最近のエントリー
カテゴリー
過去のエントリー
カレンダー
S M T W T F S
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 
<< September 2016 >>
ブログ内を検索


PROFILE
モバイル
OTHERS
木星の衛星エウロパから噴き出す水のプルームを確認
Water Plumes Erupting on Jupiter's Moon Europa

NASA はハッブル宇宙望遠鏡による観測によって、木星の衛星エウロパの南極域から噴き出す水のプルームを確認したと発表しました。下の画像は2015年1月26日に観測されたもので、ハッブルのデータにガリレオ探査機によるエウロパ本体の画像が合成されています。7時の方向に見られるいくつかの明るい部分が、水のプルームと考えられています。

20160927_01

下の画像は、プルームの想像図です。観測されたプルームは高さ160km にも達するとのことです。

20160927_02

下の画像は、エウロパ表面から見たプルームの想像図です。

20160927_03

エウロパは木星の4大衛星(ガリレオ衛星)の1つで、表面は氷におおわれています。しかし、その内部には海(液体の水の層)があると考えられています。木星による潮汐力のためにエウロパがもまれて内部に熱が発生し、氷の下の層がとけて液体になっているのです。エウロパの海には生命が存在するかもしれないと考えられ、多くの科学者が関心を寄せています。

下の図は、エウロパの内部構造を示したものです。エウロパの半径は1565km で、中心部には金属のコアがあります。その上には岩石層(マントル)があり、表面は厚さ10〜30km の氷におおわれています。氷の層の下部は溶けて液体の水になっています。海の深さは160km に達するともいわれています。

20160927_04

エウロパ内部の海から氷の層の亀裂をつたって液体の水が上昇し、プルームとなって宇宙空間に噴き出していると考えられます。

20160927_05

エウロパの南極域から噴き出す水のプルームについては、やはりハッブル宇宙望遠鏡の観測によって、別のチームが2012年に報告しています。この時にとらえたプルームは1回だけでした。今回の観測は、2013年12月に1回、2014年1月に1回、3月に2回、4月の3回、5月に1回、2015年1月に1回、3月に1回と合計10回行われ、2015年1月26日、3月17日、4月4日にプルームが観測されました。エウロパでのプルーム現象はひんぱんに起こっていると考えられます。また、南極域だけでなく、赤道に近い場所でもプルームが確認されています。

今回の報告によって、エウロパにプルームが存在することが確認されました。このことはNASA が2020年代に打ち上げを考えているエウロパ探査機にとって大きな意味をもっています。この探査機は木星を周回しながら、何度もエウロパに接近して観測を行います。かつてはエウロパの海を調べるために、表面に着陸してドリルで氷の層を掘削し、内部の海に無人潜水艇を送りこむというミッションも考えられましたが、多くの困難があり、このアイデアはなくなりました。しかし、今回の発表により、エウロパに接近してプルームの成分を調べれば、内部の海が生命に適した環境であるかどうかを知ることができることがわかったわけです。

今回、NASA は「エウロパについて驚くべき発見があった」と予告していたため、多くの人が「エウロパに生命の証拠を見つけたのではないか」と期待しました。結果はそうではありませんでしたが、惑星科学にとって非常に重要な発見であることは間違いありません。また、NASA としてはエウロパ探査の意義や、引退が近づいているハッブル宇宙望遠鏡の運用をできるだけ継続することについての一般の理解を得たいという意図もあったと考えられます。
北極海の氷の縮小、史上2番目に
Arctic Sea Ice Annual Minimum Ties Second Lowest on Record

NASA の発表によると、今年の北極海の氷の面積が最も小さくなったのは9月10日で、その面積は414万平方km でした。この面積は2007年と同じで、1978年に人工衛星によって北極海の氷の観測が行われるようになって以来、史上2番目の小ささでした。海氷が最も縮小したのは2012年です。下の画像は、9月10日の海氷の分布です。黄色の線は、1981年から2010年の平均の海氷分布を示しています。

