メアリー・アニング:古生物学の母

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    Kevin Adams - Mary Anning of Lyme

     

    大英自然史博物館について調べているうちに、ふと出会ったのが、ケヴィン・アダムスさんのニューアルバム” Mary Anning of Lyme”でした。メアリー・アニングは19世紀の化石ハンターで、魚竜のイクチオサウルスや首長竜のプレシオサウルスの全身骨格の発見者として知られています。

     

    https://kevadams.bandcamp.com/album/mary-anning-of-lyme

     

    1799年、ドーセット州ライム・リージスに生まれたメアリー・アニングは11歳の時に家具職人だった父親を亡くし、一家は貧しい状態に陥ります。メアリーはジュラ紀の地層が露出した海岸で化石を探しては、これをコレクターに売ることで生計を立てました。化石の採集法について父親に教えてもらったことが役に立ちました。

     

     

    当時はイギリスで古生物学が誕生する時代で、リチャード・オーウェンが恐竜という言葉をつくったのもこの頃です。アニングが発見した化石標本は、現在は絶滅してしまった生物がかつて地球上に生きていたという、今では当たり前の考え方が社会に浸透していう上で、大きな役割を果たしました。

     

     

    このアルバムはどういう経緯でできたのか? ケヴィンさんとはどういうミュージシャンなのか? ケヴィンさんにメールを送ったところ、すぐに返信がきました。ケヴィンさんはイギリスのフォーク・ミュージシャンで、以前はライブ演奏などをしてきましたが、多発性硬化症という難病を発症し、現在は自宅のスタジオで音楽を書いたり、録音をしたりしているそうです。

     

    2018年に” A Crossword War”というアルバムを発表した後、メアリー・アニングのプロジェクトを提案したのが友人のコリン・ホワイト氏でした。ホワイト氏は科学者であり、ライム・リージスからそれほど遠くないエクスターに住んでいました。ケヴィンさんはそれまでメアリーについて少ししか知らなかったそうですが、彼女について知れば知るほど魅了されていきました。メアリーは読み書きができる以上の正式な教育を受けていませんでしたが、自ら学んで熟練した古生物学者としての知識を得ました。女性の役割が出産や家庭を守ることでしかなかった時代に、科学の世界で大きな貢献を果たしたのです。ケヴィンさんはさらに古生物学や化石そのものにも興味をもつようになったそうです。

     

    このアルバムでは、メアリーと父のリチャードが言葉を交わしながら、曲が進み、プレシオサウルスを発見する” The Plesiosaur”へと物語が展開していきます。それは同時に、ケヴィンさん自身が時空を超えてライム・リージスへと思いをはせていくプロセスでもあります。そして太古の生物が化石となり、長い時間の果てにメアリーに発見されるという、壮大な地球の営みを主題にした” Earth, Air, Fire, Water”で終わるという構成になっています。アルバムのジャケットのライム・リージスの写真を眺めながら、聴き入ってしまいました。

     

    新型コロナウイルスによるロックダウンの下でも、多くのアーティストが素晴らしい仕事をしたことと思います。このアルバムもその1つといえるでしょう。ケヴィンさんの制作スタイルからして、ロックダウンは大きな障害にはならなかったそうです。メアリーの声はケヴィンさんの妻のルースさん、リチャードの声はケヴィンさん自身です。フルートと笛とリコーダーは友人のシーナ・マッソンさんが自宅で演奏し、電子ファイルで送ってくれました。「ですからアルバム全体はとてもホームメイドです」とケヴィンさんは語っています。

     

    なお、メアリー・アニングを主人公にしたケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナン主演の映画『Ammonite』が最近話題になっていますが、ケヴィンさんのアルバムはこれとはまったく関係がないそうです。



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