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北朝鮮:新たなICBM 発射実験と軍事オプションの可能性
北朝鮮が新たなICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験を行う兆候がみられると報道されています。これまで2回実験が行われた火星14 の改良型という見方がありますが、固体燃料を用いるミサイル、北極星3 か火星13 の可能性もあります。北朝鮮には最近、ICBM を目指す新しい系列のミサイルが登場していることは、ここここに書きました。特に固体燃料を用いる北極星3、あるいは火星13 は、世界にとって大きな脅威となります。

北朝鮮をめぐる情勢はきわめて緊迫しており、アメリカによる軍事オプションが発動されるかどうかの瀬戸際に来ています。北朝鮮による新たなICBM実験はその引き金になりかねません。それは、以下のような事情によります。

トランプ政権は今年7月には、北朝鮮の核開発問題の解決は軍事オプション以外にないと覚悟を決めました。オバマ政権で大統領補佐官(国家安全保障担当)をつとめたスーザン・ライス氏らが8月に「北の核を容認し、使わせないための対話をすべし」という核容認論を相次いでメディアで発表し、軍事行動をけん制した背景には、こうした事情があります。

トランプ政権は北朝鮮の核保有を絶対に認めない立場を崩しておらず、検証可能な形で北朝鮮が核を放棄しないかぎり、対話には応じない姿勢をとっています。北朝鮮が核とミサイルの開発を放棄しなければ、軍事オプションを取らざるを得ないことは、すでにいくつかのルートで北朝鮮に伝えられています。したがって、アメリカが軍事オプションを取るかどうかは、今や北朝鮮がどのような対応をとるかにかかっているのです。

つまり、トランプ政権の北朝鮮に対する「対話」と「圧力」とは、二者のうちどちらをとるかではなく、同じことの両面なのです。しかも、トランプ政権は期限を今年末までに区切っている可能性が高いと思われ、それまでに北朝鮮が検証可能な形での核放棄に応じなければ、軍事オプションが発動されます。おそらくトランプ大統領は韓国訪問の際、北朝鮮に対して最後通告といえるメッセージを、世界中が知る形で発表することになるでしょう。

10月31日、アメリカ民主党の上院議員が、トランプ大統領が議会の承認なしに北朝鮮を先制攻撃することを阻止する法案を提出しました。軍事力の行使が近いという判断にもとづくものと思われます。また11月2日に、アメリカ議会調査局は北朝鮮に対する7つ選択肢を検討し、軍事的手段をとった場合、多数の死者を含む大きな被害がでるとの報告書を発表しました。この報告書で述べられているオプションには、「現状維持」や「実質的な核容認」、「韓国からのアメリカ軍の撤退」までが入っています。それらも含めてすべての選択肢に非常に大きなリスクがあるとする結論になっており、事実上、北朝鮮問題に決定的な解決策がないことを物語っています。

朝鮮半島の緊張がここまで高まると、偶発的な要因によって軍事的コンフリクトが起こる可能性も否定できません。
『ブレードランナー 2049』
Blade Runner:2049

『ブレードランナー 2049』を観てきました。

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SF映画史上、他に比べるものがない特別な存在である1982年公開のオリジナル『ブレードランナー』の続編として、重厚かつ思索に富む作品になっています。75歳になったハリソン・フォードが出演することによって、オリジナル『ブレードランナー』のどのバージョンでもはっきりとした結論がでていなかった疑問には、最初から答が示されているものの、オリジナルと同様に、フィリップ・K・ディックの原作がもつ根源的な問いが、真正面から描かれています。

とはいえ、この作品はオリジナルの続編というよりは、1つの独立した作品として楽しんだ方が良いかもしれません。35年前に描かれた2019年の未来社会と、ほぼその時代になった現代に描かれた30年後の未来社会はまったく異なっているからです。その間のテクノロジーの発達と社会の変容は驚くべきものです。オリジナルの『ブレードランナー』が描いた混沌とエネルギーに満ちた都市の風景は、今ではアジアのいくつもの都市で現実のものになっています。オリジナルの『ブレードランナー』と同じ世界を共有するウイリアム・ギブソンのSF小説『ニューロマンサー』(1984年発表)が描いた、脳に埋め込んだチップでつながる電脳空間は、今やスマホの世界となって日常化しています。かつては最先端のテクノロジーと考えられていたものが、ありふれた日常となってしまった現代に描かれる30年後の未来は、夜の街路に人影はまばら、そして郊外には核戦争や気候変動によって破壊された都市が廃墟となって広がるディストピアになっています。

『ブレードランナー 2049』の監督ドゥニ・ヴィルヌーヴが、『ブレードランナー』を大事に扱っていることもよくわかりました。レイチェルをもう一度見たいというファンに応えるシーンも用意されています。私にアンドレイ・タルコフスキーの作品を連想させたラストシーンは、『ブレードランナー』の、ルトガー・ハウアー演じるレプリカントがビルの屋上でデッカードを救って命を終えるシーンへのオマージュといえるでしょう。
天宮1号、来年1月か2月に地球に落下
China's Tiangong-1 falls to Earth

