新型コロナウイルス:WHOがパンデミック宣言

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    WHO311日、新型コロナウイルスの流行を「パンデミック」と宣言しました。パンデミックとは「世界的な大流行」を意味します。

     

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    WHOの発表によると、311日現在、113の国と地域で新型コロナウイルスの感染が確認されています。感染者数は全世界で118322人(うち中国8955人、中国以外37367人)、死者は全世界で4292人(うち中国3162人、中国以外1130人)となっています。

     

    20世紀以降、人類はインフルエンザで4回のパンデミックを経験しています。1918年の「スペイン風邪」(スペイン・インフルエンザ)、1957年の「アジア風邪」(アジア・インフルエンザ)、1968年の「香港風邪」(香港インフルエンザ)、2009年の新型インフルエンザです。インフルエンザ・ウイルス以外の流行でWHOがパンデミックを宣言するのははじめてです。

     

    ウイルスの流行を食い止めるための対策は、大きく3つに分けられます。

     

    1つ目はウイルスの侵入を遅らせる水際作戦です。湖北省や浙江省などからの入国制限、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の検疫は、このための措置でした。水際作戦はウイルスの侵入を完全に食い止めることはできません。あくまで、ウイルスの侵入を遅らせて、結果として感染者の数を抑えることにその目的があります。

     

    2つ目は、感染の拡大を遅らせるための早期封じ込めです。イベントや集会の自粛要請や小・中・高の休校はそのための措置でした。早期封じ込めも感染の拡大を完全に食い止めることはできません。しかし、この措置を取ることによって、感染の機会は明らかに減ります。

     

    3つ目は医療の介入です。水際対策と早期封じ込めによって、感染の拡大は抑制され、感染者数のカーブはピークが低くなり、なだらかな山になります。流行の開始とともに医療体制を強化し、なだらかな山となった流行に対して必要な医療サービスを行うのです。流行のピークを下げることは、医療への負荷を減らすという重要な意味をもっています。

     

    以上の対策をできる限り早い時期から行うことによって、流行を最小限にとどめることができます。下の図は「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」(2013年閣議決定)に掲載されているもので、この考え方を図式化したものです。

     

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    政府の対策にはその内容や時期について様々な批判もありますが、大筋としては、以上の考え方に則った対策がとられてきました。そのため、日本では爆発的な感染拡大は見られていません。

     

    しかしながら、今後の世界での流行を考えた場合、日本と同じように感染拡大を抑えられる国がどれだけあるか心配です。アメリカやヨーロッパ諸国でさえ、十分な医療サービスを提供できない事態も考えられます。参考までに、2009年の新型インフルエンザのパンデミックの際の人口10万対死亡率を見てみると、カナダ1.32、メキシコ1.05、オーストラリア0.93、イギリス0.76、シンガポール0.57、韓国0.53、フランス0.51、ニュージーランド0.48、タイ0.35、ドイツ0.31に対して、日本はわずか0.16でした(資料・岡部信彦氏)。

     

    今回のパンデミックにいたる過程を見ると、WHOの対応にかなり問題があったといえます。130日の緊急事態宣言はもっと早く出すべきでした。しかも、この緊急事態宣言においても、「旅行または貿易の制限を推奨しない」としていました。そのため、各国の水際作戦が遅れた可能性があります。

     


    新型コロナウイルス:発症初期あるいは無症状でも感染

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      新型コロナウイルスは発症初期あるいは無症状でも他人を感染させる可能性があることを、ウイルス量の解析で明らかにした速報が発表されました。

       

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      新型コロナウイルスが発症初期あるいは無症状でも他人を感染させるのではないかという指摘は以前からありましたが、『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』の219日付けオンライン版に、これに関して中国CDC(中国疾病予防コントロールセンター)で行われた感染者のウイルス量の解析結果が”TO THE EDITOR”として掲載されました。

       

      この解析は17人の新型コロナウイルスの発症者、およびウイルスに感染したが無症状だった1人について、鼻と喉からサンプルを採取して、ウイルス量の経時変化を見たものです。その結果が以下の図です。

       

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      黒い線が発症した人の喉のウイルス量、青い線が鼻のウイルス量です。これによると、両者とも発症時にすでにウイルス量が多く、その特徴は鼻で顕著です。さらにこの図は、発症以前に感染者の体内でウイルス量が増加しており、発症前に他人にウイルスを感染させている可能性があることを示しています。

       

      また、無症状のまま終わった1人のウイルス量も同じ傾向を示しました。すなわち、新型コロナウイルスは無症状でも他人を感染させている可能性があることを示唆しています。

       

      新型コロナウイルスがこうした特徴をもっているのではないかという点は、ここに書いた通りです。

       

