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「ティラノサウルス」か「ティランノサウルス」か?
千葉の幕張メッセでは「恐竜2009−砂漠の奇跡」展が9月27日まで開かれています。なんとか見に行きたいと思っているのですが、どうもその時間がとれそうもありません。

ところで、駅などに貼ってあるこの恐竜展のポスターを見て、おやっと思った人もいるのではないでしょうか。「ティランノサウルス」と書かれているからです。最も有名で、最も人気のあるこの恐竜の学名は Tyrannosaurus で、普通は「ティラノサウルス」と表記され、「ティランノサウルス」と表記されるのはまれです。

私が子供のころには「ティラノザウルス」でしたが、これはドイツ語読みにしていたためです。その後、学名はできるだけラテン語読みに忠実に表記することとなり、「ティラノサウルス」が一般的になりました。しかし、学名のラテン語読みをもっと正確に表記すべきだという立場から、これを「ティランノサウルス」とする表記が出てきたのです。この方式では、たとえば、これもよく知られた恐竜の1つであるアロサウルス(Allosaurus)は「アルロサウルス」となります。

学名のラテン語をカタカナで表記するのは、とても難しい問題を含んでいます。第一に、ラテン語は現在使われている言語ではなく、本当の発音を知っている日本人(外国人もですが)はけっして多くはありません。次に発音が正確にわかっても、それをカタカナで完全に表記することは不可能です。さらに、新しくつけられた学名の中には、たとえば英語の地名や人名などが含まれることがあります。これまでもラテン語読みにすべきなのかという問題もあります。

したがって、正確なラテン語読みを追求するといっても限界がでてきます。「ティランノサウルス」にしても、”Tyra” の部分をもっと正確に発音すれば「テュラ」になるのではないでしょうか。あまりこだわらずに、一般に使われている表記を用いるべきだと思います。

月の海の名前もラテン語です。昨年、私は月周回衛星「かぐや」のハイビジョン映像に英語のナレーションを入れる仕事をしました。台本を一読したアメリカ人のナレーターは私に言いました。「私はラテン語はわからないのです。英語(米語)風に発音します」。もちろん、私に異論はありません。天文学の世界では、まあ、こんなところで問題はおきません。しかし、恐竜の世界は少しばかりうるさいのです。

「恐竜2009−砂漠の奇跡」展で「ティラノサウルス」が「ティランノサウルス」になっている理由はとても簡単で、監修者が群馬県立自然史博物館館長の長谷川善和先生だからです。長谷川先生はずっとこの表記をとってきましたから、主催者も長谷川先生に監修をお願いした時点で、「ティランノサウルス」になることは了解済みだったでしょう。ちなみに、主催者の中の1社である日経ナショナルジオグラフィック社で出版している『恐竜図鑑』では、監修者がことなるため「ティラノサウルス」になっています。

長谷川先生と同じことを、研究歴がもっと少ない人がすると、本の編集者は苦労します。子供向けの本なので一般に用いられている「ティラノサウルス」を使おうとしても、監修者が頑としてゆずらず、泣く泣く「ティランノサウルス」にしたという本を、私は知っています。そんなことよりも、学問的業績を上げることの方が大事だと私は思います。

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