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北朝鮮の核開発(2):最初の核実験
北朝鮮は2006年10月9日に初の核実験を行いました。場所は咸鏡北道吉州郡豊渓里でした。

一般に、地下核実験は地下数百メートルの岩盤まで縦穴を掘って行います。この縦穴に核爆弾を収めたコンテナを下ろし、その上を岩石で埋め、さらにその上部を大量のコンクリートで固めます。こうして放射性物質が大気中にもれないようにして、核爆発実験を行うのです。十分に小型化され、洗練された核弾頭を爆発させる場合、縦穴の直径は1.5m ほどでよいといわれています。地下に埋められたコンテナと地上はケーブルで結ばれます。このケーブルは核爆弾の起爆装置を点火させるために使われます。また、爆発の瞬間のデータもこのケーブルを通して送られてきます。地上にも核爆発をモニターするための施設が設置されます。

地下で核爆発がおこると、その場所には空洞ができます。大きさは爆発の規模によります。空洞の周囲は爆発の際の高温で岩石が溶解し、ガラス化して、放射性物質を閉じこめてしまいます。ただしこれは、爆発個所の岩盤がしっかりしている場合の話で、もしも安定した岩盤層まで穴を掘らずに実験を行った場合は、岩盤の亀裂や地層の空隙を通して放射性物質がもれたり、長い間には、地下水を通じて放射性物質が周囲に広がる危険性があります。

北朝鮮の核実験は、縦穴ではなく、山体にトンネル(横穴)を掘って行われます。下は、2006年に核実験が行われた場所の衛星画像です。左側にトンネルの入り口が、右側にトンネルを掘削して出てきた土石を堆積させているとみられる場所が見えています。

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10月9日午前10時35分27秒に、核爆発による地震が観測されましたが、マグニチュードから推定すると、爆発の規模は、TNT 火薬に換算して1キロトン程度と小さなものでした。プルトニウム239 は一部しか核分裂反応をおこさず、実験は失敗しました。爆発規模が予想よりかなり小さかったため、爆発は通常の火薬による「みせかけ」という見解まで出ましたが、アメリカ空軍機が日本海上空で採取した大気サンプルから放射性物質が検出されたとの情報があります。山体の割れ目などから微量な放射性物質がもれ出したようです。また、地震波の波形も核実験に特徴的なものでした。

失敗の原因は何だったのでしょうか。第1 に考えられるのが、プルトニウム239 の純度、言い方をかえればプルトニウム240 の問題です。核兵器級のプルトニウムの組成は、プルトニウム239 が約93%、プルトニウム240 が約6%、その他のプルトニウム同位体が約1%とされています。原子炉でウラン235 を燃やしていると、核分裂をしないウラン238 が中性子と反応しでウラン239 となり、それがベータ崩壊してネプツニウム239 となり、さらにベータ崩壊してプルトニウム239 になります。この核燃料棒を原子炉から取り出し、再処理を行ってプルトニウムを抽出するわけですが、原子炉であまり長く核燃料を燃やしていると、プルトニウム240 が増えてしまいます。プルトニウム240 は自分で核分裂反応を行う「自発的核分裂」の性質をもっており、この性質がプルトニウム239 の核分裂を精密にコントロールする際に妨げになります。

プルトニウム240 の存在は、プルトニウム型核爆弾が考案されたときからの難題でした。北朝鮮の核実験が失敗したのは、プルトニウム240 の量が多かったため、爆発が途中で終わってしまったのではないかという見解が専門家の間であります。実験に使われたプルトニウムが北朝鮮の黒鉛減速炉の核燃料棒から抽出されたものだとすると、確かに核燃料棒を取り出すタイミングは遅すぎたようです。この時点で、北朝鮮はプルトニウム240 の含有率をあまり考慮していなかった可能性があります。

第2 に考えられるのが、爆縮過程の問題です。プルトニウム239 に核分裂連鎖反応を起こさせるためには、球形のプルトニウムの直径を2分の1程度にまで圧縮する必要があります。プルトニウムの圧縮は、高性能爆薬の爆発によって生じる内向きの衝撃波(爆縮波)によって行いますが、このとき爆縮波はプルトニウムを同時にかつ均等に圧縮しなくてはなりません。これがうまくいかないと、核爆発は途中で停止してしまいます。プルトニウムを瞬間的に均等に圧縮させるためには、高性能爆薬の設計を綿密に行わなくてはならず、高速で燃焼する爆薬と低速で燃焼する爆薬を組み合わせたり、爆薬の形状や配置を工夫する必要があります。北朝鮮は高性能爆薬の爆発実験をそれまでに100回以上行っていましたが、これはきわめて高度な技術で、いくら爆発実験をくり返しても可能になるとは限りません。もちろん、爆薬自体の性能の問題もあります。

第3 に考えられるのは、タンパーの設計上の問題です。タンパーが爆薬の衝撃波を効果的に伝え、かつプルトニウム239 と中性子の閉じ込めに有効なはたらきをするかどうかは、あらかじめ計算が可能ですが、実際にそのとおりになるかどうかは、実験で確かめなくてはなりません。

さらに、部品の精度や信頼性の問題も考えられます。核爆弾の製造には精密加工技術や精密測定技術が不可欠です。仮に上のような問題がすべてクリアされていたとしても、製造された爆弾自体が粗雑であれば、完全な核爆発は起こりません。

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