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梅雨前線と台風と集中豪雨
梅雨の季節には、台風が梅雨前線を刺戟するため、豪雨に注意が必要です。7月5日午後4時30分現在のひまわりの赤外画像は下のようになっています。

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日本列島の南に梅雨前線がのびており、日本列島の本州以南はほぼ雲でおおわれています。フィリピンには台風10号があり、その東の太平洋上には9号(左)と11号(右)が見えています。

台風からの暖かく湿った空気が梅雨前線に流れ込むと大雨になりますので、各地で集中豪雨に対する備えが必要です。下は台風8号が接近した2014年7月6日のひまわりの赤外画像(左)と日降水量(右)です。九州一帯、特に南部に集中的な降雨が発生しています。

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局所的な豪雨は台風から離れた地域でも発生する可能性があります。下は、その翌日(2014年7月7日)の赤外画像(左)と日降水量です。九州、四国、中国地方だけでなく、中部地方にも降雨がみられます。

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雨が今、どのように降ってくるかを見るには、JAXA が提供しているGSMaP が便利です。下の画像は、7月5日午後3時54分に更新された世界の雨分布です。どのくらいの雨が降っているかが色分けされており、青色から黄色、赤色になるにしたがって、降雨量が多くなります。

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マップを拡大して、日本列島と3つの台風を含む領域の雨分布を見たものが下になります。

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GSMaP はGPM 主衛星をはじめ、世界の衛星が観測したデータを使って、世界の雨分布を準リアルタイム(観測から約4時間遅れ)で1時間ごとに提供しています。
箱根山は噴火するか?
箱根山では4月26日から火山性地震が増加しています。また、大涌谷付近の温泉施設で水蒸気が勢いよく噴き出しています。これらのことから、気象庁は箱根山の大涌谷浅部では熱水活動が不安定な状態となっており、今後、大涌谷付近で噴出現象が突発的に発生する可能性があるとしています。

私たちが箱根とよんでいる地域は、今から約16万年前に形成された箱根火山のカルデラの内部にあたり、ここにたくさんの温泉施設や観光施設があります。標高がもっとも高いのは神山で1437m です。このあたりがカルデラ内の中央火口にあたる場所で、大涌谷はそのすぐ北にあります。

箱根山の地下ではかなり浅いところでマグマの活動が活発化しているようです。5日には地震も頻発し、朝に震度1の地震も2回起こりました。箱根山では数年の周期で地震活動が活発になっています。気象庁は噴火警戒レベル1(平常)を継続していますが、地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないようにとしています。箱根町はすでに大涌谷周辺のハイキングコースや遊歩道を閉鎖しています。

昨年の御嶽山のような水蒸気噴火が、箱根山で起こるかどうか、現在の火山学の知識では予測がつきません。噴火が起こるとして、新しい火口が大涌谷に現れるのか、それとも別の場所なのかもわかりません。気象庁の噴火警戒レベルは、これまでの経験にもとづく総合的な判断で決められます。災害を防ぐための警報であり、噴火を科学的に予測するものではないので、地元の方々や観光客は「いつ噴火が起こっても不思議はない」という心がまえで、万が一に備え避難方法を事前に把握しておくことが必要です。箱根町では「火山防災マップ」を作成しているので、読んでおきましょう。

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火山の噴火を予知することは、地震や地殻変動、噴気などのデータからある程度は可能ですが、いつ、どこで、どのくらいの規模の噴火が起こるかを正確に予知することはできません。そのことを念頭に日頃からハザードマップや防災計画を確認し、避難訓練をしておくことが大事です。
ネパールでM7.8 の地震
M7.8 earthquake in Nepal

4月25日、ネパールでM7.8 の地震が発生し、多くの被害が出ています。震源はネパールの首都カトマンズの北西約80km のあたりで、ヒマラヤ山脈の真下になります。下の画像で黄色の星印が震源です。

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このあたりはインド・オーストラリア・プレートがユーラシア・プレートに衝突し、その下に潜りこんでいる場所です。深さは15km と浅い場所でした。ヒマラヤ山脈は、インド・オーストラリア・プレートがユーラシア・プレートに衝突してできました。現在も隆起は続いています。

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ヒマラヤ山脈の一帯は、地震の頻発地帯です。今回の震源地のあたりでは、インド・オーストラリア・プレートは北東方向に毎年45mm ほどのスピードで、ユーラシア・プレートにもぐりこんでいます。下の図で、黒い線がプレートの境界です。1900年以降に起こった地震の震源が空色で示されています。今回の震源は赤い色で示されています。

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今回の地震では、震源から220km ほど東にあるエベレストでも岩石の崩落や雪崩などが発生し、標高約5400m のベースキャンプで被害が発生しました。

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ベースキャンプはエベレスト登頂の文字通りベースキャンプとなりますが、同時に人気のあるトレッキングコースの目的地ともなっています。ベースキャンプの上のキャンプ1(標高約6100m)やキャンプ2(標高約6600m)に取り残された人たちもいるようです。
御嶽山噴火:警戒態勢に問題はなかったか?
9月27日に起きた長野県御嶽山の噴火では、登山者に多くの犠牲者がでました。御嶽山は山頂がカルデラになっており、その周囲のピークのうち、一番高いのが剣ヶ峰で、標高は3067メートルです。御嶽山では1979年に、剣ヶ峰の南西側に火口ができて噴火しました。また1991年、2007年にも1979年の火口で小規模な噴火が起きています。いずれも水蒸気爆発でした。今回もやはり南西側できた火口で噴火(水蒸気爆発)が起こりました。

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今年6月3日に開催された第129回火山噴火予知連絡会定例会における全国の火山活動の評価では、御嶽山は「噴火警戒レベル1、平常」と評価され、「火山活動に特段の変化はなく、静穏に経過しており、噴火の兆候は認められません」とされています。

ところが、8月末にわずかな火山性地震が観測され、9月10日および11日には頻発しました。そして9月27日を迎えることになるわけです。

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9月27日は午前11時41分に火山性微動が発生し、その11分後の11時52分に噴火が発生しました。

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したがって頂上南西部にいた登山者の多くの方にとって、火山性微動に気付いても、安全な場所に避難する時間的余裕はほとんどなかったといっていいでしょう。9月10日、11日の地震頻発後、頂上付近への立ち入り規制が行われていなかったのが残念です。というのは、下の図の通り、御嶽山の噴火警戒レベルが2に引き上げられれば、今回犠牲者が出た1979年火口周辺(火口からおおむね1キロメートル)は規制対象となるからです(図の緑色の部分)。

