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型破りで、ハイリスクで、想像力に富む探査機
小惑星探査機「はやぶさ」にイオンエンジンの異常が発生し、2010年6月の地球帰還とサンプル回収があやぶまれる状況になっています。

2005年9月に小惑星「イトカワ」に到着した「はやぶさ」は、同年11月20日と26日に「イトカワ」への着陸を敢行し、26日の2回目の着陸では「イトカワ」のサンプル採取に成功しました。ところがその後の姿勢制御中に化学推進ロケット燃料のリークが発生し、12月9日には「はやぶさ」を運用できない事態に至りました。このため当初計画されていた2007年6月の地球への帰還は困難となり、2010年6月の帰還へと計画が変更されました。

はやぶさ

その後、「はやぶさ」は満身創痍の状態ながら航行を続け、地球帰還へもう少しのところまで来ていました。しかしながら2回目の軌道変換を行っている最中に、イオンエンジンの1基が停止してしまったのです。「はやぶさ」には4基のイオンエンジン(スラスターA〜D)が搭載されていますが、このうちスラスターA は打ち上げ直後に異常が発生して運用を停止、スラスターB も中和器の劣化により運用を停止しています。残りのスラスターC とD で地球への帰還を目指していたのですが、両者にも中和器の劣化が生じており、いつ異常が発生してもおかしくない状態でした。

「はやぶさ」運用チームでは、現在、探査機の状況を確認し、地球帰還に向けた対策を検討中とのことです。なんとか、小惑星のサンプル回収という「はやぶさ」ミッションの最終目標を達成してもらいたいところです。

もしも現在のきびしい状況が解決されず、「はやぶさ」の最終目標が達成されなくても、「はやぶさ」が世界の惑星探査ミッションに与える影響はきわめて大きいといえるでしょう。この点について私が思い出すのは、2005年12月、「はやぶさ」運用チームが地球帰還に向けて悪戦苦闘しているときに、アメリカのジャーナリスト、ジェームズ・オバーグ氏が送ってきた電子メールです。

オバーグ氏はNBCで宇宙関係のコメンテーターをつとめています。その彼が「はやぶさ」についてNBC とMSNBC に書いた記事を、私にぜひ読んでほしいと送ってきたのです。”The real promise of Japan’s asteroid mission” というタイトルのその記事には、次のように書かれていました。

「太陽の反対側で、日本の探査機は危機的状況と戦っている。計画のゴールは、小惑星のサンプルとともに、何年にもわたる惑星間空間のオデッセイから帰還することである。危機はこれまで何度もあったが、コントロールチームはそのたびに切り抜けてきた。・・・もしもゴールがチームの手からすべり落ちてしまったとしても、このきわめて革新的で立ち直りの早いミッションは、おそらくもっと大事なものを地球に持ち帰るだろう。型破りで、ハイリスクで、想像力に富む宇宙技術に対する新たな関心である。NASA やロシア宇宙庁のような巨大宇宙機関は、何十年も前のアイデアにお金を使い続けてきた」

オバーグ氏がいいたかったのは、限られた予算ではあっても、「はやぶさ」のような「型破りで、ハイリスクで、想像力に富む」探査機こそが、これからの惑星探査の世界を切り拓くのだということです。日本の月・惑星探査計画が進むべき道を、「はやぶさ」は身をもって示しているといえるでしょう。

「型破りで、ハイリスクで、想像力に富む」探査機がいかに大切であるかは、NASA の火星探査計画でも証明されています。NASA は1976年に2基のバイキング探査機を火星に着陸させました。バイキングは、いわば重量級の探査機の典型といえるでしょう。しかしながら、その後のNASA は長い間、火星に探査機を送ることはなく、1992年に打ち上げたマーズ・オブザーバーは火星に到達する直前に失われました。こうした中で1996年に打ち上げられたのがマーズ・パスファインダーです。

マーズ・パスファインダーは、バイキングの15分の1という低予算で、「ソジャーナー」と名づけられた小型ローバーを火星に送るという計画でした。着陸には逆噴射ロケットではなくエアバッグを使用し、火星表面に「軟着陸」させるというよりは、「落とす」という方式をとりました。現在も活動している火星ローバー、スピリットとオポチュニティーを運用しているコーネル大学アテナ・サイエンス・チームは、マーズ・パスファインダー計画について、次のように述べています。「マーズ・パスファインダー・ミッションの最大の危険は、打ち上げでも、惑星間飛行でも、火星表面の過酷な環境でもなく、打ち上げ前にキャンセルされることにあった。評価者はミッションをあまりにもリスキーなものとみなしており、多くの専門家が不可能だと考えた。しかし、パスファインダー・チームはいくつものチャレンジを克服し、最も成功した火星ミッションの1つを生み出した」

マーズ・パスファインダーの成功によって、約2年ごとに訪れる火星への打ち上げ機会のたびに、火星探査機が打ち上げられるという時代がはじまりました。惑星探査機にとって一番大事なのは予算ではなく、先進的なアイデアと困難への挑戦なのです。

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