1I/2017 U1:人類がはじめて遭遇した太陽系外小惑星
1I/2017 U1:First Interstellar Asteroid
太陽系外からやってきた小惑星オウムアムア(1I/2017 U1)は、長さ約400m の非常に細長い形をしていました。ESO(ヨーロッパ南天天文台)が発表した想像イラストは、まるで異世界からやってきた巨大な葉巻型宇宙船のようです。
人類が遭遇したはじめての太陽系外小惑星オウムアムアは、10月19日にハワイ大学のPan-STARRS1望遠鏡で発見されました。Pan-STARRS1 は地球近傍小天体を監視するために設置された望遠鏡です。ハワイ大学のチームは数日間軌道を追跡し、その軌道からこの天体が太陽系外起源でありことを確認し、10月25日に発見を発表しました。オウムアムアはハワイの言葉で「遠くからやってきた初めての使者」を意味しています。
オウムアムアは最初、彗星と考えられていました。これには理由があります。太陽系外縁部には、氷とちりを成分とする無数の小天体が存在していると考えられ、「オールトの雲」とよばれています。オールトの雲にある天体が重力で乱され、太陽に接近する軌道をとるようになったものが彗星です。一方、小惑星のような岩石型小天体は、太陽系の内側の領域で形成されます。したがって、太陽系外からやってくる小天体があるとすれば、それは彗星であろうと、科学者は考えていたのです。しかしながら、オウムアムアは太陽に接近してもコマが広がったり、尾が伸びたりしなかったことから、岩石型の天体と考えられました。
下の画像は、南米チリにあるESO の大型望遠鏡VLTの観測結果に、ジェミニ南望遠鏡などその他の望遠鏡の観測結果を重ね合わせたもので、丸印内がオウムアムアです。かすかな光の点ではありますが、ダストなどが取り巻いている形跡はありません。
オウムアムアは7.3時間で1回回転しており、成分は岩石で、金属も含まれているかもしれません。水や氷は存在しません。表面は暗く、赤みを帯びています。これは長い間、宇宙放射線にさらされたためとみられています。
オウムアムアは何百万年あるいは何千万年もの間、宇宙を旅してきました。はるか昔、はるか彼方の惑星系で、この天体はいかにして形成されたのでしょうか。私たちの太陽系には、これほど細長い形をした小惑星は存在しません。いったい、どのような衝突過程によって、このような形の小惑星が形成されるのでしょう。さらに、この小惑星が母星の重力を振り切って宇宙空間に放り出された時、いったいどのような異変が起こったのでしょうか。
オウムアムアはこと座のベガの方向からやってきました。太陽系の惑星が公転する黄道面に対して、北の方向からかなりの角度で太陽に接近してきたことになります。その速度は秒速26.3km でした。9月9日に太陽に最接近した際には秒速87.4km に達したことがわかりました。このとき、オウムアムアは水星の軌道の内側に入っていましたから、広大な宇宙空間の中で驚くべき超接近遭遇といえます。オウムアムアは太陽の重力で軌道を曲げられ、10月14日に地球の軌道の下を通過、11月1日には火星の軌道の上を通過しました。
オウムアムアは2018年5月に木星の軌道の上を通過し、2019年1月に土星の軌道の上を通過します。そして2022年には海王星の軌道の上を通過し、ペガスス座の方向に去っていきます。
太陽系外起源の天体は平均して1年に1個はやってきていると、科学者は考えています。地球に接近する小天体の監視体制が整っていなかったため、これまでは観測されませんでしたが、今後は次々と発見される可能性があります。
- 2017.11.24 Friday
- 太陽系探査
- 23:15
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- by Kazuo Terakado