20160917_01

下の画像は、NSIDC(国立雪氷データセンター)が発表したもので、9月10日の海氷分布を北極の上から見た画像です。

20160917_02

北極海の夏季の氷は年々縮小しています。下の画像はNSIDC が発表しているデータで、1978年から2016年までの8月の海氷面積をグラフにしています。

20160917_03

1981年から2010年までの平均海氷面積は730万平方km でした。グラフの破線が示すように、海氷面積は10年間で10.4%の割合で縮小しています。
天宮2号:中国の宇宙の軍事化が新たな段階へ
Tiangong 2:China creates Space Force

中国はまもなく宇宙実験室「天宮2号」を打ち上げます。天宮2号は、宇宙を目指す人類の活動にとって大きな成果の1つといえますが、一方で、この計画には軍事的色彩も強く、中国が進める宇宙軍事化が新しい段階に入ることを意味している点にも注意が必要です。

20160914_01

天宮2号は長さ約14m、直径約4m、重量約20t です。2011年に打ち上げられた天宮1号と同じサイズですが、生命維持システムが大幅に改善されています。1号にはなかった酸素発生装置が設置され、水再生装置も新しいものに交換されています。天宮2号の打ち上げが成功すれば、10月には2名の宇宙飛行士が神舟11号で打ち上げられ、天宮2号で30日間程度の長期滞在を行う予定です。

中国は2022年までに、いくつものモジュールを結合させた自前の宇宙ステーションを建設する予定です。天宮2号はそのコア・モジュールとなります。

中国の有人宇宙飛行において軍事ミッションが行われていることは、早い段階から指摘されてきました。2003年10月15日に打ち上げられた神舟5号で、楊利偉宇宙飛行士は中国初の有人飛行を行いました。その直前の10月2日に、ロシアや中国の宇宙開発に詳しいマーク・ウェイドは、神舟宇宙船についての記事を『スペース・デイリー』のサイトに投稿しました。ウェイドはここで、それまでに4回打ち上げられた無人の神舟が、ELINT(電子諜報)を行っていたという専門家の分析を紹介しています。それによると、神舟1号から4号まで、どの軌道モジュールにも2種類のアンテナが設置されていました。1つは3本のブームの先に取り付けられたUHF アンテナで、地上の電波をとらえるためのものです。もう1つは弧状に並べられた7個のホーンアンテナで、地上の電波源の位置を特定するためのものです。中国はそれまでELINT 衛星をもっていなかったので、「これは中国の宇宙からの偵察活動にとって大きな飛躍であった」とウェイドは書いています。神舟4号は2003年のイラク戦争時も飛行しており、中国はアメリカの軍事行動について貴重な情報を取得したとみられます。

神舟3号と4号には、偵察用のカメラも搭載されていました。カメラは軌道モジュールの先端と軌道モジュール本体の2個所に設置されていました。開口部の大きさから、カメラの口径は50〜60cm とみられています。2台のカメラを用いることにより、広域からクローズアップまでいくつものモードで撮影が可能です。カメラの最大分解能は1.6m とのことです。

これらのことは、中国が公開したニュース映像や雑誌に掲載されていた組立中の神舟の写真の分析から明らかになりました。「中国初の有人宇宙飛行の主なミッションは軍事偵察活動であろう」と、ウェイドは書いていました。実際、神舟5号にも、さらには2005年に打ち上げられた神舟6号にも、同じ偵察用カメラが設置されていたことが確認されています。

中国の有人宇宙飛行で行われる軍事ミッションを警戒する声は、天宮1号によってさらに高まりました。天宮1号では科学実験なども行われましたが、宇宙飛行士が軌道上から偵察活動を行う軍事プラットフォームとしての有効性を検証することも、その目的の1つであったと考えられています。天宮2号や将来の宇宙ステーションも同様に、科学実験室や他国の宇宙飛行士を搭乗させる外交ツールとしても使われるでしょうが、一方で、人民解放軍の宇宙空間への配備が進められていくでしょう。なぜなら、地上ではその準備がはじまっているからです。

