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北朝鮮の核ミサイル開発はどのくらい脅威か(2):ミサイル(後編)
北朝鮮は長年、ICBM の保有を目標にしてきましたが、スカッド、ノドン、ムスダンの技術でそれを実現することは不可能です。しかし、最近、北朝鮮にはICBM を目指す新しい系列のミサイルが登場しています。

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その1つが北極星シリーズです。2016年8月24日、北朝鮮は潜水艦発射ミサイル(SLBM)北極星1(KN-11)の水中からの発射に成功しました。北極星1の形状はR-27 に非常に良く似ており、北朝鮮はR-27 を参考にしたと考えられますが、エンジンはR-27 が液体燃料であるのに対して、北極星1 は固体燃料でした。北朝鮮の新浦級潜水艦は1ないし2個のSLBM発射筒をもつといわれています。2017年2月13日に、北朝鮮は北極星1 の地上発射型である北極星2(KN-15)の発射を行いました。北極星2 も北極星1 と同じようにコールドローンチ方式をとっていました。

北朝鮮の弾道ミサイルはスカッド以来、すべて液体燃料でした。北朝鮮が固体燃料ミサイルの開発に取り組み始めたのは1990年代はじめのことです。北朝鮮が固体燃料ミサイルの技術をどのようにして入手したかは明らかになっていませんが、イランが開発した2段式の準中距離弾道ミサイル、セジルか、パキスタンが開発した準中距離弾道ミサイル、シャーヒーン兇ベースになっているという見方があります。これらのミサイルは1990年代はじめに中国の技術によって開発されたものであり、その技術が北朝鮮に流れたと考えられているのです。

固体燃料の弾道ミサイルは長期間の保管が可能で移動発射が容易という利点をもっています。北朝鮮は北極星3 の開発も行っているようです。北朝鮮の固体燃料ミサイルは新たな脅威であり、アメリカに対決する弾道ミサイルの切り札になる可能性があります。

北朝鮮のもう1つの新しい系列の弾道ミサイルが、火星12(KN-17)と火星14(KN-20 )です。火星12 は1段式の中距離弾道ミサイルで、2017年に5回の発射が行われました。最初の3回は失敗しましたが、5月14日の実験では、高度2000km以上に達するロフテッド軌道をとり、水平距離787kmを飛行しました。また8月29日の発射では、北海道を超えて水平距離2700kmを飛びました。火星14 は2段式のICBM で、7月4日に発射実験が行われました。高度2800kmに達するロフテッド軌道をとり、水平距離933kmを飛行しました。7月28日には2回目の発射実験が行われ、高度3700kmに達するロフテッド軌道をとり、水平距離約1000kmを飛行しました。

火星12 と火星14 の第1段に用いられているエンジンは2016年9月に燃焼試験が行われ、この時の映像からソ連のR-250 であることが明らかになりました。R-250 はソ連時代のICBM、R-36 の第1段エンジンで、ソ連崩壊後は衛星打ち上げ用のツィクロン・ロケットに用いられていました。R-250 を製造していたのはウクライナの企業ユージュマシュです。R-250 は2基のエンジンがペアになった構造をしていますが、火星12 と火星14 のエンジンは1基です。R-250 を半分にしたバージョンのエンジンがブラックマーケットを通じて北朝鮮に流れたとみられています。燃焼試験の時期からして、北朝鮮がこのエンジンを入手したのは比較的最近、おそらく2014年頃と考えられます。現在用いているエンジンはウクライナで製造されたものかもしれませんが、いずれ北朝鮮は国内でR-250 を生産するようになるでしょう。なお、火星12と火星14のエンジンの周囲には方向制御用の4基のバーニアエンジンが取り付けられています。これは4D10エンジンのバーニアエンジンを流用しているかもしれません。ICBM を完成させるにはまだいくつかの技術が必要ですが、北朝鮮がICBM用のエンジンを手に入れたことは間違いなく、念願のICBM保有にあと1歩のところまできたといえるでしょう。

さらにもう1つ、気になる弾道ミサイルがあります。それが火星13 です。火星13 は2012年の軍事パレードに登場したICBM であるKN-08 と考えられていますが、その正体は不明です。3段式の固体ロケットのICBM かもしれません。

このように、北朝鮮では最近、新しい系列の弾道ミサイルが登場し、その目標は、移動発射可能なICBM および中距離弾道ミサイル、そして潜水艦から発射可能なミサイルに絞られています。北朝鮮内の複数の設計局が、これらのミサイル開発を競っているとみられます。2016年以降の多数のミサイル発射は、こうしたミサイル開発が加速していることを示しており、2018年の建国70周年に向けてラストスパートに入っていると考えられます。
北朝鮮の核ミサイル開発はどのくらい脅威か(1):ミサイル(前編)
最近の北朝鮮のミサイル開発は以下の点で、日本や周辺諸国そして全世界にとって大きな脅威になっています。

