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豊洲市場の地下水はいずれ環境基準値以下に
昨日開催された豊洲市場における土壌汚染対策等に関する第6回専門家会議は途中で休会となってしまいましたが、前回および今回発表されたデータ、平田健正座長はじめとする専門家のコメントから、次のことが明らかになりました。

豊洲市場の地下にわずかに残っている汚染物質は、地下水管理システムの運転によっていずれ除去され、水質は環境基準値以下に収まるということです。

豊洲市場では現在、いくつかの地点で高濃度のデータが検出されていますが、これは昨年10月から運転を開始した地下水管理システムによって、豊洲市場の下の地下水に流動が生じ、完全には除去されていなかった汚染物質や汚染水が移動をはじめたためと考えられます。地下水が流動していることは、前回発表された地下水位の等高線によって明らかになりました。地下水位が下がるにしたがって、水位の高低差が生じています。水が流れやすい場所と流れにくい場所があるためです。地下水は水位の高いところから低いところへと移動するため、結果として豊洲市場下では水位の上下方向の変化に加え、水平方向の地下水流動が広がっているのです。

豊洲市場の工事にあたっては、東京ガス工場操業時の地面から深さ2mまでの土壌を全部入れ替えました。その上に2.5mの盛り土をしています。工場操業時の地面から2m以深の土壌に関しては、敷地内を10m×10mのメッシュで区切り、全4122地点の汚染調査を行いました。ボーリング調査で地下に汚染物質が見つかった場所は10m×10mの土壌を掘削し、汚染物質を取り除いています。また汚染水が発見された場合はそれを汲み上げ、清浄な水と交換しています。これで土壌汚染対策はほぼ完全に行われたわけですが、ボーリング調査でひっかからなかった場所、およびボーリングが不透水層にまで達していなかった場所では、汚染物質が除去できなかった可能性があります。つまり、現在の地面の4.5mより深いところに、非常にわずかではあるものの汚染物質が残っていると考えられるわけです。

豊洲市場の地下は遮水壁で隔離されているため、外から地下水が流れこむことはありません。雨水が地下に浸透するため、地下水位を目標のAP+1.8mに維持するために地下水管理システムで汲み上げるわけですが、このとき、汚染物質を含む地下水も汲み上げられていきます。すなわち、長期的にみれば、地面から浸透する雨水と地下から水を汲み上げる地下水管理システムによって、わずかに残留していた汚染物質は洗い流されていくことになるのです。ただし、地下水の移動速度は1か月に数10cmといわれていますので、このプロセスには多少の時間がかかります。

注意すべきは、専門家会議で議論しているこうした問題は、豊洲市場の地下4.5m以深の層に関するものであり、地上が安全であることは言うまでもありません。専門家会議はさらに、地下空間の底に関して、ベンゼンなどが気体で上昇してこない対策も提案しています。こうした専門家会議によるデータ解析および提案をみていると、日本の環境汚染計測・除去技術が世界で最高水準にあることがわかります。

今回の専門家会議が休会になってしまった経緯を振り返ると、データをすべて公開し、市場関係者とオープンな議論を行うという平田座長の理念がもはや実現不能になってしまったことがわかります。1つの方向性をもつ政治的な発言が会場から続き、科学的な議論が中断させられたのは非常に残念です。豊洲問題はもはや科学的に安全性を検討することはできず、まったくの政治問題になってしまったということでしょうか。いずれにしても、平田座長の真摯な態度には敬服します。
ブリューゲルの『バベルの塔』:天空に伸びるアーチ
Bruegel’s “The Tower of Babel”:Arches toward the sky

24年ぶりに来日したボイマンス美術館の『バベルの塔』を見てきました。ウィーン美術史博物館の『バベルの塔』が、建設がはじまってからそれほどたっていない時期を描いているのに対して、ボイマンス美術館の『バベルの塔』ではすでに長い年月にわたって工事が行われてきたことは、以前ここにも書きました。下層の煉瓦の色がすでに風化してくすんでいるのに対して、工事中の最上部では煉瓦の色がまだ赤いことが、それを示しています。