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結果論ですが、噴火警戒レベルが引き上げられなくても、過去の水蒸気爆発の経験をふまえ、9月10日、11日の火山性地震頻発発生後に、地震が完全に静穏になるまで現地で適切な対策がなされていれば(地震頻発の情報は気象庁から伝えられていたのですから)、今回の悲劇は回避できたはずでした。

今回の噴火で、火山噴火にともなう警戒態勢がどうあるべきかが、改めて問われることになりました。一方、今回の噴火を理由に、川内原発の再稼働に反対するといった、他人の悲劇を利用する政治的なキャンペーンもはじまっています。こうした動きに惑わされず、火山噴火を科学的に分析し、それを安全対策に生かす研究が求められています。
ロシアの天気図
Weather map of Russia

台風8号の接近で、日本各地に強風や豪雨がもたらされていますが、モスクワはさわやかな天気です。

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下は今日の朝刊に載っていた天気図です。とても興味深かったので、写真にとりました。

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北極圏をまわる大気の流れ、寒冷前線と温暖前線の位置と動きなど、まるで教科書に出てくる図のようです。
スオミNPP 衛星による新しい地球全球画像
Arctic view of the Earth

NASA の地球観測衛星「スオミNPP」の観測画像から作成された、新しい地球全球画像が公開されています。

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青白く見えているのは北極海の氷で、その周囲に雲が渦巻いています。ヨーロッパが緑におおわれているのと対照的に、ユーラシア大陸とアフリカ大陸の乾燥地帯は褐色で、雲もほとんどありません。地球上の気候風土の多様性が1枚の画像にドラマチックにこめられています。

スオミNPP の地球全球画像は、これまでも以下のようなものが発表されています。どちらも赤道方向から地球を見たものです。

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スオミNPP は2011年10月28日に、デルタII ロケットで打ち上げられました。高度824キロメートの太陽同期軌道を1日に14周しながら、天気予報の精度向上や、長期の気候変動研究に役立つデータを取得しています。

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上に紹介した画像は、スオミNPP に搭載されている5種類のセンサーのうちの1つで、可視・近赤外の領域で観測を行うVIIRS(Visible Infrared Imaging Radiometer Suite)によって得られました。
未来の超大陸「アメイシア」
イェール大学のロス・ミッチェルらは『ネイチャー』誌の2月9日号に、超大陸サイクルに関する論文を発表し、今から5000万年から2億年後には、超大陸「アメイシア」が北極を中心に出現すると予測しています。下の画像がアメイシアの予想図です。

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アメイシアとはAmerica とEurasia が一緒になることからつくられた名前です。この図をみると、北極海がなくなり、北アメリカ大陸とユーラシア大陸が衝突し、さらに、南アメリカ大陸やオーストラリアなども接近してきます。

現在の大陸配置は、今から約3億年前に誕生した超大陸パンゲアが分散する過程と考えられます。パンゲアの分裂がはじまったのは今から約1億5000万年前、大西洋が誕生したのは1億年ほど前のことです。パンゲアの前には、10億年ほど前に超大陸ロディニアが、さらにその前には、約18億年前に超大陸ヌーナが存在しました。古くはウィルソン・サイクルとよばれていましたが、地球上の大陸は、このように超大陸として集合しては分散するということをくり返してきたと考えられています。

ロディニアやヌーナが地球上のどこに存在したのかは、よくわかっていません。現在の大陸塊がこれまでどのように移動したのかも、相対的位置関係はある程度わかっているものの、時代をさかのぼるにつれて、その位置は不正確になります。ミッチェルらは、世界各地の古い岩石に保存された磁場の向きをベースにして、今から8億年前以降の大陸の配置を再構成してみました。すると、大陸の集合と離散のプロセスは、これまでの超大陸サイクルのモデルとはことなるものになりました。

超大陸サイクルのモデルには2種類がありました。「内転モデル」とよばれるでは、超大陸が分裂して次の超大陸ができる場合、その場所は、元の超大陸とほぼ同じ場所になります。つまり、この場合、ヌーナやロディニアはパンゲアと同じ場所に存在したことになります。一方、「外転モデル」とよばれているものでは、超大陸はその前の超大陸の反対側にできます。この場合、ヌーナはパンゲアと同じような場所に、ロディニアはこれらとは地球の反対側に存在したことになります。

ミッチェルらのモデルでは、超大陸は元の超大陸と角度で90度ほど離れた場所につくられます。超大陸はマントルが地球内部に下降する場所に大陸が集まって形成されますが、超大陸がつくられるとマントル対流に影響を与え、その下にマントルの上昇流が形成されます。そして、これを取り囲むように、角度で90度ほど離れたあたりに新しい沈み込み帯が現れるのです。ミッチェルらの計算では、パンゲアの中心とロディニアの中心は87度、ロディニアの中心とヌーナの中心は88度離れているという結果がでました。

『ネイチャー』の論文のSupplementary Information には、ミッチェルらが作成した過去5億年間の大陸移動のアニメーションが含まれています。これを見ると、緯度0度、東経100度あたり(ロディニアの中心があったところ)を中心にして大陸が分裂して移動していき、3億年ほど前に緯度0度、東経10度あたり(現在のアフリカ)を中心に大陸が集まってパンゲアが形成され、それが分裂して現在にいたる様子がよくわかります。

ミッチェルらのモデルでは、パンゲアの次の超大陸アメイシアの中心は、アフリカから角度で90度離れた大円上に出現することになります。その候補の1つが北極のあたりということになり、上に示したような大陸の配置が考えられるわけです。
首都直下型地震:発生確率は30年以内70%のまま
東京大学地震研究所が発表した「マグニチュード7クラスの首都直下型地震が発生する確率は4年以内で70%」の試算をどう解釈すべきかを先日書きました。

その後、京都大学防災研究所は同じ方法で計算し、「5年以内に28%」という数値を得ています。発生確率が低くなったのは、東大地震研が3月11日以降半年間のデータを用いたのに対して、京大防災研では3月11日から今年1月21日まで、10か月あまりのデータを用いているためです。マグニチュード3以上の地震は減ってきているため、このような結果が出ました。

