでは今年の打ち上げはできず、さらに2年後の打ち上げ機会を待つしかありません。ESAはまた、ロシアの月探査機ルナ25、ルナ26、ルナ27への協力関係を解消しました。
ドイツはロシアのX線宇宙望遠鏡「スペクトルRG」に搭載されている同国の装置eROSITAをセーフモードに移行させました。スペクトルRGはドイツのマックスプランク研究所と共同で開発された望遠鏡で、eROSITAはドイツの観測装置です。この措置に対してロゴジン総裁はISSでロシアが行っているドイツの実験を停止すると述べています。
このような動きの中で、2月24日以来多くの人が、ISS計画もこれで終わってしまうのではないかと心配してきました。今のところ、ISSに関して決定的なことは起こっておらず、当面はクルー5の行方について気をもんでいる状況が続いています。
地上だけでなく宇宙分野でも進んでいる西側世界からのロシアの孤立化は、長期的にはISS計画にも影響を与えることになるかもしれません。ISS計画は2024年までは現在のまま運用されることになっています。NASAはさらに2030年までの運用延長を表明していますが、一方で「国際宇宙ステーション2022移行計画」を発表し、ポストISSの時代、すなわち民間宇宙ステーションの時代に向けた準備を始めています。
こうした流れの中で、ロシアが2025年以降ISS計画にいかに関わっていくか、さらにはポストISS時代に西側諸国に対してどのようなスタンスをとるのかは不透明です。ISS計画にロシアが参加し、ロシアを含む多くの国々の固い絆が軌道上に結ばれてすでに30年近い歳月が流れています。この強い絆が失われないことを願うばかりです。
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若田宇宙飛行士らはケネディ宇宙センターからスペースX社のクルードラゴンで打ち上げられ、国際宇宙ステーション(ISS)に向かいます。しかしながら、打ち上げまで2か月を切った現在も、NASAからは打ち上げ日時とクルーメンバーが正式に発表されていません。その理由は、クルー5にロシア人宇宙飛行士のアンナ・キキナさんが搭乗することになっているからです。
NASAとロスコスモスは、自国の宇宙飛行士を相手国の宇宙船に搭乗させることで合意しています。これは両国の宇宙船のどちらかが何らかの理由で飛行停止になった際、相手国の宇宙船に搭乗して国際宇宙ステーションに向かう必要があるためです。キキナ宇宙飛行士はこの合意にもとづき、昨年からクルー5に搭乗する訓練を進めていました。ところが、今年2月24日にウクライナでロシアによる「特別軍事作戦」が始まってしまったのです。
NASAは今年5月に、キキナ宇宙飛行士の搭乗に関してはロシア側の了解を待っていると述べました。一方、ロスコスモスは6月11日に、宇宙船の相互搭乗に合意する声明を出しました。しかしながら、7月2日付けのSpace Newsの記事によると、相互搭乗に関して、まだ両宇宙機関間で最終的な契約にまで至っていないとのことです。とはいえ、ここに書いたように、クルーの訓練は引き続き行われています。
現在、アメリカとロシアはウクライナをめぐって厳しい対立関係にあります。しかし、ISS計画はアメリカ、ロシア、日本、ヨーロッパ、カナダの15か国による国際宇宙基地協力協定にもとづくものであり、NASAは現在もモスクワと常時連絡をとりながらISSを運用しています。2014年のロシアによるクリミア併合の際には、アメリカ政府の職員は電子メール、電話、会議などによるロシア側との接触をすべて禁止されましたが、ISSだけは特別とされ、NASAの職員はモスクワと連絡をとり、通常通りのISS運用を行いました。
今回、NASAは2月24日に短い声明を発表し、「アメリカのロシアへの輸出制限はロシアのISSの運用に影響を与えない。アメリカとロシアの民生分野の宇宙協力は引き続き可能」と述べました。ISSの運用は通常通り行われ、3月30日にはNASAのマーク・ヴァンデハイ飛行士がロシアのソユーズ宇宙船で地球に帰還しています。ロシアとの相互搭乗の合意にもとづき、NASAからはフランシスコ・ルビオ宇宙飛行士が今年秋に打ち上げ予定のソユーズMS-22に搭乗することになっています。
クルー5のメンバーはコマンダーがニコール・マン宇宙飛行士(NASA)、パイロットがジョシュ・カサダ宇宙飛行士(NASA)、ミッションスペシャリスト1が若田光一宇宙飛行士(JAXA)、ミッションスペシャリスト2がアンナ・キキナ宇宙飛行士(ロスコスモス)です。
ニコールさん(上の画像1番左)、ジョシュさん(上の画像左から2番目)、アンナさん(上の画像1番右)の簡単なプロフィールは以下の通りです。
ニコール・マン
米国海兵隊大佐。海兵隊に入隊し、イラクおよびアフガニスタンでの作戦にパイロットとして参加。その後、海軍テスト・パイロット・スクールに入学。F/A-18ホーネットおよびスーパーホーネットのテスト・パイロットをつとめた。2013年NASAの宇宙飛行士候補。今回が最初の宇宙飛行。1977年生まれ。
ジョシュ・カサダ
米国海軍大佐。ロチェスター大学で高エネルギー物理学の研究で博士号を取得後、海軍に入隊し、テスト・パイロットとなった。海軍テスト・パイロット・スクールの教官もつとめた。2013年NASAの宇宙飛行士候補。今回が最初の宇宙飛行。1973年生まれ。
