最近のエントリー
カテゴリー
過去のエントリー
カレンダー
S M T W T F S
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< August 2017 >>
ブログ内を検索


PROFILE
モバイル
OTHERS
ポストISS:宇宙での「日本外し」が現実になる日(3)
国際宇宙ステーション(ISS)計画はアメリカ、ロシア、日本、ヨーロッパという4極によって運用されてきました。アメリカと中国の宇宙での協力関係が、これまで述べてきたような中国の思惑通りに進めば、ポストISS 時代の有人宇宙活動は、アメリカと中国の2極によって運用されることになるでしょう。中国が提唱している地上における「新型大国関係」と同じ構図が、宇宙で実現するわけです。

20160425_03

中国は実験モジュール「天宮2号」を今年打ち上げの予定です。また、2018年にはコアモジュール「天和」を打ち上げ、これらを結合させた独自の宇宙ステーションを2020年頃に完成させる予定です。人員輸送には「神舟」宇宙船を、物資補給には「天舟」輸送船を用います。

この宇宙ステーションは中国にとって科学研究以上の価値をもちます。おそらく、中国と関係の深い国々の宇宙飛行士がここを訪れることになるでしょう。その最初はナイジェリアの宇宙飛行士になるかもしれません。同国は以前から有人宇宙飛行に意欲的で、2030年に宇宙飛行士を打ち上げる計画をもっています。最近、同国の多数の技術者が中国で研修を行うことに両国が同意したとも伝えられています。ナイジェリアはアフリカ最大の産油国で、中国は近年、同国との関係を深めています。

これは、かつてソ連が共産圏の結束を固めるためにインターコスモス計画で用いた手法です。当時、共産圏諸国の宇宙飛行士が次々とサリュートやミール宇宙ステーションを訪れたものでした。中国も地上世界での権益確保や影響力の拡大に、宇宙ステーションをフルに利用するでしょう。

ISS は現在のところ、2024年までの運用が決まっています。ISS 計画は国際宇宙基地協力協定にもとづく国同士のプロジェクトですが、2024年以降は民間がかなり関与した形で運用されていくでしょう。その一方で、ISS 以遠、すなわち月や火星への有人飛行への国際枠組みができていきます。地球周回軌道においては独自の宇宙ステーションを運用して、アメリカに対抗するスーパーパワーの位置を維持し、地球周回軌道以遠への有人飛行には、アメリカにとって非常に重要なパートナーとして関わっていくのが、中国の戦略といえます。

ロシアとヨーロッパは宇宙分野ですでに中国とも関係が深く、ポストISS の時代にも重要な位置を占め続けますが、日本にはほとんど出番がなくなるでしょう。

日本はISS 計画の重要なパートナーであり、ISS 利用に関してアメリカと強い関係にあります。2015年9月11日に、宇宙に関する包括的日米対話第3回会合が開催され、宇宙における強固な協力関係が改めて確認されました。また12月22日に両国は、新たな日米協力の枠組である「日米オープン・プラットフォーム・パートナーシップ・プログラム(JP-US OP3)」に合意しました。これにより、日本が2024年までのISS 運用延長に参加することが決定されました。JP-US OP3 の文書でもふれられている通り、ISS 計画おける日米間のパートナーシップは、政治的・戦略的・外交的重要性を踏まえた日米協力の象徴的存在となっています。

JP-US OP3 の文書ではISS 計画について、「地球上の全ての人々の福祉を促進し、各々の宇宙政策の目標を追求するために利用されるべきである」とした上で、「アジア太平洋地域における宇宙途上国を含むISS 非参加者との国際的な協力を増大させることは、重要な共通の関心事項である」と述べています。日本は1993年以来、アジア太平洋地域における宇宙利用の促進を目的としてAPRSAF(アジア・太平洋地域宇宙機関会議)の活動を進めてきました。現在、40以上の国や地域、機関が参加し、地球観測、防災などの他、ISS の利用などに関しても取り組みを行ってきました。一方、中国は2008年にAPSCO(アジア太平洋宇宙協力機構)をスタートさせています。

ポストISS の時代においても、日本はアメリカの重要な同盟国であり続けるでしょうが、ISS 計画と同様の役割を国際宇宙探査計画において果たすことができなければ、宇宙における新型大国関係が事実上できあがっていくことになります。宇宙における「日本外し」を自ら招くことになるのです。宇宙空間とサイバー空間は、地上の安全保障体制と不可分の関係にあり、宇宙におけるプレゼンスの低下は、日本の安全保障や外交力にマイナスの大きな影響を与えることになるでしょう。

ポストISS の時代への準備は、各国ですでにはじまっています。次のアメリカ合衆国大統領が誰になるかによって、宇宙における米中の関係は変わっていく可能性があります。次の政権が明確な宇宙政策を打ち出すには、少し時間がかかるかもしれません。その間にも、中国の宇宙への進出は休むことなく続いていきます。

▲PAGE TOP