一方、政府の地震調査委員会は9日に、東大地震研の試算が大きな反響を呼んだことを受けて首都直下型地震の発生確率について議論し、発生確率を従来のまま「30年以内70%」とすることにしました。短期的発生確率には大きな幅が生じるためとのことです。先日も書いたように、グーテンベルク・リヒター則は地震発生予測に用いるものではありません。東北地方太平洋沖地震発生後に首都直下型地震の発生確率が高まっているのかどうかは、もう少し慎重に検討すべきでしょう。

数字に踊らされず、しかしきちんと地震対策を進めていくことが大事です。
ユーラシア大陸の寒波と北極振動
今年の冬は例年よりも寒いようですが、寒いのは日本だけではありません。気象庁は2月6日に「ユーラシア大陸の顕著な寒波について」という報道発表をしています。それによると、今年の1月半ば以降、ユーラシア大陸には中緯度帯を中心に強い寒気が流入し、気温が平年より低い状態が続いているとのことです。カザフスタンやモンゴル、ヨーロッパ東部では異常低温が記録されています。

下の図は2012年1月15日から2月4日までの週ごとの気温平年差を示したもの(気象庁作成)で、ユーラシア大陸に寒気が広がっていく様子が見えています。

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気象庁によると、1 月半ばに、偏西風の蛇行にともなってシベリア西部で高気圧の勢いが強まり、シベリア東部の強い寒気がモンゴルからカザフスタンに流入しました。その後、高気圧は勢力をさらに強めてヨーロッパ北部にまで広がり、それに対応して、カザフスタン付近の寒気がヨーロッパ西部まで流入したとのことです。

こうした寒気の到来は「北極振動」と関係しているかもしれません。北極振動というのは、北極域の気圧とその周辺の中緯度帯の気圧がシーソーのように高低をくり返す現象です。北極域の気圧が高く、中緯度帯の気圧が低い場合を「負の北極振動」とよんでいます。このときには寒気が中緯度帯に流れこみやすくなります。一方、北極域の気圧が低く、中緯度帯で高い場合を「正の北極振動」とよびます。このときには寒気の南下が弱くなるので、中緯度帯では暖冬になります。

負の北極振動は、最近では2009年12月から2010年2月にかけて顕著な寒波をもたらしました。このときには北極域で高気圧が発達し、ユーラシア大陸と北アメリカ大陸中緯度帯に強い寒気が南下しました。下の図はそのときの大気の流れを北極上空から見た概念図(気象庁作成)です。

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NOAA のサイトで北極振動の指標である「AO インデックス」を見ると、2000年以降の様子は以下のようになっていました。グラフの上向きが「正の北極振動」、下向きが「負の北極振動」を示しています。上に述べた2009年12月から2010年2月にかけての時期は、「負」をあらわす青い線が下に伸びているのがわかります。

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このグラフで見ると、昨年末時点でAO インデックスは正になっています。ところが、その後の速報値によると、今年に入って、1月中旬ごろからAO インデックスは負に転じているのです。今回のユーラシア大陸の寒波には、ラニーニャ現象なども関係しているとみられ、どこまで負の北極振動が関係しているかは、まだはっきりしていません。今後の気象庁の発表を待ちたいと思います。
首都直下型地震:「4年以内の発生確率70%」の意味
Metropolitan epicenter:70% chance of a quake within 4 years?

「首都直下型などマグニチュード7クラスの地震が南関東で4年以内に発生する確率は70%」という報道が、ここ数日飛び交っています。東京大学地震研究所が発表したものですが、いかなるデータにもとづいているのか、どのような手法で導きだされた予測なのか、報道ではわかりません。それらは同研究所ウェブサイトの「2011年東北地方太平洋沖地震による首都圏の地震活動の変化について」に示されています。しかし、一般の方には多少理解が難しいところもあります。私自身もよくわからない点や確認したい点があったので、地震研究所に電話し、酒井慎一准教授にお話をうかがいました。以下は、そのときの内容も含めて、この試算の意味を検討したものです。

この試算ではまず、首都圏でのマグニチュード3以上の地震の数を、昨年3月11日の東北地方太平洋沖地震発生前後の半年間でくらべると、それまで47個であったものが、3月11日以降は343個に増加していることが示されています。そこで、3月11日以降の地震を「グーテンベルク・リヒター則」にあてはめてみました。グーテンベルク・リヒター則というのは、地震など自然界で発生する複雑な現象を統計処理する手法の1つです。地震の発生データに用いると、大きな地震はめったに起こらないが、小さな地震はたくさん起こるという経験則が得られます。このグーテンベルク・リヒター則で計算したところ、首都圏でマグニチュード7クラスの地震が発生する確率は「今後30年間で98%」、別な表現をすると、発生確率が70%になるのは「この先4年」という結果が得られました。

地震研究所の試算が述べているのはそれだけであり、それ以上でもそれ以下でもない点に注意しなければなりません。この点は酒井先生も強調されていました。つまり、「3月11日以降の首都圏の地震のデータをグーテンベルク・リヒター則にあてはめて、マグニチュード7クラスの地震の発生確率が70%になるポイントを求めたら今後4年であった」ということであり、本当に地震が起こるかどうかとは別の問題なのです。

グーテンベルク・リヒター則とは過去に起ったデータから経験則を導くための手法であり、地震の発生予測に用いるものではありません。さらに、ウェブ上でも述べられているように、「大きいマグニチュードについては、グーテンベルク・リヒター則から外れることもよくある」ので、この試算結果を、現実に起るかもしれないマグニチュード7クラスの地震と重ね合わせて考えることは危険です。ところが報道では、こうした点は飛びこされ、「4年以内の発生確率70%」という部分のみが独り歩きしてしまいました。

さらに今回、混乱をまねいているのは、これまで国が、南関東でのマグニチュード7クラスの地震の発生確率を「今後30年で70%」としてきた数値との関係です。地震研究所の試算は、東北地方太平洋沖地震に誘発された小さな地震から発生確率を求めたもので、「首都圏の地震活動が高まらなかったとしてもいずれ起きるはずの首都直下地震について試算することは、本研究ではできません」としています。つまり、この2つは扱っているデータも、計算の手法もことなり、お互いに関係がないのです。ところが、これまでは「今後30年」であったものが、東北地方太平洋沖地震の発生によって首都圏の地震活動が活発化し、「今後4年」にまで発生確率が高まったかのように受け取られる報道となってしまいました。これは間違いであり、酒井先生も本意ではないでしょう。もっとも、ウェブに掲載された図版では、「政府試算:今後30年で70%」から「グーテンベルク・リヒター則に基づく試算:30年で98%」に向けて太い矢印が引かれていますから、このように解釈されてしまうのも無理はないといえます。