習近平国家主席は、人民解放軍をアメリカに勝つ軍隊にするための改革に取り組んでいます。2015年12月31日に人民解放軍は陸軍、空軍、海軍、ロケット軍、戦略支援部隊という4つの軍と1つの部隊に再編されました。人民解放軍は歴史的に陸軍の規模が大きく、指揮系統も複雑でしたが、今回、陸軍指導機構(陸軍司令部)が設置されて指揮系統が統一されるとともに、空軍、海軍と同格になりました。戦略核ミサイルを担当するロケット軍はこれまでの第二砲兵が昇格したものです。

新たに設置された戦略支援部隊は、4軍を支援するための重要な任務を与えられており、軍事航天部隊(宇宙)と網路信息戦部隊(サイバー)に分かれています。軍事航天部隊は軍事衛星の運用や宇宙監視などを行いますが、対衛星攻撃(ASAT)も担当するでしょう。網路信息戦部隊は当然サイバー攻撃も担当します。つまり、有事の際にASAT とサイバー攻撃で4軍を支援するのが戦略支援部隊の任務なのです。

20160914_02

今回、「軍事航天部隊」すなわち宇宙部隊が人民解放軍の中で正式な名称を与えられました。

20160914_03

しかし、この部隊の任務は地上にとどまります。宇宙に配備される部隊は別に組織されるはずです。

中国の有人宇宙計画を進める載人航天工程弁公室は、人民解放軍の中央軍事委員会総装備部に置かれていましたが、2016年1月の中央軍事委員会の機構再編によって総装備部がなくなり、中央軍事委員会装備発展部の下に置かれることになりました。宇宙飛行士は空軍のパイロットから選抜されています。近い将来、ここから航天軍(宇宙軍)が形成されていくでしょう。戦略支援部隊の軍事航天部隊の機能の一部が編入されるかもしれませんし、軍事航天部隊全体が統合されるかもしれません。この航天軍はさらに空軍と合体し、「天空軍」となるでしょう。

中国が目指すこうした宇宙戦闘部隊創設への動きを、単なる憶測と考える方もいると思いますが、習国家主席自らがこの構想を明らかにしています。例えば2014年4月15日の『人民網』には、「習近平総書記「空と宇宙を統合した強大な空軍を構築」」という記事が掲載されています。この記事によると、習主席は前日に空軍を視察し、全将兵に対して「新情勢下の党の軍事力強化目標をしっかりと押さえ、部隊の革命化、近代化、正規化を全面的に強化し、空と宇宙を統合し、攻撃と防御を兼ね備えた強大な人民空軍の構築を加速して、中国の夢、軍事力強化の夢の実現を揺るぎない力で支えなければならない」と強調したとのことです。

中国は神舟という有人宇宙船をもち、天宮2号とそれをコアにした独自の宇宙ステーション計画を進めていますが、軍事用の有人宇宙船や宇宙ステーションを別に開発する計画はありません。したがって、「中国の夢」を実現するための航天軍あるいは天空軍の宇宙空間での活動は、外に対しては民生用とみなされている神舟宇宙船、天宮2号、将来の宇宙ステーションを使って行われることになります。

宇宙開発には科学研究や宇宙の実利用といった民生目的の部分だけでなく、防衛または軍事的側面も存在します。こうしたデュアルユースは、世界各国の宇宙開発に共通していますが、中国は異例で、すべての宇宙開発が軍事部門の指揮下にあるといってよいことが、多くの研究者によって指摘されています。そして、その宇宙軍事化が、今、新しい段階に入りつつあるというわけです。
続きを読む >>
レーダーで観測した衛星タイタンの砂丘
Dunes of Shangri-La

カッシーニ探査のSAR(合成開口レーダー)で観測した土星の衛星タイタンの新しい画像が発表されました。カッシーニは7月25日にタイタンから976km まで接近しました。その際に、かすみのかかった濃い大気を通して観測した画像です。

下は、シャングリラとよばれる低地を観測したもので、砂丘の筋が平行に何本も並んでいるのがわかります。

20160908_02

20160908_01

砂丘をつくっているタイタンの砂は、メタンやエタンなどの炭化水素の粒と考えられています。この筋はそのような粒が風によって流されてできたものとみられています。この画像では、風は左から右(西から東)に向けて吹いています。

