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長征5号:打ち上げ失敗の原因究明続く
Experts investigate Long March-5 Y2 launch failure

長征5号Y2(2号機)打ち上げ失敗の原因究明が続いています。長征5号は中国が昨年デビューさせた大型ロケットで、2号機は7月2日午後7時23分(北京時間)に海南島の文昌衛星発射センターから打ち上げられました。報道によると、打ち上げから間もなくして不具合が発生したとのことです。

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どのような不具合が発生したのかについて正式な発表はありませんが、第1段の2基のメインエンジンのうち1基が不調で、定格の半分以下の出力しか出なかったようです。このため、第1段の燃焼時間を延長する措置が取られましたが、さらに第1段と第2段の分離の際、第2段エンジンがすぐには点火しなかったようです。こうした一連の不具合のため、ロケットは地球を周回するだけの速度に達することができず、ロケットとペイロードの大型通信衛星、実践18号は太平洋に落下した模様です。

打ち上げ時の映像から、発生した状況を検証してみましょう。映像の解像度は低いのですが、かろうじて以下のような点が明らかになります。

下は打ち上げから743秒後のミッション・コントロール・センターの様子です。ロケットは第1段が切り離され、第2段エンジンが燃焼している状態です。

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大型スクリーンの一部を拡大したのが下の画像です。

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画面手前の白髪の人物は長征5号のチーフデザイナー、竜楽豪氏です。後姿ではあるものの、事態が深刻であることが見て取れます。左上に表示されている曲線のうち、一番太い黄色の線はロケットの速度を示しています。ロケットの速度は計画されたライン(細い白い線)から明らかに外れており、速度が低下しているのがわかります。

下の画像は打ち上げから946秒後のミッション・コントロール・センターの様子です。この時点ではすでに第2段の第1回目の燃焼は終了しています。長征5号は第2段エンジンを2回燃焼させて静止トランスファー軌道に入ります。

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スクリーンの右上の表示を拡大したのが下の画像です。

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これを見ると、第1段と第2段の分離が予定では打ち上げから466秒後であったのが、実際は576秒であったことがわかります。第1段エンジンの燃焼は予定より110秒も延長されたようです。また、第2段の第1回目の燃焼終了は予定が打ち上げ後750秒であったものが、実際は770秒であったと表示されています。映像を見ていると770秒ではなく789秒でした。いずれにしても第1段エンジンの燃焼時間が100秒以上延長されたにもかかわらず、第2段エンジンの燃焼終了時間がそれほど延びていないことは、第2段の燃焼時間が予定より短かったことを示しています。

このようなことからすると、第1段エンジンおよび第2段エンジン両方の燃焼に問題があった可能性があります。第1段のエンジンは燃料が液体水素、酸化剤が液体酸素のYF-77エンジンで、長征5号のために開発されました。昨年10月の初打ち上げの際には、打ち上げ直前に冷却系の不具合が発生しました(解決して打ち上げは行われました)。第2段エンジンは燃料が液体水素、酸化剤が液体酸素のYF-75Dエンジンです。YF-75D は長征3号の第3段に使われているYF-75の改良型で、推力がアップし、複数回の着火が可能になっています。

専門家チームが原因を調べていますが、原因究明とその対策が遅れると、今年11月に予定されている嫦娥5号による月サンプルリターン・ミッションの打ち上げが遅れる可能性があります。嫦娥5号は長征5号3号機で打ち上げられることになっています。また、2018年から建設が開始される中国の宇宙ステーションのモジュールも長征5号で打ち上げられることになっており、このスケジュールにも影響があるかもしれません。

中国ではこのところ、打ち上げの失敗が何度か起こっています。6月19日の長征3号B による打ち上げは予定の高度に達しませんでした。衛星のエンジンを使って予定の軌道に投入させた「部分成功」でした。昨年12月28日の長征2号D による打ち上げも予定の高度に達せず「部分成功」でした。9月1日の長征4号C の打ち上げは第3段が正常に作動せず、衛星の軌道投入に失敗しています。このような失敗がたびたび起こっている原因として、中国の宇宙開発がこのところ急ピッチで進められた結果、現場の作業環境が劣悪になり、信頼性の低下を引き起こす要因が生じているとする指摘も登場しています。

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