台風19号:巨大台風の襲来は常態化

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    各所に甚大な被害をもたらした台風19号の特徴は、台風自体がきわめて強力で、かつ本州の東半分をおおいつくすほど渦のサイズが大きく、広範囲に降水をもたらしたことにあります。下の画像は1012日午後8時の、日本列島上陸時の「ひまわり」の赤外画像です。

     

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    台風19号は日本列島に接近する以前から、史上まれにみる巨大台風としてアメリカでも注目されていました。下の画像はNOAANASAの気象衛星「スオミNPP」が撮影したマリアナ諸島付近での「ハギビス」(台風19号)の画像です。この時点でハギビスはすでにカテゴリー5のスーパー台風に成長していましたが、その後、さらに勢力を増して北上しました。

     

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    ここにも書いたように、台風19号のような巨大台風の出現を、自然変動のみで説明することはもはや難しく、明らかに人為的な気候変動要因が影響しています。具体的には地球温暖化による海面水温の上昇と大気中の水蒸気量の増加です。

     

    下の画像は台風19号が日本列島に上陸した直後の午後810分の「ひまわり」画像で、水蒸気の量を示しています。北西太平洋上の大量の水蒸気が台風19号に流れこみ、雨雲の下ではげしい降水をもたらしている様子をみてとることができます。

     

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    最近の激甚な台風の襲来に関しては、1980年代以降、カテゴリー4あるいは5に達する台風が増加している、過去の記録を破る大きさ、強さの台風が次々と出現している、B翩の強さがピークに達する海域が北上している、といった傾向がみられます。これらの傾向が人為的な気候変動要因によるものであることに多くの科学者が同意しています。

     

    私たちは今回のような台風の襲来が今後常態化すると考え、より一層の防災・減災に取り組まなくてはなりません。


    東電裁判:あまりにも当然な無罪判決

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      東京地方裁判所は、福島原発事故で東京電力旧経営陣3人が強制的に起訴された裁判で、「巨大な津波の発生を予測できる可能性があったとは認められない」として、3人全員に無罪を言い渡しました。当然の判決といえます。

       

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      前にもここここで書いたように、この裁判で検察側が起訴の根拠としている「長期予測」はマグニチュード8クラスの地震しか想定しておらず、マグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震を予測することはできていませんでした。地震学者が予測できないものを東電が予測できたとするのは、非常に無理のある主張です。

       

      私はもう1つ、検察側の主張に問題があったと考えている点があります。それは東電設計による「津波高15.7m」という計算結果が信頼性の高いものであったかどうかです。コンピューター・シミュレーションというものは、パラメーター(媒介変数)の設定次第で、どんな結果でも導くことができます。科学的に信頼性の高いシミュレーションとは、正しいパラメーターを求め、計算モデルのチューニングを行ったものといえます。それでもなお、不確実性は残ります。

       

      東電設計のシミュレーションでどのような初期条件やパラメーターが用いられ、計算結果が科学的に妥当であったかどうかは、客観的に検証されなければなりません。計算結果が論文として作成され、査読という外部の評価を経たうえで、学術誌に掲載されれば、その計算結果は科学的妥当性をもちます。そうでないならば、それは試算の1つでしかありません。

       

      あれだけの被害が出て、責任が問われないのはおかしいという意見があります。私も当然だと思います。「地震は予知できる」といいながら巨大地震と巨大津波を予測できなかった地震学者自身が、まず自らの責任について語らなければなりません。

       


      強力な台風やハリケーンの原因は地球温暖化

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        Tropical Storms and Climate Change

         

        最近の非常に強い台風やハリケーンの発生は、地球温暖化による影響と考えて間違いありません。

         

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        千葉県を中心に各地に大きな被害をもたらした台風15号は、99日に観測史上1位の最大瞬間風速57.5mを記録する非常に強い台風でした。一方、アメリカでも観測史上最強クラスのハリケーン「ドリアン」がバハマに大きな被害を与えました。上は91日、バハマを襲うドリアンの衛星画像です。

         

