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かにパルサー周辺の高解像度画像
High-resolution image of the center of Crab Nebula

おうし座のかに星雲は超新星爆発の残がいで、その中心部にかにパルサーがあります。そのかにパルサーの周辺をハッブル宇宙望遠鏡が撮影した高解像度画像が発表されています。

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かにパルサーの位置を下の画像中に矢印で示しました。2つ並んだ明るい星のうち右側の星です。

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かにパルサーは超新星爆発によってできた中性子星で、1秒間に30回転しています。質量は太陽の約1.4倍です。この画像では、パルサーの回転軸は左上から右下の方向、それと垂直なディスクの回転面は左上が手前、右下が奥にあたります。ディスクは、パルサーに最も近い部分ではガスが吹き飛ばされて空隙になっています。その周囲に白い衝撃波面が見えています。

淡い青色の光は、パルサーの強力な磁場によって光速近くまで加速された電子が発するものです。その背後には急速に膨張していくガスが赤く見えています。パルサーを取りまく色が全体に虹色のように見えるのは、この画像が時間をおいて撮影された画像を重ね合わせているためです。その間の物質の動きが微妙な色合いでとらえられているのです。

撮影データを見ると、この画像を撮影するために用いられたフィルターは、F550M(緑色)、およびF606W(黄色)とPOLV60(偏光)です。F550M を用いた撮影は2005年9月15日と2013年1月10日に行われました。F606W とPOLV60 による撮影は2003年8月8日と2005年9月6日に行われました。ハッブル宇宙望遠鏡などの美しいカラー画像は、撮影に用いたフィルターのモノクロ画像にそれぞれ色を割り当てて作成されていますが、今回の画像の色調には、フィルターの違いだけでなく、時間の経過も反映されています。それによって、パルサー周辺のはげしい活動が可視化されているのです。

下の画像は、かに星雲の中心部をチャンドラX線望遠鏡で撮影したもので、パルサー周囲のディスクと、それと垂直方向に噴き出すジェットがよくわかります。

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下の画像は、かに星雲全体の画像です。ハッブル宇宙望遠鏡、スピッツァー赤外線望遠鏡、チャンドラX線望遠鏡の画像を重ねてあります。

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上の2枚の画像は北が上の方向で発表されていますが、今回の画像は左が北の方向で発表されているため、それに合わせました。
中秋の名月とスーパームーン、そして皆既月食
Supermoon Lunar Eclipse

9月27日は中秋の名月です。旧暦の8月15日の夜にあたり、日本では古くから月をめでる「お月見」の風習があります。ぜひ、晴れてほしいものです。

ところで、9月の満月は1日ずれて9月28日になります。旧暦の15日は新月の日から15日目のことで、満月の日とずれることがあるのです。9月28日の満月は「スーパームーン」となり、さらに皆既月食が見られます。

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地球をまわる月の軌道は楕円であるため、地球に近づくときと遠ざかるときがあります。スーパームーンとは一般に、月が近地点にきたときの満月(および新月)をいいます。国立天文台の情報では、9月28日午前10時46分に月は地球に今年最も近づき、その距離は約35万6900kmになります。そしてその約1時間後の午前11時51分に満月の瞬間を迎えます。このときの月の視直径は約33.5分角とのことです。スーパームーン時の月のみかけの大きさは、遠地点で見える月の大きさの14%も大きくなります。

満月の瞬間は日本では昼間になるため、このスーパームーンの皆既月食を日本から見ることは残念ながらできません。これが見られるのは南北アメリカ、ヨーロッパ、そしてアフリカの西半分です。

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スーパームーン自体はめずらしい現象ではありませんが、スーパームーン時の皆既月食は1900年から5回しか起こっていません。下のNASA のお洒落なイラストに示されるように、1910年、1928年、1946年、1964年、1982年に起こっています。

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2015年の次の機会は2033年におとずれます。

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人々はどんな町から皆既月食を眺めるのでしょうか。
3Dで見るわし星雲
Pillars of Creation in 3D

わし星雲(M16)の3D動画がESO(ヨーロッパ南天天文台)から発表されました。下の画像は私たちが地球から見ているわし星雲を、少し右側の位置から見た画像です。ハッブル宇宙望遠鏡で馴染みのあるわし星雲とは、ガスの柱の位置関係が少し違っているのがわかります。

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わし星雲の3DデータはチリにあるESO の大型望遠鏡VLT に取り付けたMUSE という装置によって得られました、観測によると、わし星雲のガスの柱は、下の画像のような位置関係にあることがわかりました。

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この位置関係を用いて、わし星雲の3D動画がつくられたわけです。

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上の画像は、地球から観測したわし星雲(左)と、視点を右に動かして眺めた画像(右)を比較してみたものです。

1方向からしか見ることのできない天体を立体的にしてみる試みは、オリオン大星雲やイータ・カリーナなどでも行われています。こうしたビジュアライゼーションは私たちの目を楽しませてくれるだけでなく、研究者にとっても重要な情報をもたらしてくれます。

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上は、VLT での観測データから作成したイータ・カリーナの3D画像です。イータ・カリーナは超新星爆発の寸前にある大質量星です。

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上の画像でNASA の研究者テッド・ガル氏が手に持っているのは、得られた3Dデータをもとに3Dプリンターで作成したイータ・カリーナの立体模型です。3Dデータを画面上に表示してみるだけでなく、実際に手に取れる模型にしてみることは、この天体で起こっている現象を把握する上で非常に役に立つとのことです。
ハッブル宇宙望遠鏡:わし星雲の新しい画像
Eagle Nebula:Hubble revisit “Pillars of Creation”

ハッブル宇宙望遠鏡が観測したM16 わし星雲(の一部)の新しい画像が発表されました。

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へび座のわし星雲は、星が誕生しているガス雲として昔からよく知られていましたが、地上の望遠鏡からの観測では、その詳細な姿が分かりませんでした。それを明らかにしたのが、1995年に行われたハッブル宇宙望遠鏡での観測です。その画像には、3本の柱状のガスのかたまりと、星の誕生の現場が見事にとらえられていました。

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そのドラマチックな姿から「ピラーズ・オブ・クリエーション」とよばれたこの画像は、ハッブル宇宙望遠鏡の初期成果のイコニックな画像となり、ハッブル宇宙望遠鏡科学研究所のプレスリリースによると、多くの映画やテレビ番組に登場し、Tシャツや切手の柄にまでなったとのことです。実は、私が当時出版したハッブル宇宙望遠鏡の写真集『DEEP SPACE』でも、この画像を表紙カバーに使いました。

ハッブル宇宙望遠鏡の観測開始後25周年を記念して、ハッブル宇宙望遠鏡はわし星雲を再び観測しました。1995年の画像に比べて、新しい画像は解像度がより高くなっており、より詳細な構造が明らかになっています。また、前の画像よりも下の領域まで観測され、柱の根本の部分が失われ、ガスのかたまりが宇宙空間に浮かんでいる様子が見えています。

わし星雲の3本の柱は、画像の上方に存在している(画像では見えていない)生まれたばかりの星々からの強烈な輻射からかろうじて残った部分です。しかし、ここでは今も輻射によってガスが熱せられ、蒸発しています。柱の最上部には、そのような蒸発し、失われていくガスの様子が見えています。

25年の間隔を置いた観測であるため、細部を見ていくと、ガスの動きを確認することもできました。下左は1995年の観測画像の一部を拡大したもの、下右は同じ場所の2014年の画像です。2本の矢印が示すように、ガスが動いているのが分かります。

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今回は、近赤外線での観測も行われました。それが下の画像です。

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近赤外線はガスの領域でもある程度透過します。そのため、ガスの濃い部分は暗いままであるものの、薄い部分ではガス雲内部や背景の星なども見えています。また、柱の先端には誕生したばかりの星々が見えています。これらの星は可視光の画像では見ることができません。

大規模な太陽フレアが発生
Region 2192:Giant flare erupted

太陽の巨大黒点群AR2192 は、10月26日にもX クラスの大規模なフレアを発生させました。下の画像は、そのフレアをNASA の太陽観測衛星SDO が紫外線で観測したものです。

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このフレアはアメリカ東部夏時間で25日の午後12時55分に始まり、午後1時08分にピークに達し、2時11分まで続くという長いイベントでした。
巨大黒点群 AR2192
Giant sunspot AR2192

10月17日に太陽の東端に姿を現した黒点群 AR2192は、今回の太陽活動周期、サイクル24で観測された黒点群としては最大の面積をもっています。現在、太陽面の南半球中央部を西へ移動しています。

下は10月24日に NASAの太陽観測衛星 SDOがとらえたAR2192 です。

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日食眼鏡を使えば、肉眼でもこの巨大黒点群を見ることができます。

AR2192は中規模および大規模のフレアを発生しています。地球の高緯度では美しいオーロラが見えているようです。
アイソン彗星はどうなったか?
The fate of Comet ISON

アイソン彗星がどうなったか、まだ詳しくは分かってはいませんが、SOHO 衛星などの画像の解析から、彗星は太陽に最接近する直前に分裂してしまったとみられています。彗星の核は、残っているとしても、非常に小さいものでしかないようです。下のSOHO の画像は、近日点通過直後のアイソン彗星です。アイソン彗星の形はくさび型をしており、これは粉々になったアイソン彗星の残骸(ダスト)を示しているとみられます。

