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天舟1号、打ち上げ
Tianzhou 1 cargo ship launched

中国の無人補給船「天舟1号」が4月20日午後7時41分(北京時間)に、海南島の文昌衛星発射センターから打ち上げられました。

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天舟1号は全長9m、直径3.35mで、補給物資を搭載する貨物部と、エンジンや機器類を収めた機器推進部から構成されます。軌道実験モジュール「天宮1号」をベースに製造されています。物資輸送能力は6.5トンで、日本の「こうのとり」、アメリカのドラゴンおよびシグナスと同規模です。また、燃料補給能力ももっています。

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天舟1号は2日後に軌道実験モジュール「天宮2号」との自動ドッキングを行う予定です。今回の飛行は軌道上でのランデブー、ドッキング技術の実証が大きな目的であり、2か月の間にさらに2回のドッキングを試験することになっています。天宮2号に前方からアプローチしてドッキングする方法と、後方からドッキングする方法の両方が試されるようです。また、天宮2号への燃料補給も行います。天宮2号や国際宇宙ステーションが周回している高度には、わずかに空気が存在しています。宇宙ステーションの高度は少しずつ低くなっていくため、ときどきエンジンを噴射して高度を保つ必要があります。そのための燃料の補給も天舟1号の重要な役割になります。

天舟1号は2か月間の試験を終えた後、さらに3か月軌道上にとどまり、その後、大気圏に再突入する予定です。

今回のミッションは、中国の有人飛行計画において3つの非常に重要な意味をもっています。

第1は、天舟1号ミッションの成功によって、中国の有人宇宙計画の「第2段階」が終わるということです。中国は1992年に独自の有人宇宙計画「921計画」をスタートさせました。このとき、計画は3段階で行うことが決定されました。第1段階は、有人宇宙飛行を実現させること、第2段階は有人宇宙船と軌道上の実験モジュールとのドッキング、そして宇宙飛行士が宇宙に滞在するための技術を実現すること、そして第3段階は宇宙ステーションの実現です。昨年、神舟11号のクルーが天宮2号で1か月の宇宙滞在を行っており、第2段階の残された課題が、無人補給船による物資補給技術の実証でした。したがって、今回の天舟1号のミッションが成功すれば、第2段階は終了し、いよいよ独自の宇宙ステーション建設をめざす第3段階に入ることができるわけです。

第2は、天舟1号に打ち上げに使われた長征7号ロケットです。現在、中国では長年使用してきた長征2号、3号、4号シリーズのロケットを長征5号、6号、7号にリプレースすることが行われています。長征5号は重量級のロケットで2016年に初打ち上げが行われました。中国の宇宙ステーション建設にはこのロケットが使われます。6号は軽量のペイロードを打ち上げるためのロケットで、2015年に初打ち上げが行われています。長征7号は今後、長征ロケット・ファミリーの主力となるロケットで、これまで長征2号Fロケットで行っていた神舟宇宙船の打ち上げにも使われることになります。長征7号は2016年に最初の打ち上げを行っており、今回が2回目の打ち上げになります。

第3は、打ち上げが行われた文昌衛星発射センターです。中国にはこれまで3つ(酒泉、太原、西昌)の衛星発射センターがありました。文昌は2016年から使用が開始された中国の新しい衛星発射センターで、長征5号と長征7号の発射台はここにあります。これまで酒泉から打ち上げられてきた神舟宇宙船も、ここから打ち上げられるようになります。文昌は他の衛星発射センターに比べて緯度が低いため、静止衛星の打ち上げに適しており、今度、中国を代表する宇宙センターになっていきます。

このように、中国の宇宙開発は今、軌道上での強固なプレゼンスを確保するための新たな段階に入りつつあります。

中国の無人補給船「天舟1号」打ち上げへ
China's cargo spacecraft Tianzhou-1 to be launched

中国の無人補給船「天舟1号」が4月20日から24日の間に打ち上げられることになりました。天舟1号は軌道上の宇宙実験モジュール「天宮2号」と無人ドッキングを行います。下の画像の左が天宮2号、右が天舟1号です。