        下の画像は94日の衛星画像です。4つのハリケーンと熱帯低気圧が写っています。中央のドリアンはカテゴリー2にまで勢力を落としていますが、大西洋の東には熱帯低気圧「ガブリエル」が発生しています。カリブ海を襲っているのは熱帯低気圧「ファーナンド」、カリフォルニア沖にいるのはハリケーン「ジュリエット」です。

         

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        強い台風やハリケーンの発生は地球温暖化にともなって、今後さらに増えていくでしょう。

         

        アメリカ気象学会の学術誌「Bulletin of the American Meteorological Society」のオンライン版に、NOAA(アメリカ海洋大気局)の研究者Knutsonらによる論文が掲載されています。この論文は、地球温暖化が進んだ場合のハリケーンや台風の発生について、世界の研究者がどう予測をしているかを評価したものです。

         

        論文によると、平均気温が2℃上昇した世界でのハリケーンや台風の発生について、多くの研究者は以下のように考えています。

         

        温暖化により海水が温められて膨張し、海水面が上昇するため、ハリケーンや台風襲来時の浸水被害が増加する。

        大気中の水蒸気量が増加するため、ハリケーンや台風がもたらす降水量は全地球的に増加する。

        ハリケーンや台風の最高風速は増加する。

        カテゴリー45の強力なハリケーンの発生頻度が増加する。

         

        世界の研究者は気候モデルを使ってさまざまなシミュレーションを行っていますが、おおむね、以上のような結論になっています。観測史上例をみない強力な台風やハリケーンが、これからも次々と私たちの暮らしを襲ってくるでしょう。温室効果ガス排出を削減する努力とともに、被害を最小限に食い止めるための対策が緊急の課題になっています。


        系外惑星の大気に水蒸気を発見

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          Water Vapor on Habitable-Zone Exoplanet

           

          ハッブル宇宙望遠鏡は系外惑星K2-18bの大気に水蒸気を観測しました。

           

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          地球と同じ岩石型の系外惑星の発見は、今では珍しくありません。まや、ハビタブルゾーン(母星から適度の距離にあり、惑星表面に水が液体で存在できる領域)をまわる岩石型惑星も発見されています。しかし、ハビタブルゾーンをまわる岩石型惑星の大気で水蒸気(水分子)が発見されたのは、これが最初です。

           

          K2-18b2015年に系外惑星探査機「ケプラー」が発見した系外惑星で、しし座の方向、約110光年の距離にあります。赤色矮星のまわりをまわっており、質量は地球の約8倍といいますから、直径が地球の約2倍ある「スーパーアース」です。

           

          イギリスのユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームが、ハッブル宇宙望遠鏡が2016年と2017年に観測したデータを分析したところ、大気中に水分子、さらに水素やヘリウムの存在が示されました。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などによる今後の詳細な確認が必要ですが、K2-18bの大気に水分子が存在しているとすれば、その表面には液体の水、すなわち海があり、生命に必要な環境が存在しているかもしれません。

           

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          生命をはぐくんだ私たちの地球は、はたして宇宙において特別な存在なのでしょうか?


          われわれは月に行くことを選んだ

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            We choose to go to the moon

             

            1962912日、ケネディ大統領はヒューストンのライス大学で有名な演説を行いました。「われわれは月へ行くことを選んだ」と述べ、月を目指すことがアメリカの国家目標であることを高らかに宣言したのです。

             

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            当時はソ連との冷戦の真っただ中の時代でした。アメリカは宇宙開発でソ連に後れを取っていました。そこでケネディは1961525日、議会で「アメリカは1960年代が終わらないうちに人間を月に送り、安全に地球に帰還させる」と発表し、月着陸一番乗りをめざすアポロ計画がスタートしました。

             

            それから14か月後のライス大学での演説の頃には、月に行く技術をマスターするためのジェミニ計画の準備が進められ、アポロ宇宙船の開発もはじまろうとしていました。ケネディはライス大学の演説で述べています。「われわれは60 年代が終わる前に月へ行く。それが容易ではなく困難であるがゆえに。・・・そしてわれわれがその挑戦に勝つつもりでいるがゆえに」。アメリカにとってソ連との競争に勝つことが「自由と平和」を守るためのアメリカの使命であると、アポロ計画の意義を述べたのです。

             