東北地方太平洋沖地震によって、首都圏直下型地震の発生確率が高まったかどうかはきわめて重要な研究課題であるといえるでしょう。そのためには、首都圏の地下でどんなことが起こっているかを調べなくてはなりません。東北地方太平洋沖地震で東北地方は大きく動き、関東圏の陸塊との間に新たなストレスが生じたと考えられます。3月11日以降頻発している地震は、このストレスが徐々に緩和され、新たな平衡状態に達するまでの過程として発生しているものかもしれません。とすれば、今後、こうした地震の発生回数は減少していくでしょう。あるいは逆に、地震によって発生したストレスが直下型地震を発生させるメカニズムを刺激し、その前兆として小さな地震を多数誘発しているのかもしれません。となると、まさに直下型地震は切迫した状況と考えなくてはいけません。

こうしたことが解明されていけば、発生確率が高まっているかどうかを検証し、より精度の高い発生予測が可能になるでしょう。くりかえしになりますが、今回の地震研究所の試算は、こうした研究とは別のところで、3月11日から半年間のデータで経験則を導いたものです。

今回の試算結果(実際は昨年9月に発表されたもの)は、メディア上で思わぬ広がりでみせました。社会的関心が非常に高い問題であるだけに、説明には慎重な配慮が必要です。また、科学的にコアの部分は査読つきの学術誌に投稿する必要もあったのではないでしょうか。

大地震はいつ発生するかわからず、日ごろから対策を立てておくことが重要です。突然の電話にもかかわらず、私の質問にいろいろ答えていただいた酒井先生に感謝します。
スノーボールアース仮説に疑問
かつて地球は全球凍結したとするスノーボールアースという仮説があります。地球が氷におおわれたのは25〜27億年ほど前および約7億年前とされ、とくに後者のスノーボールアースは、それ以降の生物進化とかかわっていると考えられています。

スノーボールアース仮説の1つの課題は、地球が全球凍結の状態からどうやって回復したかを説明することです。火山によって大気中に放出された二酸化炭素の増加がその原因だったとするのが有力な説ですが、『nature』誌の10月6日号に、これに疑問を投げかける論文が載っていました。

約7億年前のスノーボールアース(スターチアン氷期およびマリノアン氷期)が終わったのは、6億3500万年前のことです。これまでの研究では、この時期の大気中の二酸化炭素濃度は現在の50〜225倍とされてきました。パリ大学地球物理学研究所のSansjofre らは、当時の氷河堆積物の表面をおおっていたブラジルの炭酸塩層の炭素同位体比から、二酸化炭素濃度の再見積もりを行ったところ、現在と同じ程度に低かったという結果が出たとのことです。これでは、地球はスノーボールアースから脱出することはできません。

著者らは原生代後期末期の環境は、地球が完全に凍結していたとするハードスノーボールアースとは一致しないと述べています。

スノーボールアースはきわめて魅力的な説です。すでに確立された説として取り上げられることもありますが、まだ仮説の域にとどまっています。今後こうした検証をへて、過去の地球に起こった大事件の描像が明らかになることが期待されます。

今後起こる可能性のある地震
東北地方太平洋沖地震の余震が相変わらず続いています。15日にも茨城県沖でM 6.2 の地震が起こりました。東北地方太平洋沖地震がきっかけとなって、今後、日本のどこで、どのくらいの大きさの地震が起こるのかは、とても気になるところです。

福島県沖や千葉県沖、茨城県沖で起こっている地震は、明らかに東北地方太平洋沖地震の余震と考えられるので、これからも引き続き発生すると考えられます。新潟や長野などの内陸部で発生している地震は、東北地方太平洋沖地震にともなう、いわば日本列島のひずみの再配分過程と考えられるので、これもしばらくは続くでしょう。また、東北地方太平洋沖地震震源域の北の北海道沖も、東北沖と同じように、これまでくりかえし地震が起こっている領域です。東北地方太平洋沖地震に誘発された地震が、この領域で発生する可能性があります。

首都圏での直下型地震については、以前にも書いたように、今後どうなるかは予想がつかないところです。というのも、東北地方太平洋沖のプレート境界は、ユーラシア・プレートの下に北アメリカ・プレートがもぐり込む典型的な海溝型ですが、千葉県から東海地方にかけての沖合では、ユーラシア・プレートの下に南からフィリピン海プレートがもぐり込み、さらにその下に太平洋プレートがもぐり込むという三重構造になっているからです。プレートの構造が複雑なため、首都圏直下での地震発生のメカニズムはまだよくわかっていません。首都圏に多数の「活断層」があるのは事実ですが、それがいつ動くかはわかりません。いたずらに心配するのではなく、いつ地震が起こっても大丈夫なように準備をしておくことが大事です。

東海地震・東南海地震・南海地震についてはどうでしょうか。東海から西日本沖のプレート境界は、フィリピン海プレートがユーラシア・プレートの下のもぐり込む海溝型です。東北地方太平洋沖地震に誘発されることはあまり考えられないとは思いますが、いつか必ず地震が発生するでしょう。その場合には、今回の東北地方太平洋沖地震と同じように、広域の岩盤が動く巨大地震となる可能性があります。また、東海地震・東南海地震・南海地震の3つの地震が、連動して発生する可能性があることが、過去の記録からも明らかになっています。1944年に東南海地震が発生してから2年後の1946年には、隣の想定震源域で南海地震が発生しています。

こうした、地震の連動は、最近のスマトラ沖でも起こっています。2004年12月26日にスマトラ島の西方沖で発生したM 9.1 の巨大地震では、津波によって、インドネシア、タイ、インド、スリランカ、モルジブなど周辺の国々に甚大な被害がもたらされました。スマトラ沖のスンダ海溝では、インド・オーストラリア・プレートがユーラシア・プレートの下に、年間約6cm のスピードで北東方向に沈みこんでいます。このときには、長さ1200km、幅100km 以上にわたる範囲の岩盤が動いたとみられています。東北地方太平洋沖地震と同じように、きわめて広い領域のエネルギーが一挙に解放されたわけです。

