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天宮2号:中国の宇宙の軍事化が新たな段階へ
Tiangong 2:China creates Space Force

中国はまもなく宇宙実験室「天宮2号」を打ち上げます。天宮2号は、宇宙を目指す人類の活動にとって大きな成果の1つといえますが、一方で、この計画には軍事的色彩も強く、中国が進める宇宙軍事化が新しい段階に入ることを意味している点にも注意が必要です。

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天宮2号は長さ約14m、直径約4m、重量約20t です。2011年に打ち上げられた天宮1号と同じサイズですが、生命維持システムが大幅に改善されています。1号にはなかった酸素発生装置が設置され、水再生装置も新しいものに交換されています。天宮2号の打ち上げが成功すれば、10月には2名の宇宙飛行士が神舟11号で打ち上げられ、天宮2号で30日間程度の長期滞在を行う予定です。

中国は2018年に天宮2号の次の世代のモジュールを打ち上げ、これをコア・モジュールにしていくつもの科学実験モジュールを結合させた自前の宇宙ステーションを2022年に完成させる予定です。

中国の有人宇宙飛行において軍事ミッションが行われていることは、早い段階から指摘されてきました。2003年10月15日に打ち上げられた神舟5号で、楊利偉宇宙飛行士は中国初の有人飛行を行いました。その直前の10月2日に、ロシアや中国の宇宙開発に詳しいマーク・ウェイドは、神舟宇宙船についての記事を『スペース・デイリー』のサイトに投稿しました。ウェイドはここで、それまでに4回打ち上げられた無人の神舟が、ELINT(電子諜報)を行っていたという専門家の分析を紹介しています。それによると、神舟1号から4号まで、どの軌道モジュールにも2種類のアンテナが設置されていました。1つは3本のブームの先に取り付けられたUHF アンテナで、地上の電波をとらえるためのものです。もう1つは弧状に並べられた7個のホーンアンテナで、地上の電波源の位置を特定するためのものです。中国はそれまでELINT 衛星をもっていなかったので、「これは中国の宇宙からの偵察活動にとって大きな飛躍であった」とウェイドは書いています。神舟4号は2003年のイラク戦争時も飛行しており、中国はアメリカの軍事行動について貴重な情報を取得したとみられます。

神舟3号と4号には、偵察用のカメラも搭載されていました。カメラは軌道モジュールの先端と軌道モジュール本体の2個所に設置されていました。開口部の大きさから、カメラの口径は50〜60cm とみられています。2台のカメラを用いることにより、広域からクローズアップまでいくつものモードで撮影が可能です。カメラの最大分解能は1.6m とのことです。

これらのことは、中国が公開したニュース映像や雑誌に掲載されていた組立中の神舟の写真の分析から明らかになりました。「中国初の有人宇宙飛行の主なミッションは軍事偵察活動であろう」と、ウェイドは書いていました。実際、神舟5号にも、さらには2005年に打ち上げられた神舟6号にも、同じ偵察用カメラが設置されていたことが確認されています。

中国の有人宇宙飛行で行われる軍事ミッションを警戒する声は、天宮1号によってさらに高まりました。天宮1号では科学実験なども行われましたが、宇宙飛行士が軌道上から偵察活動を行う軍事プラットフォームとしての有効性を検証することも、その目的の1つであったと考えられています。天宮2号や将来の宇宙ステーションも同様に、科学実験室や他国の宇宙飛行士を搭乗させる外交ツールとしても使われるでしょうが、一方で、人民解放軍の宇宙空間への配備が進められていくでしょう。なぜなら、地上ではその準備がはじまっているからです。

習近平国家主席は、人民解放軍をアメリカに勝つ軍隊にするための改革に取り組んでいます。2015年12月31日に人民解放軍は陸軍、空軍、海軍、ロケット軍、戦略支援部隊という4つの軍と1つの部隊に再編されました。人民解放軍は歴史的に陸軍の規模が大きく、指揮系統も複雑でしたが、今回、陸軍指導機構(陸軍司令部)が設置されて指揮系統が統一されるとともに、空軍、海軍と同格になりました。戦略核ミサイルを担当するロケット軍はこれまでの第二砲兵が昇格したものです。

新たに設置された戦略支援部隊は、4軍を支援するための重要な任務を与えられており、軍事航天部隊(宇宙)と網路信息戦部隊(サイバー)に分かれています。軍事航天部隊は軍事衛星の運用や宇宙監視などを行いますが、対衛星攻撃(ASAT)も担当するでしょう。網路信息戦部隊は当然サイバー攻撃も担当します。つまり、有事の際にASAT とサイバー攻撃で4軍を支援するのが戦略支援部隊の任務なのです。

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今回、「軍事航天部隊」すなわち宇宙部隊が人民解放軍の中で正式な名称を与えられました。

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しかし、この部隊の任務は地上にとどまります。宇宙に配備される部隊は別に組織されるはずです。

中国の有人宇宙計画を進める載人航天工程弁公室は、人民解放軍の総装備部に置かれていましたが、2016年1月の機構再編によって装備発展部の下に置かれることになりました。宇宙飛行士は空軍のパイロットから選抜されています。近い将来、ここから航天軍(宇宙軍)が形成されていくでしょう。戦略支援部隊の軍事航天部隊の機能の一部が編入されるかもしれませんし、軍事航天部隊全体が統合されるかもしれません。この航天軍はさらに空軍と合体し、「天空軍」となるでしょう。

中国が目指すこうした宇宙戦闘部隊創設への動きを、単なる憶測と考える方もいると思いますが、習国家主席自らがこの構想を明らかにしています。例えば2014年4月15日の『人民網』には、「習近平総書記「空と宇宙を統合した強大な空軍を構築」」という記事が掲載されています。この記事によると、習主席は前日に空軍を視察し、全将兵に対して「新情勢下の党の軍事力強化目標をしっかりと押さえ、部隊の革命化、近代化、正規化を全面的に強化し、空と宇宙を統合し、攻撃と防御を兼ね備えた強大な人民空軍の構築を加速して、中国の夢、軍事力強化の夢の実現を揺るぎない力で支えなければならない」と強調したとのことです。

中国は神舟という有人宇宙船をもち、天宮2号とそれをコアにした独自の宇宙ステーション計画を進めていますが、軍事用の有人宇宙船や宇宙ステーションを別に開発する計画はありません。したがって、「中国の夢」を実現するための航天軍あるいは天空軍の宇宙空間での活動は、外に対しては民生用とみなされている神舟宇宙船、天宮2号、将来の宇宙ステーションを使って行われることになります。

宇宙開発には科学研究や宇宙の実利用といった民生目的の部分だけでなく、防衛または軍事的側面も存在します。こうしたデュアルユースは、世界各国の宇宙開発に共通していますが、中国は異例で、すべての宇宙開発が軍事部門の指揮下にあるといってよいことが、多くの研究者によって指摘されています。そして、その宇宙軍事化が、今、新しい段階に入りつつあるというわけです。

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