アンナ・キキナ
ノボシビルスク州水運アカデミーで緊急事態防護を学んだ。2012年ロスコスモスの宇宙飛行士候補。2017年に月ミッションを模擬した国際隔離実験「シリウス」に参加。2021年から国際宇宙ステーション長期滞在ミッションの訓練を受けていた。今回が最初の宇宙飛行。1984年生まれ。
若田さんは、今回が5回目の宇宙になります。1996年、STS-72に日本人初のスペースシャトル・ミッションスペシャリストとして搭乗。2000年、STS-92に搭乗し、日本人として初めてISS建設に参加。2009年、ISS第18次/第19次/第20次長期滞在クルーとして日本人初のISS長期滞在を実施。2013年11月から2014年5月にかけて、ISS第38次/第39次長期滞在クルーとしてISSに188日間滞在し、後半の第39次長期滞在では日本人初のISS船長としてクルーの指揮をとりました。
クルー5のメンバーは約6か月、ISSに滞在します。ニコールさんとジョッシュさんはアルテミス計画の要員であり、月面探査ミッションに向けた最初の宇宙滞在となります。若田さんは先生役として、彼らをより優秀な宇宙飛行士に育ててくれるでしょう。アンナさんの宇宙滞在は、日本とロシアの宇宙分野での絆をさらに深めてくれるはずです。
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NASAジョンソン宇宙センター、ビルディング9、2022年5月13日。
クルー5とソユーズMS-22の2つのミッションは、ISS長期滞在のためのフライトであると同時に、アメリカとロシアが自国の宇宙飛行士を相手国の宇宙船に搭乗させるミッションでもあります。
上の画像の左から、フランシスコ・ルビオ(NASA、MS-22フライト・エンジニア)、ショシュ・カサダ(NASA、クルー5パイロット)、若田光一(JAXA、クルー5ミッション・スペシャリスト1)、ニコール・マン(NASA、クルー5コマンダー)、アンナ・キキナ(ロスコスモス、クルー5ミッション・スペシャリスト2)、ドミトリー・ペテリン(ロスコスモス、MS-22フライト・エンジニア)、セルゲイ・プロコピエフ(ロスコスモス、MS-22コマンダー)。
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法政大学名誉教授の下斗米伸夫先生の『ソ連を崩壊させた男、エリツィン』(作品社)、『新危機の20年 プーチン政治史』(朝日新聞出版)、『宗教・地政学から読むロシア』(日本経済新聞出版)は、ソ連崩壊以後のロシアについて知る上で大変参考になります。ウクライナを含む周辺諸国との関係の歴史的経緯についても詳しく書かれています。
サミュエル・ハンチントン(1927〜2008)の名著『文明の衝突』(集英社)は、ソ連崩壊からそれほど経っていない1996年に出版されました。この本で、ハンチントンは冷戦終結後の戦争が、国境ではなく文明の境界線に沿って起こることを指摘しました。ウクライナの「フォルト・ライン(断層線)」についても具体的に述べられており、今日ウクライナで起こっていることがすでに予測されています。ニューヨーク大学およびプリンストン大学の名誉教授で、ロシア研究が専門の政治学者であったスティーヴン・コーエン(1938〜2020)の『War With Russia?』は、2014年から2018年までにウクライナで起こったことを分析しています。
ウクライナがどういう国かを知るためには、黒川祐次『物語 ウクライナの歴史』(中公新書)があります。また、隣国のポーランドは今回の紛争で鍵となる国の1つになっています。ポーランドについて知るには渡辺克義『物語 ポーランドの歴史』があります。
草野森作『プーチンの戦争』(筑摩書房)は2014〜2017年の現地取材をまとめたもので、当時ウクライナで何が起こり、人々がどんなことを考えていたかを知る上で役に立ちます。Institute for the Study of Warの『PUTIN’S OFFSET』は2020年に発表されたレポートで、プーチン大統領が2014年以来、西側に対して何を仕掛けているかを分析し、アメリカの対応を提案したものです。
ウクライナ問題は非常に複雑な背景をもっており、多面的な考察が必要です。
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6月13日(月)18時30分から「宇宙の店」にて。申し込みは以下から。
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クルードラゴンとはどんな宇宙船なのか。皆様と一緒に映像を見ながら、楽しく解説したいと思います。5月18日(水)18時30分から「宇宙の店」にて。
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はたして今回、人類はその砦を守ることができるでしょうか?
東西冷戦からはじまったロシアの宇宙開発と、国際宇宙ステーションの意義をもう一度考えてみたいと思います。
「ロシア宇宙開発ヒストリー」3月2日(水)18:30〜19:30。浜松町「宇宙の店」にて。
詳細と予約はこちらから
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