M 9 あるいはそれ以上の規模の巨大地震というのは、ほとんど起こることはありません。地震はプレート内の岩盤の破壊現象です。岩盤内にたくわえられたエネルギー(ひずみ)が破壊によって解放されることで地震がおこるわけです。通常はM 9 あるいはそれ以上の規模のエネルギーがたくわえられる前に岩盤は破壊され、地震がおこってしまいます。M 9 クラスの地震は、地震の発生規模としては限界に近いものだということができます。

2005年3月28日には、2004年12月の震源域のすぐ南で、M 8.5 の地震が発生しました。下の図をみると明らかなように、この2つの地震は、隣り合う2つの想定震源域で発生したものでした。

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少しわかりづらいですが、図の左上に、2004年の地震の震源が赤い星印で示されています。この地震で、紫色の斜線の、主に震源から北西方向の領域のエネルギーが解放されました。2005年の地震の震源は、2004年の震源の少し右下に黄色い星印で示されています。この地震では、赤い斜線の領域のエネルギーが解放されました。2005年の地震は2004年の地震がトリガーになったと考えられます。

そうすると、これら2つの想定線源域の南側、すなわちオレンジ色の領域での地震発生が気になります。私は以前、この「空白域」で近い将来M 8 以上の地震が発生する可能性があるという記事を書いたことがあります。また、イギリスの研究グループが同じ趣旨の論文を『ネイチャー』誌に発表しました。そして実際、2007年9月12日に、赤字で「2007」と示した場所で、M 8.5 の地震が発生しました。2004年の地震がトリガーになって、M 8 クラスの地震が南の方向へ、連動して起こったのです。

またこの図からは、2005年の地震発生域でそれ以前に起った大地震は1864年、2007年の地震発生域でそれ以前に起った大地震は1833年であることがわかります。過去の地震発生も連動していた可能性があります。

このように、東海地震・東南海地震・南海地震でも隣り合う想定震源域が連動し、短い期間内に連続して大地震が発生することは十分に考えられます。
電磁波で地震予知は可能か?
防災の日の今日は、首都圏直下型地震に関する報道が、いくつものメディアで見られました。首都圏直下型に限らず、地震はいつ、どこで起るかわかりません。しかも、東北地方太平洋沖地震から半年たちましたが、現在はまだ、かなりの規模の余震が起る可能性のある時期です。地震に対する十分なそなえが大切です。

3月11日の東北地方太平洋沖地震では、それに先立つ3月9日に発生したM7.3の地震、および3月10日の3回の地震が、3月11日の本震となんらかの関係があったと考えられます。しかし、これらの地震が起った時点で、数日後にM9.0の巨大地震が起ると予測するのは困難といわざるをえません。なんらかの方法で予知に役立つ前兆現象をとらえることはできないのでしょうか。

これに関して最近話題になっているのは、地震電磁気現象です。地震とは地殻内で起る破壊現象です。破壊にいたるまでに、岩盤内にはひずみが蓄積し、圧電効果によって電流が流れます。この電流で電磁波が発生します。最終的な破壊が起る直前には岩盤内で微小な破壊が進みますが、この際にも摩擦などによって電流が流れるので、電磁波が発生すると考えられています。こうした地震に先だって発生する電磁波によって電離層のじょう乱が起こり、電子密度が変化したり、波長の長い電波の伝搬に影響がもたらされる可能性があります。この現象をとらえることができれば、地震予知ができるかもしれないと考えられ、研究が進められています。

北海道大学理学研究院の日置幸介教授は、GPS 衛星からの電波を利用して電離層の電子密度を調べたところ、3月11日の地震発生の40分ほど前から震源地上空の電子密度が顕著に上昇していたと発表しました。電子密度の上昇は2004年のスマトラ沖地震(M9.1)や2010年のチリ地震(M8.8)でも観測されていたとのことです。

震源地上空の電子密度が上昇するメカニズムはよくわかっていません。とくに今回のように震源が海底下の岩盤にある場合、そこで発生した電磁波がどのようにして海水を通過し、高度70km 以上の電離層の、しかも震源の真上の領域にのみ影響を与えるのかは、まったくわかっていないといってよいでしょう。電離層での電子密度の上昇は磁気嵐のような他の自然現象によっても起ります。今回観測された電子密度の上昇が地震によるものと結論づけるには、まだ検証が必要と思われます。

電気通信大学の早川正士特任教授は、VLF/LF 観測ネットワークをつくり、電波の伝搬異常を観測しています。VLF(超長波)は波長10~100km の電磁波、LF(長波)は波長1~10km の電磁波です。新聞報道によると、3月5~6日に夜間の電波の平均振幅が極端に小さくなったとのことです。これは、早川先生のグループが以前から地震の前兆として注目していた現象です。データが蓄積されていけば、電離層のじょう乱と地震との関係がもっと明らかになるでしょう。私は昨年、早川先生からいろいろお話をうかがう機会がありました。早川先生は地震予知だけでなく、地表と電離層間で起るシューマン共振という現象を地球温暖化の観測に利用する研究も行っています。

地震電磁気現象の研究が行われるようになったのはここ10年ほどで、その歴史はまだ浅いといわざるを得ません。これを地震予知に用いることができるかどうかを明らかにするには、まだ多くの解明しなければならないことが残っています。しかし、すでに研究は国際的な広がりをもっており、フランスでは地震によって発生する電磁波を観測する人工衛星DEMETER を2004年に打ち上げています。

千葉大学大学院の服部克己教授も、地殻変動に関連する電磁気現象の観測を行っています。服部先生からお話をうかがったとき、地震電磁気現象の研究でネックとなっている点としてあげていたのは、この分野が電磁気学と地震学の完全な境界領域であるため、どちらの学会に論文を発表しても、その論文がきびしく評価される機会が少ないということでした。一部にはまだ誤解もあるようですが、地震電磁波の研究は科学的に厳密な手法で研究が行われています。今後、学問的に活発な議論が起こることを期待します。
東北地方太平洋沖地震:今後発生する可能性のある地震
速報値でマグニチュード8.9としたUSGS(アメリカ地質調査所)も、地震の規模を気象庁と同じマグニチュード9.0に改訂しました。今後もしばらくの間、規模の大きな余震が続く可能性があります。

今後、余震以外に、どこでどのような地震が発生する可能性があるのか、少し考えてみましょう。

3月12日午前3時59分、長野県北部でマグニチュード6.7の地震が発生しました。気象庁の12日午前8時0分の発表によると、ほぼ同じ場所で午前4時31分にマグニチュード5.8、5時42分にマグニチュード5.3の地震が起こるなど余震が21回発生したとのことです。

