東日本大震災:地震学者の責任(2)

0

    1965年にはじまった地震予知計画には、東北地方太平洋沖地震が起こる前の2008年まで(新第2次計画終了まで)で、約3000億円が使われました。これだけの税金を使いながら、ただ1つの地震も予測することはできなかったのです。この金額が防災研究にまわされていれば、東日本大震災や阪神・淡路大震災をはじめ、日本各地の地震被害はもっと少なくてすんだでしょう。

     

    20180312_01.jpg

     

    東北地方太平洋沖地震発生後、日本の地震学者の中には、それまでの地震研究のあり方を反省する人たちもいました。しかし、日本の地震学の重鎮の中には、地震を予知できなかった社会的責任を追及されることをおそれたのか、責任逃れや言い訳、自己保身とも受け取れる行動をとる人が現れました。その典型的な人物が、当時、地震予知連絡会の会長だった島崎邦彦氏でした。その内容は以下に述べますが、実はこれにはもう1つ伏線となる出来事があったのです。

     

    200946日にイタリア中部で大地震が発生し300人以上の死者がでました。これに関し、2010年に「予知に失敗した」として地震学者が起訴される事態が起こり、日本の地震学者をあわてさせていたのです。実際は「予知に失敗した」ではなく「リスクに対し適切な評価をすることを怠った」責任を問われたのでしたが、いずれにしても、「予知」を標榜する以上、地震学者の行動には社会的責任が伴うことを改めて思い起こさせる出来事だったのです。

     

    島崎氏は地震発生から1か月後の512日、日本記者クラブで地震についての説明を行いました。この説明をしばらくしてからYouTubeで見た私は、驚きを禁じ得ませんでした。島崎氏は説明の冒頭、地震と津波で亡くなった方々に対するおくやみと、被災者へのお見舞いを述べましたが、地震を予知することができなかったことに対する謝罪は一切ありませんでした。

     

    島崎氏は、地震を予測できなかった理由について「基本的な考え方が間違っていた」と、アスペリティ・モデルを盲信していた当時の地震研究に対する反省の念を述べました。ところがこの後、驚くべき発言が飛び出します。マグニチュード9の巨大地震を予測するまで「実はあと一歩だった」というのです。

     

    島崎氏が「あと一歩だった」という根拠は、当時、地震調査委員会の委員長をつとめていた阿部勝征氏の論文でした。島崎氏の歯切れの悪い説明によると、この論文では、東北沖でたびたび発生するマグニチュード78クラスの地震よりも大きいマグニチュード8.6の地震の可能性にふれているが、このマグニチュード8.6は実はマグニチュード9だった。しかし阿部氏は「マグニチュード9は過大評価ではないか」と考え、8.6にしたというのです。

     

    つまり島崎氏は、マグニチュード9という巨大地震が発生する可能性があることに、日本の地震学者は気が付きはじめていたと言いたいのでしょう。しかし、1本の論文を根拠にそのような論理を展開するのは無理があります。地震の専門家ではない記者会見場の人たちを煙に巻き、想定される厳しい質問に対する予防線を張ったといわれても仕方がないでしょう。

     

    島崎氏もマグニチュード9の地震を「想定外」「意外なこと」と認めざるを得ませんでした。この件に関しては会場から鋭い質問がでました。311日の本震の2日前、39日にマグニチュード7.2の地震が発生しており、その後もマグニチュード56の地震が頻発していました。質問は9日に前震が発生していながら、なぜ本震を予想できなかったかというものでした。答は明らかです、島崎氏も認めたように、9日のマグニチュード7.2の地震が起こった時、日本の地震学者はそれを本震だと考えてしまったのです。マグニチュード9の地震が起こることなど、頭の片隅にもなかったからです。

     

    世界的にいえば、マグニチュード9の地震はカムチャツカ、チリ、アラスカなどで観測されており、絶対に発生しないわけではありません。その可能性をまったく考えず、50年近くにわたって地震予知計画を進めてきた日本の地震学の限界が、東北地方太平洋沖地震によって露呈したといえるでしょう。

     

    大震災発生直後に巨大地震の予測まで「あと一歩だった」と述べた島崎氏の発言は、非常に重いものです。震災から7年たち、「それでは日本の地震研究はどこまで進んだのか?」と、改めて島崎氏に問いたいと思います。



    calendar

    S M T W T F S
        123
    45678910
    11121314151617
    18192021222324
    252627282930 
    << November 2018 >>

    selected entries

    categories

    archives

    links

    profile

    書いた記事数:79 最後に更新した日:2018/11/16

    search this site.

    others

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM