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『理科年表 平成29年』
Chronological Scientific Tables 2017

『理科年表 平成29年』(丸善)が発売になっています。

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理化学研究所のグループが発見した113番目の元素の名前について、IUPAC(国際純正・応用化学連合)は11月30日に、日本の提案通り「ニホニウム」に決定したと発表しました。『理科年表 平成29年』の「元素の周期表」では、まだ「Uut」(ウンウントリウムと読みます)というIUPAC が決めた一時的な名前になっていますが、来年版ではいよいよ「ニホニウム」「Nh」が表記されることになります。

日本の研究者にとって、『理科年表』に載るようなデータを出す研究は、大きな目標になっています。まして今回は世界中の人が使うことになる元素の名前です。発見の関係者だけでなく、『理科年表』編集部の感慨もひとしおでしょう。

理科年表は毎年刊行されていますが、新しい版を手にすると、最新のデータがどうなっているか気になります。「太陽の相対黒点数」を見ると、2013年が94.0、2014年が113.3、2015年が69.8となっていました。これによって現在の第24太陽周期の極大期は、当初考えられていた2013年でなく、2014年であったことがわかります。

日本の火山活動について知るには、「日本のおもな火山」「日本の活火山」「最近70年間に噴火した日本の火山」「日本の活火山に関する噴火記録」が役に立ちます。

地震について考えるには、「世界のおもな大地震・被害地震年代表」が参考になります。2004年にインドネシア、スマトラ島沖でマグニチュード9.1の巨大地震が発生しました。ここはプレートの境界で、インド・プレートがユーラシア・プレートの下にもぐり込んでいます。「世界のおもな大地震・被害地震年代表」によると、スマトラ沖では、2004年の巨大地震後、2005年、2007年にマグニチュード8以上の地震が発生しています。さらに2009年、そして2010年には2回、マグニチュード7以上の地震が発生しています。震源の位置も載っていますので、地図にプロットしてみると、これらの地震はプレート境界に沿っていることがわかります。2004年の巨大地震に誘発された地震と考えることができます。

日本でも2011年の東北地方太平洋沖地震の後、これに誘発されたと考えられる地震が今も発生しています。今後も注意が必要であることを『理科年表』は教えてくれます。
ガンジス:生と死と宗教
銀座のキヤノンギャラリーで開かれている、野町和嘉さんのガンジスの写真展に行ってきました。写真集『ガンジス』も新潮社から発売されています。

Ganges

いつもながら、野町さんの写真には圧倒されます。特に印象的だったのは、聖地ヴァラナシで死者を荼毘にふし、遺灰をガンジスに流す人々の姿でした。満月のかかる夜、いくつもの炎があがる大火葬場の写真からは、この世のものとは思えない荘厳さが感じられました。

ところで、最近の出版界は元気がなく、『ガンジス』のような写真集が出版されることはまれです。しかし、『ガンジス』のページをめくっているうちに、久しぶりに写真集の良さを実感しました。たしかに出版界は厳しい時代を迎えていますが、写真家が撮影したすぐれた写真が世に出ることがなく、ネット上に出回るアマチュア写真で私たちが満足してしまう状況が続くとすると、いずれ写真家という職業は成り立たなくなるのではないでしょうか。そうなってしまえば、私たちが写真からさまざまなことを学び、感性を刺激される体験も失われてしまいます。
グーテンベルク・エレジー
今年は「電子書籍元年」といわれています。出版界では電子メディアに対する動きが活発になっており、これに関連した書籍も次々と出版されています。私も最近出版された電子書籍やネットに関する本を何冊か読んでみました。

そんな中で、多くの人に読んでほしいと思った本は、岸博幸氏の『ネット帝国主義と日本の敗北』(幻冬舎文庫)です。この本で書かれているアメリカ企業によるプラットフォームの独占や日本におけるジャーナリズムと文化の衰退の危機などは、これまで個別には指摘されてきたことですが、不思議なことに、まとまった形で本になったものは、これまでなかったのです。これらの問題が今までほとんど議論されてこなかったのは、岸氏によれば、「ネット・メディアではネット寄りの報道ばかり」で、「登場する人もネット擁護派の人ばかり」、そして「ネットの自由を拒否する産業や制度は抵抗勢力扱い」といった状況があり、一方、「ジャーナリズムや文化の専門家は、ともするとネットを敵視する主張ばかりを展開」して前向きの議論をしてこなかったからです。ネットは目的ではなく手段なのであるから、ネットを取り込む社会のシステムがどう変わっていくべきかを冷静に考える必要があると、岸氏は主張しています。

ネットにとって都合の良いことばかりが並んだ「ネット擁護派」の本の典型が、佐々木俊尚氏の『電子書籍の衝撃』(ディスカヴァー携書)でしょう。「ネットは目的ではなく手段」という基本認識が欠落し、目前の出来事にとらわれすぎているという印象を受けました。

今、私が読んでいるのは、友人から借りた “The Gutenberg Elegies” という本です。著者はアメリカの批評家スヴェン・バーカーツです。サブタイトルに “The Fate of Reading in an Electronic Age” とあるように、ネットワーク化が進む社会において「読書」や「物を書く」といった、思索と最も緊密に結びついた行為がどのように変容していってしまうのかを考察したものです。