この作品を改めて見ると、その細部の描きこみに驚かされます。会場には東京藝術大学によって約3倍に拡大された複製も展示されていました。そのサイズにしてようやくわかるほどの細かい描写です。

今回、この作品の細部を見て特に印象に残ったのは、塔最上部での工事風景でした。

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ブリューゲルの『バベルの塔』は、彼がローマで実際に見たコロッセウムのアーチ構造を参考にしていることは間違いありません。コロッセウムのアーチは3層ですが、『バベルの塔』では第7層が工事中で、さらに天空に伸びようとしています。また塔の内部を見ると、このアーチ構造は同心円状になって塔全体の構造を支えていることがわかります。

ブリューゲルはアーチをつくるための木組みや多数の作業員を描いており、塔はさらに上に伸びようとしています。無限に増殖を続けるかのようなアーチの集積を描くことによって、彼は天空を目指す人間の欲求、あるいは業というべきものを表現しているように思われます。
ソ連邦の歴史:共産党と宗教
History of the Soviet Union:Communist party and religion

下斗米伸夫氏の『ソビエト連邦史』(講談社学術文庫)を読み終えたところです。

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本書は書名の通り、ロシア革命からソ連崩壊にいたるまでの歴史過程をまとめたもので、ビャチェスラフ・モロトフという革命家の軌跡をたどりながら、ソ連とは何であったかを検討していきます。モロトフは火炎瓶を示す「モロトフ・カクテル」でしか一般には知られていない(今ではそれさえも忘れられている)人物ですが、1890年に生まれ、1906年にボリシェビキに入党、1917年にロシア革命に参加し、以後ソ連共産党中枢にとどまり、スターリンに粛清されることなく生き延びました。1961年に共産党から除名されましたが、1984年に復党し、ゴルバチョフの登場を見守り、ソ連崩壊5年前の1986年に没しています。まさにソ連の歴史とともに歩いた人生といえるでしょう。

本書はこのモロトフを縦軸に、レーニンやスターリン、フルシチョフなどをめぐる人間関係が説明され、私がこれまで知らなかった事実がたくさん書かれていました。特に、ロシア正教の非主流派である「古儀式派」とロシア革命やソ連共産党との関係は興味深いものです。

この古儀式派については、下斗米氏は昨年出版された『宗教・地政学から読むロシア』(日本経済新聞社)において、そのはじまりから現在にいたる歴史やロシア革命との関係などを詳細に説明しています。「ロシアとは何か」を宗教と地政学から読み解くこの本は、現在のウクライナ問題を理解する上でも非常に重要です。2013年にロシアに併合されたクリミアは1954年に、ウクライナ出身のフルシチョフによる1片の文書でロシア領からウクライナ領となり、ソ連崩壊の際からその帰属が問題になっていた経緯がありますが、さらにこれにさきだつ10世紀末からの複雑な歴史的経緯が説明されています。この本はプーチン大統領の「東方シフト」を理解する上でも、非常に重要です。

現在のプーチンの戦略を理解する上では、小泉悠氏の『プーチンの国家戦略』(東京堂出版)も参考になります。
天舟1号、打ち上げ
Tianzhou 1 cargo ship launched

中国の無人補給船「天舟1号」が4月20日午後7時41分(北京時間)に、海南島の文昌衛星発射センターから打ち上げられました。

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天舟1号は全長9m、直径3.35mで、補給物資を搭載する貨物部と、エンジンや機器類を収めた機器推進部から構成されます。軌道実験モジュール「天宮1号」をベースに製造されています。物資輸送能力は6.5トンで、日本の「こうのとり」、アメリカのドラゴンおよびシグナスと同規模です。また、燃料補給能力ももっています。