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下は、近日点通過前後のアイソン彗星の軌跡です。くさび型のダストは太陽から遠ざかるにつれて、急速に暗くなっています。

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アイソン彗星が見事な尾を引いて私たちの前に再び姿を現すことはなくなってしまいました。今後、地上の望遠鏡からの観測が行われると思いますが、12月下旬にはハッブル宇宙望遠鏡がアイソン彗星(あるいはその残骸)を観測する可能性があるようです。
アイソン彗星の核は生き残った?
Comet ISON:May have survived

アイソン彗星は近日点通過の際に分裂して消滅してしまったのではないかとみられていましたが、SOHO 衛星の観測画像の解析によると、彗星の核は完全には消滅せず、生き延びた可能性があるようです。下の画像が、近日点通過後のアイソン彗星の画像です。中央の白い円が太陽の光球を示しています。

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下の画像は、近日点通過前の画像と重ね合わせたアイソン彗星の軌跡です。

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アイソン彗星がどうなったのか、新しい情報を待ちましょう。
アイソン彗星は消えた?
Comet ISON:Believed to have broken up and evaporated

アイソン彗星は11月28日(日本時間では11月29日)に太陽に最接近しました。NASA は、アイソン彗星は太陽最接近時(近日点通過時)に分裂し、蒸発して消えてしまった可能性があると伝えています。

太陽に最接近する直前のアイソン彗星は、宇宙から太陽を観測している衛星によってとらえられました。下はSOHO 衛星がとらえたアイソン彗星です。アイソン彗星は右下から太陽に接近しています。中央の白い円が太陽の光球を示しています。

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下は、STEREO 衛星による画像です。アイソン彗星は左下から太陽に接近しています。

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NASA によると、アイソン彗星が太陽の向う側に見えるのを待ち構えていたSDO は、その姿を観測することができなかったとのことです。下がSDO の画像で、本来なら白い十字のところにアイソン彗星がいなくてはなりません。

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12月の空に、アイソン彗星がその壮麗な姿を現すのを、私たちは期待しているのですが、はたしてどうなるでしょうか。あと数日で、アイソン彗星がたどった運命がわかるはずです。
アイソン彗星接近中
ISON in the October sky

アイソン彗星C/2012 S1(ISON) が太陽に接近中です。

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Gerald Rhemann

アイソン彗星は2012年9月に発見されました。その頃は木星の軌道のずっと外側でしたが、現在では、地球と火星の軌道の間にあり、11月29日に太陽に最接近する予定です。そのときの太陽との距離は約190万km とみられています。太陽最接近前後には夜明け前の東の低い空に見られます。もしかしたら肉眼でも見えるほど明るくなるかもしれません。

現在アイソン彗星はしし座にあります。アイソン彗星のすぐ近くには火星があり、2つの天体はそろって、しし座の中を一緒に移動しています。10月16日には、アイソン彗星と火星が一番近くなります。そのすぐ南には、しし座の1等星レグルスがいます。日本列島はこのところ台風26号の接近で、星を見る状況ではありませんでしたが、もしも空が晴れれば、日の出前の午前4時頃の東の空に、火星とレグルスが明るく見えるはずです。アイソン彗星は今10等級程度なので、肉眼で見ることはできませんが、火星のすぐ上あたりにいるはずです。

下はハッブル宇宙望遠鏡が今年の4月10日に撮影した画像です。

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このとき、アイソン彗星はちょうど木星の軌道あたりにいました。この観測からアイソン彗星の核の大きさが直径5~6km であることがわかりました。下の画像は、コントラストを強調処理した画像で、コマの真ん中にある核から太陽方向に向けてダストが吹き出し、長い尾となって太陽と反対の方向に流れていくさまがとらえられています。

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若田光一宇宙飛行士は11月には国際宇宙ステーションでの長期滞在をはじめる予定で、軌道上から超高感度4K カメラシステムでアイソン彗星を観測することになっています。

アイソン彗星の軌道は放物線で、回帰しない彗星です。したがって、私たちはアイソン彗星を再び見ることはありません。
大小マゼラン雲の高解像度紫外線画像
Best ultraviolet maps of the nearest galaxies

NASA のガンマ線バースト観測衛星Swift が作成した大小マゼラン雲の高解像度紫外線画像が公開されています。

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上は大マゼラン雲(LMC)の紫外線画像です。Swift の紫外線・光学望遠鏡UVOT が撮影した2200枚の画像をモザイク合成したものです。波長160〜330ナノメートルの波長域で撮影されています。この波長域は大気に吸収されてしまうため、地上からは観測できません。Swift がとらえた大マゼラン雲の姿は、可視光で見た姿とはかなり異なっています。下の画像は、上と同じ領域を可視光で見たものです。紫外線で見ると、特に生まれたばかりの星が明るく見えています。

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大マゼラン雲の中で一番有名な領域がタランチュラ星雲(下)です。上の2つの画像で左上に見えている、ひときわ明るい場所がそれです。ここは爆発的な星の誕生(スターバースト)がおこっている領域で、われわれの銀河系、大小マゼラン雲、アンドロメダ銀河などを含む局部銀河群の中で最も活発に星が誕生している場所です。ここには太陽の質量の260倍という超巨大質量の星R136a1 が発見されています。また、タランチュラ星雲の近くで26年前に爆発したのが超新星SN 1987A です。このときに発生したニュートリノがカミオカンデで観測されました。

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下は、Swift による小マゼラン雲(SMC)の紫外線画像です。656枚の画像をモザイク合成して作成されました。

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下は、可視光で地上から撮影された大マゼラン雲(右)と小マゼラン雲(左)です。

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大小マゼラン雲は、われわれの銀河系の伴銀河です。大マゼラン雲は直径1万4000光年、銀河系からの距離は16万3000光年、小マゼラン雲は直径約7000光年、銀河系から20万光年のところにあります。
こと座リング星雲の立体構造
Hubble Space Telescope reveals the true shape of Ring Nebula

ハッブル宇宙望遠鏡が観測したこと座のリング星雲の新しい画像が公開されました。

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こと座のリング星雲は図鑑や教科書にもよく載っていますので、天文ファンならずとも、多くの方におなじみの天体だと思います。太陽の数倍程度の質量の星が4000年ほど前に死んでできた惑星状星雲で、リングの直径は約1光年、太陽から2300光年ほどのところにあります。私たちはリング状の構造を真上近くの方向から見ています。

リング星雲をつくりだした元の星は、その一生の最後に赤色巨星となりました。その後、周辺部のガスは吹き飛ばされてリング状の構造ができ、コアの部分は白色矮星となりました。白色矮星はリングの中心にかすかに見えています。上の画像は、ハッブル宇宙望遠鏡の可視光域での観測結果に、アリゾナ州グレアム山にあるLBT(大双眼望遠鏡)の赤外域での観測データを合成しています。リングの外側に、この惑星状星雲ができた初期に吹き飛ばされたガスの名残が花びらのように見えています。

今回の観測では、リング星雲の立体的な構造が明らかになりました。それによると、リング星雲の構造はこれまで考えられていたよりも複雑なようです。リングの内側の青い部分はヘリウムのガスで、白色矮星からの放射によって輝いています。このヘリウムガスは全体としてフットボールのような形をしていて、それがドーナッツ状のリングの内側で垂直方向に伸びていることがわかりました。私たちはこのフットボールを横からではなく、真上から見ているので、その形がわからなかったのです。下の画像は、リング星雲の立体的な構造を示したものです。

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上の画像でも明らかなように、リングの内側には自転車のスポークのような黒い放射状の構造が明らかになりました。速いスピードで膨張する熱いガスが、以前に吹き飛ばされたガスに衝突して、リングが形成されています。広がるガスの特に濃いところが黒く見えているのです。

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膨張するガスのスピードは秒速約20km とみられています。リング星雲はこれから1万年もの間膨張をつづけ、やがて宇宙空間に消えていくことになります。
巨大太陽フレアが発生
Four X-class solar flares

5月13日から15日の間に、太陽でXクラスのフレアが4回発生しました。フレアとは太陽表面の爆発現象で、その規模はA、B、C、M、Xクラスに分類されます。Xがもっとも規模の大きなクラスです。下の画像は5月14日に起こった3回目のフレアをアメリカのSDO がとらえたものです。

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今回の4回のXクラスのフレアはAR 11748 とよばれる活動領域(黒点群)で起こっています。下もSDO の画像ですが、左がその領域、右が3回目のフレアが起こった直後の画像です。

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大規模な太陽フレアが発生すると、強力なX線や紫外線が放射されます。このため、地上では電波障害などを起こすデリンジャー現象が発生します。通信が乱れたり、電力系に影響して停電が起きたりすることもあります。また、大量のガスが放出されるコロナ質量放出(CME)という現象が起こり、人工衛星に障害を与えることもあります。

太陽活動は現在、極大期を迎えています。AR 11748 は現在、太陽の東の縁に現れたところで、これから1週間ぐらいで太陽面を通過していきます。その間にまた大規模な太陽フレアが起これば、高エネルギー粒子が地球を直撃し、さまざまな影響をもたらす可能性があります。
プランク衛星による最新成果:宇宙の深まる謎
Planck reveals the most detailed map of ancient universe

