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北朝鮮の核ミサイル開発はどのくらい脅威か(4):事態はもはや先送りが不可能な局面に
核とミサイルの開発を進める金正恩委員長の目標は、北朝鮮がアメリカ全土を大陸間弾道ミサイル(ICBM)で攻撃できる強大な核保有国家であることを、既成事実として世界に認めさせることにあります。したがって、北朝鮮がアメリカに体制維持の保証を求めているという考えに過度に重きを置くことは、事実を見誤る危険性があります。現在の北朝鮮にとって最も重要なことはアメリカによる承認ではなく、一刻も早くアメリカやロシア、中国と肩を並べる核強国になることです。ここここで見たように、北朝鮮は今、それを実現する一歩手前まできています。現時点での対話は、北朝鮮の時間稼ぎにしかならないでしょう。核とミサイル技術の進捗の度合いを考慮すれば、「対話のための対話は無意味」「最大の圧力を」という日本政府のスタンスは合理的といえます。

金正恩委員長は2013年、金正日時代の先軍政治(軍事優先の政治)を継承するとともに、経済発展と核・ミサイル開発の両方を優先する「並進路線」を打ち出しました。経済政策の成果は不明ですが、核とミサイルの開発はこの路線によって国家目標となり、その後目覚ましい発展を遂げています。2012年〜2015年は金正恩委員長にとって権力基盤を固める時期でした。それを実現した同委員長は、今や核とミサイル開発を最優先課題として加速化させています。2016年以降の多数のミサイル発射や3回の核実験がそれを如実に物語っています。金正日時代の核開発予算はそれほど多くなかったといわれています。また、中国に配慮する面もあり、2006年と2009年の核実験では、事前に中国に通告していました。しかしながら金正恩時代になって核開発予算は増大し、中国への配慮も一切なくなりました。

このような路線を支えているのは、金正恩委員長の周囲を固める新世代のテクノクラートたちです。核とミサイルの開発体制も、金日成、金正日時代のピラミッド型組織ではなく、各プロジェクトを担当する設計局を金正恩委員長が直接指示できるフラットな体制になっていると推測されます。そこで働く科学者や技術者たちも世代交代が進んでいます。その中核は東西冷戦の時代をほとんど知らない世代であり、金正恩委員長とのコミュニケーションも非常に取りやすくなっているでしょう。こうした新しい体制が、核とミサイル開発を効率的に進める基盤となっています。

アメリカ本土を攻撃できるICBM は、長距離を飛ぶミサイルを開発するだけでは実現できません。弾頭の再突入技術や精密誘導技術なども必要です。しかし、こうした技術開発にも着実な進展がみられます。再突入技術に関しては、ロフテッド軌道の発射実験等でデータを入手しているはずです。2017年5月に発射実験が行われ、KN-18 と名付けられたスカッドのヴァリアントは、大気圏再突入時にターゲットに向けた誘導が可能なMaRV であり、北朝鮮はすでにこの技術を一部習得しています。おそらく、多弾頭化の技術も開発しているでしょう。

今後、注目すべきは火星13(KN-08)の存在です。火星13は3段式とされていますが、そうだとすれば、移動発射と長期保管が可能な固体燃料式のICBM である可能性が濃厚です。アメリカとロシアでも3段式のICBM はすべて固体燃料です。固体燃料の技術を北朝鮮はすでに手に入れています。その技術を用いて、潜水艦発射ミサイル(SLBM)の開発も進めています。北朝鮮の潜水艦が日本やアメリカの潜水艦探知網をかいくぐることは困難と考えられますが、これもまた今後、大きな脅威になることは間違いありません。

特殊な地政学的位置にあるため、国際社会はこれまで北朝鮮の核・ミサイル開発を止められずにきました。しかしながら、事態は今、問題の先送りが不可能な局面に達しています。
北朝鮮の核ミサイル開発はどのくらい脅威か(3):核開発
北朝鮮は9月3日に6回目の核実験を行いました。最近の北朝鮮の核開発は以下の点で、日本や周辺諸国そして全世界にとって大きな脅威になっています。

弾道ミサイルに搭載可能な核の小型化に成功している。
多様な核兵器開発が可能な技術を有している。
水爆の保有をめざしている。

20170911_01

朝鮮戦争でアメリカは原子爆弾の使用を真剣に検討しました。その脅威にさらされた金日成は、朝鮮戦争休戦後、ソ連に核技術の提供を要請しますが、ソ連は北朝鮮の核兵器保有には否定的でした。しかし、原子力技術者の育成には協力することになり、1956年、北朝鮮は科学者や技術者をモスクワの研究機関へ派遣しました。最も優秀な科学者はドゥブナ合同原子核研究所に送られ、核物理学の理論を学びました。この関係は1991年にソ連が崩壊するまで続き、北朝鮮の多くの科学者や技術者がソ連で教育を受けることになりました。1959年には、ソ連と北朝鮮の間で原子力利用に関する協力協定が結ばれ、これにもとづき、寧辺の核施設が建設されました。最初に完成したのはIRT-2000 とよばれる研究炉です。1985年に完成した出力5メガワットの黒鉛減速ガス冷却炉は、その後、原爆用のプルトニウム生産に使われることになります。北朝鮮は寧辺の施設で核燃料の製造、原子炉の運転、核燃料の再処理、プルトニウム抽出の技術を学んでいきます。