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天舟1号は2日後に軌道実験モジュール「天宮2号」との自動ドッキングを行う予定です。今回の飛行は軌道上でのランデブー、ドッキング技術の実証が大きな目的であり、2か月の間にさらに2回のドッキングを試験することになっています。天宮2号に前方からアプローチしてドッキングする方法と、後方からドッキングする方法の両方が試されるようです。また、天宮2号への燃料補給も行います。天宮2号や国際宇宙ステーションが周回している高度には、わずかに空気が存在しています。宇宙ステーションの高度は少しずつ低くなっていくため、ときどきエンジンを噴射して高度を保つ必要があります。そのための燃料の補給も天舟1号の重要な役割になります。

天舟1号は2か月間の試験を終えた後、さらに3か月軌道上にとどまり、その後、大気圏に再突入する予定です。

今回のミッションは、中国の有人飛行計画において3つの非常に重要な意味をもっています。

第1は、天舟1号ミッションの成功によって、中国の有人宇宙計画の「第2段階」が終わるということです。中国は1992年に独自の有人宇宙計画「921計画」をスタートさせました。このとき、計画は3段階で行うことが決定されました。第1段階は、有人宇宙飛行を実現させること、第2段階は有人宇宙船と軌道上の実験モジュールとのドッキング、そして宇宙飛行士が宇宙に滞在するための技術を実現すること、そして第3段階は宇宙ステーションの実現です。昨年、神舟11号のクルーが天宮2号で1か月の宇宙滞在を行っており、第2段階の残された課題が、無人補給船による物資補給技術の実証でした。したがって、今回の天舟1号のミッションが成功すれば、第2段階は終了し、いよいよ独自の宇宙ステーション建設をめざす第3段階に入ることができるわけです。

第2は、天舟1号に打ち上げに使われた長征7号ロケットです。現在、中国では長年使用してきた長征2号、3号、4号シリーズのロケットを長征5号、6号、7号にリプレースすることが行われています。長征5号は重量級のロケットで2016年に初打ち上げが行われました。中国の宇宙ステーション建設にはこのロケットが使われます。6号は軽量のペイロードを打ち上げるためのロケットで、2015年に初打ち上げが行われています。長征7号は今後、長征ロケット・ファミリーの主力となるロケットで、これまで長征2号Fロケットで行っていた神舟宇宙船の打ち上げにも使われることになります。長征7号は2016年に最初の打ち上げを行っており、今回が2回目の打ち上げになります。

第3は、打ち上げが行われた文昌衛星発射センターです。中国にはこれまで3つ(酒泉、太原、西昌)の衛星発射センターがありました。文昌は2016年から使用が開始された中国の新しい衛星発射センターで、長征5号と長征7号の発射台はここにあります。これまで酒泉から打ち上げられてきた神舟宇宙船も、ここから打ち上げられるようになります。文昌は他の衛星発射センターに比べて緯度が低いため、静止衛星の打ち上げに適しており、今度、中国を代表する宇宙センターになっていきます。

このように、中国の宇宙開発は今、軌道上での強固なプレゼンスを確保するための新たな段階に入りつつあります。

中国の無人補給船「天舟1号」打ち上げへ
China's cargo spacecraft Tianzhou-1 to be launched

中国の無人補給船「天舟1号」が4月20日から24日の間に打ち上げられることになりました。天舟1号は軌道上の宇宙実験モジュール「天宮2号」と無人ドッキングを行います。下の画像の左が天宮2号、右が天舟1号です。

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天舟1号は海南島の文昌衛星発射センターから、長征7号ロケットで打ち上げられます。下の画像は4月17日、組立点検棟から発射台に移動を開始した長征7号です。フェアリングの中に天舟1号が収められています。

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下の画像は移動する長征7号を組立点検棟の屋上から撮影したものです。遠方左の建物が長征7号の発射台、右側は長征5号の発射台です。

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天宮2号には昨年、神舟11号のクルー2名が約1か月の宇宙滞在を行いました。天舟1号のドッキングが成功すると、中国独自の宇宙ステーション建設への最後の関門がクリアされることになります。

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