宇宙マイクロ波背景放射観測衛星「プランク」の最新の成果が発表されました。私たちが宇宙について知れば知るほど、謎もまた深まっていくようです。

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下は、プランクによって得られた宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の全天マップです。宇宙が誕生してから38万年後の、宇宙の晴れ上がりによって放射された最初の光が引きのばされ、現在、マイクロ波として観測されるのです。色の違いは温度の「むら」を示しています。宇宙誕生直後に存在したごくわずかなむらがインフレーションによって成長したもので、このむらから星や銀河が生まれていきます。

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プランクはWMAP につづくマイクロ波背景放射観測衛星です。WMAP にくらべてより精細な観測を行うことができます。下はWMAP とプランクが宇宙の同じ場所を観測した結果の比較です。

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プランクによる高解像度での観測によって、興味深い結果が得られました。宇宙はこれまでどの方向を見ても一様と考えられてきましたが、今回の観測の結果、温度のむらに非対称性が見られることがわかりました。この非対称性はWMAP でもある程度観測されていましたが、それが実際に存在するのか、観測誤差なのかがはっきりしていませんでした。今回、これが確認されたわけです。それでは、いったい、なぜこのような非対称性が生じたのか。これは今後探求すべき大きな謎です。下の画像は、温度のむらの非対称性を強調したもので、温度の低い「コールドスポット」もみつかっています。

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WMAP は、それまで100億年とも200億年ともいわれていた宇宙の年齢が137億年であることを明らかにしました。今回のプランクの観測結果によると、宇宙の年齢は138.2億年で、WMAP の観測結果より約1億年古いことがわかりました。

WMAP による観測結果では、宇宙は物質4.5%、ダークマター22.7%、ダークエネルギー72.8%という構成でしたが、今回のプランクの観測結果は物質4.9%、ダークマター26.8%、ダークエネルギー68.3%であることを明らかにしています。

宇宙が膨張する速度を決める比例定数をハッブル定数といいます。今回、プランクによって求められたハッブル定数は67.15 km/秒/メガパーセクでした。これはハッブル宇宙望遠鏡やスピッツァー宇宙望遠鏡によって求められた値よりも少し小さい値です。
くじら座タウ星の「第二の地球発見」は本当か?
Planets orbiting Tau Ceti:Independent detection is necessary

くじら座のタウ星に5個の惑星が発見されたというニュースが昨年末にネット上を飛び交いました。その中の1つが液体の水が存在可能なゾーンにあることから、日本では「第二の地球発見か」という見出しで紹介した記事もあります。

しかし、イギリス、ハートフォードシャー大学宇宙物理学研究センターのMikko Tuomi らの原論文を読んでみると、今回の「発見」を、もう少し冷静に見る必要がありそうです。

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くじら座タウ星は地球から約12光年の距離にある太陽と同じG型のスペクトルの恒星です。質量は太陽の0.8倍、光度は太陽の0.6倍です。1960年のオズマ計画で、フランク・ドレイクがグリーンバンクの電波望遠鏡を向けた恒星の1つでもあります。SF ファンの方なら、アイザック・アシモフやロバート・ハインラインをはじめ多くの作家がくじら座タウ星の登場する作品を書いていることをご存じでしょう。

現在、800個以上の系外惑星が見つかっています。惑星をもつ恒星は、惑星から重力の影響を受けるため、その位置がわずかにふらつきます。系外惑星をみつける方法の1つは、このふらつきをドップラー効果を利用して検出し、惑星の存在を明らかにするものです。この方法で系外惑星を探索している計画には、ESO(ヨーロッパ南天天文台)がチリのラ・シヤ天文台で行っているHARPS、アングロ・オーストラリアン天文台で行われているAAPS があります。またハワイのケック天文台の高精度分光計HIRES のデータも系外惑星の探索に使われています。

Tuomi らのグループは、系外惑星を検出するための新しいデータ解析法を開発しました。この方法は、観測データに人為的な信号(ノイズ)を加えた上で解析を行うというもので、従来の方法では不可能だった微弱な信号を取り出せるとのことです。くじら座タウ星のまわりには以前からちりの円盤が発見されていましたが、惑星は見つかっていませんでした。そこでTuomi らは、これまでのクジラ座タウ星の観測データを自分たちの方法で再解析してみたのです。データ数は6000以上におよびました。

その結果、HARPS のデータから3個の惑星の存在を示す信号が得られました。また、HARPS とAAPS、HIRES のデータを合わせて解析した結果からさらに2個の惑星の存在を示す信号が得られたのです。これらの惑星の質量は少なくとも地球の2.0倍、3.1倍、3.6倍、4.3倍、6.6倍、タウ星をまわる周期は13.9日、35.4日、94日、168日、640日でした。5個の惑星はHD10700b、HD10700c、HD10700d、HD10700e、HD10700f と名付けられました。HD10700 は、ヘンリー・ドレイパー・カタログでのくじら座タウ星の番号です。このうちHD10700e のタウ星からの距離は0.552AU で、液体の水が存在できるゾーン内にあるというわけです。

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しかしながら論文の著者らは、この解析方法で得られた信号について「質量の小さな惑星の存在を示唆する」ものであり、「独立した観測による検証が必要」と述べています。すなわち、今回の解析結果は惑星の存在そのものを確認したものではなく、その存在を示すと解釈できる結果が得られた段階にとどまっています。得られた信号は、もしかしたら他の要因によって生じたものかもしれません。くじら座タウ星に実際に惑星系が存在するかどうか、今後の観測が期待されます。
ハッブル宇宙望遠鏡:UDF 2012
Galaxies near cosmic dawn

ハッブル宇宙望遠鏡によるUDF 2012(ウルトラ・ディープ・フィールド2012)の結果が発表されています。UDF-2012 は今年の8月から9月にかけて6週間にわたって行われ、南天の、ろ座の方角を調べました。観測はWFC3(ワイド・フィールド・カメラ3)を用い、赤外の領域で行われました。初期の銀河が放つ紫外線や可視光は宇宙膨張によって引き伸ばされ、赤外線になってしまうからです。

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今回の観測では、赤方偏移が8.6から11.9のきわめて遠い銀河が7つ観測されました。これらはビッグバン後3億5000万年から6億年に誕生した銀河です。赤方偏移11.9の銀河は、ここで紹介した銀河よりもさらに遠方にあります。

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ハッブル宇宙望遠鏡によるこうした観測は、最初の銀河が誕生した時代へとせまるものです。ここでも書いた「宇宙の再電離」がいかに進んだのかがだんだん明らかになっていくでしょう。この時代を本格的に観測するのは、ハッブル宇宙望遠鏡の次の、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡ですが、ハッブルはすでにそうした天文学の時代を開きつつあります。

UDF 2012 の観測チームによると、銀河の誕生は持続的に進み、それにつれて再電離のための紫外線放射も次第に増えていったようです。観測結果の詳しい内容は、今後、論文として発表されていく予定です。
133億光年彼方の銀河を観測
Most distant galaxy yet observed

ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツアー赤外線望遠鏡が133億光年彼方にある銀河を観測しました。赤方偏移は11で、先日紹介した銀河よりもさらに遠くにあります。これまで観測された中で最も遠くにある銀河です。

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この銀河は北極星のすぐそばの方角にあるキリン座の銀河団MACS J0647+7015 の向こう側にあり、この銀河団による重力レンズによって見えています。MACS0647-JD と名づけられました。

MACS0647-JD はビッグバン後4億2000万年後の非常に若い銀河です。直径は600光年以下とのことです。銀河系の直径は約10万光年ですから、いかに小さな銀河かがわかります。こうした若く小さな銀河が現在の銀河の材料になったと考えられます。「誕生してから130億年の間に、この銀河は何十回、何百回、あるいは何千回も、他の銀河と合体をくり返しただろう」と、宇宙望遠鏡研究所のDan Coe は語っています。

この銀河の観測に関するCoe らの論文は『アストロ・フィジカル・ジャーナル』誌の12月20日号に掲載される予定です。
ケンタウルス座アルファ星に地球サイズの惑星を発見
Earth twin planet found in the nearest star system

太陽にもっとも近い恒星であるケンタウルス座アルファ星に地球とほぼ同じ質量の惑星が発見されました。ケンタウルス座アルファ星は三重連星系で、ケンタウルス座アルファA星、ケンタウルス座アルファB星、そしてプロキシマ星からなっています。距離は約4.4光年。今回、系外惑星が発見されたのはケンタウルス座アルファB星です。下は、その想像図で、明るく輝いているのがケンタウルス座アルファB星、その右が地球サイズの惑星です。右上にケンタウルス座アルファ星系から見える太陽が描かれています。

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ケンタウルス座アルファB星をまわる惑星は、チリにあるESO(ヨーロッパ南天天文台)のラ・シヤ天文台の口径3.6メートル望遠鏡に据え付けられているHARPS(高精度視線速度系外惑星探査装置)によって発見されました。HARPS は、惑星の公転によって起こる恒星の動きのわずかなゆらぎをドップラー効果を利用して測定する方法で、系外惑星の観測を行っています。観測の精度はきわめて高く、視線速度秒速80cm の測定が可能です。