下の画像はザナドゥ・アネックスと名づけられた地域の画像です。

20160908_03

ザナドゥは1994年にハッブル宇宙望遠鏡が発見した黒っぽい地域です。その後、カッシニーニ探査機の観測で、標高が高く山地が多い大陸のような場所であることがわかりました。ザナドゥ・アネックスはザナドゥと同じように起伏が多い地域で、ザナドゥの南に位置しています。
ASAT(対衛星兵器):中国が宇宙でしかける見えない戦争
Chinese ASAT weapons:”Prepare for space combat”

中国人民解放軍は軌道上の人工衛星を攻撃するASAT(対衛星兵器)の開発と実戦配備を着々と進めています。

20160906_01

中国のASAT はアメリカに対抗するために開発されていますが、近い将来、中国がアメリカの衛星に攻撃をしかける可能性は低いでしょう。むしろ日本の衛星に対して、東シナ海での有事発生時にASAT が使われる可能性が高いと考えられます。

少し前のことですが、「日本の情報収集衛星が中国上空で機能不全におちいった」との記事が中国のポータルサイト「今日頭条」に掲載され、ネット上で話題になりました。この記事によると、情報収集衛星の機能不全は中国のASAT による攻撃のためだというのです。荒唐無稽な話のようですが、「火のないところに煙は立たぬ」といいます。たとえでたらめであっても、何もないところから話がつくられることはありません。何か背景があるはずです。

この記事が掲載された8月3日の前日、平成28年版の『防衛白書』が閣議了承されました。今年の『防衛白書』は東シナ海や南シナ海での中国の軍事的脅威について、昨年版よりもかなりつっこんで記述しています。中国国営新華社通信は早速、「中国脅威論と海洋の安全問題を継続して騒ぎ立てている」などと非難しました。翌3日には中国外務省が「防衛白書は中国の内政上の問題を批判しており、中国政府は断固として抗議する」との声明を発表。また国防部も「中国に対するいれなき批判を停止するよう求める」との談話を発表しました。折しも尖閣諸島周辺には連日、多数の中国船舶が集結し、接続水域に入ったり、領海侵犯をくりかえしていました。国防部の談話は、「日本自衛隊の南西方面への軍事力の配備は現状を変えることに当たる」と主張し、「われわれは日本側に対して、ブーメランで自分を傷つけないよう、間違った言行を停止するよう忠告しよう」と、武力衝突の可能性をにおわせていました。

こうした状況を見るなら、この時期に「今日頭条」に記事が書かれた背景は明らかでしょう。中国の対衛星兵器は日本の衛星もターゲットにしており、おそらくレーザー照射あるいはサイバー攻撃のシミュレーションをすでに行っているということです。将来、東シナ海で有事が発生した場合、中国はまず自衛隊が使っているXバンド通信衛星や情報収集衛星を無力化してから攻撃を開始するでしょう。GPS信号は妨害され、GPS と相互運用している準天頂衛星も無力化されるでしょう。もちろん、自衛隊のネットワークやアメリカ軍とのデータリンクには強力なサイバー攻撃がしかけられます。海上自衛隊は目や耳をふさがれた状況で中国海軍を迎え撃たねばなりません。島嶼攻防の海戦は、アメリカ軍に対応する時間を与えず、短時間で決着してしまうことは危惧されます。

中国はASAT の実験を以下の通り、これまでに8回行っています。( )内は使用されたミサイルです。

2005年7月(SC-19)ASAT用ミサイルの試験
2006年2月(SC-19)軌道上のターゲット破壊に失敗
2007年1月(SC-19)軌道上のターゲット破壊に成功
2010年1月(SC-19)弾道軌道のターゲット破壊に成功
2013年1月(SC-19)弾道軌道のターゲット破壊に成功
2013年5月(DN-2)ASAT用ミサイルの試験。
2014年7月(SC-19)弾道軌道のターゲット破壊に成功
2015年11月(DN-3)ASAT用新型ミサイルの試験