The Gutenberg Elegies

バーカーツは、電子メディアが急速に進歩し、すべてがネットワークで結ばれていくにつれて、世界と私たちとの関係は「広く、しかし浅く」なり、物事について深く考えることが少なくなるのではないか、と指摘しています。画面に表示される文章が、ハイパーテキストによって様々な情報と結びついていく社会は、一見、とても便利に思えますが、紙の本を読む習慣が失われることによって、言語能力の低下、歴史認識の希薄化、アイデンティティーの喪失といった状況がもたらされることを、バーカーツは懸念しているのです。

この本が出版されたのは、1994年のことでした。1994年といえば、インターネットの爆発的な普及のきっかけとなったネットスケープ・ナビゲーターが発売された年です。私たちはまだ電子メールのやりとりをコンピュサーブのようなパソコン通信で行っていました。すなわち、上に述べたバーカーツの懸念は、インターネット時代の前夜に書かれたものなのです。本書でインターネットという言葉が登場するのは、最後のまとめの部分のみです。

「ネット擁護派」の中には、バーカーツの指摘は古い時代へのノスタルジアでしかなく、時代は後戻りすることなく進んでいくと批判する人もいるかもしれません。しかし、私は少し違った考えをもっています。この本が出版されてからというもの、私たちはインターネットや電子メディアの利便性を追求することには熱心であっても、バーカーツの問いを検証し、その答えを出すことはまったくしてこなかったのではないか、ということなのです。そして今年、読書の形態を大きく変えるかもしれない電子書籍の出現を前にして、読書とはいったい何かという根源的な問いに、私たちは直面しているといえるでしょう。

インターネットも電子書籍リーダーも所詮、道具です。黒船のようにやってきた電子書籍それ自体を目的化するのではなく、読書というきわめて知的な行為のネット社会におけるありようをじっくり考えてみるべきです。そうでなければ、グーテンベルク以来の人類の財産は、バーカーツに指摘されるまでもなく、急速に失われていくでしょう。

“The Gutenberg Elegies” は青土社から邦訳が出ていました。『グーテンベルクへの挽歌』(船木裕訳)です。
フランクフルト・ブックフェア
フランクフルトに来たのは、この時期に毎年開かれるブックフェアに参加するためです。フランクフルトのブックフェアは、世界各国の出版社からどのような本が出版されているかを情報収集する場であると同時に、世界がどのように動いているかを知る貴重な機会でもあります。

フランクフルト・ブックフェア会場

今年のフランクフルト・ブックフェアは招待国が中国だったこともあり、いろいろな面で中国のエネルギーが目立っています。ブースを運営している人たちの多くが20代、30代の若い世代です。中国が洗練された出版活動を行っていくには、まだ少し時間がかかりそうですが、世界の舞台に出て行こうとする熱気が感じられました。中国コーナーの入り口近くに立っていた中国国際航空ののぼりのキャッチコピーが、彼らの思いをあらわしているようです。「心有翼 自飛翔:The heart will fly with her wings, Give wings to dreams」。

会場の一番奥にあるホール8には、英語圏の出版社が多くのブースを並べています。当然のことではありますが、学術出版から世界的なベストセラー、子供向けの本まで、英語の出版物は世界の出版物の中で大きなウェイトを占めています。しかし、以前は世界の中心のように感じられたこのホール8も、心なしか、熱気が失われているようにも感じられました。ヨーロッパの出版社のクオリティーの高い展示を見たり、かつての東欧諸国や旧ソ連の共和国、さらにはアラブ諸国の出版社が存在感を示しているのを見たりすると、この印象はよけいに強くなりました。英語という言語によるグローバリゼーションは一定の限界に達し、多言語・多文化の世界へと、大きな流れがはじまっているようです。

私にとってさびしかったのは、ロシアの出版社にまだ勢いが感じられないことです。ずっと以前からつき合いがあり、旧ソ連の時代には、実現が難しかった宇宙関連施設や物理学の研究所の取材で協力してもらったこともあるロシア科学アカデミーの出版局であるナウカ社のブースには人影がありませんでした。

一方で、紙という媒体の出版物を電子媒体と結びつけ、いかにしてビジネスとして成立させるかという模索も、あいかわらず行われています。いろいろなことを考えさせられるブックフェアです。
スティーヴ・ブルームの新しい写真集
ロンドンのテムズ・アンド・ハドソン社から2009年後半の出版カタログが届きました。10月のフランクフルト・ブックフェア向けのカタログです。

テムズ・アンド・ハドソン社は歴史、美術、建築、自然などの分野で、非常にクォリティーの高い本を出版しています。同封されていた手紙によると、今年秋のおすすめの本の中には、最近の気候変動問題も視野に入れた “The Complete Ice Age” や、アポロ月着陸40周年と世界天文年の記念企画 “Secrets of the Universe” などがあります。私がカタログ中で興味をひかれたのは、スティーヴ・ブルームの新しい写真集 “Trading Places” でした。

Trading Places

スティーヴ・ブルームは南アフリカ生まれの写真家で、 “Elephants!” (翻訳は『ゾウ!』ランダムハウス講談社)や “Spirits of the Wild” などの素晴らしい野生動物の写真集や、アフリカに生きる人々をテーマにした “Living Africa” を、テムズ・アンド・ハドソン社から出版しています。

いつものことですが、スティーヴ・ブルームの写真は、私たちが知らなかった世界を教えてくれます。“Trading Places” では、ケニヤのナイロビ郊外で商売を営む人々と彼らの店がテーマになっています。けっして豊かではないけれども、生きるためのエネルギーに満ちた街路の風景は、おそらくブルームがはじめてカメラに収めたものです。その一部は彼のホームページで見ることができますが、フランクフルトでぜひ実物の写真集を手にとってみたいと思います。

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