ケンタウルス座アルファB星は太陽よりも少し小さく、今回発見された惑星はそのまわりを約3.2日でまわっています。惑星の質量は地球の1.13倍です。B星からの距離は598万 km と非常に近く、おそらく1200度C 以上の輻射熱にさらされているので、生命が存在する可能性はないでしょう。しかしながら、観測チームのXavier Dumusque らが『ネイチャー』誌の10月18日号に発表した論文では、「これまでの系外惑星の観測によれば、質量の小さな惑星は惑星系になっていることが多いことがわかっている。したがって、ケンタウルス座アルファB星のハビタブルゾーンに他の惑星が存在する可能性がある」と述べられています。
宇宙の暗黒時代にせまる:132億光年彼方の若い銀河
Dark age of the universe:Ultra deep and young galaxy observed

ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツアー赤外線望遠鏡が、132億光年彼方にある銀河を観測しました。これまで観測された中で最も遠くにある銀河です。

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この銀河は、しし座のMACS1149+2223という銀河団の方向にあり、下の画像の黄色い○印の中にあります。

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この銀河の赤方偏移は9.6です。赤方偏移と宇宙の年齢の関係は、ざっと以下のようになります。

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つまり今回発見された銀河は、宇宙誕生5億年後くらいの時代の銀河ということになります。銀河自体の年齢は約2億年と見積もられています。非常にコンパクトな銀河で、質量は私たちの銀河系の質量の1%以下とのことです。宇宙の初期にできた銀河はみなこのようにコンパクトで、これらが合体して次第に大きな銀河がつくれていきました。

ビッグバンから約40万年後、宇宙が冷えるにしたがって中性の水素原子がつくられました。それから数百万年後には、最初の星や銀河が誕生したと考えられています。しかし、この時代には、光(紫外線)は中性水素原子に吸収されてしまい、自由に進むことができませんでした。そのため、この時代は望遠鏡で観測することが困難で、「宇宙の暗黒時代」とよばれています。宇宙の暗黒時代についてはよくわかっていませんが、ビッグバン後10億年ごろまでには宇宙が「再電離」し、暗黒時代が終わったとされています。

初期にできた星や銀河は、暗黒時代が終わるのに大きな役割をはたしたと考えられています。星や銀河の強烈な紫外線が中性水素原子の電子をはぎとり、電離させていったからです。この宇宙の再電離(再イオン化)によって光は遠くまで進むことができるようになりました。今回観測された銀河は、この時代に何があったかを知る手がかりになるかもしれません。

ハッブルやスピッツアーのような高性能の宇宙望遠鏡を使っても、暗黒時代を観測することはできません。今回報告されている銀河は、近くにあった銀河団による重力レンズ現象によって非常に明るくなっていたので観測することができました。ハッブルとスピッツアーの後継となるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は2018年に打ち上げられる予定になっています。この望遠鏡であれば、暗黒時代の観測か可能で、初期の天体の誕生や進化、再電離の過程なども明らかになっていくのではないかと期待されています。
太陽面を通過する金星をとらえた
Venus Transit:Spectacular images by SDO

金星の太陽面通過を、日本の太陽観測衛星「ひので」がとらえた素晴らしい画像と動画が発表されています。

アメリカの太陽観測衛星SDO も、金星の太陽面通過を観測し、動画を公開しています。下はSDO のAIA (Atmospheric Imaging Assembly)で撮影した波長21.1ナノメートルの画像です。

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下の3枚の画像はAIA の波長30.4ナノメートルの動画からのもので、太陽面を通過する金星がとらえられています。

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下の3枚の画像はAIA の波長17.1ナノメートルの動画からのものです。

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これらはいずれもX 線に近い短い波長の紫外線の領域でとられたものです。どの画像にも、はげしく活動する太陽と、太陽面を通過する金星の姿がみごとにとらえられています
太陽の磁場反転とマウンダー極小期
国立天文台と理化学研究所の研究者を中心とする太陽観測衛星「ひので」の国際研究チームは、太陽磁場の反転をとらえたと発表しました。

太陽の磁場は約11年で反転をくり返し、反転する時期は太陽活動の極大期にあたっています。今回の太陽周期では極大期が2013年5月ごろと予想されており、このときに北極と南極の磁場の反転がほぼ同時に起こると考えられてきました。ところが、「ひので」の観測によって、すでに北極では予想されるより1年も早く磁場が減少をはじめていることが明らかになりました。まもなく磁性がマイナスからプラスに反転してしまうとみられています。一方、南極では現在もプラスの磁性が安定していて、反転のきざしがみえません。そのため、このままでは、北極と南極が両方プラスになり、太陽の磁場が双極子の構造から4重極構造になってしまうと予想されています。

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こうした成果は、「ひので」が太陽極域を精密に観測できるために可能となったものです。これまでの太陽望遠鏡では観測できなかった極域での現象が見えてきたのです。おそらく「ひので」は、太陽活動が低下した時期の磁場反転プロセスでおこる現象を見ているのでしょう。「ひので」は今年10月ごろに北極域の集中的な観測を行う予定とのことですが、これから太陽に何が起こるのか、本当に4重極構造になるのか、興味がもたれるところです。

太陽の磁場をつくっているのは、太陽内部のダイナモ機構です。ダイナモの動きが太陽磁場の変動や黒点の活動となってあらわれてくるわけです。「ひので」の観測は、太陽ダイナモに関する画期的な知見をもたらしてくれるでしょう。

一方、メディアではこうした科学的側面よりも、マウンダー極小期のような寒冷期との関連が取り上げられているようです。しかし、これには注意が必要です。

発表されたプレスリリースには、たしかに「地球が寒冷であったと言われるマウンダー極小期やダルトン極小期には、太陽がこのような状況にあったと考えられており、今後の推移が注目されます」とありますが、「このような状況」とはいったい何なのか、はっきりしません。「ひので」は17世紀のマウンダー極小期時代の太陽を観測することはできず、当時の太陽の状態を現在と比較するには、太陽活動についてのより深い理解が必要です。

マウンダー極小期やダルトン極小期は太陽活動が非常に低下した時期でした。最近の太陽活動も20世紀にくらべるとかなり低下しており、寒冷期に特徴的な太陽周期の伸びもみられます。しかし、現在の太陽の状態がマウンダー極小期に直接つながる可能性が低いという点については、以前にここここここで書きました。太陽ダイナモの変動ないしは活動低下と地球の寒冷化を関連づける論文も発表されていますが、この分野はまだ科学的にわからないことが多く、今後の学問の発展を待たなくてはなりません。
重力レンズで見た100億光年彼方の銀河
ハッブル宇宙望遠鏡による重力レンズ現象の新しい観測結果が発表されています。下の画像がそれで、中心にあるのはエリダヌス座の RCS2 032727-132623 という銀河団です。その周囲の青いアーク状の光が重力レンズによって浮かびあがった背後の銀河 RCSGA 032727-132609 です。ハッブル宇宙望遠鏡の WFC 3 によって撮影されました。

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下は、上の画像を説明するもので、背後の銀河 RCSGA 032727-132609 の光が RCS2 032727-132623 の重力によって曲がられ、4つの像になって観測されていることがわかります。また、左下に、RCSGA 032727-132609 を再構成した想像図が示されています。

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RCSGA 032727-132609 は約100億光年彼方にあります。つまり私たちは100億年前の銀河を見ていることになります。きわめて遠方にある銀河を観測しようとしても、その光はかすかで、しかも小さくしか見えません。しかし重力レンズを利用すれば、これだけ遠い距離にある銀河の姿を詳細にみることができます。銀河の進化の研究にとって強力な手段になるでしょう。
燃えさかる太陽
太陽活動が活発になってきました。NASA の太陽観測衛星SDO(Solar Dynamics Observatory)の最近の画像をいくつかご紹介しましょう。

下の画像は今年1月23日に起きた太陽フレアです。GOES 衛星によるX 線強度はM8.7で、これは最大規模のフレア(X クラス)にもう少しというかなりの規模です。これにともなって発生したCME(コロナ質量放出)で多量の高エネルギー粒子が地球にやってきました。普通はオーロラが見られない地域でも美しいオーロラが見られたとのことです。これだけの規模のフレアとCME は2005年以来のことでした。

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下は、1月2日に、SDO からは太陽の裏側にあたる場所で起こった太陽フレアとCME のときのものです。フレア本体を観測することはできませんでしたが、そのときの噴きあげられた高エネルギー粒子の束が太陽の縁に観測されました。太陽大気内で起こるはげしい爆発現象がとらえられています。

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下は、昨年12月8日に観測された見事なプロミネンスです。

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今回の太陽活動周期の極大期は2014年ごろとみられています。
銀河系中心の巨大ブラックホールに呑みこまれるガス雲
『ネイチャー』誌1月5日号の表紙を飾っているのは、銀河系中心の巨大ブラックホールに呑みこまれるガス雲のシミュレーション画像です。