2016年以降、ミサイル発射実験が活発になっている。
新しい系列の弾道ミサイルが登場している。
大陸間弾道ミサイル(ICBM)の完成が近い。

しかし、これらがどれだけ深刻な脅威であるかは、日々の報道をチェックしているだけでは分かりづらいところがあります。北朝鮮のミサイル開発の経緯をたどり、彼らが今、どのような段階にたどりついたのかをみてみましょう。

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金日成は1953年の朝鮮戦争休戦後、核と弾道ミサイルの保有を目指しました。ソ連は地対空ミサイルSA-2 などの兵器供与を行いますが、朝鮮半島の不安定化をのぞまず、最新の兵器や軍事技術の提供は行いませんでした。金日成は1965年、ミサイル開発のため咸興に軍事科学院を設立します。これが北朝鮮における弾道ミサイル開発のスタートとされています。

北朝鮮と中国は1976年に戦術ミサイルDF-61 の共同開発を開始しますが、中国側の事情で開発計画は2年後にキャンセルされました。しかし、北朝鮮の技術者はこのときミサイル技術に関して貴重な知識を得ました。

ソ連は1972年に短距離弾道ミサイル、スカッドB を北朝鮮に供与したとされています。1970年代末に、北朝鮮はソ連の許可なくエジプトから入手したスカッドB のリバースエンジニアリングを行い、スカッドB の北朝鮮版である火星5 を開発しました。リバースエンジニアリングには中国が協力したとされています。当時は中ソ対立の時代で、金日成はこれを利用し、ソ連との関係を保つと同時に、ミサイル技術に関しては中国にアプローチしていたのです。北朝鮮はさらにスカッドB を改良したスカッドC(火星6)を開発しました。火星5 と火星6 によって、北朝鮮は韓国全域を攻撃することが可能になりました。

北朝鮮はスカッドのエンジン9D21 を大型化することに成功。これを用いた準中距離弾道ミサイルがノドンです。ノドンの開発は1988年にはじまり、1990年代初めに完成しました。開発には中国が協力したほか、1991年のソ連崩壊にともない、ロシアやウクライナの技術者も関与したとされています。ノドンは日本と在日米軍基地を攻撃するためのミサイルです。スカッドとノドンの配備数は明らかではありませんが、スカッドが600基、ノドンが200基という報告があります。スカッドの射程を伸ばしたスカッドER というバージョンも開発されています。

さらに北朝鮮はソ連崩壊後、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)であるR-27 (SS-N-6)の技術者をひそかに北朝鮮によび寄せ、準中距離弾道ミサイル、ムスダン(BM-25)を開発しました。ムスダンは2007年の軍事パレードに登場しましたが、発射実験はずっと行われず、長い間、その正体は明らかではありませんでした。しかし、北朝鮮は2016年にムスダンの発射実験を8回にわたって行いました。7回は失敗しましたが、6月22日の2回の発射のうち1回は高度1000kmに達した後、日本海に落下しました。

R-27は潜水艦から発射するため全長を抑えなければならず、4D10エンジンは本体がミサイル下部の燃料タンク内に置かれ、ノズル部分のみが外部に出ている特殊な構造になっています。ムスダンは燃料をより多く搭載して射程を伸ばすため、全長をR-27 より長くしていますが、そのためにミサイル全体のバランスが崩れてしまったことが失敗の原因ではないかと考えられています。1回は発射実験に成功したものの、ムスダンはまだ開発途上と考えられます。

この4D10エンジンは、ICBM とされるテポドン2 にも使われています。テポドン2 は3段式で、第1段は4D10 を4基クラスター化し、第2段にはノドンが使われています。第3段は小型の液体ないし固体燃料ロケットです。テポドン2 を衛星打ち上げに用いたものは銀河2、銀河3 とよばれていますが、基本的には同じものです。

テポドン2 は2006年に最初の発射実験が行われましたが失敗しました。2009年には銀河2 による「人工衛星の打ち上げ」が行われましたが、打ち上げは失敗しました。2012年4月の銀河3 の発射は失敗しましたが、同年12月には人工衛星とされる物体を軌道投入しました。銀河3 は2016年にも人工衛星の軌道投入に成功しています。テポドン2(銀河3)は専用の発射台を必要とし、発射台への移動から燃料注入、発射まで最短で3〜4日かかるため、ICBM としての利用は現実的ではありません。

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