アメリカ国防総省が認めたUFO映像?

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    UFO Videos Released by U.S. Department of Defense?

     

    「アメリカの国防総省がAdvanced Aerospace Threat Identification Program という極秘のUFO調査を20072012年に行っていた」という20171216日付の『ニューヨーク・タイムス』の記事とともに公開されたUFO映像は疑問だらけです。この映像には「海軍のF/A-18スーパーホーネットと未知の物体の遭遇を示す映像。国防総省のAdvanced Aerospace Threat Identification Programが公表した」という解説がつけられていますが、『ニューヨーク・タイムス』自身がこの映像の信ぴょう性に関して検討した形跡はありません。『ニューヨーク・タイムス』がなぜこのようなフェイクニュースともいえる報道を行ったのか、理解に苦しみます。

     

    UFO(未確認飛行物体)はアメリカ空軍の用語として、第二次世界大戦後の早い時期から使われていました。もともとはアメリカの領空内に侵入してくるソ連の航空機を想定していたもので、宇宙からやってきた乗り物の意味はありませんでした。空軍はかつてプロジェクト・ブルーブックなどのUFO調査を何度も行い、UFO現象がアメリカの安全保障に脅威を与えるものではないことを確認しています。今回の極秘UFO調査はこれらの調査にくらべて、少しオカルトっぽい匂いがします。『ニューヨーク・タイムス』が公開したスーパーホーネットのUFOとの遭遇映像も調査の対象だったとのことですが、このようなあやしげな映像を、本当に国防総省が「未知の飛行物体が存在する証拠となる映像」として発表したとすれば驚くほかはありません。

     

    そこで、この映像について少し調べてみました。

     

    『ニューヨーク・タイムス』が公開したUFO映像は2種類の映像からなり、To The Stars Academy of Arts & Scienceというインターネットのサイトにその2本の映像がアップされています。「GIMBAL」と「2004 USS NIMITZ FLIR1」の2つですが、同サイトでは、これらは「アメリカ政府によって公開されたUAPUnidentified Aerial Phenomena未確認空中現象)の最初の公式なエビデンス」としています。ちなみにこのサイトは「ブリンク182」のギタリストでUFOビリーバーでもあるトム・デロングがCEOになっています。

     

    GIMBALは、アメリカ海軍の艦上戦闘攻撃機F/A-18スーパーホーネットに搭載されたレイセオン社製の AN/ASQ-228 ATFLIR(発達型目標指示赤外線前方監視装置)ポッドのFLIR(赤外線カメラ)が撮影した動画とされています。FLIRは目標の追跡や攻撃、夜間の地形追随飛行などに用いるものです。このポッドにはレーザー測距装置や光学カメラも収められています。

     

    20171229_01

     

    映像には赤外線カメラにロックされた「UAP」が写っており、不思議な動きをしています。この映像の撮影日や撮影場所は明らかにされていません。「ドローンか」「あれを見ろ!」「回転している」などの音声が入っています。「編隊を組んでいる」という音声もありますが、画面には1個の物体しか写っていません。

     

    2004 USS NIMITZ FLIR1も、スーパーホーネットのAN/ASQ-228で撮影されたものとされています。

     

    20171229_02

     

    赤外線カメラがロックし、追跡している物体は、高度約2万フィートをマッハ0.55で左に旋回しているといいます。また、排気の形跡がないのにホバリングしている、急速度で方向転換する、ソニックブームを発生せずにマッハ5まで急加速するなどの動きをしているとされています。

     

    この2004 USS NIMITZ FLIR1は、スーパーホーネットのパイロットが未確認の飛行物体を見たという200411月の「空母ニミッツUAPインシデント」の際の映像ということになっています。元海軍パイロットのパコ・キエリチ氏はこのインシデントについて、友人の元パイロットであるデイブ・フレイバー氏から聞いた話として、2015314日にFIGHTRE SWEEPというサイトに寄稿しています。それによると、このインシデントは以下のようなものでした。

     