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私たちの銀河系の中心には、電波およびX線で見えているSgr A*(いて座Aスター)とよばれるコンパクトな天体が存在し、その正体は太陽の約400万倍の質量をもつ巨大ブラックホールと考えられています。ESO(ヨーロッパ南天天文台)では、巨大望遠鏡VLT を用いて銀河系中心部の観測を継続的に行ってきました。マックスプランク地球外物理学研究所のGillessen らが『ネイチャー』誌に発表した論文によると、現在、濃密なガス雲が急速にSgr A* に接近しており、その一部は近い将来Sgr A* に呑みこまれるとのことです。

下の画像は、いて座方向にある銀河系の中心部をVLTで撮影したもので、幅が約1光年の領域に多数の星が集中しています。この中にSgr A* が存在しています。

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下の2枚の画像は2003年5月9日にVLT が近赤外線で撮影したもので、上の画像よりもさらに狭い領域を見ています。左右の幅は約40光日です。右の画像は左の画像の39分後のものです。S2 と名づけられた星のすぐ右下が右の画像では明るくなっています。この場所にあるのがSgr A* で、高温のガスがSgr A* に呑みこまれていったため、明るく輝いたと考えられます。

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ブラックホールの周囲には降着円盤(回転するガスの円盤)が存在し、ここからガスが事象の地平線を超えてブラックホールに落ちていく際に、電磁波を放射し、それが電波、赤外線、可視光、X線などで観測されます。活動銀河とよばれる銀河では、降着円盤からブラックホールに多量のガスが落ちこんでいき、激しく活動する銀河核が形成されています。しかし、現在のSgr A* は暗く、降着円盤からのガスの流入量が少ないとみられています。

Gillessen らによると、地球の3倍ほどの質量をもつガス雲(主に水素)がSgr A* の方向に移動しており、ここ数年、そのスピードは早まっています。2004年には秒速1200km でしたが、2011年には秒速2350km になっています。ガス雲はすでにSgr A* の重力の影響で変形をはじめており、2013年にはSgr A* に最接近するとみられます。下は、今後数年間のシミュレーション画像です。ガス全体が呑みこまれわけではありませんが、多量のガスが降着円盤に供給され、それがさらにブラックホール本体に流れこんで、Sgr A* は明るく輝くことになるでしょう。

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ブラックホールにガス雲が呑みこまれていく一部始終を観測できるのは、天文学にとって、大きなチャンスです。Sgr A* のバースト現象をさまざまな波長で観測することによって、Sgr A* とそれを取り巻く降着円盤について、多くの知見が得られることになるでしょう。
コズミック!
大日本絵画から『Cosmic! 宇宙への旅』が発売になりました。宇宙をテーマにした仕掛け絵本(飛び出す絵本)です。翻訳の監修は私がしました。

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最初のページを開けて、まずびっくりするのは大迫力のビッグバンです。

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さらに太陽系や恒星、銀河の世界が次々と広がっていきます。ハッブル宇宙望遠鏡やアポロ宇宙船、惑星探査機などのメカ紹介のページもあります。大人でも結構楽しめると思いますが、これからの季節、やはりお子様へのクリスマス・プレゼントに最適です。
岩石型の系外惑星をはじめて発見
NASA は系外惑星探査機ケプラーによって、岩石型の系外惑星を世界ではじめて発見したと発表しました。この系外惑星はKepler-10b とよばれています。研究チームは「Kepler-10b はこれまで発見された中で最も小さな系外惑星であり、太陽以外の星をまわる岩石型惑星であることが確認された最初の天体である」と述べています。論文は『Astrophysical Journal』誌に受理されました。

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2009年に打ち上げられたケプラーは、ハビタブルゾーンに位置する地球型惑星がどのくらい存在するかを推定することを観測の第1の目的としており、トランジット法という、系外惑星が恒星面を通過するときのきわめてわずかな光度変化を観測する方法で、系外惑星を探索しています。

1月13日現在、NASA のPlanet Quest のリストによると、これまでに発見された系外惑星の数は合計500個(惑星をもつ恒星の数は421個)となっています。このうち、”Terrestrial” に分類されている系外惑星は合計17個、”Earthlike planets” は0となっています。”Terrestrial” に分類されている系外惑星は、CoRot-7b のようないわゆる「スーパーアース」とよばれているもので、木星タイプの系外惑星より質量は小さいものの、地球よりはかなり重いものが多く、上限は海王星くらいまでのものです(ただし、スーパーアースの定義は確たるものではありません)。これらは岩石型の惑星であることが確認されているわけではありません。

Kepler-10b の主星であるKepler-10 は太陽と同じG 型に属する黄色ないしオレンジ色の星で、地球からの距離は560光年です。質量は太陽の0.9倍、半径は太陽の1.06倍と、太陽によく似ています。ただし、太陽の年齢が約45億年であるのに対して、Kepler-10 は80億年以上と老齢です。

Kepler-10b はKepler-10 のまわりを45.29日の周期でまわっています。自転速度は0.84日でした。Kepler-10b のサイズは、この天体がKepler-10 の前を通過するときの光度の落ちこみ具合から求めることができ、地球の半径の1.4倍であることがわかりました。研究チームはさらにKepler-10b の質量を地上の望遠境によるドップラー観測で求めました。質量は地球の4.6倍でした。したがって、Kepler-10b の密度は8.8グラム/立法センチであり、岩石型惑星であることがわかりました。この密度からすると、Kepler-10b は全質量の約75%が鉄のコアで、残りが岩石ということになります。ちなみに、太陽系の水星は鉄のコアが大きく、全質量の約70%を占めています。

下の図では、地球の質量と半径を1として、火星、金星、地球をプロットした曲線が太い白線で示されています。その上の細い白線は全質量の50%を水が占める水惑星を示しています。下の細い白線は全質量が鉄の場合を示しています。Kepler-10b が鉄の成分の多い岩石型惑星に位置していることがわかります。この図には、スーパーアースであるCoRot-7b とGJ 1214b がどのあたりに位置するかも示されています。

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Kepler-10b はKepler-10 のすぐ近くをまわっています。太陽と水星の距離の約20分の1ということです。そのため、Kepler-10 の輻射によってKepler-10b の表面は1300度C 以上の超高温になっています。大気はすべて吹き払われているでしょう。

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Kepler-10b はハビタブルゾーンには位置していませんが、研究チームは「Kepler-10b の発見はチームにとって大きなマイルストーンである」と、語っています。
ソーラープローブ・ミッション実現へ
オバマ大統領の新政策で、アメリカの有人宇宙飛行関連の予算は減額されましたが、一方で、科学ミッションは予算が増額され、活気づいているようです。NASA は太陽を研究するための5つのミッションに予算をつけましたが、その中の1つに、「ソーラープローブ・プラス」というミッションがあります。

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ソーラープローブとは、太陽大気に突入するカミカゼ探査機で、NASA がずっと構想を練っていたものです。ソーラープローブがいよいよ実現するのか、という思いでNASA からの報道を読みました。NASA の報道によると、ソーラープローブのアイデアが米国科学アカデミーから最初に提案されたのは1958年のことだったそうです。

地球周回軌道をまわる太陽観測衛星によって太陽大気の研究は進みましたが、まだわかっていないことも多くあります。たとえば、太陽コロナの加熱のメカニズムです。太陽表面の温度は約6000度ですが、コロナの温度は100万度以上です。なぜこのような昇温がおこっているのかわかっていません。ソーラープローブ・プラスは太陽に640万km まで接近して、太陽大気の成分やその他の観測を行い、コロナの昇温や太陽風の駆動メカニズムなどを調べることになっています。

太陽にこれだけ接近するとなると、1400度もの高温に耐えなければなりません。私が以前に見たソーラープローブのコンセプト・イメージは、どれも太陽にむかって円錐形となる耐熱シールドをもっていました。今回発表されたソーラープローブ・プラスの耐熱シールドはパネル状になっています。おそらく、耐熱システムについてはさまざまな検討が加えられて、こうした形状になったのでしょう。機会があれば、この点を研究チームに聞いてみたいと思います。
太陽観測衛星SDO の初画像
今年2月11日に打ち上げられたNASA の太陽観測衛星SDO(Solar Dynamics Observatory)の最初の観測画像が公開されました。

SDO は3つの観測装置を搭載しています。太陽の内部構造を知ることができる太陽振動と太陽表面の磁場を観測するHMI(Helioseismic and Magnetic Imager)、太陽の大気であるコロナを多波長で観測するAIA(Atmospheric Imaging Assembly)、太陽からの極端紫外線(EUV)の放射を観測するEVE(Extreme ultraviolet Variability Experiment)です。SDO はこれらの観測装置で太陽を高分解能で同時観測します。

下の画像はSDO の初画像の中の1枚で、AIA がとらえたプロミネンスです。太陽表面からの磁力線にそって巨大なループが生じています。左下の白い丸が地球の大きさを示しています。

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太陽活動は約11年の周期をもっており、現在は、極小期からの立ち上がりの時期にあたっています。下の図は、ベルギー王立天文台のSIDC(Solar Influences Data Analysis Center)が発表している黒点数の推移です。黄色い線は毎日の黒点数、青い線は月毎の黒点数、赤い線はその推移を滑らかにした線です。2008年から2009年にかけては黒点が出現しない日が続いていましたが、最近では黒点数が少しずつ増えているのがわかります。