SC-19 は移動発射式の中距離弾道ミサイルDF-21(東風21)をベースにしたASAT用ミサイルです。よく知られているように、2007年のASAT 実験では、寿命がきた自国の気象衛星「風雲1C」(高度865km)を破壊しました。この実験で大量のスペースデブリが発生しました。追跡可能なサイズのデブリだけで3000個以上におよび、国際社会から大きな批判を浴びました。その後、中国は地球周回軌道に達しない弾道軌道のターゲットを破壊し、デブリが発生しない実験を行っています。中国は2010年、2013年1月、2014年の実験をミサイル防衛システムのための実験と主張しています。SC-19 はすでに相当数が実戦配備されていると考えられます。

20160906_02

SC-19 は低軌道上の衛星しか攻撃できません。2013年5月に試験されたDN-2(動能2)は高高度の衛星を攻撃するために開発されたミサイルです。このとき、弾頭は高度約3万km にまで達しました。弾頭は何かに衝突することなく落下し、大気圏に再突入しました。その特殊な軌道から、アメリカ国防省筋は、この実験が高度2万6500km のGPS や高度3万6000km の静止軌道上の衛星攻撃を想定したものと考えています。一方、中国は「科学観測」と主張しています。DN-2 は2020年ごろに配備される予定で、GPS の破壊を目的としているという見方があります。

2015年には新型のASAT用ミサイルDN-3 が登場しました。DN-3 はDN-2 を高性能化したミサイルで、静止軌道の衛星攻撃が目的とみられます。中国はDN-3 の試験をミサイル防衛システムのためと主張しています。

これらの実験は、キネティック(運動エネルギー)弾頭を用いたものです。赤外線とレーダーでターゲットを捕捉し、超高速の物体を衝突させて破壊する方式ですが、こうした「ハードキル」兵器は多数のデブリを発生させます。そのため、衛星攻撃をくり返すと、自国の衛星をデブリ衝突の危機にさらすことになります。そこで、衛星を破壊せずに無力化させる「ソフトキル」兵器が考えられており、中国はこの分野にも力をいれています。高出力レーザー、荷電粒子ビーム、マイクロ波ビームなどを用いるダイレクト・エネルギー兵器、あるいは指向性エネルギー兵器といわれるものです。ビームは地上施設のほか、移動車両、航空機、衛星などからも発射可能です。

2005年にアメリカの偵察衛星に対してレーザーが照射され、偵察活動が妨害される事態が起こりました。2013年、これが中国によるものであることが、実際にこの攻撃を行った中国人技術者の話から明らかになりました。中国の対衛星レーザー兵器は急速な進歩を遂げていると考えられています。

中国は軌道上で相手の衛星を捕捉・攻撃するシステムも開発中です。共通軌道(Co-orbital)方式とよばれるものです。この対衛星兵器は通常は普通の小型衛星の姿をして軌道をまわっており、命令を受けると、軌道変更してターゲットの衛星に接近します。運動エネルギー兵器としてそれ自体が衝突して相手の衛星を破壊する方法(カミカゼ衛星)以外に、搭載している爆薬やレーザー、電磁パルスなどによって、ターゲットを破壊する方法もあります。

2008年9月、中国の有人宇宙「船舟7号」から小型光学衛星BX-1 が軌道投入されました。この衛星のイメージセンサーは地球観測に使われる他、アメリカの衛星や宇宙船に接近して偵察を行うことも可能でした。BX-1 は事前の告知なしに国際宇宙ステーションからわずか45km しか離れていないところを通過しました。この接近はオーストラリアとニュージーランド間の海域上空で行われ、その真下には中国の追跡管制艦がいました。明らかに何らかの「作戦」ないし「訓練」が行われたともみられます。

有人宇宙船を用いたこの訓練について、中国の軍事問題に関する専門家と知られる国際評価戦略センター主任研究員のリチャード・フィッシャー氏はアメリカ議会で、「中国が彼らの有人宇宙プラットフォームを戦争に使う準備ができたことを、われわれに明確に知らせるためのものであった」と証言しています。まもなく打ち上げられる「天宮2号」によって、中国の有人宇宙ステーションの軍事利用はさらに進むでしょう。