    20041114日午前、2機のスーパーホーネットがサンディエゴ南西沖の空域で訓練を行うため空母ニミッツを発艦しました。これらのスーパーホーネットは複座型で、パイロットの他にWSO(兵装システム士官)が搭乗していました。フレイバー機のコールサインはFASTEAGLE 1、もう1機はFASTEAGLE 2 でした。

     

    ニミッツ空母打撃群のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦プリンストンのSPY-1レーダーは数日前から、海上に不思議なレーダー反射をとらえていました。この反射は時には停止し、時には急激に方向転換し、信じられないスピードで加速していました。このAAV(異常飛行体)がこの日も現れたため、プリンストンはまず、近くを飛んでいた海兵隊のスーパーホーネットを現場に向かわせました。スーパーホーネットは静穏な海上に直径50100mの白く泡立つ渦を発見しましたが、AAVを目撃することはできませんでした。

     

    プリンストンは次に、所定の訓練を終えて帰艦しようとしていたフレイバー機ら2機を、現場に向かわせました。フレイバーも海面の白い渦を確認しました。さらに接近したフレイバーはそこに白い物体を発見しました。それは全長46フィートほどの細長い形状をしていましたが、窓も翼も推進装置もありませんでした。この物体は2機に搭乗していた4名全員が目撃しました。2機のスーパーホーネットにはFLIRは搭載されていませんでした。フレイバーらはAAVAPG-73 レーダーでロックオンしようとしましたが、AAVは素早く移動し、とらえることはできませんでした。燃料も少なくなっていたので、フレイバーらはニミッツに帰艦しました。

     

    同日午後、別のクルーが搭乗したスーパーホーネット2機が同じ海域に向かい、やはり同じAAVを目撃しました。今度はFLIRを搭載しており、帰艦後、クルーはAAVの写ったFLIRの映像をダウンロードしたといいます。

     

    キエリチ氏もフレイバー氏も熟練した戦闘機パイロットでした。UFOに関心があったわけでもないので、合計8名がサンディエゴ沖で白い不思議な物体を目撃したと報告した事実があったことは間違いないでしょう。フレイバー氏は今回CNNに登場し、同じ内容を述べています。しかしながら、同氏の発言と、今回公開された映像の関係はよくわかりません。キエリチ氏は、午後のクルーが撮影したFLIRの動画は一時YouTubeにアップされていたが、いつのまにか削除されていたと書いています。その動画が、今回公開された動画かどうかも明らかではありません。

     

    スーパーホーネットが撮影したとされる2本の映像が「本物」なのかどうかは不明です。フェイクの可能性もあります。また、一般論としていうと、FLIRの映像はそれが本物だとしても、注意が必要です。FLIRで撮影されたUFO映像で一番有名なのは、2004年に出回った「メキシコ空軍が発表した」とされる映像です。

     

    20171229_03

     

    雲の上を飛行していくUFOの編隊が写っていますが、このUFOの正体はメキシコ湾の油田の炎でした。おそらくパイロットは油田を目視していたでしょう。しかし、赤外線映像だけを見ると、まるでUFOのように見えてしまうのです。

     

    To The Stars Academy of Arts & Scienceにアップされた映像のうち1本は、2007年にドイツのSF映画製作を行う学生集団のウェブサイトに載っていたという情報もあります。今回の映像は、以前から一部のUFOファンの間で出回っていたものである可能性があります。

     

    『ニューヨーク・タイムス』の記事を書いたのはヘレン・クーパー、ラルフ・ブルメンタール、レスリー・キーンの3名です。クーパーは『ニューヨーク・タイムス』のペンタゴン担当記者ですが、ブルメンタールはTo The Stars Academy of Arts & Scienceのメンバー、キーンはUFOに興味をもっているフリージャーナリストで、20171月に話題になったチリの海軍が撮影したとされるUFO映像を本物だと主張した人物です。実際には飛行機雲だったのですが。

     

    そのようなわけで、今回の『ニューヨーク・タイムス』の記事、およびそれと一緒に公開された映像は、UFOビリーバーあるいはそれに近い人たちが何らかの意図をもって仕掛けたものと考えることが可能です。

     



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