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SDO の運用年数は5年間で、さらに5年間の運用延長の可能性があります。SDO は極大期へ向かう太陽のダイナミックな姿をとらえてくれるでしょう。運用期間が延長されれば、太陽活動のほぼ1周期についてのデータが得られることになります。
オズマ計画から50年
今年は最初のSETI(地球外知的生命体探査)であるオズマ計画が行われてから50年にあたります。

銀河系内に進んだテクノロジーをもった文明があれば、宇宙に向けて電波信号を発しているに違いない。ウエストバージニア州グリーンバンクの国立電波天文台にいたフランク・ドレイク博士(下左)は、1960年4月、同天文台の直径26mの電波望遠鏡(下右)をくじら座タウ星とエリダヌス座イプシロン星に向け、人工的な信号が送られてきていないかを調べました。この2つの星が探査対象として選ばれたのは、太陽と同じタイプの恒星で、年齢も太陽と同じくらい、そして距離が10光年程度と近くにあるからです。

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この探査計画を、ドレイク博士はオズマ計画と名づけました。オズマとは、フランク・ボームのオズ・シリースの物語に出てくる、オズの国のプリンセスの名前です。ドレイク博士にとって、存在するにちがいないが、見つけることが難しい地球外文明は、遠くにあって訪れるのが難しい不思議なオズの国であったわけです。観測は2か月間にわたって行われましたが、人工的な信号は発見されませんでした。

最近のインタビューで、ドレイク博士は、当時、オズマ計画のアイデアを秘密にしていた理由について、それがUFO や宇宙人探しの「偽似科学」と誤解される可能性があったからだと述べています。一部にはそのような誤解や間違った評価はあったものの、SETI は天文学の1分野として継続され、現在にいたっています。最近では、電波による探査に加え、レーザー光を用いたオプティカルSETI も登場しています。

ドレイク博士は現在、カリフォルニア州マウンテンビューのSETI 研究所カール・セーガン・センターの所長です。同研究所では2007年から、小型の電波望遠鏡を多数ならべたATA によってSETI が行われています。このATA はマイクロソフトの共同設立者であるポール・アレンの資金援助で実現しました。

下の写真はSETI 研究所のペーパーウェイトで、ドレイク博士が日本に来たときにいただいたものです。裏面にドレイク博士と、一緒に来日したジル・ターター博士(現在SETI 研究所 SETI 研究センター所長)にサインしていただきました。

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最近では、SETI とはことなるアプローチで宇宙における生命の存在を研究するアストロ・バイオロジーという学問も登場しています。この分野では、火星や木星の衛星エウロパ、土星の衛星タイタンなど、太陽系内の天体での生命が活発に研究されています。また、系外惑星、すなわち他の恒星をまわる惑星の探索では、木星のようなガス型惑星がすでに360個以上見つかっており、地上の大型望遠鏡や軌道上をまわる天文衛星によって、地球型惑星が見えはじめた段階にあります。今後、地球型の惑星が続々と発見されるでしょう。

宇宙における生命の探査は、21世紀の天文学の大きな研究課題となっています。その原点が、50年前のオズマ計画にあるわけで、今年はそのSETI 50周年を記念するイベントがいくつも行われるでしょう。ロンドンの王立協会では1月25日と26日に、SETI の現在を議論する会議が開催されました。

この会議で、ドレイク博士は「銀河系には1万個の知的文明が存在するだろう」と語りました。一方、バージェス頁岩の生物の研究で有名なケンブリッジ大学のサイモン・コンウェイ・モリスは、「地球上の生命進化は偶然の積み重ねによるもので、同じプロセスがくりかえされることはない。宇宙のどこを探しても、知的文明は存在しない」を主張しました。生命進化の研究者には、このような立場をとる人も多く、分子進化の中立説を提唱した木村資生先生も同じような発言をしていました。

この会議では、さらにNASA のクリス・マッケイがアストロ・バイオロジーの立場から太陽系内天体の生命について語ったり、オプティカルSETI をふくむSETI の最新情報が発表されるなど、話題には事欠かなかったようです。

SETI とは、「我々は何者か?」という根源的な問いに答えようとする試みといえるでしょう。この問いは、21世紀の社会においてますます重要になってきています。
最も遠い銀河
昨年5月のスペースシャトルによる修理ミッションで観測能力が大幅にアップしたハッブル宇宙望遠鏡が、最も遠い銀河の観測に成功しました。この観測はハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド09(HUDF09)とよばれ、ろ座の方角をWFC3(広視野カメラ3)の赤外カメラで観測しました。データの解析にあたっては、2004年にACS(掃天観測用高性能カメラ)で行った観測データも使用されました。

宇宙は膨張しているため、遠くの銀河ほど早いスピードで遠ざかり、赤く見えます。これを赤方偏移といい、その大きさをz であらわします。ハッブルが観測した画像には、z が7前後の銀河が16個、z が8前後の銀河が5個写っていました。より遠方の銀河を観測することは、より古い宇宙の姿を見ることでもあります。これらの銀河は、137億年前に宇宙が誕生してから6億〜8億年後の銀河です。

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遠方銀河の観測は、これまですばる望遠鏡の独壇場でした。すばるが観測した最も遠方の銀河は2006年に報告されたIOK-1で、z は6.964、距離にして128億8000万光年、ビッグバン後7億8000万年ごろの銀河です。

星が世代を重ねると重い元素が増えてきますが、ハッブルが観測したこれらの銀河はきわめて“青く”、ほとんど水素やヘリウムだけであることを示していました。すなわち、これらの銀河は非常に若く、宇宙に初めて銀河が誕生した時代に近い銀河と考えられます。また、そのサイズはわれわれの銀河系の20分の1程度、質量は1%程度でした。こうした小さな銀河が合体しながら、現在の銀河がつくられていったのかもしれません。

スピッツアー宇宙望遠鏡による観測結果も加味すると、これらの銀河に含まれる星の中には、この時代からさらに3億年さかのぼった頃に誕生したものもあるとのことです。おそらく、宇宙で最初の星が誕生した時代の星々です。

ビッグバンによって誕生した宇宙では、最初の3分間で水素やヘリウムなどの軽い元素がつくられました。約38万年後には宇宙の温度は3000度にまで下がり、陽子と中性子が結合して水素原子ができました。その後、最初の銀河や星が誕生すると、星の紫外光で宇宙は再び温められ、中性の水素原子は電離されました。これを「宇宙の再電離」といいます。これが起こったのは宇宙誕生後4億年から9億年の間と考えられています。

観測チームのリーダーの1人であるアリゾナ州立大学のロジャー・ウインドーストは、「われわれは宇宙の再電離の終わりの時代を見ているのかもしれない。あるいは、再電離の時代に入ってしまっているかもしれない」と語っています。これからも、さらに遠方の銀河が観測され、銀河の誕生と進化のプロセスが明らかになっていくと思われます。
ブルームーンの光の下で
「ブルームーン」というと、エラ・フィッツジェラルドやフランク・シナトラ、エルビス・プレスリーなどが歌った名曲を思い浮かべる人もいるかもしれません。この曲では、ブルームーンはさびしい、孤独な心をあらわす存在となっていますが、暦の上でのブルームーンは、「ひと月に2回満月があるときの、2回目の満月」とされています。

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来年の元旦は満月で、初日の出前に西の空で部分月食が見られます。食の最大は4時22分で、月の南の部分が8%ほど欠けます。時差があるため、この月食はアメリカとヨーロッパでは12月31日に起こります。12月2日が満月でしたから、これらの地域では、この日は12月の2回目の満月です。すなわち、「ニューイヤー・イブのブルームーンに起こる月食」となるわけで、「世界天文年2009」の最後の夜を飾る天文ショーでもあります。

満月から次の満月までは29.5日かかります。したがって、2月以外の月では、満月が2回ある可能性があります。来年、日本では1月1日と1月30日、3月1日と3月30日が満月ですから、1月30日と3月30日がブルームーンとなります。1年間に満月が13回ある年、すなわちブルームーンが起こる年は2〜3年ごとにめぐってきます。

ブルームーンといっても、月の色が青く変化することはありません。しかし、月が青く見えたという記録は残っています。1883年、インドネシアのクラカトア火山が大噴火を起こし、大量の火山灰が大気中に噴き上げられました。火山灰の直径は約1μmで、赤い光を散乱させるため、人々は青色ないし緑色の月を目撃しました。また太陽はラベンダー色に見え、夕焼けは異常に赤かったといわれています。火山灰は成層圏に達し、長い間そこにとどまったため、このような現象は1年以上続きました。

もちろん、月が青く見えることなど、まれにしか起こりません。ここから、「滅多に起こらない」という意味の ”Once in the blue moon” という表現が生まれたとい言われています。最初の『ブルームーン』の曲ですが、「ブルー=メランコリー」という意味以外に、”Once in the blue moon” という意味もこめられているのです。

その後、1980年のアメリカのセントへレンズ、1983年のメキシコのエルチチョン、1991年のピナトゥボの火山噴火でも、青い色の月が見えたと報告されています。また、大規模な森林火災で発生した煙によっても、月が青く見えることがあるようです。

さて、最初のブルームーンの定義に戻りましょう。1999年のことでした。『スカイ&テレスコープ』誌に、「これまでのブルームーンの定義は間違っていた」という記事が掲載されました。しかも、その原因は『スカイ&テレスコープ』誌自身の昔の記事にあったというのです。これには、とてもびっくりしたものです。誰もが(『スカイ&テレスコープ』誌の編集者も含めて!)、ブルームーンとは「ひと月に2回満月があるときの、2回目の満月」と思っていたのですから。

