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火星大気の散逸過程を探るMAVEN ミッション
NASA の火星大気探査ミッション MAVEN のPI(主研究者)であるコロラド大学のブルース・ジャコースキー教授と、何度かメールのやりとりをしました。MAVEN ミッションと太陽活動の極大期の関係について、少し教えてもらいたいことがあったからです。

火星探査機MAVEN

現在の火星の大気は希薄ですが、かつて火星には温暖で大量の水が存在した時代があり、そのころには今よりも濃い大気があったと考えられています。火星の大気が宇宙空間に失われていくことを、火星大気の「散逸」とよんでいます。かつて火星にはどれだけの大気があったのか、その組成はどうだったのか、いかにして現在のような大気になったのか、というような火星大気の進化を考える上で、火星大気の散逸過程や散逸率を知ることはきわめて重要です。もちろんそれは、現在の火星大気で何がおこっているのかを知ることにもなります。

火星が誕生して間もない時期には、多数の小天体による衝突が原始大気を散逸させた可能性があります。しかし現在にいたる火星の歴史を通じて最も重要な役割を果たしているのは、太陽の放射と太陽風(太陽からのプラズマ)であると考えられています。MAVEN は、この火星大気の散逸過程における太陽の役割を調べるためのミッションなのです。

よく知られているように、太陽活動には約11年の活動周期があります。火星大気の散逸に太陽がどのように影響を与えているかを調べるのであれば、太陽活動が極大期に近いあたりで観測を行う必要があるでしょう。一方、火星への探査機の打ち上げ時期は約2年に1度しかめぐってきません。そのようなわけで、MAVEN ミッションと太陽活動の極大期の関係をジャコースキー教授に聞きたかったのです。

ジャコースキー教授によると、次の太陽活動の極大期は2013年とみられており、MAVEN はこの2013年に打ち上げられ、2014年に火星に到達し、1年間の観測活動を行います。すなわち、MAVEN が観測を行うのは、太陽の活動が極大期から急速に落ちていく時期にあたるわけですが、この時期に観測を行うのが重要なのだとジャコースキー教授はいいます。MAVEN ではミッション中に、このような太陽の活動度がことなる時期の観測を行うと同時に、「ディープ・ディップ」とよばれる一時的な軌道降下を5回行って、火星の高層大気だけでなく、下層大気の観測も行うことになっています。

NASA は小型で安いコストででき、科学目的を絞った探査機を火星にシリーズで送り込むスカウト計画を進めており、MAVEN は、2008年に火星の北極に着陸したフェニックス・マーズ・ランダーに続くスカウト計画第2弾のミッションです。2008年9月に、20のプロポーザルの中から選ばれました。

MAVEN ミッションにはコロラド大学の他、カリフォルニア大学バークレイ校、NASA のゴダード・スペース・フライト・センターなどがチームに加わってサイエンスをしっかり固め、ロッキード・マーチン社が参加してマーズ・オデッセイやマーズ・リコネッサンス・オービターと基本的に同じ探査機本体を製造します。軌道の解析はジェット推進研究所が担当します。

今後のスケジュールは2011年に設計を完了して機体の製造に入り、2013年11月18日〜12月7日に打ち上げ、2014年9月に火星周回軌道に到達します。その後1年間観測を行って2015年中に運用を終了し、2016年はじめにはプロジェクト全体を完了させる予定です。スカウト計画応募のための作業をはじめてから計画完了まで10年というフットワークの軽さは、今後の惑星探査の1つの方向性を示しているように思えます。

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