フォトンベルトの源流(2)

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    Origin of Photon Belt Fantasy(2)

     

    ノリス氏から話を聞いて、「フォトンベルト」が世界に広まった経緯はわかりました。しかし、私はもう少し調べたいと思ったのです。というのも、フォトンベルトの話は、プレアデスの星系を含めそれなりのディテールを持っています。ノリス氏が言っていた2人は、そのアイデアを自分たちだけで考え出したわけではないのではないか、と考えたのです。

     

    フォトンベルトの源流を調べるかぎは、フォトンベルトの発見者とされている「科学者パウル・オットー・ヘッセ」です。こういう名前の科学者は見つかりませんでしたが、”Der Jüngste Tag” (最後の審判の日)という本を出版している同名の人物がいることがわかりました。さっそく”Der Jüngste Tag”を取り寄せてみました。それが下です。この本が最初に出版されたのは1949年のようです。

     

    20180518_03.jpg

     

    パウル・オットー・ヘッセについて調べれば、フォトンベルトがどこから来たかわかると、私は考えていました。手元に届いた ”Der Jüngste Tag” を開き、37ページの図を見たとたん、私の予感が的中していたことがわかりました。そこには、フォトンベルトの原型といえる図が載っていたのです。

     

    「シャーリー・ケンプ」の記事に載っていたフォトンベルトの図を、ノリス氏は自分で作成した記憶はないとのことでしたので、「シャーリー・ケンプ」が文章と一緒に制作したのでしょう。彼らは”Der Jüngste Tag”の図を参考にして、これをつくったわけです。

     

    ”Der Jüngste Tag” の図をくわしく説明しましょう。

     

    20180518_04.jpg

     

    黒い円盤を上から下に横切っているのが「光のリング」、円の中心はアルシオーネです。黒い部分は闇の領域、白い部分は光の領域です。白い矢印は、アルシオーネをまわる太陽系の運行を示しています。太陽系が闇の領域を運行している期間は1万年、光の領域にいる期間は1000〜2000年であることが読み取れます。円の右半分は現在の地球の歴史を示しています。円盤に書きこまれた数字は、この図に付随している説明によると、1が聖書による年代記のはじまりで紀元前4128年、2がノアの大洪水で紀元前2473年、3がクフ王のピラミッド建設で紀元前2170年、4がソドムの滅亡で紀元前2050年、5がダビデによるイスラエル統一で紀元前1039年となっています。そして、円盤の一番上にあたる紀元2000年のところに「最後の審判の日」があります。図の左半分は、現在の歴史がはじまる前の時代で、アトランティス伝説の時代となっています。また、円盤の一番外側は黄道十二宮を示しており、この図が占星術とも関係していることがわかります。現在は双魚宮の時代です。

     

    ヘッセによれば、最後の審判の日というのは、太陽系が光の領域、すなわち光のリングに入る日のことを意味しています。その日は2000年とされていました。しかし、2000年には何も起こらなかったため、フォトンベルトの信奉者はいつの間にかマヤの古代暦と結びつけて、2012年に何かが起こることになったわけです。

     

    キリスト教の世界では、最後の審判あるいは世界の終末がいつ訪れるのかは、つねに大きな問題でした。たとえば16世紀はじめに、1524年に世界は大洪水によって終わるという説が大流行したことはよく知られています。こうした終末の時期の予測には、占星術が用いられることも多くありました。ヘッセはまた、古代エジプトの「永遠の生命」の象徴であるアンクの図像や、ピラミッドの構造に見られる神秘的な数の構成、アトランティス伝説などにも関心を示していました。世界が創造と破壊を繰り返すという考え方は、多くの民族の神話にみられます。独特の宇宙観や占星術、古代文明の神秘的解釈がキリスト教の終末論と結びついた、宇宙の黙示録ともいうべきヘッセの終末論は、このような中から生まれてきたものでしょう。

     

    「シャーリー・ケンプ」は「ヘッセがフォトンベルトを発見した」とし、フォトンベルトをめぐる太陽の周期についても同じことを書いています。彼らが”Der Jüngste Tag”を参考にしてフォトンベルトの記事を書いたことは間違いありません。「シャーリー・ケンプ」の記事では、「地球はフォトンベルトに入りつつある」と書かれており、地球がフォトンベルトの影響を受けはじめたのは1962年としています。1962年にはUFOが多数目撃されたが、これはフォトンベルトを伝わって「宇宙旅行者」がやってくるようになったためではないかというのです。

     

    「シャーリー・ケンプ」はヘッセの説の他、フォン・デニケンの著作についても触れています。今の読者に、デニケンの名はあまりなじみがないかもしれません。彼の著書で有名なのは1968年に出版されて世界的なベストセラーとなった『未来の記憶』と、その翌年出版された続編『星への帰還』です。エジプト、メソポタミア、マヤなど世界の遺跡を旅してまわったデニケンは、これらの本の中で、かつて地球には宇宙人が到来し、彼らが古代の高度な文明をつくりあげたという説を展開しました。グラハム・ハンコックの『神々の指紋』はデニケンの二番煎じといえるものです。

     

    興味深いことに、「シャーリー・ケンプ」はさらに、アボリジニやマヤの神話、ノアの洪水などにも触れています。フォトンベルトは、マヤをはじめとする古代文明や、アボリジニやホピなどの先住民族の「予言」と関連して語られますが、その原型が、すでにここに存在しています。

     

    フォトンベルトの系譜をたどっていくにつれて見えてきたのは、現在のフォトンベルト信者でさえ知らない深層流でした。これはただの荒唐無稽な話ではすまされない要素をもっています。そこには半世紀以上にもわたるキリスト教の終末論、占星術、滅亡したアトランティス伝説、マヤやエジプト、メソポタミアなど古代文明の神秘主義的解釈、アボリジニやアメリカ先住民の予言、現代の天文学をまったく無視した擬似科学、UFOや宇宙人幻想などが輻輳しています。これらは皆、不合理ではあるのですが、そうであるがゆえに、どこかで人々の心をとらえているものばかりです。フォトンベルトがひそかに命脈を保ってきた理由がそこにあります。

     

    「科学の時代に、人間はなぜ、不合理なものを信じてしまうのか」。これは私たちにとって大きな問いです。UFOや宇宙人やフォトンベルトがエンターテイメントや都市伝説の対象としてメディアに登場するくらいのことに目くじらを立てる必要はありませんが、社会が内向きの時代には、人はオカルト的な発想にひかれがちであることを忘れてはなりません。2004年に私はフォトンベルトについて原稿を書き、「2012年が何もなく過ぎた後も、もしかしたらフォトンベルトは姿を変えて残っていくのかもしれません」という文章でしめくくりました。実際にそうなったようです。

     



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