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天舟1号は海南島の文昌衛星発射センターから、長征7号ロケットで打ち上げられます。下の画像は4月17日、組立点検棟から発射台に移動を開始した長征7号です。フェアリングの中に天舟1号が収められています。

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下の画像は移動する長征7号を組立点検棟の屋上から撮影したものです。遠方左の建物が長征7号の発射台、右側は長征5号の発射台です。

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天宮2号には昨年、神舟11号のクルー2名が約1か月の宇宙滞在を行いました。天舟1号のドッキングが成功すると、中国独自の宇宙ステーション建設への最後の関門がクリアされることになります。
太陽系のオーシャン・ワールド
Ocean worlds in solar system

土星の衛星エンケラドスと木星の衛星エウロパでの新しい発見について、NASA から発表がありました。これらの衛星の表面は氷におおわれていますが、その下には液体の海が存在すると考えられています。

土星を周回して観測を続けているカッシーニ探査機は、エンケラドスの南極域から噴出しているプルームをサンプリングし、質量分析器で調べました。

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プルームの成分の大部分は水ですが、そこに水素が含まれていたとのことです。エンケラドスの海の底には、地球の深海底に存在する熱水鉱床を同じような、内部から熱水やミネラル分が噴出してくる場所があり、水素もそこで発生していると考えられるとのことです。

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そうであるとすれば、水素をエネルギー源とする生命が誕生している可能性も否定できません。非常に興味深い発見です。

一方、エウロパに関しては、エンケラドスにみられるものと同じようなプルームをハッブル宇宙望遠鏡が観測しました。同望遠鏡は2014年にエウロパのプルームを観測していますが、2016年にふたたび観測に成功しました。

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ガリレオ探査機のデータを用いて調べたところ、プルームが噴出していると考えられる場所(下左)は、ガリレオの観測で表面温度が周囲より高くなっていた領域(下右)でした。氷の下のある海の暖かい水が上昇しているためと考えられます。

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NASA は2020年代にエウロパ・クリッパーという探査機を打ち上げる計画をもっています。この探査機は木星を周回しながら、いくつものセンサーを用いて主にエウロパの海に関する観測を行います。エウロパに十分接近することが可能なので、プルームが噴出している場所の氷の下をレーダーで調べたり、高性能の質量分析計でプルームの成分を観測したりすることができます。今回の発表は、エウロパ・クリッパー・ミッションに大きな期待をもたせるものとなりました。
NASAの2018会計年度の予算案
The President’s 2018 Budget requests for NASA

トランプ政権による2018会計年度の予算教書が発表になりました。

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NASA の予算案は約191億ドルで、前年度比0.8%の減でした。トランプ大統領の宇宙政策はまだ明確になってはいないものの、前に予想した政策が予算に反映されていると思われます。

小惑星リダイレクト・ミッションは予想通り中止されました。今後、有人宇宙探査の目標は月にシフトしていくとみられます。地球科学ミッションは約1億ドル削減の18億ドルでした。それほどドラスティックな削減ではありませんでしたが、気候変動を観測するPACE、大気中の二酸化酸素濃度を観測するOCO3、太陽の輻射量を正確に測るCLARREOパスファインダーなどは中止されました。また、オバマ政権が力を入れていたNASA の教育プログラムも大幅に予算が削減されました。

一方、宇宙探査関連の予算は確保されています。木星の衛星エウロパを観測するエウロパ・クリッパー、火星探査のマーズ2020 は継続。SLS とオライオンも37億ドルの予算がついて開発続行になりました。

また、今後NASA は民間とのパートナーシップを強化していくことになります。
中国「宇宙強国」への野望とアメリカの「第3オフセット戦略」
China’s ambition in Space and the United States’ Third Offset Strategy