            ケネディは19631122日、テキサス州ダラスで暗殺され、アポロ11号の月着陸を見届けることはできませんでした。アポロ11号の月着陸船イーグルが月面に降り立った今から50年前の1969720日、アーリントン墓地のケネディの墓に誰かが小さな花を飾り、「大統領、イーグルは着陸しました」というメモを置いていたというエピソードが残されています。


            NASA本部前の通りを Hidden Figures Way と命名

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              Street Renaming Puts NASA Headquarters on Hidden Figures Way

               

              ワシントンDCのNASA本部前の通りが”Hidden Figures Way”と命名されました。

               

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              NASA本部はEストリート・サウスウエストの3番ストリートと4番ストリートの間にあります。スミソニアン航空宇宙博物館からも歩ける距離です。EストリートのNASA本部前が Hidden Figures Way と名づけられたわけです。

               

              Hidden Figuresは、NASA の初期の有人宇宙計画に大きな役割を果たしたアフリカ系アメリカ人女性たちを描いたマーゴット・リー・シェタリーの著書“Hidden Figures: The American Dream and the Untold Story of the Black Women Mathematicians Who Helped Win the Space Race”のタイトルです。「表に出てこなかった人たち」といった意味です。

               

              6月12日に行われた式典では、NAASのブライデンスタイン長官(一番左)の他、マーゴット・リー・シェタリー(一番右)も参加しました。

               

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              ”Hidden Figures“が原作となって制作された映画が、2017年に日本でも公開された『ドリーム』です。”Hidden Figures“や『ドリーム』に登場するキャサリン・ジョンソンさん、ドロシー・ヴォーンさん、メアリー・ジャクソンさんは実在の人物です。キャサリン・ジョンソンさんについては、ここにも書いてあります。

               

              ドロシー・ヴォーンさんは当時NASA で働いていた多くの黒人女性たちのパイオニアといえる存在でした。バージニア州ファームビルの高校教師だったドロシーさんは1943年にNASA の前身であるNACA(アメリカ航空諮問委員会)のラングレー・リサーチ・センターで働きはじめます。

               

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              ドロシーさんはラングレー・リサーチ・センターの西エリア計算ユニットに配属されました。「人間コンピューター」として計算尺や機械式計算機を用いて航空分野の計算をするのが仕事でした。ドロシーさんたち黒人女性と、同じ仕事をする白人女性たちの仕事場は分けられており、ドロシーさんたちが隔離されていた建物が西ユニットでした。1949年にドロシーさんは西ユニットのスーパーバイザー(監督者)になりました。黒人女性のスーパーバイザーはNACA初のことでした。彼女の役職は1958年10月にNACA がNASA に改組されるまで続きました。NASA がスタートすると、黒人女性を隔離していた施設はなくなり、それとともにドロシーさんは新しいコンピューター部門に移りました。ドロシーさんは1971年にNASA をリタイアし、2008年に亡くなりました。

               

              ドロシーさんが長をしていた西エリア計算ユニットにメアリー・ジャクソンさんが雇われたのは1951年でした。2年後に超音速風洞実験の部署に配属されたメアリーさんは、これをきっかけにエンジニアになる道を目指します。

               

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              彼女が黒人女性として初のNASA のエンジニアになったのは1958年のことです。メアリーさんは1985年にNASA をリタイアし、2005年に亡くなりました。

               

              キャサリン・ジョンソンさんが西エリア計算ユニットにやってきたのは1953年の夏のことでした。2週間後、ドロシーさんは彼女を飛行研究部門に異動させます。キャサリンさんはそこで航空機の計算や航空機事故の調査に携わりました。ソ連との宇宙競争がはじまり、1958年にNASA が創設されると、有人宇宙飛行を目指すスペース・タスク・グループがラングレー・リサーチ・センター内に組織され、マーキュリー計画がスタートします。キャサリンさんがそこで重要な役割を果たしたことは、映画『ドリーム』で描かれた通りです。

               

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              キャサリンさんは1986年にNASA をリタイアしました。2015年、オバマ大統領はキャサリンさんに対して大統領自由勲章賞を授与しました。また、2016年9月にラングレーにオープンした計算センターは、彼女の業績をたたえ、キャサリン・ジョンソン・コンピュテーショナル・リサーチ・センターと命名されました。

               



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