IPCC報告書の政策決定者向け要約

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    IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書第 1 作業部会(AR6/WG1)報告書(自然科学的根拠)の政策決定者向け要約(SPM)が発表されました。

     

     

    ここ半世紀ほどの世界平均気温の上昇傾向は引き続き進行しています。下の画像の黒線が観測値です。青色は自然起源の要因のみを考慮した推定値、茶色は人為・自然起源の両方の要因を考慮した推定値で、世界気温の上昇が人為的要因によるものであることが分かります。

     

     

    下の画像は、1850〜1900年を基準とした世界平均気温の今後を示す図です。AR6では5つのモデルによるシミュレーション結果を示しています。

     

     

    すべてのシナリオにおいて、世界平均気温は少なくとも今世紀半ばまで上昇を続けると予測されています。このうちSSP1-2.6とSSP1-1.9は、今後数十年の間に二酸化炭素およびその他の温室効果ガスの排出が大幅に減少した場合のシナリオで、21 世紀末の気温上昇は、1850〜1900年を基準として1.5度Cおよび2度Cを超える程度になっています。しかし、最悪のシナリオでは5度C近い上昇となります。

     

    今回の報告書で注目すべき点は、気候変動に対する人為要因の影響を評価するイベント・アットリビューションの検討結果が明らかにされていることです。

     

    それによると、世界各地の極端な高温に関して、そのほとんどについて「人間の寄与の確信度」が高いと評価されており、近年の極端な高温現象に人為的要因が寄与していることが明らかになっています。一方、最近の大雨に関しては、多くの地域について「人間の寄与の確信度」は低いと評価されており、人為的要因がどれだけ寄与しているかについてさまざまな見解があることを示しています。

     


    地球温暖化:南極半島で記録的高温

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      Climate ChangeAntarctica Record High Temperature

       

      南半球は今が真夏です。南極では異常な高温が観測されています。こうした高温は自然の変動の中で起こることもありますが、今回の高温は地球全体で進んでいる温暖化のあらわれと考えるべきでしょう。

       

      20200215_01.jpg

       

      南極半島(上の画像の左の半島)の先端にあるアルゼンチンのエスペランサ基地では2月6日に最高気温18.3℃が観測されました。これは2015324日の17.5℃を上回る記録となりました。また、南極半島先端近くのシーモア島にあるアルゼンチンの観測基地で29日に20.75℃が記録されたとする報道もあります。これが本当だとすると、南極ではじめて20℃以上が観測されたことになります。WMO(世界気象機関)は南極半島の平均気温は過去50年間で3℃上昇しており、地球上でもっとも温暖化が進んでいる場所としています。

       

      NASANOAA115日に、2019年は観測史上2番目に世界平均気温が高い年であったことを明らかにしています。下の画像は19511980年の平均気温と比べた20152019年の平均気温の変化です。南極では平均気温が低くなっている場所もありますが、南極半島付近は気温上昇が顕著です。

       

      20200215_02.jpg

       

      平均気温が上昇すると、なぜこのような高温日が出現するかは、以下の図で考えるとよくわかります。

       

      20200215_03.jpg 

      IPCC AR5

       

      横軸はその日の最高気温、縦軸はその気温が出現する日数で、中央が平均値となります。当然のことながら、非常に寒い日もあれば、非常に暑い日もあります。地球温暖化が進むということは、この分布が全体的に右側(高温側)にずれることを意味します。すると非常に寒い日が出現する頻度は低くなり、非常に暑い日が出現する頻度は高くなります。つまり、非常な高温を記録する日が出現しやすくなるわけです。

       

      NOAA2020年の1月は、観測史上最も暖かかった1月であったと発表しました。南極半島では記録的な高温の日が出現しやすくなっているのだと考えられます。


      東京五輪のマラソンと競歩:札幌市開催は妥当な判断

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        東京五輪のマラソンと競歩の会場を札幌市に移すという国際オリンピック委員会(IOC)の決定は、東京の8月の気象条件を考えた場合、妥当な判断と思われます。下の画像は201881日の東京の酷暑を示すJAXAの気候変動観測衛星「しきさい」の観測画像です。

         

        20191018_01.jpg

         

        201881日の東京の最高気温は35.1℃ですが、「しきさい」の観測によると、東京の地表面温度が50℃以上と非常に高温となっていることがわかります。

         

        東京五輪のマラソンは女子が8月2日、男子が89日、男子50km競歩決勝は88日に行われます。今年の8月前半の東京の気象データは下の通りです。

         

        20191018_02.jpg

        気象庁 

         

        最高気温35℃以上の日が半分以上、最低気温が25℃以下になることはなく、雨はほとんど降らず、湿度は常に70%以上です。都心部はほとんどの土地が建物におおわれ、道路は舗装されているため、エアコンや自動車からの排熱でヒートアイランド現象が加わり、地表面温度はさらに上昇します。こうした気象条件の下での競歩やマラソンは選手の生命を危険にさらすことになります。

         

        日本ではあまり報道されませんでしたが、今年の夏は史上空前の熱波がヨーロッパを襲い、死者が続出しました。ヨーロッパの熱波はアフリカ大陸からの熱い風がもたらします。この現象はエルニーニョが発生している時期に起きることが多いのですが、今年はエルニーニョが発生していないにもかかわらず、熱波が襲いました。世界気象機関(WMO)はこの猛烈かつ広範囲の熱波は人為起源の気候変動のあらわれだと指摘しています。

         

        地球温暖化の傾向にストップはかかっていません。来年の東京の夏はさらに暑くなる可能性があります。



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