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青の標本:宇宙につながる色
Recollection of blue:The color that dissolves into the universe

ジュエリー・デザイナーとしても活躍されているアーティスト、こうづなかば氏と7月8日にトークライブを行います。テーマは「宇宙と青」。ティル・ナ・ノーグギャラリーで7月7日から24日まで行われる同氏の展覧会「青の標本」にちなんだものです。どんなお話をするか、今考えていますが、実際のトークはきっと意外な方向に展開していくでしょう。

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宇宙と青というと、私は昔、ソ連の宇宙飛行士と話をしたときのことを思い浮かべます。バイコヌール宇宙基地からソユーズ宇宙船で宇宙に向かうときの体験を、彼は次のように語ってくれました。「空に向かってロケットでどんどん上昇していくと、やがてそこは空ではなく、宇宙になる」。私たちが地上から見ている青空は、高度を増すにつれて深い紺色になり、ついには暗黒の宇宙空間となるわけです。

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宇宙飛行士は皆、大気の縁の青色が宇宙空間にとけこんでいく様は、たとえようがない美しさだといいます。

青、それは宇宙につながる特別な色です。

トークライブは7月8日(金)19時から、大手町の大手門タワー・JXビル1階の3×3 Lab Future で行われます。詳細や申し込みはティル・ナ・ノーグギャラリーまで。
メタリック・パステルの大脳皮質
Science visualization:Cortex in Metallic Pastels

私が毎年、この時期に楽しみにしている『サイエンス』誌の特集があります。同誌が行っているサイエンス・ビジュアライゼーションのコンテストの結果が発表されるのです。ジャンルは「イラストレーション」「ポスターとグラフィックス」「写真」「ゲームとアプリ」「映像」に分かれています。今年の受賞作品で、特に印象的だったのは、イラストレーション部門で第1席となった下の作品でした。

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不思議な林に迷い込んだような感じになる作品です。私たち日本人にとってどこか懐かしい風景に見えるのは、日本画のような印象があるからでしょうか。実は、このイラストレーションは、脳の神経細胞を描いたものです。

『メタリック・パステルの大脳皮質』というタイトルのこの作品。作者のグレッグ・ダン氏はペンシルベニア大学で脳科学の博士号を取得したのち、絵画の分野で創作活動を行っている人物です。東洋美術、特に江戸時代の日本画の愛好家で、彼の作品にはその影響が強く現れています。上の作品がまるで日本画のように見えるのはそのためなのです。

大脳皮質は神経細胞が密集しており、これをそのままイラストで描くと、非常に複雑で分かりづらいものになってしまいます。そこで、ダン氏は大脳皮質を極めて薄くスライスしたシチュエーションで神経細胞を描きました。微妙に変化する繊細な色彩を背景に、神経細胞が並んでいます。樹木の根のように見えるのは、細胞本体のまわりに何本も広がる樹状突起です。木の幹のように長く伸びているのは、他の神経細胞につながる軸索です。神経細胞同士が複雑に絡まる様子も描かれています。イラストの上の方では、これらの神経細胞のネットワークが表現されています。神経細胞を目立たせるために、金箔やパラジウムも使われています。科学の知識とアートのセンスが融合した作品です。

こうした素晴らしい作品を見ていると、海外のサイエンス・アートのレベルの高さを痛感します。
ターナー展:月と木星とペガスス
Joseph Mallord William Turner:Moonlight, a Study at Millbank

先日、遅ればせながらターナー展を見てきました。初期の代表的な作品の1つ、『月光、ミルバンクより眺めた習作』も来ていました。この作品は夜景を描いているため、印刷物やウェブ上の画像では、その微妙な色調を見分けることができません。テムズ川に映る月の光がやはり印象的でした。

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この作品では、月の右上に明るく輝く星が描かれています。満月に対抗してこれだけ明るく見えるのは、木星か土星しかありません。