『中国、「宇宙強国」への野望』がウェッジ社から発売になりました。

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中国の宇宙開発は近年、飛躍的な発展を続けていますが、その一方で、軍事的利用に対する懸念も高まっています。中国の宇宙開発の全体像や、その目指すところをまとめた本はこれまでありませんでした。本書は中国宇宙開発の歴史から最新の成果、今後の野心的な計画、さらにはその軍事的側面までをまとめました。また、中国の宇宙開発がいかなる考えの下に、いかなる体制で進められているかにも触れています。

中国の宇宙開発は日本の安全保障にも大きく関係しています。中国に対してどのような立場をとるにせよ、私たちは中国の宇宙開発についてもっと知る必要があります。この本が、皆様にお役に立てばと願っています。

この本では、地球周回軌道から月面までの支配権をめさす人民解放軍の戦略について触れています。これを読んでいただければ、中国がパワフルな宇宙計画によってアメリカをしのぐ軍事強国を目指していることがおわかりになると思います。では、こうした動きに対してアメリカはどうしているのでしょうか? 

これに関しては、この本のテーマではないので触れていませんが、当然のことながら、アメリカでは中国に対抗する新たな動きがはじまっています。それが「第3オフセット戦略」です。

第3オフセット戦略が正式にスタートしたのは、2014年11月に発表された国防総省の「国防革新イニシアティブ」(DII)によってですが、その構想は2012年にできあがっていました。第3オフセット戦略はロシアと中国に対して通常兵器による圧倒的な軍事能力をつくりあげ、それを戦争の抑止力とする戦略を意味しています。特に、近年軍備力を増強し、アメリカの脅威となりつつある中国が主たる対象になっています。

ちなみに、第1オフセット戦略とは、1950年代にヨーロッパにおけるソ連の軍事的優位を核の大量報復戦略にとってくつがえした戦略、第2オフセット戦略とは、アメリカと均衡するまでになったソ連の核戦力に対して1980年代にステルス、精密誘導などのハイテクによって軍事的優位を確立した戦略のことです。第2オフセット戦略の成果が発揮されたのが、1991年の湾岸戦争における「砂漠の嵐作戦」でした。中国人民解放軍はアメリカ軍の行動を分析し、これからの戦争では宇宙が決定的な要素になるという結論に達しました。これが中国に大きなインパクトを与え、人民解放軍は「制天権」を目指す宇宙開発を推進することになったのです。

第3オフセット戦略は今のところまだ非常に幅広い概念で、ひとことで説明するのは困難ですが、先端的な技術の導入により、兵器システムのみならず、軍事作戦、さらには軍の組織そのものにまで革新をもたらすことを目標としています。この戦略の中心人物であるロバート・ワークス国防副長官によると、人工知能と自動化技術によって、人間と機械が協働する新しい戦力がつくられていくとしています。第3オフセット戦略を実現する技術として、具体的にはビッグデータ、ディープラーニング、量子コンピューター、ロボット、自動化・無人化技術、小型化技術、3次元プリンターなどの新しい生産技術などがあげられ、民間企業の技術や基礎研究の成果を積極的に導入していく方針です。また、宇宙アセットの防御、航空やサイバー空間での戦闘能力強化が重視され、極超音速ミサイル、レールガン、指向性エネルギー兵器などの開発も検討されています。

宇宙空間は第3オフセット戦略において非常に重要な位置を占めることになり、2015年9月にJICSpOC(統合省庁間連合宇宙作戦センター)が創設されました。軍とインテリジェンス関連の機関が宇宙で連携する組織です。宇宙状況監視はJSpOC(統合宇宙運用センター)によって行われています。JICSpOC はJSpOC にとってかわる組織ではありません。JICSpOC では当面、主に宇宙空間での作戦の立案やシミュレーションなどが行われる予定です。

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