小型衛星にロボットアームをとりつけ、ターゲットを捕捉し破壊することも考えられています。2013年7月に、中国は3機の小型衛星CX-3、SY-7、SJ-15を打ち上げました。このうちの1機(おそらくSY-7)はロボットアームをもっていました。この衛星は他の衛星のうちの1機をロボットアームで捕捉し、軌道変更して2005年に打ち上げられた衛星SJ-7 の近くまで移動しました。このようなロボットアームをもつ衛星は、故障した衛星の修理やスペースデブリの除去などにも利用できますが、ASAT用兵器としても非常に有効です。

最近、中国は小型衛星の開発・利用に力を入れています。科学観測など民生分野での利用のほか、軍事的にも高い価値があると考えられるからです。2015年9月、中国は新しいロケット長征6号を打ち上げました。ペイロードは軌道上でさまざまなデモンストレーションを行う小型衛星20機でしたが、重量わずか100g という「フェムトサテライト」も4機含まれていました。中国が小型衛星のさまざまな可能性を探っているのがわかります。

サイバー攻撃もASAT の手段の1つです。2007年10月と2008年7月、USGS(アメリカ地質調査所)の地球観測衛星ランドサット7号にサイバー攻撃がかけられ、12分間以上、観測が妨害されました。ただし、衛星の指令系統は乗っ取られませんでした。2008年6月には、NASA の地球観測衛星テラに2回サイバー攻撃がかけられ、1回目は2分間以上、2回目は9分間以上、観測が妨害されました。両方のケースで、衛星にコマンドを与えるすべてのステップが破られ、衛星は外部のコントロール下に置かれましたが、敵対的なコマンドを実行することは行われませんでした。これらのサイバー攻撃には中国か関与していると考えられています。

2014年9月、NOAA(アメリカ海洋大気局)がアメリカ軍と政府機関に観測画像や気象情報を提供しているシステムがハッキングされ、NOAA は2日間、情報提供を停止しました。NOAA はこの攻撃が中国からしかけられたものである確証をもっているようです。

このように、中国は今、さまざまなASAT手段を開発し、実験を行い、実戦配備しようとしています。一方、アメリカは運動エネルギー方式のASAT手段は保有していますが、実験は1980年代に終えており、最近では2008年に1度だけ実験を行っています。このときはSM-3 ミサイルが用いられ、故障して大気圏に再突入することになった偵察衛星がターゲットとなりました。ダイレクト・エネルギー方式の兵器に関しては、1980年代に進められたスターウォーズ計画(SDI)が中止されて以降、研究はほとんど行われていません。その間に中国はさまざまなASAT手段を開発してきました。宇宙での戦争能力に関しては、もはやアメリカに対して優位に立っているといって過言ではありません。そのため、アメリカでは中国が進める宇宙空間の軍事化やASAT に対する警戒感が急速に高まっています。

はたして、宇宙空間で他国の衛星を破壊するような事態が発生する可能性はあるのでしょうか? 中国はひそかにその準備を進めていると考えらます。

フィッシャー氏はアメリカ議会の公聴会で、「習近平国家主席は2012年12月5日に、人民解放軍第二砲兵部隊(現在のロケット軍)に対して、戦闘能力のタイムリーな展開を確保するために、地上をベースとした対衛星攻撃能力の構築を強化するように指示しました」と証言しました。この習主席の指示は公にされませんでしたが、2014年末に発表された中国のあるベテラン将軍の論文中で触れられました。しかし、この論文はすぐにウェブ上から削除されました。また、この論文に注目した中国の軍事専門ブロガーの記事も、すぐに消えました。

習主席はまた、2014年4月14日に人民解放軍の空軍に、「空と宇宙の能力を統合しなければならない」と語りました。習主席はこのときさらに、「宇宙での戦争に備えよ」という指示を与えたとされています。

フィッシャー氏は「中国人民解放軍の目標は地球低軌道における他国の活動を拒否し、そこを支配し、さらにその支配を地球から月にまで広げることです」とも証言しています。また、次のようにも語っています。「中国は近い将来、紛争が起こった場合にASAT を使うと思います。特に南シナ海、台湾、そして尖閣諸島で何かが起こった時に」。

▲PAGE TOP