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長野県北部での地震は、東北地方太平洋沖地震とはことなるメカニズムで発生したものです。この地域は、いわば東日本の地塊と西日本の地塊がせめぎ合っているところで、北東から南東の方向に何本もの断層が走っています。2006年の中越地震もそれらの断層の1つで起こりました。長野県北部の地震はおそらく、東日本の地塊にかかっていた応力が東北地方太平洋沖地震によって変化したために発生したのでしょう。東北地方太平洋沖地震と直接関係ないものの、それがトリガーになって誘発されたものです。

12日午前4時46分には秋田県沖でも地震が発生しているほか、佐渡島を震源とする地震も起こっているようです。これらも、東北地方太平洋沖地震に誘発されたものと考えられます。今後も、東日本ではこうした地震が発生する可能性があります。

今回の地震では、東北地方から茨城県沖におよぶプレートで大規模な破壊が起こりました。したがって、そのとなりの領域で地震が誘発されることが心配です。同じような現象はスマトラでの一連の地震発生で起こっています。北海道沖での地震発生に注意すべきと思います。

一方、12日朝には千葉県沖でも地震が発生しました。東北地方太平洋沖のプレート境界は、ユーラシア・プレートの下に北アメリカ・プレートがもぐり込む典型的な海溝型ですが、千葉県沖までくると、プレートの構造が少し複雑になります。千葉県から東海地方にかけての沖合では、ユーラシア・プレートの下に南からフィリピン海プレートがもぐり込み、さらにその下に太平洋プレートがもぐり込むという三重構造になっているのです。

12日の千葉県沖の地震は、こうしたプレート構造の中で起こったものですが、実は、このあたりまでくると、むしろ首都圏直下型の地震との関係が懸念されます。地震発生のメカニズムが複雑で、まだよくわかっていないことが多くあります。首都圏や東海地方で誘発される地震にも警戒が必要です。

今回のような大災害がおこると、東北地方太平洋沖地震をきっかけに世界の(あるいは日本の)地震活動が活発になるとか、さらに大地震が起こるといった無責任かつ科学的でない情報が流れる可能性があります。さまざまな可能性を考慮して備えを整えると同時に、ものごとを冷静に判断することが必要とされています。
東北地方太平洋沖地震:前兆現象はあったか?
今回の超巨大地震は、科学者が想定していた以上のスケールでの地震発生メカニズムが太平洋沖に存在することを示しました。東日本太平洋沖でのより大きなパースペクティブでの研究は、同じように広域でのプレートの破壊が想定されている東海地震・東南海地震・南海地震の研究にも役立つと思われます。

ところで、こうした超巨大地震は突然に起るものなのでしょうか? それともなんらかの前兆現象をともなうものなのでしょうか?

USGS(アメリカ地質調査所)は3月9日午前11時45分に発生したマグニチュード7.2の地震、およびその後の3回の地震、すなわち3月10日午前3時16分(M6.1)、午前3時44分(M6.0)、午前6時22分(M6.1)の地震(これらのデータは気象庁発表と多少ことなっているものがあります)が、3月11日の地震発生の前兆だったという見解を発表しています。

USGS のデータベースには、同時期に起ったさらに17回のマグニチュード5クラスの地震が載っています。これらの地震はすべて3月11日の震源の近く、東経142〜144度、北緯38〜39度の狭い範囲に集中しています。そこで、簡単な分布図をつくってみました。横軸が経度、縦軸が緯度、赤い丸が3月11日の震源、緑色の丸は3月9〜10日に起ったマグニチュード6〜7の大きな4つの地震、青の小さな四角はマグニチュード5クラスの地震です。

USGS

いかがでしょう。データの科学的解釈は研究をまつしかありませんが、すべての地震が3月11日の震源のすぐ近く、しかも東よりに集中していることがわかります。また、緑色の4つの地震の震源と3月11日の震源が直線状に並んでいるようにも見えます。3月11日の地震発生に先だって、震源のすぐ東側の領域で破壊がはじまったのでしょうか。3月11日の震源の深さは24.4km でしたが、3月9〜10日の震源の深さは概して浅いものが多くなっています。

もしもこのような巨大地震の発生になんらかの前兆現象がともなうのであれば、防災面ではきわめて大きな意味があります。前兆現象の解析が進むことを期待します。
東北地方太平洋沖地震:超巨大地震はなぜ発生したか
気象庁はこれまでマグニチュード8.8としてきた地震の規模を、再解析の結果、マグニチュード9.0としました。1900年以来、世界で観測された中で4番目の超巨大地震です。気象庁によると、地震は岩手県沖から茨城沖まで長さ500km、幅200km におよぶ領域で起こり、3つの巨大な破壊が連続して発生したとしています。

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はげしいゆれは5分間以上もつづきました。14時46分の本震後に起こった15時08分の岩手県沖(M7.5)、15時15分の茨城県沖(M7.3)、そして15時25分の三陸沖(M7.4)の地震も、余震というよりは一連の巨大破壊過程の一部といえるでしょう。

北海道から千葉県沖にかけての太平洋沖では、ユーラシアプレートの下に太平洋プレートが1年間に約8cmのスピードでもぐり込んでいて、同じ場所でくり返し地震が起こっています。この、同じ場所でくり返し地震がおこる仕組みは「アスペリティ」によって説明されます。アスペリティとはプレート同士の摩擦が大きく、すべりにくくなっている場所のことです。アスペリティにはプレートの移動にともなってひずみのエネルギーが蓄積されるため、アスペリティが破壊されると、大きなずれが生じます。アスペリティの場所は変わらないこと、断層の破壊がはじまるのはアスペリティから離れた場所であることなどが明らかになっています。

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東北地方沖のアスペリティについては、これまで多くの研究があります。下の図は、東京大学地震研究所の山中らによって作成された東北地方沖のアスペリティ・マップです。

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これらのアスペリティをよく理解することによって、今後の地震活動を予測し、災害にそなえることが可能になると考えられてきました。しかしながら、今回の超巨大地震のメカニズムを、これまでのアスペリティ・モデルで説明することは不可能です。となり合うアスペリティが連動して破壊すると、大きな地震になることはわかっていましたが、長さ500km にわたって一気に破壊が起こるメカニズムは考えられていませんでした。