北朝鮮にとって、1950年代から1960年代前半は、核開発の基礎を学ぶ段階でした。金日成が原爆開発を具体的に指示したのは1966年か1967年とされています。ソ連と中国が、北朝鮮の核兵器開発を直接支援したことはないとみられます。海外からの支援で最も大きかったのはパキスタンの「核開発の父」とよばれたアブドゥル・カディール・カーンによるものです。彼は1990年代に、確認されているだけでも12回、平壌を訪問しています。彼は原爆製造やウラン濃縮の技術を北朝鮮に教えたとされます。また、1990年代には原爆に必要な高性能爆薬の爆発実験が繰り返し行われていたことが確認されています。

北朝鮮の最初の核実験は2006年10月9日に行われました。爆発の規模は0.7〜2キロトンと小さく、核分裂連鎖反応が十分には進まなかった、いわゆる “fizzle” とよばれる結果に終わったとみられています。核実験が行われたかどうか、あるいはどのような核実験であったかを知る手がかりは、大気中に放出されたキセノンやアルゴンなどの同位体の分析で得られます。このとき検出された同位体から、実験はプルトニウムによるインプロージョン型の核爆発であることがわかっています。しかし、北朝鮮の核実験は坑道内で行われるため、以後の核実験では、大気サンプルから核爆発に関係する元素はほとんど検出されていません。

2回目の核実験は2009年5月25日に行われました。爆発の規模は2〜5.4キロトンと推定されています。前回の失敗のリカバリーと考えられますが、もう1つ大事なのは、この核実験が金正日から金正恩への権力移行の過程で行われたことです。北朝鮮が引き続き核開発を行うことを内外に示す意図もあったとみられます。

3回目の核実験は2013年2月12日に行われました。金正恩が権力を掌握していく過程で行われた実験で、「核の小型化と爆発力の強化を行った」と発表されました。爆発の規模は6〜16キロトン、大気サンプルからキセノンやアルゴンは検出されませんでしたが、濃縮ウランによる核爆発の可能性が指摘されています。

4回目の核実験は2016年1月6日に行われました。爆発の規模は7〜16.5キロトンで、2013年と同じ程度でしたが、北朝鮮は「水爆実験」と主張しました。少量の重水素と三重水素による核融合反応によって核分裂の威力を高めるブースト型原爆の実験であったと推測されます。

2016年9月9日には5回目の核実験が行われました。それまでの核実験はほぼ3年おきに行われていたのに対して、同じ年に2度の核実験を行うのは異例のことでした。爆発規模は過去最大規模の15〜25キロトンで、北朝鮮は「弾道ミサイルに搭載可能な弾頭のテストに成功した」と発表しました。

そして2017年9月3日に北朝鮮は6回目の核実験を行いました。爆発規模は50〜250キロトンとこれまでになく大きく、広島に落とされた原爆の10倍に達する規模とみられます。北朝鮮は「水爆実験に成功」と主張しています。水爆の威力は原爆に比べて桁違いで、通常メガトン級です。そのため、水爆ではないとする見方が大勢を占めていますが、水爆でも150キロトンほどに威力を調節することは可能とされています。ブースト型原爆と考えられますが、水爆実験であった可能性も捨てきれません。

このように、金正恩体制になってから、北朝鮮の核開発はきわめて活発になっています。核爆発技術も向上していると考えられ、ブースト型原爆のほか、コンポジットコアの技術なども習得しているという見方もあります。コンポジットコアとは、核分裂を発生させるコアの部分にプルトニウム239 とウラン235 を層状にして用いる方式で、核物質を有効に利用することが可能といわれています。

さらに、水爆の保有を目指しているのも脅威です。本記事冒頭の写真は6回目の核実験の前日に、金正恩委員長が核開発の研究所を視察した際のものです。手前の白いひょうたん型は弾道ミサイルに搭載する水爆の模型です。左側が「プライマリー」とよばれるブースト型原爆で、水爆の引き金になる部分です。右側が「セカンダリー」とよばれる核融合反応を起こす部分で、この写真はまさに、金正恩委員長が水爆の核心部の説明を受けているところを撮影したものです。左奥のパネルには、この水爆を搭載したICBM、火星14 の弾頭部が示されています。

アメリカの専門家の中には、北朝鮮が核兵器を保有したとしても、経済事情から考えて、10〜20キロトン級の原爆を限られた数だけもつにとどまるという見方がありました。しかしながら、2016年、2017年の核実験はそうした楽観的な予測を完全に否定しており、核技術の高度化によって弾道ミサイルに搭載できる小型で高性能の核兵器を大量に保有し、さらに水爆を搭載したICBM の完成までを目指していることを示しています。

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