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そこで、月と木星あるいは土星がこうした位置関係になる日がいつだったのかを、天文ソフトで調べてみました。この作品は1797年に発表されていますが、1796〜1797年で、このような光景が見られたのは、1796年7月23日の午後10時30分頃か、同年8月19日の午後9時頃しかないことがわかりました。ただし、7月23日の月は月齢18日で、右側が欠け始めていますから、8月19日と考えた方がいいでしょう。この日は満月の翌日で、月はほとんど満月と同じ形をしています。右上に輝いていたのは木星でした。

作品をよく見ると、空の上の方には、2等星や3等星くらいの明るさの星がいくつも描かれています。この夜、そのあたりにはペガスス座が姿を見せていました。月と木星の上方の3つの星の位置はペガスス座の2等星エニフ、マルカブ、シェアトの位置に対応している印象があります。これらの星はランダムに描かれている可能性もありますが、風景画家として、ターナーは自分の見た光景を夜空も含めて正確に描いていたのだと、私は思っています。

1796年11月17日には、土星が同じような位置に来るのですが、この時期の東の空はにぎやかで、おうし座のアルデバランやぎょしゃ座のカペラといった1等星、ふたご座のカストルとボルックスなどの目立つ星が輝いています。この夜に、ターナーがこの作品を描いていたとしたら、星空の印象は違っていたのではないでしょうか。

なお、ターナー展の図録に掲載されているこの作品の写真では、不思議なことに木星が消えています。東京都美術館の方に質問したところ、テート美術館から送られてきた画像データに問題があったとのことでした。
百獣の楽園
京都国立博物館で開催されている「百獣の楽園」展を見てきました。架空の幻獣もふくめ、さまざまな動物が描かれた美術品が集められており、充実した内容に感動しました。また、この特別展が京都市動物園との連携によっているところは、意義深い点だと思います。

paradise

思わず立ち止まってずっと眺めてしまったのは、本展のパンフレットや図録の表紙にもその絵柄が使われている「百鳥文様内掛」でした。鮮やかな色づかいや99羽(裏地の鶴と合わせて100羽になるとのことです)の鳥の配置の妙は、素晴らしいとしか言いようがありません。明治初期の友禅染ですが、これだけ洗練されたデザインが可能になったのは、それ以前に、生き物を描く技法の長い伝統があったからでしょう。

大阪・久米田寺所蔵の「星曼荼羅」もきわめて興味深いものでした。平安時代の曼荼羅ですが、ここに描かれた12宮の星座は、西洋の黄道十二宮の星座です。インドの星占いに古くから西洋占星術が影響を与えていた証拠です。西洋の星座はどのようにしてインドに伝えられたのでしょうか。宿題がまた1つ、ふえてしまいました。
素粒子と時間と空間
美術家の笠木絵津子さんに久しぶりに会いました。笠木さんがTRISTAN の写真をもって私のところにやってきたのは20数年も前のことでした。TRISTAN というのは当時筑波の高エネルギー物理学研究所(現在の高エネルギー加速器研究機構)に建設されていた電子と陽電子を衝突させる加速器のことです。笠木さんの写真に私はそれまでにない新しさを感じました。こうしてTRISTAN の写真は『Newton』の24ページの大特集となったのです。

TRISTAN の写真展を開いた後、笠木さんはアートの勉強のためにニューヨークに留学。その後の笠木さんの仕事について、私は雑誌などでその一端を知るだけにとどまっていました。その笠木さんが昨日、突然、私の前に現れたのです。

Etsuko_Kasagi

これまでの仕事をまとめた資料を見て、笠木さんの仕事は、世界で起こる事象に対する認識において、TRISTAN のころと変わらないものを持ち続けていることがわかりました。それは何かというと、そもそも笠木さんが学生時代に学んだ物理学に記述されていたことでもあります。加速された粒子が正面衝突する機会はそれほど多くはありませんが、もしもそれが起こると驚くべきエネルギーが発生します。母親が亡くなったとき、笠木さん自身がそれを体験したのです。そして時間と空間が相対的であることは、笠木さんに新しい芸術表現をもたらしました。国境を超え、過去と現在を交錯させる笠木さんの作品に、他の人にはなしえないリアリティーがあるのは、それが単なるイマジネーションや新しいテクニックの産物ではなく、笠木さん自身の体験が根源的な形で投影されることによっているのでしょう。

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