「間違い」は、次のようにして起こりました。『スカイ&テレスコープ』誌の1943年7月号のコラムで、大学教員のローレンス・ラフラーがブルームーンについて触れました。彼の記事は、当時出版されていた『メイン・ファーマーズ・アルマナック』(現在メイン州ルイストンから出版されている『ファーマーズ・アルマナック』とは関係ないようです)という農事暦に書かれていたことをベースにしていました。

『メイン・ファーマーズ・アルマナック』では、冬至をスタートとして3か月ごとを、「冬」「春」「夏」「秋」と決めていました。各季節の満月は基本的に3回ですが、1年間に満月が13回ある年には、どこかの季節で満月が4回になります。そして、満月が4回ある季節の3回目の満月をブルームーンと呼んでいたのです。各季節の3回目の満月は、その季節がそろそろ終わることを告げるものですが、満月が4回ある場合の3回目の満月では、季節の移り変わりを告げるには早いため、このような呼び方をしたのです。この決め方では、ブルームーンが起こるのは2月、5月、8月、11月です。

ラフラーは『メイン・ファーマーズ・アルマナック』に書かれているブルームーンという言葉を紹介しましたが、上に書いたような内容をくわしくは説明しませんでした。その後、『スカイ&テレスコープ』誌の1946年3月号で、アマチュア天文学者のジェームズ・ヒュー・プルーエットがラフラーの記事について言及しましたが、彼自身は『メイン・ファーマーズ・アルマナック』を読んでいませんでした。そして、「1年間に満月が13回ある年には、ある月には満月が2回ある。そのときの2回目の満月はブルームーンと呼ばれる」と書いてしまったのです。その後、『スカイ&テレスコープ』誌の記事やラジオ番組などで、ブルームーンの新しい(間違った)定義は世間に広まっていきました。

ブルームーンとは現代のフォークロア、あるいは都市伝説と言えるものです。現在では、伝統的なブルームーンと新しい定義の現代的なブルームーンが両方存在しています。ブルームーンについて書かれた記事では、ほとんどの場合、『スカイ&テレスコープ』誌の記事に触れられていますが、天文学者も天文雑誌や科学雑誌の編集者も、新しい定義のブルームーンを間違いとして排除することはしませんでした。ブルームーンという、どこかミステリアスな言葉に誘われて、多くの人が天文現象に興味をもってくれればそれでいいと、皆が考えているからです。
ベツレヘムの星
この季節、街のあちこちでクリスマスのイルミネーションが見られます。クリスマスツリーの一番上に飾られる星は、イエスが生まれたときに出現したベツレヘムの星です。この星の正体が何であったのかについては、昔からいろいろな説があります。

ルネサンス初期の画家、ジョット(1267〜1337)の『東方三博士の礼拝』では、イエスの生まれた小屋の上に彗星が描かれています。この彗星は76年周期のハレー彗星で、ジョットがこの絵を描く前の1301年に出現しました。ジョットがハレー彗星を実際に見たかどうかは定かではありませんが、少なくとも、その出現に強い印象を受け、これをベツレヘムの星として描いたわけです。イエスが生まれたころのハレー彗星の出現時期は紀元前12年なので、これをベツレヘムの星と考える人もいます。余談ですが、ハレー彗星が1986年に地球に接近したとき、ヨーロッパが打ち上げたハレー彗星探査機「ジョット」は、この絵を描いた画家の名前にちなみ名付けられたのです。

東方三博士の礼拝

ベツレヘムの星は『新約聖書』の「マタイによる福音書」に出てきます。イエスが生まれたとき、エルサレムのヘロデ王のところに、東方から3人の「占星術の学者」(以前の聖書では「博士」あるいは「学者」と訳されていましたが、1987年の『新共同訳聖書』でこうなりました)がやって来て言います。「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。わたしたちは東方でその方の星を見たので、拝みにきたのです」。ヘロデ王は不安になり、エルサレムの学者たちを集めて、預言では救世主はどこで生まれることになっているかと聞きます。それはベツレヘムであると、彼らは答えました。そこでヘロデ王は占星術の学者たちを呼び寄せ、「星の現れた時期」を確かめ、ベツレヘムへ行ってその子のことを調べてほしいと頼みます。「彼らが王の言葉を聞いて出かけると、東方で見た星が先立って進み」、イエスのいる場所の上に止まります。「学者たちはその星を見て」喜びにあふれました。聖書でベツレヘムの星について述べられているのは、これだけです。

ベツレヘムの星が象徴ではなく、実際に起こった天文現象であったとすると、それが何かを知るためには、まずイエスの生まれた年が問題になってきます。紀元1年がイエスの生まれた年とされているわけですが、実際のイエスの誕生年はそれより少し早いことがわかっています。イエスの両親、ヨセフとマリアがベツレヘムへ行ったのは、ローマ皇帝アウグストゥスの人口調査令のためでしたが、これが行われたのは紀元前8〜5年です。ヘロデ王がイエス、すなわちユダヤの王の誕生をおそれて2歳以下の男児を皆殺しにしたのが紀元前6〜5年、ヘロデ王が死んだのが紀元前4年です。したがって、イエスの誕生は紀元前7〜5年あたりとみられています。このころにおこった、占星術的に見て特別な意味をもつ天文現象を探さなくてはなりません。

もう1つ、ベツレヘムの星が現れた方角も大事になるかもしれません。占星術の学者は、「東方で」星を見たのですが、この部分は原文からすると「東の場所で」という意味以外に、「東の空に」とも解釈できるのです。また、ベツレヘムはエルサレムの南にありますので、星が占星術の学者たちに先立って進んだということは、このとき、星は南の方角に見えていたことになります。一晩のうちに、星は東から西に移動しますから、どの方角に見えていても問題ないとも考えられますが、ある星または特別な天文現象が東の空にあらわれる(昇ってくる)こと自体が、ベツレヘムの星の意味だとする考えもあるのです。

さて、ベツレヘムの星とは何だったのでしょうか。彗星は候補の1つです。ハレー彗星は出現時期からみて少し無理があるかもしれませんが、イエスが生まれたころに別の彗星が出現していたかもしれません。ただし、それに該当する彗星の記録は残っていません。

一生の終わりに爆発して明るく輝く超新星も、候補になります。ヨハネス・ケプラーはこの説をとっていました。彼は1604年に超新星を観測していますが、そのとき木星と土星が接近しており、超新星はこの2つの惑星の間の位置に出現しました。そこで、ケプラーは惑星が接近した時に超新星が生まれると考えました。彼は惑星の軌道計算によって、紀元前7年に木星と土星が接近したこと、さらに紀元前6年には火星と木星と土星が接近したことを知っており、このときに出現した超新星がベツレヘムの星だと考えたのです。

紀元前7年には木星と土星の接近(会合)がうお座で3回おこりました。この3連会合はめずらしい現象なので、これがベツレヘムの星であるという説もあります。聖書で「星」は単数形になっていますが、それ自体、複数の概念をふくむ言葉とされていますので、こうした天文現象も、ベツレヘムの星の候補となり得るのです。3回の会合の日付については、文献によっていくつか別の組み合わせがあります。計算に使ったプログラムのせいかもしれません。私が「ステラナビゲーター」で調べたところでは、5月27日、10月6日、12月1日というのが正しいようです。

比較的最近では、紀元前6年に木星がおひつじ座にあり、4月に東の空に昇ってきたことがベツレヘムの星だという説が出されています。これはローマ時代のコインに、おひつじが振り向いて星を見ているという図柄のものがあることから考え出されたものです。この年、木星はおひつじ座の中を行ったり来たりするのですが、12月に方向を変えるために止まったときが、ベツレヘムの星がイエスの小屋の上に止まったときだというのです。

ベツレヘムの星が何であるか、たくさんの説が出ていますが、結論が出ることはないでしょう。しかし、それはそれでいいのではないかと、私は思います。キリスト教徒でない私たちも少しだけ聖書の世界に親しみ、古い時代の天文現象に思いをはせることができるのも、クリスマスの楽しみの1つです。
ハッブル画像の色について
ハッブル宇宙望遠鏡の画像について、いろいろなところで話をしていると、実際の天体があのようなきれいな色をしていると考えている方が多いことに気づきます。ハッブル宇宙望遠鏡のサイトでは、ハッブルの画像の色のつけ方についてちゃんと説明していますが、ハッブルの画像を紹介した本の中で、これについて説明したものはあまりないようです。

『カラー版 ハッブル宇宙望遠鏡 宇宙に挑む』(野本陽代著、講談社現代新書)には、惑星状星雲のところに、次のような記述がありました。「拡散していくガスは、中心の白色矮星が放つ紫外線に照らされ、個々の状況にあわせて色や形の異なる、美しい惑星状星雲となって私たちの目を楽しませてくれる。」「昔の小さな望遠鏡ではガスの様子が惑星のような円盤に見えたことから「惑星状星雲」と呼ばれるようになった。」

