サルの体細胞クローン作成に成功

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    Chinese Scientists Successfully Clone Monkeys

     

    中国の研究チームがサルの体細胞クローンを作成することに成功しました。誕生した2匹(中中と華華)の写真が公開されています。

     

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    1997年のクローン羊「ドリー」にはじまり、これまで20種以上の哺乳類の体細胞クローンがつくられていますが、人間に近い霊長類の体細胞クローンの作成はこれまで成功しませんでした。

     

    『セル』誌に掲載された論文によると、中国科学院神経科学研究所のZhen Liuらは、以下のような方法でマカク(オナガザルの仲間)の体細胞クローンを作成しました。まず、クローンをつくりたいマカクの胎児から繊維芽細胞を取り出します。一方、別のマカクから未受精卵を取り出して核を除去し、これに繊維芽細胞を注入して、融合・活性化させます。この体細胞クローン胚を仮母となるマカクの子宮に移植するのですが、Zhenらはその前に、体細胞クローン胚をヒストン脱アセチル化酵素阻害剤トリコスタチンAの溶液に10時間ほど浸け、さらにヒストン脱メチル化酵素Kdm4d をつくるmRNAを胚に注入しました。

     

    体細胞クローン技術では、成功率の低さが大きな課題になっています。これは体細胞のDMAのメチル化が外れず、胚の初期化がなかなか行われないためです。そのため、Zhenらはメチル化を消去するため、トリコスタチンAKdm4dを使ったわけです。

     

    論文によると、こうして作成した79個のマカクの体細胞クローン胚を21匹の仮母に移植したところ、そのうち6匹が妊娠し、2匹のクローン(中中と華華)が誕生しました。

     

    Zhenらはマカクの成体の卵丘細胞についても、同じ方法を用いてみました。181個の体細胞クローン胚を42匹の仮母に移植したところ、そのうち22匹が妊娠し、2匹のクローンが誕生しましたが、短命に終わりました。

     

    この結果をみると、霊長類の体細胞クローン作成の成功率は低く、また、成体の体細胞ではうまくいっていません。まだ多くの課題が残っていることがわかります。

     

    Zhenらは、霊長類のクローンはがんやアルツハイマー病などヒトの難治疾患の治療法を研究するモデルとして有用であるとしていますが、アメリカやヨーロッパ、日本などでは、霊長類を実験動物として使う研究は、動物倫理の面からも制限されているのが現状です。霊長類のクローンを使わなければできない研究があるかどうか、疑問を呈する研究者もいます。実験動物としての霊長類をいたずらに作成することは、あってはならないことです。この点にいては、今後議論が必要と思います。

     

    今回の成功によって、ヒトのクローンを作成する技術に一歩近づいたことになりますが、この点に関しては倫理的な壁が高く、今のところ、人のクローンをつくろうと考えている研究者はいないといってよいでしょう。



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