      新型コロナウイルスはSARSウイルスに近縁ですが、発症してから数日経過してから感染能力が高くなったSARSウイルスとは異なる特徴をもっていることになります。こうした解析がさらに進み、新型コロナウイルスの感染プロセスが解明されることを期待したいと思います。

       


      新型コロナウイルス:今後はR0との戦い

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        日本国内でも感染が広がりつつあります。これからは基本再生産数R0(アール・ノート)との戦いが始まります。

         

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        基本再生産数R0とは、1人の感染者が何人にウイルスを感染させるかの数です。129日付の『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』誌に掲載された中国の研究者による論文では、R02.21.43.9)とされ、WHOなどもこの数値を使っていました。しかし最近では、R0はもっと高い数値になるのではないかという論文が次々と発表されています。

         

        R0は感染者の置かれている環境や、どれだけ封じ込めや防護措置がとられているかによって変わってきます。R01.0以下にコントロールしなければ、ウイルスの流行は終息しません。新たな感染者が日本各地で発生し、感染ルートを追えないケースが増えている現状では、感染者をできるだけ早く発見し、症状が重篤にならないよう治療するとともに、他の人に感染させない措置を取ることが必要です。あまり適切な表現ではありませんが、モグラたたきゲームのように、感染者が日本全国どこにでも出現する可能性があることを前提に、感染者が発生すれば、すぐに適切な医療措置をとるという取り組みを続け、R0 1.0以下にしていかなくてはなりません。

         

        感染ルートが推定できる場合は、これまで取られてきた隔離ないし封じ込めの手段も必要です。感染症の専門家に中には、水際作戦でウイルスの侵入を食い止めることは不可能という理由(これ自体は正しい)から、政府のとってきた措置に批判的な方もいます。しかし、ここに書いたように、今回出現した新型コロナウイルスは、異常に感染性が高いという特徴をもっています。感染の可能性のある方を外部から隔離あるいはそれに近い措置をとることを今後も行わなければ、感染拡大を止めることはできないかもしれません。これまでの例でも、PCR検査で陽性が判明する前の段階で他の人を感染させている可能性があるからです。ウイルス感染直後はPCR検査をしても陽性にはなりません。

         

        インフルエンザ・ウイルスなどでは、潜伏期末期に体内でウイルスが急激に増加し、発症とともに飛沫などで他人を感染させます。しかし、新型コロナウイルスは、どうやら潜伏期と発症期の境界があまり明確ではないようです。ウイルスに感染してまもない時期から、体内ではウイルスが増殖し続け、症状がはっきり現れない段階で他人を感染させてしまうのではないかと考えられます。

         

        新型コロナウイルスがヒトの細胞に感染するメカニズムは、よくわかっていません。これまで知られているコロナウイルス(風邪のウイルスやSARSウイルス、MERSウイルス)の感染メカニズムと少し異なっているかもしれません。ウイルス自体が強力な感染能力をもっているのか、感染直後から他人を感染させてしまう特徴をもつために感染性が高いのかは不明です。

         

        日本でも医療従事者やクルーズ船で作業していた職員までが感染しています。ちょっとした不注意でも感染してしまうウイルスであるという認識が必要です。


        新型コロナウイルス:中国CDCが大規模サーベイ結果を発表

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          217日、中国CDC(中国疾病予防コントロールセンター)は新型コロナウイルス感染に関する重要なレポートを発表しました。

           

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          このレポートは211までに確認された44672人の新型コロナウイルス感染者のサーベイ結果です。その中で特に重要と思われるいくつかの調査結果を紹介しましょう。

           

          感染者の81%では症状はマイルドで、致死率は2.3%でした。感染者の男女比はほぼ1:1ですが、致死率でいうと男性が2.8%、女性が1.7%で、男性が少し高くなっています。

           

          注目すべきは高年齢で致死率が顕著に高いことで、80歳以上の致死率は14.8%です。また持病を持っていない人の致死率が0.9%であるのに対して、持病を持っている人の致死率も顕著に高く、心臓血管系の病気をもっている人の致死率は10.5%、糖尿病をもっている人では7.3%、慢性呼吸器疾患の人は6.3%、高血圧の人は6.0%、がん患者は5.6%となっています。

           

          新型コロナウイルスは感染性が非常に高い点も指摘されています。武漢市からはじまった感染は1か月でほぼ中国全土に広がりました。しかもそれは、武漢市を完全に遮断して隔離し、新年を祝う行事を中止させ、学校や職場に行くことを禁止し、多数の医師や公衆衛生の専門家を動員し、さらには軍の医療部隊の派遣や緊急病棟の建設など、非常に強固な対策が取られたにもかかわらず感染が広がったと指摘しています。

           

