ウクライナ問題を読み解く

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    ロシアによる「特別軍事作戦」発動以来100日以上が経過しています。一刻も早い停戦と平和的解決を望みますが、そのための道筋を考えるためには、1991年のソ連崩壊以後、この地域で何が起こったかを知る必要があります。私が読んだ本の中から参考になると思われるものを紹介します。

     

     

    法政大学名誉教授の下斗米伸夫先生の『ソ連を崩壊させた男、エリツィン』(作品社)、『新危機の20年 プーチン政治史』(朝日新聞出版)、『宗教・地政学から読むロシア』(日本経済新聞出版)は、ソ連崩壊以後のロシアについて知る上で大変参考になります。ウクライナを含む周辺諸国との関係の歴史的経緯についても詳しく書かれています。

     

     

    サミュエル・ハンチントン(1927〜2008)の名著『文明の衝突』(集英社)は、ソ連崩壊からそれほど経っていない1996年に出版されました。この本で、ハンチントンは冷戦終結後の戦争が、国境ではなく文明の境界線に沿って起こることを指摘しました。ウクライナの「フォルト・ライン(断層線)」についても具体的に述べられており、今日ウクライナで起こっていることがすでに予測されています。ニューヨーク大学およびプリンストン大学の名誉教授で、ロシア研究が専門の政治学者であったスティーヴン・コーエン(1938〜2020)の『War With Russia?』は、2014年から2018年までにウクライナで起こったことを分析しています。

     

     

     

    ウクライナがどういう国かを知るためには、黒川祐次『物語 ウクライナの歴史』(中公新書)があります。また、隣国のポーランドは今回の紛争で鍵となる国の1つになっています。ポーランドについて知るには渡辺克義『物語 ポーランドの歴史』があります。

     

     

     

    草野森作『プーチンの戦争』(筑摩書房)は2014〜2017年の現地取材をまとめたもので、当時ウクライナで何が起こり、人々がどんなことを考えていたかを知る上で役に立ちます。Institute for the Study of Warの『PUTIN’S OFFSET』は2020年に発表されたレポートで、プーチン大統領が2014年以来、西側に対して何を仕掛けているかを分析し、アメリカの対応を提案したものです。

     

     

    ウクライナ問題は非常に複雑な背景をもっており、多面的な考察が必要です。


    豊渓里核実験場はすでに使用不能

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      Punggye-ri Nuclear Test Site Potentially Unusable.

       

      北朝鮮は豊渓里核実験場を廃棄する準備をしているようです。

       

      20180521_01.jpg

       

      しかし北朝鮮は核の即時廃棄を考えていません。米朝合意によって「非核化」が進められることになったとしても、北朝鮮の核技術は何らかの形で温存され、場合によってはひそかに核開発が続けられる可能性もあります。

       

      豊渓里核実験場は後述するように山体が崩壊する危険性があり、もはや核実験を行う場所として適していません。おそらく別の場所に新しい核実験場が建設されているでしょう。すでに必要なくなった施設を廃棄しても、それは単なる政治ショーにすぎません。

       

      これと同じようなことは2008年にありました。北朝鮮はプルトニウム生産を行っていた寧辺の黒鉛減速炉の運転を2007年に停止し、IAEAの査察を受け入れるとともに、翌年に原子炉の冷却塔を爆破しました。

       

      20180521_02.jpg

       

      原子炉無力化の一環とされた冷却塔爆破の際にはアメリカ、韓国、日本のメディアも招待され、その映像は世界に配信されました。ただし、冷却塔は原子炉本体とは別の構造物であり、新たに建設するのはそれほど難しいことではありません。実際、北朝鮮は2013年に冷却塔を復旧し、2015年に原子炉を再稼働させました。

       

      北朝鮮はこれまで6回の核実験を行いました。

      1回目:2006109

      2回目:2009525

      3回目:2013212

      4回目:201616

      5回目:201699

      6回目:201793

      実験が行われたと推定されている場所を下に示します。

       

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      豊渓里には「北」「東」「西」「南」の坑道があります。最初の実験は東の坑道で行われましたが、それ以後の5回は北の坑道を使っています。北の坑道は標高2205mの万塔山の下に水平に伸びており、その奥で爆発させています。2017年の6回目の実験は推定120ktともいわれる規模の大きなもので、北朝鮮は水爆の実験であったと主張しています。6回目の実験場所は特定されておらず、いくつかの推測がありますが、5回目の実験場所の近くとされています。5回目、6回目の実験を行った場所は、万塔山頂上のほぼ真下にあたります。深さ800mほどで核爆発を行ったとみられます。

       

      地下で核爆発を行うと、爆発点には球形の空洞(キャビティー)ができ、その内壁は岩石が融けてガラスになります。高温のガラスは空隙の底にたまります。爆発点の周囲の岩盤には、衝撃によって広い範囲にわたって亀裂が走ります。亀裂でもろくなった空洞上部の岩盤は落下しで空洞を埋めます。このため空洞上部の岩盤は次々に崩落し、チムニー(煙突)とよばれる円筒状の破砕構造ができます。空洞のサイズが小さい場合は、チムニー形成にいたるような大規模な崩落はおきません。

       

      2回目〜5回目までの核実験でできた空洞の直径は1〜数mと推定されます。6回目の実験は規模が大きかったため、空洞は直径10mほどになったでしょう。6回目の核実験では、マグニチュード6.3の地震が観測されました。さらに核爆発の830秒後に、同地点が震源と推定されるマグニチュード4.1の地震が発生しました。2回目の地震は、空洞が崩壊したために発生したと考えられています。

       

      万塔山の山体はこれまでの実験でもろくなっており、崩壊する危険性があります。実際、地すべりが起こっている場所も多数あります。山体の崩壊は、まだ使っていない「西」や「南」の坑道を使ったとしても発生する可能性があります。さらに亀裂を伝わって放射性物質が山体から大気中に漏れてくる可能性もあります。豊渓里はもはや使用できない核実験場なのです。


      北朝鮮:軍事パレードに火星15が登場

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        North Korea Holds Military Parade

         

        北朝鮮が軍事パレードを行い、昨年11月に発射実験を行ったICBM(大陸間弾道ミサイル)、火星15が登場しました。

         

        20180208_01.jpg

         

        今回の軍事パレードでは、現在、北朝鮮が開発に力を入れていると考えられる固体燃料のミサイルは登場しませんでした。また、ムスダンのような旧世代のミサイルも登場しませんでした。登場したのは火星12、火星14、そして火星15で、ここ数年のミサイル開発の実績を誇示する目的があったと思われます。

         

        下は火星12です。

         

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        下は火星14です。

         

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        火星15は最後に登場しました。

         

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        パレードに参加した火星154基で、シリアル番号は11111702から11111705でした。昨年11月に発射された火星15のシリアル番号は11111701でしたから、北朝鮮は発射可能な火星15を少なくとも4基は保有していることを、アメリカに見せたかったのでしょう。

         

        一方、北朝鮮は潜水艦発射式の固体燃料ミサイルや、我々が知らない新型のミサイルも開発していると考えられます。その意味では、今回は手の内をまったく見せない軍事パレードであったといえます。



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