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はやぶさサンプル:太陽系ダストのサイエンス
「はやぶさ」のサンプル容器から「地球外物質の可能性のある微粒子が見つかった」という報道が一部で流れ、JAXA は本日午後5時30分から緊急に記者会見を開き、宇宙科学研究所ミッション機器系グループ副グループ長の上野宗孝さんが、キュレーション作業の進捗状況について説明しました。記者会見場には多くのメディアがつめかけ、「はやぶさ」サンプルに対する関心の高さがうかがえました。

上野さんによると、サンプルキャッチャーA 室内壁をテフロン製の小さな「へら」でぬぐい、電子顕微鏡で観察したところ、光学顕微鏡では見えない10ミクロン以下のサイズの微粒子が100個ほど付着していたとのことです。多くは1ミクロン以下でした。アルミ粉末など明らかに人工物であるものを除けば、このサイズの粒子になると、電子顕微鏡での観察では地球起源のものか、地球外の物質なのかは判別することは困難で、12月ごろから予定されているSPring-8 などによる初期分析の結果をまたなくてはなりません。

どちらともいえないのですから、その可能性はあるとはいえ、「地球外物質の可能性のある微粒子が見つかった」という読売新聞や朝日新聞の報道は、誤解をまねきかねないものであったといえます。

これまでに光学顕微鏡で見つかっている粒子も含め、「はやぶさ」サンプルの分析は、こうした微小な粒子について行われることになります。これらの粒子が地球外起源のものであるとすれば、それらは太陽系空間に存在する惑星間ダストということになります。採取されたサンプルがある程度のサイズの「かけら」であれば、イトカワ由来と考えられます(もちろん、他の天体からきた可能性もないわけではありません)が、ミクロンサイズのダストは、たとえイトカワ表面で採取されたとしても、それがイトカワで生成されたとは限りません。太陽系空間をただよっていた彗星や他の小惑星起源のダストがイトカワ表面に降りつもったものである可能性も大でしょう。ダストの中には太陽系外から来たものもあります。

「はやぶさ」のサンプルキャッチャーに入っていたダストが地球外起源であれば、どこから来たものであれ、それは太陽系初期に何が起こったかを知るための貴重な材料になるでしょう。惑星間ダストについて、われわれはまだ多くのことを知っているわけではありません。なぜなら、宇宙から持ち帰られたサンプルが、まだあまりないからです。とはいっても、「はやぶさ」サンプルを分析する日本の研究者が、この分野にまったく未経験というわけではありません。

1999年に打ち上げられたNASA の彗星探査機スターダストは、ヴィルト第2彗星が放出するダストを採取し、2006年に地球に帰還しました。スターダストによって採取されたダストのサイズも10ミクロン以下でした。これらのサンプルの分析には日本の研究者も参加し、高エネルギー加速器研究機構やSPring-8 の放射光施設、二次イオン質量分析計などを用いた分析で世界に誇る成果を上げています。「はやぶさ」サンプルの分析では、このときの経験が大いに役立つでしょう。

サンプルキャッチャー内の微粒子に地球外起源のものが含まれており、これを機会に、太陽系ダストの科学が進むことを期待したいと思います。

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