ハッブル宇宙望遠鏡での観測方法について、著者がご存知ないはずはないと思いますので、筆がすべってしまったのでしょう。しかし、このように書かれてしまうと、「昔の小さな望遠鏡」ではぼんやりしか光のかたまりにしか見えていなかった惑星状星雲を、ハッブルのような高性能の望遠鏡で観測すると、「美しい」姿が明らかになったというように解釈されかねません。もちろん、これは間違っています。

私たちがデジカメで写真を撮るとき、被写体の像は、3原色であるRGB(赤、緑、青)の3枚のフィルターを通して別々に取得された後、3色が合成されてカラー写真となります。したがって、デジカメで撮影されたカラー写真の色は「トゥルーカラー(実際の色)」です。しかし、ハッブル宇宙望遠鏡(地上の光学望遠鏡も同じですが)で撮影に用いられるフィルターにはさまざまな波長のものがあり、得られた画像は人工的に着色された「フォールスカラー(偽似的な色)」です。ハッブルの画像に見られる色は人工的なものであり、実際に私たちが肉眼で見る色ではありません。

ですから、「拡散していくガスは・・・美しい惑星状星雲となって私たちの目を楽しませてくれる」というのは、誤解をまねく表現といわざるをえません。ハッブルの画像が「美しい」としたら、その意味は、観測対象の天体そのものが美しい色で輝いているのではなく、「拡散していくガスを特定の波長のフィルターを選択して観測し、そのデータに色をつけて合成した研究者の美的センスがすぐれている」ということなのです。

私が参加して制作したJST(科学技術振興機構)「理科ねっとわーく」用のデジタル教材「サイエンスファインダー」(制作:財団法人日本宇宙フォーラム)では、ハッブル宇宙望遠鏡での観測データにいかにして色がつけられていくのかを説明しました。「理科ねっとわーく」は学校の理科の先生が授業で使うことを目的としていますが、機能が少し制限された「一般公開版」もあり、こちらの方は誰でもアクセス可能です。もちろん、サイエンスファインダーも見ることができます。

このサイエンスファインダーを使って、超新星残骸である「かに星雲」の画像が、ハッブル望遠鏡でどのようにして得られたかをみてみましょう。

かに星雲

下の画面は、「かに星雲」を観測するために選ばれた3つのフィルターを示しています。ハッブル宇宙望遠鏡のWFPC2(広視野/惑星カメラ2、現在はWFC3に交換されています)には48種類のフィルターが装着されていましたが、この観測ではその中からF502N(波長501nm)、F631N(波長631nm)、F673N(波長673nm)が選ばれました。F502Nは青緑色、F631Nはだいだい色、F673Nは赤色のフィルターです。

サイエンスファインダー

これらのフィルターを使って得られたデータが、下の画面に示されています。当然のことながら、それぞれのデータはモノクロです。波長によって、明るい部分が異なっているのがわかります。F502Nは電離した酸素原子、F631Nは中性の酸素原子、F673Nは電離した硫黄原子の存在を示しています。

サイエンスファインダー

下の画面では、各フィルターのデータにRGBをふり分け、カラー合成したところが示されています。こうして、ハッブルの美しく、迫力のある画像ができあがるわけです。

サイエンスファインダー

私がこうした教材をつくったのは、最初にもふれたように、ハッブル宇宙望遠鏡の画像を実際の色と考えている生徒が多かったためです。先生方にこの教材を教室で使ってもらえれば、生徒たちはハッブル宇宙望遠鏡で行われている観測の方法を理解することができ、宇宙への関心はより深いものになるのではないかと思っています。

なお、サイエンスファインダーには、ハッブル宇宙望遠鏡だけでなく、すばるやVLTのような地上の光学望遠鏡、さらにはスピッツアー赤外線望遠鏡やチャンドラX線望遠鏡など、可視光以外の「見えない」領域の電磁波で観測した画像のつくられ方も説明してあります。興味のある方はアクセスして、使ってみてください。
すばる望遠鏡10周年
一橋記念講堂で開かれた「すばる望遠鏡10周年記念シンポジウム」に行ってきました。

すばる望遠鏡はハワイ島のマウナケア山頂につくられました。ここは世界で最も天体観測に適した場所の1つとして知られています。標高は4205m、気圧は平地の3分の2しかなく、快晴の日が多く、乾燥しています。1999年1月のファーストライト以来、天文学の最前線で多くの成果をあげてきたことは、みなさんもご存じのことと思います。

ファーストライトから1年後、すばる望遠鏡を訪れたときのことを思い出します。明るいうちに山頂に着き、見学をしているうちに、太陽が沈み、澄んだ空の色は青から濃紺へと変わっていきました。気がつくと、一番星が出ていました。金星です。空気が薄いため、それまで見たことのない明るさで輝く金星をみたとき、この望遠鏡の輝かしい未来が見えたような気がしたものです。

シンポジウムでは、観山正見国立天文台台長の開会挨拶の後、4つの基調講演が行われました。国立天文台の渡部潤一先生の講演では、数々の発見で見えてきた新しい太陽系の姿が説明されました。東京大学の須藤靖先生の講演は太陽系外惑星に観測に関するものでした。東京大学数物連携宇宙研究機構の村山斉先生の講演では、暗黒物質と暗黒エネルギーの観測に果たすすばる望遠鏡への期待が語られました。国立天文台の家正則先生の講演では、すばる望遠鏡による最遠の銀河の観測が語られた後、次世代30m望遠鏡(TMT)計画が紹介されました。

すばる望遠鏡10周年記念シンポジウム

天文学の進歩にともない、すばる望遠鏡が活躍する領域も広がっています。これからの10年も、すばる望遠鏡は数々の素晴らしい発見をもたらすでしょう。

よみがえったハッブル宇宙望遠鏡
今年5月のSTS-125による修理ミッション完了後、3か月にわたって観測装置の較正作業などが行われていたハッブル宇宙望遠鏡がよりパワフルになってよみがえり、このほど、修理後初の観測画像が公開されました。

HST

左上はバタフライ星雲ともよばれるさそり座の惑星状星雲NGC6302です。死につつある星から放出されたガスが双方向に噴き出しています。右上は「ステファンの五つ子」とよばれるペガスス座の銀河群です。左下はケンタウルス座の巨大球状星団であるオメガ星団の中心部で、数多くの星がひしめいています。右下はりゅうこつ座の星形成領域イータ・カリーナ星雲の一部です。

STS-125ミッションでは、WFPC2(広視野/惑星カメラ2)がWFC3(広視野カメラ3)に交換され、COSTER(光学補正装置)のかわりにCOS(宇宙起源分光器)が取りつけられました。またACS(掃天観測用高性能カメラ)とSTIS(宇宙望遠鏡撮像分光器)の修理も行われました。このほか、科学機器コマンド・データ処理システム、高精度ガイドセンサー、ジャイロ、バッテリー、断熱カバーなども交換されました。

これらによって、ハッブル宇宙望遠鏡は強力な観測能力をそなえ、今後10年間は観測を続けることが可能といわれています。
太陽の黄金の林檎
イェーツの詩にその題名をとった、レイ・ブラッドベリの『太陽の黄金の林檎』は、地球のエネルギーが枯渇した時代の話です。宇宙船「金杯号」は燃えさかる太陽に向かうのですが、それは太陽の表面から炎をすくい上げて地球にもち帰り、ふたたび町を明るく照らし、機械を動かすためなのです。

金杯号が太陽表面に到達したとき、そこにはどのような光景が広がっていたのでしょうか? はげしく活動する太陽の素顔を、私たちは望遠鏡や人工衛星を使って、金杯号よりはるかに遠くから観測するしかありません。しかし、日本の太陽観測衛星「ひので」の画像や動画は、まるで私たちが金杯号に乗っているかのように、太陽表面の精細かつダイナミックな姿を教えてくれます。

「ひので」の画像や動画は国立天文台のひので ホームページで見ることができますが、とくに動画がおすすめです。
「ひので/XRTで見る、太陽の自転、コロナの発達」は、「ひので」のX線望遠鏡(XRT)で太陽のコロナをとらえたものです。コロナにははげしく活動している領域があることがわかります。
「太陽風の源を「ひので」により初めて同定。太陽風の加速機構に迫る」という動画では、太陽の活動領域から噴き出す高速ガスの流れが見えています。
「XRTによる静穏領域の動画」では、活動領域ほど活発ではない領域も、クローズアップしてみると絶え間なく活動していることがわかります。
「カルシウム線によるフレアリボンの成長」は、黒点周辺でおきた巨大フレアを「ひので」の可視光・磁場望遠鏡(SOT)がとらえたもので、まるでこの大爆発現象を間近から見ているような気になります。
太陽のへりを見ている「黒点上空の太陽大気中の波動の様子」では、噴き出すガスが草原のようにそよぎ、その上をプロミネンスが上下に振動しながら移動しています。
「黒点「ライトブリッジ」にて絶えず発生する彩層ジェット」は、太陽黒点の「割れ目」からジェットが噴き出す様子をとらえています。
また、可視光・磁場望遠鏡がとらえた光球と彩層の同時観測では、煮えたぎるような太陽表面の様子が明らかになっています。

これらを見ていただければ、私がなぜ「ひので」の動画から「金杯号」を思い出すのか、おわかりいただけるでしょう。

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