個々のアスペリティが破壊をくり返す背後で、巨大なエネルギーが蓄積されるよりスケールの大きなメカニズムが働いていたわけです。これだけの規模の地震が発生するメカニズムを理解するには、東日本の太平洋沖で起こっている地殻のひずみをより巨視的に、かつより精密に解析することが必要です。

紀元869年におきた貞観地震では、東北地方太平洋沖地震と同じように、宮城県沖から福島県沖にかけての広域で破壊が起こったのではないかと考えられています。私たちが体験したのは、まさに1000年に1度の超巨大地震だったのかもしれません。
東北地方太平洋沖地震:史上最大規模の巨大地震発生
14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震は、気象庁発表では、震源が宮城県牡鹿半島の東南東約130km、震源の深さは約24km、マグニチュードは国内の観測史上最大のマグニチュード8.4です。

地震が発生してからすぐに、USGS(アメリカ地質調査所) のウェブサイトでも、さっそく速報が発表されました。USGS ではマグニチュードを8.9としています。

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USGS のデータをもとに、1900年以降に世界で発生したM8.6以上の大地震をマグニチュードの大きい順に並べると、以下のようになります。

1960年5月22日 M9.5 チリ
1964年3月28日 M9.2 アラスカ
2004年12月26日 M9.1 スマトラ
1952年11月4日 M9.0 カムチャツカ
1906年1月31日 M8.8 コロンビア、エクアドル
2010年2月27日 M8.8 チリ
1965年2月4日 M8.7 アラスカ
1950年8月15日 M8.6 チベット
1957年3月9日 M8.6 アラスカ
2005年3月28日 M8.6 スマトラ

したがって、今回の東北地方太平洋沖地震は1900年以降の観測史上第5位の巨大地震であったことになります。
地球中心部の超高圧・超高温状態を実現
海洋研究開発機構(JAMSTEC)、東京工業大学、高輝度光科学研究センター(スプリング8)の研究チームは、レーザー加熱ダイヤモンドアンビル装置を用いて、地球中心に相当する364万気圧、5500℃を実験室内で実現することに成功しました。地球内部を調べるために、これは画期的な成果といえます。

人間が手に入れている地球内部の物質はせいぜい地下200kmくらいまでの岩石です。地球内部の物質がどのような組成をもち、どのような構造になっているかを知るには、超高圧実験がどうしても必要です。2つのダイヤモンドの間に試料を挟んで加圧し、地球内部の物質を実験室内で人工的につくる実験には長い歴史がありますが、深さ2900km以上の金属コアの部分に相当する超高圧かつ超高温を達成するのは困難でした。

レーザー加熱ダイヤモンドアンビル装置は、ダイヤモンドを通してレーザー光を試料に照射し、超高圧・超高温を実現することができます。今回の成功で、地球中心での条件が達成されたわけで、地球内部のあらゆる場所の物質をつくりだすことができるようになりました。ただし、得られる試料は微量なので、分析にはスプリング8 が必要です。

地球深部やコアの物質の状態をくわしく調べる実験は、地球の起源を研究する上で非常に重要な意味をもっています。さらに他の惑星の内部を知る上でも、貴重な情報を提供することになるでしょう。
チリ地震津波ふたたび
27日午後3時34分ごろ、チリ中部沿岸でマグニチュード8.8(USGSによる)の大地震が発生しました。震源近くでは大きな被害が出ている模様です。地震が発生した場所は、ナスカ・プレートが年間8センチメートルのスピードで南アメリカ・プレートの下にもぐりこんでいるところで、地震多発地帯の1つです。

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地球の裏側で発生した地震ですが、津波に対する警戒が必要です。1960年5月23日に発生したチリ地震は、マグニチュード9.5という観測史上最大規模の巨大地震で、震源は今回より少し南でした。翌24日に1〜6メートルの津波が日本にまで到達しました。下の図は、このときの津波の伝搬時間を示すNOAA(アメリカ海洋大気局)のデータで、色の帯1つが1時間をあらわしています。地震発生から約22時間で、津波が日本にやってくることがわかります。

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1960年のチリ地震による津波では、三陸海岸を中心に被害が発生、多くの死者が出ています。「災害は忘れたころにやって来る」と言いますが、当時の被害を知っている人がだんだん少なくなったころに、また同じような津波がやってくることになります。津波は本日午後1時過ぎに、日本にやってきます。

恐竜絶滅と「シバ・クレーター」
オレゴン州ポートランドで10月18日〜20日に開かれたアメリカ地質学会の年次総会で、テキサス工科大学の古生物学者、シャンカール・チャタージーが「シバ・クレーター」とデカン高原での溶岩噴出の関係について発表を行ったようです。シバ・クレーターに「」をつけたのは、この地形が本当に衝突クレーターかどうかは、まだはっきりしていないからです。プログラムに載っているアブストラクトを読む限り、彼がこれまで述べてきた以上の、特別新しい内容が加わっているようには思えませんが、実際に彼の話を聞いたわけではないので、なんともいえません。

今から6500万年前に、恐竜をはじめ多くの生物が絶滅した大事件は、ユカタン半島に落下した直径10km ほどの隕石によって引き起こされたと考えられています。衝突でできたクレーターは海底に埋もれており、チクシュルーブ・クレーターとよばれています。チクシュルーブ・クレーターの直径は約180km です。

世界各地で発見されているクレーターの中には、チクシュルーブ・クレーターとほぼ同年代のものがあります。そのため、6500万年前には、チクシュルーブ・クレーターをつくった隕石を含む複数の隕石が世界各地に同時に落下したという説をとる研究者もいます。複数の隕石が同時に落下したとなると、1つの超巨大隕石が地球の近くで分裂したことになります。

シャンカール・チャタージーは10年以上前に、同時に衝突した隕石のうち最大(直径約40km)のものはインド亜大陸の西に落下し、その衝突跡が、インド洋の海底に発見されている巨大なくぼみであるという説を発表しました。彼はこの衝突跡をシバ・クレーターと名づけました。ヒンドゥーの破壊と再生の神であるシバ神からとったものです。

チャタージーはチクシュルーブ・クレーターとシバ・クレーターのほか、ウクライナのボルティシュ・クレーター、さらにはメイン州沖のスモールポイント・クレーターや北海のシルバーピット・クレーターを、そのときの多重衝突跡としてあげています。ただし最後の2つはおそらく衝突クレーターではありません。いずれにしても、恐竜絶滅に大きな影響を与えたのは、チクシュルーブ・クレーターとシバ・クレーターということになります。