2016年3月に制御不能になった中国の軌道上実験モジュール、天宮1号は、現在1日に約160mずつ高度を下げています。10月11日の中国の発表によると、現在の平均高度は311km(近地点297km、遠地点325km)で、大気圏再突入は2018年1月か2月と予測されています。

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天宮1号は全長10.4m、重量8.5tで、大気圏に再突入した際、大部分は分解し、燃えつきてしまいますが、破片の一部は燃えつきずに海上または地上に落下する可能性があります。1997年には、電源に原子炉を使用していたソ連の衛星の一部がカナダに落下したことがあります。また、1998年にはアメリカの宇宙実験室、スカイラブの破片がオーストラリアに落下しました。

天宮1号の軌道傾斜角は43度です。したがって、赤道をはさんで北緯43度から南緯43度の間のどこかに破片が落下する可能性があります。大気圏再突入の直前にならないと、どこに落ちてくるかはわかりません。北緯43度というと、北海道の一番南にあたりますので、本州、四国、九州、沖縄が落下領域に含まれます。ただし、日本に落下する確率は1000分の1以下です。

天宮1号は主に神舟宇宙船のドッキング・ターゲットとして用いられた軌道モジュールです。実験装置や観測装置を多数搭載していたわけでなく、燃えつきずに落下してくる破片が多いとは考えられません。また破片は1箇所に落ちてくるのではなく、落下する経路にそってばらばらと落ちてきます。したがって、破片による人命被害や物的被害を過度に心配する必要はありません。

天宮1号の姿勢制御や軌道変更を行うロケットエンジンは、燃料にヒドラジンを使用しています。ヒドラジンは強アルカリ性の有害物質で、これに触れると、皮膚や粘膜はただれたり火傷のような状態になったりします。また、吸いこんだ場合には肺の組織が損傷したり、呼吸困難におちいったりします。1996年には中国の長征3号Bロケットの打ち上げが失敗し、ロケットは発射直後に近隣の村に落下しました。燃料のヒドラジンによって多数の死亡者が発生しました。

天宮1号の燃料タンクにはまだヒドラジンが残っている可能性がありますが、大気圏再突入の際、燃料タンクは破壊され、ヒドラジンはすべて燃えてしまいますので、地上に影響を与えることはありません。

天宮1号のような大きな宇宙構造物は、運用終了後、太平洋に制御落下させるのが常識です。2001年、ロシアはソ連時代から運用していた重量120トン以上のミール宇宙ステーションを、南太平洋に制御落下させました。燃えつきなかった破片は海上に落下しましたが、何の被害もありませんでした。中国は今後、独自の宇宙ステーションの建設を計画しています。運用終了後の軌道モジュールを安全に制御落下させる能力をもつことは、中国の宇宙開発にとって大きな課題です。
映画『ドリーム』:アフリカ系アメリカ人女性たちとNASA
Hidden Figures

NASA の初期の有人宇宙計画に大きな役割を果たしたアフリカ系アメリカ人女性たちを描いた映画『ドリーム』を観てきました。

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とてもよくできた映画です。この映画に登場するキャサリン・ジョンソンさん、ドロシー・ヴォーンさん、メアリー・ジャクソンさんは実在の人物です。この映画をきっかけに多くの人が宇宙開発に興味をもってもらえればと思います。1950年代後半から1960年代初めにかけてのなつかしいアメリカ車や女性たちの素敵なファッションを楽しむこともできます。

残念なことといえば、プログラムの日本で書かれた解説部分に、マーキュリー計画の背景説明に正確ではない個所が多々あったり、映画として脚色された部分が事実と混同されかねない書き方をされていたことでしょうか。

彼女たちの成功を「ポジティブな考え方」や「あきらめない心」のせいにするのは、物事の一面しか見ていないことになるでしょう。そのような美談からはほど遠く、彼女たちを取り巻く環境はきわめてきびしいものでした。第二次世界大戦の時代から戦後、そして1958年にNASA が発足してからも、アメリカ社会には深い人種差別がありました。それでもなぜ、彼女たちがNASA で大きな業績を成し遂げることができたかといえば、それは彼女たちの能力と努力のたまものであり、そして、キャサリン・ジョンソンさんが最近のインタビューで語っているように、NASA が1つの目標にむかって皆で進んでいく組織だったからでしょう。

この映画に興味をもたれた方はマーゴット・リー・シェタリーの原作“Hidden Figures: The American Dream and the Untold Story of the Black Women Mathematicians Who Helped Win the Space Race” を読むことをお勧めします。映画ではキャサリンさんのマーキュリー計画での仕事が中心になっていますが、原作の最初の3分の1は、ドロシー・ヴォーンにささげられています。

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ドロシーさんは当時NASA で働いていた多くの黒人女性たちのパイオニアといえる存在でした。1943年12月、バージニア州ファームビルの高校教師だったドロシーさんがグレイハウンド・バスに乗って、NASA の前身であるNACA(アメリカ航空諮問委員会)のラングレー・リサーチ・センターに向かうところから、すべての物語がはじまるのです。