          感染性が高い点に関連し、これまで1716人の医療従事者が感染したことも報告されています。

           

          感染初期のデータからすると、武漢市の海鮮市場で動物からヒトへの感染が複数回おこり、その間にウイルスの変異が起こってヒト・ヒト間の感染能力をもつにいたり、爆発的な感染がはじまったという仮説が成り立つとのことです。

           

          このサーベイで最も重要な点は、新型コロナウイルスはSARSウイルスやMERSウイルスほど致死的ではないが、両者にくらべて感染性が非常に高いという点です。その結果、感染者数が拡大し、その中の高齢者や持病をもつ高リスク・グループで死に至る人が多くなり、結果としてすでにSARSを上回る死者数を出しているという点にあります。

           

          WHOのテドロス・アダノム事務局長はこのサーベイ結果を受けて、17日の記者会見で「新型コロナウイルスはSARSMERSほど致死的ではない。感染者の81%の症状はマイルドだ」と述べました。しかし、このウイルスが感染性が高い点について注意喚起することはありませんでした。世界中の人々の生命を守る国際機関の事務局長とは思えない発言です。

           


          新型コロナウイルス:治療薬の探索進む

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            新型コロナウイルスの治療薬に関する研究が進んでいます。最近の論文によると、2種類の薬剤に可能性があるとのことです。

             

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            『セル・リサーチ』誌に武漢市のウイルス学研究所の研究グループの論文が掲載されています。研究グループは新型コロナウイルスの治療薬候補として、7種類の抗ウイルス剤について実験を行いました。実験の対象となった抗ウイルス剤は、すでにFDAで認可されているリバビリン、ペンシクロビル、ニタゾキサニド、ナファモスタット、クロロキン、そして現在臨床試験が行われているファビピラビル、レムデシビルです。

             

            実験は、仝補となる抗ウイルス薬を作用させたアフリカミドリザルの細胞に、新型コロナウイルスを感染させ、培養して経過を観察する、および⊃祁織灰蹈淵Εぅ襯垢魎鏡させた細胞に抗ウイルス剤を作用させ、培養して経過を観察するという方法で行われました。

             

            実験の結果、クロロキンとレムデシビルに効果が認められたとのことです。クロロキンは70年以上、抗マラリア剤として世界中で使われている薬剤です。レムデシビルはエボラ出血熱やマールブルグウイルス感染症の治療薬として注目されており、SARSおよびMERSウイルスを含むコロナウイルスに対しても抗ウイルス性をもつことが明らかになっています。

             

            新型コロナウイルスに対抗する薬剤を新規開発するには時間がかかります。患者の治療に用いるには、既存の抗ウイルス剤のなかから効果のあるものを探索することが非常に重要になっています。


            地球温暖化:南極半島で記録的高温

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              Climate ChangeAntarctica Record High Temperature

               

              南半球は今が真夏です。南極では異常な高温が観測されています。こうした高温は自然の変動の中で起こることもありますが、今回の高温は地球全体で進んでいる温暖化のあらわれと考えるべきでしょう。

               

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              南極半島(上の画像の左の半島)の先端にあるアルゼンチンのエスペランサ基地では2月6日に最高気温18.3℃が観測されました。これは2015324日の17.5℃を上回る記録となりました。また、南極半島先端近くのシーモア島にあるアルゼンチンの観測基地で29日に20.75℃が記録されたとする報道もあります。これが本当だとすると、南極ではじめて20℃以上が観測されたことになります。WMO(世界気象機関)は南極半島の平均気温は過去50年間で3℃上昇しており、地球上でもっとも温暖化が進んでいる場所としています。

               

              NASANOAA115日に、2019年は観測史上2番目に世界平均気温が高い年であったことを明らかにしています。下の画像は19511980年の平均気温と比べた20152019年の平均気温の変化です。南極では平均気温が低くなっている場所もありますが、南極半島付近は気温上昇が顕著です。

               

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              平均気温が上昇すると、なぜこのような高温日が出現するかは、以下の図で考えるとよくわかります。

               

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              IPCC AR5

               

              横軸はその日の最高気温、縦軸はその気温が出現する日数で、中央が平均値となります。当然のことながら、非常に寒い日もあれば、非常に暑い日もあります。地球温暖化が進むということは、この分布が全体的に右側(高温側)にずれることを意味します。すると非常に寒い日が出現する頻度は低くなり、非常に暑い日が出現する頻度は高くなります。つまり、非常な高温を記録する日が出現しやすくなるわけです。

               

              NOAA2020年の1月は、観測史上最も暖かかった1月であったと発表しました。南極半島では記録的な高温の日が出現しやすくなっているのだと考えられます。



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              01.jpgスペース・ツアー2020
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