チャタージーによると、この巨大隕石が衝突したのは、インド・プレートとアフリカ・プレートの境界にあたる場所でした。このプレート境界では、地球内部から溶岩が湧き出してきて海底が拡大しています。そのため、プレートの移動にともなってシバ・クレーターは2つに分裂し、北東部分はインド大陸と一緒に移動し、南西半分は現在のセイシェル諸島の南側まで移動したというのです。インド側の部分は、ムンバイ(以前のボンベイ)の沖合にあります。このあたりはボンベイハイという油田となっていますが、堆積物に埋もれた下にクレーターらしい構造、すなわちクレーターのふちや円形の溝、さらには中央丘(これもボンベイハイとよばれています)のような地形が確認されるとチャタージーは主張しています。一方、セイシェル諸島の南の海底下にも同じようなクレーターらしい構造が発見されており、この2つを6500万年前にさかのぼって合体させると、600km×400km の涙滴形の巨大なクレーターが再現できるというのです。クレーターの形状が丸くないのは、隕石が南西方向から低い角度で衝突したためであるといいます。

これだけの巨大クレーターができたのですから、その衝突は想像を絶するほどで、衝突によって地殻は一瞬にして蒸発し、衝突跡はマントルにまで達したとチャタージーは述べています。

インドでは6500万年前に、もう1つ別の地質学的大事件がありました。流動性に富む大量の溶岩が地下から噴き出したのです。この溶岩はデカン高原の北西部をおおっており、デカン・トラップとよばれています。チャタージーは、このデカン・トラップの形成も、隕石衝突が引き金になったと考えています。両者の関係についての新しい考えが、今回の彼の発表に入っているのかもしれません。ただし、デカン・トラップをつくった溶岩の大量噴出は、隕石衝突よりも先にはじまっていたようです。

シバ・クレーターはまだ「仮説」の域を出ていませんが、人々の興味を引く話題であるため、マスコミではよく取り上げられます。しかし、このような衝突が実際にあったかどうかは、今後、科学的なデータによって検証されていかなければなりません。
スマトラ沖の巨大地震とサンアンドレアス断層
9月29日に南太平洋のサモア諸島近くでマグニチュード8.0の地震がおこり、地震と津波で100人以上の死者がでました。翌9月30日にはインドネシアのスマトラ沖でマグニチュード7.6の地震が発生、死者は1100人以上との報道もあります。10月1日には、30日の震源に近い場所でマグニチュード6.6の地震が発生しています。

インドネシアでこのところ大きな地震が多発していることが、2004年12月26日にスマトラ沖で発生したマグニチュード9.1という、観測史上世界第2位の巨大地震と関係しているかもしれないということは、以前に書きましたが、『ネイチャー』誌の今週号(2009年10月1日号)には、この2004年のスマトラ沖地震が、アメリカのサンアンドレアス断層の活動に影響を与えている可能性があるという論文が掲載されています。サンアンドレアス断層はカリフォルニア州を縦に走るトランスフォーム断層(横ずれ断層)で、北アメリカ・プレートと太平洋プレートの境界です。このあたりは世界有数の地震多発地帯となっています。

「2005年と2006年には世界各地でマグニチュード8クラスの地震が多かった。これは2004年12月のスマトラ沖地震と関係があるのでは?」と考えたライス大学の研究チームは、1987年から2008年までの20年間に、パークフィールド周辺のサンアンドレアス断層で起こった地震を調べてみました。断層の「強さ」、すなわち、その断層が地震を起こすために必要なせん断応力を計算したところ、断層の強さは20年間で3度、顕著に変化していることがわかりました。最初は1992年のパームスプリングの北で起こったランダーズ地震で、この地震の後、マグニチュード4クラスの地震が頻発しました。2度目は2004年9月のパークフィールドでの地震です。そして3度目の変化は2004年12月26日のスマトラ沖地震後5日間くらいの間に起こっていました。

2004年のスマトラ沖地震がはるかに離れたサンアンドレアス断層の強度を弱め、地震を起こりやすくしていたとすれば、おそらく世界各地の他の断層にも影響を与えたにちがいありません。きわめて興味深い仮説といえるでしょう。
ジャワ島の地震
9月2日、インドネシア、ジャワ島沖でマグニチュード7.0の地震が発生し、60名以上の死者がでています。

インドネシア周辺はインド・オーストラリア・プレートとユーラシア・プレートの境界にあたり、世界有数の地震多発地帯です。下の図にみられるように、ユーラシア・プレートの先端はこのあたりでスンダ・プレートという小さなプレートを形成しており、この下にオーストラリア・プレートが年間約6センチメートルのスピードでもぐりこんでいます。オーストラリア・プレートが沈みこむところはスンダ海溝とよばれています。

ジャワ

このあたりでは、最近では2006年5月26日、7月17日、2007年8月8日にも大きな地震がありました。それ以前の大きな地震は1994年6月2日ですから、最近、この領域では地震活動が活発になっているのかもしれません。そうだとすると、その活動は、スンダ海溝がこの図のさらに北西に伸びたあたりに位置するスマトラ沖の地震活動と、なんらかの関係がある可能性もあります。スマトラ沖では、2004年12月26日にマグニチュード9.1という巨大地震が発生し、大規模な津波被害がもたらされました。その後、2005年3月28日にはその南の空白域で、2007年9月12日にはさらにその南の空白域で大きな地震がおこっています。オーストラリア・プレートの沈みこみにともなって蓄積されたエネルギーは、2004年の巨大地震をきっかけに、南へ南へと解放されつつあり、それがジャワ島周辺の地震活動を刺激しているのかもしれません。

今回の地震は深さ約50キロメートルのところで発生しました。下の図は、1990年から現在までにジャワ島周辺でおきた地震の震源の位置および深度、そして規模を示しています。ちょうど真ん中の黄色い星印が今回の震源です。地震の規模でいうと、ほとんどはマグニチュード4〜5クラスです。震源の深さは色分けされており、茶色が深さ0〜35キロメートル、黄色が深さ35〜70キロメートル、緑色が深さ70〜150キロメートル、青色が深さ150〜300キロメートル、紫色が深さ300〜500キロメートル、赤色が深さ500〜800キロメートルです。明るい紫色の線がスンダ海溝で、そこから北にいくにつれて震源は深くなっており、プレートの沈みこみの様子がみてとれます。

ジャワ地震震源震度

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