ドロシーさんはラングレー・リサーチ・センターの西エリア計算ユニットに配属されます。「人間コンピューター」として計算尺や機械式計算機を用いて航空分野の計算をするのが仕事でした。ドロシーさんたち黒人女性と、同じ仕事をする白人女性たちの仕事場は分けられており、ドロシーさんたちが隔離されていた建物が西ユニットでした。1949年にドロシーさんは西ユニットのスーパーバイザー(監督者)になりました。黒人女性のスーパーバイザーはNACA初のことでした。彼女の役職は1958年10月にNACA がNASA に改組されるまで続きました。NASA がスタートすると、黒人女性を隔離していた施設はなくなり、それとともにドロシーさんは新しいコンピューター部門に移りました。ドロシーさんは1971年にNASA をリタイアし、2008年に亡くなりました。

ドロシーさんが長をしていた西エリア計算ユニットにメアリー・ジャクソンさんが雇われたのは1951年でした。2年後に超音速風洞実験の部署に配属されたメアリーさんは、これをきっかけにエンジニアになる道を目指します。

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メアリーさんが黒人女性として初のNASA のエンジニアになったのは1958年のことでした。メアリーさんは1985年にNASA をリタイアし、2005年に亡くなりました。

キャサリン・ジョンソンさんが西エリア計算ユニットにやってきたのは1953年の夏のことでした。2週間後、ドロシーさんは彼女を飛行研究部門に異動させます。キャサリンさんはそこで航空機の計算や航空機事故の調査に携わりました。ソ連との宇宙競争がはじまり、1958年にNASA が創設されると、有人宇宙飛行を目指すスペース・タスク・グループがラングレー・リサーチ・センター内に組織され、マーキュリー計画がスタートします。キャサリンさんがそこで重要な役割を果たすことは、映画で描かれた通りです。

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ただし、映画で描かれたキャサリンさんに対する差別には、かなり脚色された部分があります。当時のラングレーでは白人用のトイレと黒人用のトイレは分かれていましたが、キャサリンさんは白人用のトイレを使っていました。その理由は、トイレが白人用と黒人用に分かれていることを知らなかったためでした。白人用のトイレには「白人用」という表示がなかったからです。数年たってキャサリンさんはそのことを注意されましたが、彼女はそれを無視し、白人用のトイレを使いつづけたとのことです。当時、差別を感じることはあまりなかったと、キャサリンさんは語っています。

キャサリンさんは1986年にNASA をリタイアしました。2015年、オバマ大統領はキャサリンさんに対して大統領自由勲章賞を授与しました。また、2016年9月にラングレーにオープンした計算センターは、彼女の業績をたたえ、キャサリン・ジョンソン・コンピュテーショナル・リサーチ・センターと命名されました。

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キャサリンさんは現在99歳ですが、とても元気です。最近のインタビューで、キャサリンさんは「私は1日も無駄にしませんでした。私に与えられた仕事は質問に答えること。そのために私は常に全力をつくしました。それが私の考え方です」と答えています。また、「NASA の若いエンジニアへのアドバイスは?」と聞かれて、「その仕事を好きになってください。そうすれば、あなたはベストをつくすことができます」とも語っています。

原作者のマーゴット・リー・シェタリーは、原作と映画で一番違っているところはどこかと聞かれて、「実際にはたくさんの黒人女性がチームで仕事をすることで、成果は成し遂げられたのです」と語っています。「しかし、登場人物が300人もいる映画をつくることができないことはわかります」。

カッシーニ・ミッション終了
Cassini ends its 13-year mission

土星探査機カッシーニは9月15日、土星大気に突入して、そのミッションを終えました。

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カッシーニは次第に濃くなる土星大気の中で分解し、燃えつきました。カッシーニからの電波は9月15日午後8時55分ごろに停止しました。土星から地球まで電波が届くのに約1時間23分かかるので、カッシーニは日本時間の午後7時32分ごろに通信機能が失われたことになります。

カッシーニ探査機は1997年10月15日に打ち上げられました。2004年に土星周回軌道に入り、以来13年にわたって土星とその衛星、そしてリングの観測を続けてきました。

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2017年4月26日、カッシーニのミッション終了に向けた軌道変更が行われました。土星を22周回後、9月15日に土星大気に突入させるための軌道変更です。タイタンやエンケラドスなど生命存在の可能性のある衛星に落下して環境を汚染しないよう、軌道変更の燃料があるうちに行われた措置でした。

カッシーニは多くの成果をあげていますが、初期の成果のハイライトは、ホイヘンス・プローブをタイタンに軟着陸させたことでしょう。これによって、オレンジ色のかすみがかかった大気の下のタイタン表面を、私たちははじめて見ることができました。

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カッシーニはその後、何回もタイタンに接近し、タイタン全体の地形を明らかにしました。

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カッシーニのもう1つの大きな成果は、エンケラドスで発見した間欠泉です。これによって、エンケラドスの内部には液体の海があることが分かりました。

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下の画像は、カッシーニが地球に送ってきた画像の中でも、特に感慨深いものです。2013年7月19日に撮影されたこの画像には、私たちの地球が写っています。矢印で示されたリングの下の小さな点が地球です。

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長期間のミッションを支えたカッシーニ・チームにはご苦労様というほかはありません。

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