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月の誕生:ジャイアント・インパクト説の問題点が解決か
Origin of Moon:Similarities between Earth and the impactor

月の成因に関する重要な論文が『ネイチャー』誌の4月9日号に発表されました。

月の成因に関しては、ジャイアント・インパクト説が有力です。今から45億年ほど前、太陽系が誕生して間もない時期に、火星サイズ(質量でいうと地球の10分の1程度)の天体が地球に衝突しました。飛び散った破片は円盤となって地球をまわるようになり、それらが集積して月になったとする説です。

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しかし、この説には弱点がありました。地球と月の成分を調べてみると、いろいろな元素の同位体比がほとんど同じなのです。例えば、酸素16、酸素17、酸素18の同位体比は地球と月ではほとんど同じですが、火星や隕石とは異なっています。それ以外にクロム、ケイ素、チタン、タングステンなどの同位体比もほとんど同じであることが分かっています。

太陽系の天体ができるとき、その天体がどこでできたかによって同位体比は異なってきます。地球に衝突した天体(インパクターとよんでいます)も、よそからやってきたので、その同位体比は地球と異なっていたはずです。月誕生のシミュレーションによれば、月の材料の約80%はインパクターのマントル物質由来とされていますから、現在の地球と月の同位体比が同じという点に矛盾が生じます。

ジャイアント・インパクト説はいろいろな証拠から、現在最も有力な説になっていますが、一方では、この同位体比が最大の問題になっています。最近ではこれを解決するために、いくつものバリエーションも提唱されています。すなわち、複数の衝突によってできた、インパクターは火星サイズよりも大きかった、あるいは小さかったなどです。

イスラエル工科大学のAlessandra Mastrobuono-Battisti らの研究チームは、太陽系の天体ができてくる詳細なシミュレーションを検討しました。天体が衝突を繰り返しながら、惑星が成長していきます。サイズの大きな天体も衝突します。月はそのような衝突の、最後の大衝突でつくられたのでしょう。研究チームは、シミュレーションの過程を追いながら、成長した惑星とそれに衝突するインパクターの組成を調べてみました。すると、両者の組成はよく似ていることがわかったのです。シミュレーションで形成された惑星はそれぞれ組成が異なっていましたが、それらに衝突するインパクターはほとんどの場合、良く似ていました。

結局、今回の研究結果によれば、地球に衝突するインパクターはもともと同位体比が似ていたわけです。これによって、ジャイアント・インパクト説の最大の弱点がなくなることになります。また、火星サイズの天体が衝突したという「古典的な」ジャイアント・インパクト説で問題はなくなり、さまざまなバリエーションを考える必要はなくなりました。

はたして、この結論が正しいのかどうか、今後のさらなる研究がまたれます。

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