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ボストーチヌイ:ロシアの新しい宇宙基地
Vostochny Cosmodrome:Russia’s new space port

昨夜、NHK BS でロシアの新しい宇宙基地ボストーチヌイについて、少し話をしました。ボストーチヌイ宇宙基地は極東のアムール州に位置し、現在急ピッチで第1期工事が進んでいます。

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1991年のソ連邦崩壊にともない、バイコヌール宇宙基地を擁するカザフスタンは、ロシアにとって別の国になってしまいました。現在、ロシアはバイコヌール宇宙基地を借用する契約をカザフスタンと結んでいます。しかしながら、軍事衛星を含む自国の衛星や宇宙船を打ち上げる基地が外国にあるのは、国家安全保障上、非常に大きな問題です。ロシアはソ連邦崩壊から間もなく、自国の領土内に新しい宇宙基地を建設することを決断しました。

新しい宇宙基地の候補地として、当初、極東の3個所が選ばれました。しかし、太平洋に面した場所は、地震の心配や強風の問題があり、2007年に現在の場所が最終的に選ばれました。かつてここは「スヴォボドヌイ18」とよばれたミサイル発射基地であり、1996年からは小規模なロケット打ち上げ基地として使われてきました。鉄道、道路、発電所などのインフラがすでに整備されており、強風が吹かず、晴天の日が多いといった気象条件にも恵まれていました。居住区として近くに人口5000人ほどのウグレゴルスクという町もありました。

ボストーチヌイの緯度は約51度で、バイコヌールとほぼ同です。ロシア領土内では南に位置し、衛星や宇宙船を東に向かって打ち上げる場合に、バイコヌールからの打ち上げと同じくらいに地球の自転力を利用できます。また、ロケットの第1段や第2段の落下場所も、無人の土地や海なので問題になりません。

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ボストーチヌイの建設工事は2011年にはじまりました。第1期工事ではソユーズ2 ロケットを打ち上げるための施設や発射台が建設されます。これにともなって鉄道や道路の再整備、居住施設などの建設も行われています。工事は遅れ気味でしたが、プーチン大統領はロシア宇宙庁に対して、2015年12月には工事を完成させて、最初の打ち上げを行うことを求めています。そのため、突貫工事が行われているというのが現状です。

バイコヌール宇宙基地では、発射台に設置された整備塔がソユーズロケットを左右から支える仕組みになっていましたが、ボストーチヌイでは、移動式の大型施設で整備を行い、ペイロードの搭載もこの施設内で、ロケットを垂直に立てた状態で行う方式になっています。これはギアナ宇宙センターに建設されたソユーズ2 ロケットの打ち上げ施設と同じ方式です。

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(CG)

ソユーズ2 ロケットの打ち上げ施設が完成した後は、アンガラロケットの打ち上げ施設のための第2期工事が引き続いて行われることになっています。アンガラは現在ロシアが開発中の純ロシア製の大型ロケットです。これまでのロシアのロケットや宇宙船には、部分的にウクライナ製の部品やシステムが使われているために、多くの問題が生じてきました。ボストーチヌイからのアンガラロケットの打ち上げは、ロシアが自国の領土から、自国の技術だけでつくったロケットを打ち上げることを意味し、ロシアは悲願の「バイコヌール・フリー」「ウクライナ・フリー」を実現することができるのです。

下は、ボストーチヌイ宇宙基地の全体図です。左下が居住区となるウグレゴルスクの町です。バイコヌールでいえばレーニンスクにあたります。右がソユーズ2 とアンガラ打ち上げのための区域です。左上に空港があります。

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下は、打ち上げ区域を拡大したものです。第1期工事が灰色、第2期工事がオレンジ色で示されています。左上の灰色の場所で。現在ソユーズ2 発射台の工事が行われています。第2期工事のアンガラロケットの発射台はその右下のオレンジ色の場所です。これらの下に、ソユーズ2 とアンガラロケットの組立・整備棟があります。

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組立・整備棟の左のオレンジ色は、有人宇宙飛行のための施設で、ここで打ち上げ前の宇宙飛行士の準備・点検作業等が行われます。現在、ロシアは次世代の有人宇宙船を開発中です。これを打ち上げるロケットには、アンガラの有人打ち上げバージョン(アンガラ5P)が用いられることになっています。アンガラによる新しい有人宇宙船の打ち上げがはじまるのは、2020年代半ばとみられます。

アンガラロケットの発射台が建設される場所の少し北には、スヴォボドヌイ時代のサイロの跡が残っています(右上)。

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ロケットの打ち上げ関連施設だけで宇宙基地が完成するわけではありません。基地を支える労働力、特に若く優秀な技術者が多数必要になってきます。そのための研究機関や教育機関が必要ですし、ロシア国内からの多数の関係者、さらには海外からの訪問客を受け入れる施設も必要です。下は現在のウグレゴルスクの町ですが、今後、大規模な再開発が行われます。やがては極東の一大ハイテクセンターになっていくでしょう。

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ボストーチヌイからの衛星打ち上げが本格化するのは2011年頃からです。これによって、バイコヌール宇宙基地が見捨てられてしまうのかといえば、そうではありません。プーチン大統領はカザフスタンとの良好な関係を今後も保ちたいと明言しています。これまでロシアの衛星の60%以上がバイコヌールから打ち上げられていました。ボストーチヌイ完成後も10%ほどは、引き続きバイコヌールから打ち上げられることになっています。

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